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17:カートが伸びた
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「明日は町に戻って、この尻尾の売却しないとなぁ」
「もう何頭分かは乗せられそうだけど」
「あぁ、そうだな。でもその何頭かは、帰り道に遭遇するだろ」
荷物を全部出せば、カートも余裕が出来るんだけどな。
でも中に入っている物は、全部キャンプに必要なものだ。
だいいち、出した荷物を預ける場所もないしな。
明日は素材を売却したら、午後から違う方角に向かうことにした。
サンドハウンド飽きた。
そんな話をしたってのにだ。
朝、目を覚ましてテントを出ると──
「えぇぇー……」
「ど、どうしてこんなことに?」
テントの周りには、十数頭のサンドハウンドが転がっていた。
「あれかの。キャンプ飯の匂いに釣られて集まった雑魚どもが、テントに喰らいついたとかそんなんじゃないか?」
「噛みついて、ダメージ喰らって自滅したのかこいつら」
「昨日はステーキ丼、だったものね。そりゃあいい匂いしてたでしょうよ」
ステーキ食いたさに、何度も噛みつきトライしたのか。
こいつらが集まって来ていたことすら気づかなかったな。テントには防音効果まであるのか。
しかしまぁ、聖なる光の神様の加護もえげつないなぁ。
噛みつきに来ただけで死ぬんだもんなぁ。
合掌。南無ぅ。
「尻尾、全部は乗らないかもな」
「勿体ないわね。私、何本か背負うわ」
「リュックに一本ぐらいなら入るか──」
「我嫌じゃ! 蛇なんぞと一緒に入りとぉない!!」
我がままドラゴンめぇ。
もう少し大容量のカートを買えばよかったなぁ。
いや、これより大きいサイズたって、極端に大きい訳じゃないしな。
そもそもモンスターの素材を運ぶ用途として設計されてないし。
カートを元のサイズに戻し、とりあえず転がっているサンドハイエナの解体を開始した。
銀次郎がキャンプ飯と連呼するけどスルー。
「サンドハイエナをブレスで炙って食えばいいじゃん」
「主、我を何だと思っておる!」
「ドラゴン」
「そう! 我はドラゴンだ!! よし、炙るか。醤油と、あとチーズを所望する」
こいつ。ほんと最近、にわかグルメになってきたなぁ。
ちょっとだけ体を大きくすると、サンドハイエナを爪で捌いていく。
魔晶石と尻尾を俺の方に投げると、腹を割って三枚おろし状態に。
うっぷ。内臓グロロォ。
「醤油!」
「はいはい」
「チーズぱらぱら!」
「はい、ぱらぱらっと」
「ブレェェーッス!」
なんで掛け声掛けてからブレスってんの?
ゴォォっと肉が焼ける匂いがして、しかも醤油チーズだ。ちょっと、いいニオイ。
サンドハウンドを鑑定した時、肉はやや硬いとあった。ってことは、食べられない訳ではないということ。
焼きあがったサンドハウンドに、銀次郎がかぶりつく。
「うむ。うむうむ」
「どうよ?」
「むー……マズくはないが、美味くもないな」
可もなく不可もなくか。微妙だな。
「タック。ゴミ袋って、どこだっけ?」
「あ、もしかしてカートの底にあるかも。ちょっと待って」
蛇尻尾をそのままカートに積み込むのは、他の荷物に血が付いたりしそうで嫌だからゴミ袋に入れている。
そのゴミ袋は~っと、あった。やっぱり底だ。
カートの縁を掴んで手を突っ込む。
「取れそう? 少し荷物下ろそうか?」
「いや、だいじょう──ぶっ」
アイラがカートに触れた時だった。
突然、カートが……
「伸びたああぁぁー!?」
「広がった!?」
俺とアイラ、驚いてパっと手を離す。
カートが少し多くなったかも?
試しに縁を引っ張ってみる……けど、広がらない。
「もしかしてこっち?」
アイラが、さっき自分が触っていた縁を掴んで引いた。
でも広がらない。
あ、もしかして。
「同時」
「あ、なるほどね。じゃあ……」
「「せーの」」
で引っ張ってみると、広がった!
おぉ、おおぉ。
カートの縁二カ所を同時に押し広げると、サイズが拡張されるのか!
途中で拡張が止まったが、縦三メートル強、横二メートル弱まで広がった。
「ほぉ。これなら素材をもっと積み込めるではないか」
「こんな隠し機能あるんなら、教えてくれればよかったのに」
「でも後になって知るのって、それはそれで楽しそうじゃない。ね、もしかしてテントの方も?」
テント、広がるのかな?
アイラと顔を見合わせ、俺たちはウキウキしながらテントを引っ張ってみた。
するとだ──
「これは……想定外の結果だな」
「ま、まぁこれはこれでありじゃない?」
テントは大きくなった。総合的に見て大きくなった。
でもまさか、横にまったく同じテントが増えて、2ルームテントになるとは思わなかった。
二つのテントは本体を覆うフライトシートで繋がっているようだ。
テントの入り口は元々二カ所ある。奥のファスナーを開けると、すぐ目の前に隣のテントへ入る出入口のパネルがあった。
「あ、こ、これで二部屋だし、アイラと俺で一部屋ずつ使えるな」
「あ、そう、ね。う、うん。広々使えるわね」
ま、まぁ、今さらでもあるんだけど。
最初の頃は恥ずかしくてなかなか寝付けなかったけど、最近は隣に彼女がいても気にならなくなった。
それでも二部屋になるのはいいことだ。
お互い着替える時はどちらかが外に出て待っていたが、その必要もなくなる。
着替え……あ、そうだ!
「アイラ。やっぱ一度町に戻ろう。カートが大きくなったから、素材をたくさん積めるようになったが、キャンプグッズが血まみれになるのは嫌だし。他にも欲しいものが出来たんだ」
異世界キャンプは快適だが、唯一、そうでない部分がある。
それを解決出来るかもしれない。
「もう何頭分かは乗せられそうだけど」
「あぁ、そうだな。でもその何頭かは、帰り道に遭遇するだろ」
荷物を全部出せば、カートも余裕が出来るんだけどな。
でも中に入っている物は、全部キャンプに必要なものだ。
だいいち、出した荷物を預ける場所もないしな。
明日は素材を売却したら、午後から違う方角に向かうことにした。
サンドハウンド飽きた。
そんな話をしたってのにだ。
朝、目を覚ましてテントを出ると──
「えぇぇー……」
「ど、どうしてこんなことに?」
テントの周りには、十数頭のサンドハウンドが転がっていた。
「あれかの。キャンプ飯の匂いに釣られて集まった雑魚どもが、テントに喰らいついたとかそんなんじゃないか?」
「噛みついて、ダメージ喰らって自滅したのかこいつら」
「昨日はステーキ丼、だったものね。そりゃあいい匂いしてたでしょうよ」
ステーキ食いたさに、何度も噛みつきトライしたのか。
こいつらが集まって来ていたことすら気づかなかったな。テントには防音効果まであるのか。
しかしまぁ、聖なる光の神様の加護もえげつないなぁ。
噛みつきに来ただけで死ぬんだもんなぁ。
合掌。南無ぅ。
「尻尾、全部は乗らないかもな」
「勿体ないわね。私、何本か背負うわ」
「リュックに一本ぐらいなら入るか──」
「我嫌じゃ! 蛇なんぞと一緒に入りとぉない!!」
我がままドラゴンめぇ。
もう少し大容量のカートを買えばよかったなぁ。
いや、これより大きいサイズたって、極端に大きい訳じゃないしな。
そもそもモンスターの素材を運ぶ用途として設計されてないし。
カートを元のサイズに戻し、とりあえず転がっているサンドハイエナの解体を開始した。
銀次郎がキャンプ飯と連呼するけどスルー。
「サンドハイエナをブレスで炙って食えばいいじゃん」
「主、我を何だと思っておる!」
「ドラゴン」
「そう! 我はドラゴンだ!! よし、炙るか。醤油と、あとチーズを所望する」
こいつ。ほんと最近、にわかグルメになってきたなぁ。
ちょっとだけ体を大きくすると、サンドハイエナを爪で捌いていく。
魔晶石と尻尾を俺の方に投げると、腹を割って三枚おろし状態に。
うっぷ。内臓グロロォ。
「醤油!」
「はいはい」
「チーズぱらぱら!」
「はい、ぱらぱらっと」
「ブレェェーッス!」
なんで掛け声掛けてからブレスってんの?
ゴォォっと肉が焼ける匂いがして、しかも醤油チーズだ。ちょっと、いいニオイ。
サンドハウンドを鑑定した時、肉はやや硬いとあった。ってことは、食べられない訳ではないということ。
焼きあがったサンドハウンドに、銀次郎がかぶりつく。
「うむ。うむうむ」
「どうよ?」
「むー……マズくはないが、美味くもないな」
可もなく不可もなくか。微妙だな。
「タック。ゴミ袋って、どこだっけ?」
「あ、もしかしてカートの底にあるかも。ちょっと待って」
蛇尻尾をそのままカートに積み込むのは、他の荷物に血が付いたりしそうで嫌だからゴミ袋に入れている。
そのゴミ袋は~っと、あった。やっぱり底だ。
カートの縁を掴んで手を突っ込む。
「取れそう? 少し荷物下ろそうか?」
「いや、だいじょう──ぶっ」
アイラがカートに触れた時だった。
突然、カートが……
「伸びたああぁぁー!?」
「広がった!?」
俺とアイラ、驚いてパっと手を離す。
カートが少し多くなったかも?
試しに縁を引っ張ってみる……けど、広がらない。
「もしかしてこっち?」
アイラが、さっき自分が触っていた縁を掴んで引いた。
でも広がらない。
あ、もしかして。
「同時」
「あ、なるほどね。じゃあ……」
「「せーの」」
で引っ張ってみると、広がった!
おぉ、おおぉ。
カートの縁二カ所を同時に押し広げると、サイズが拡張されるのか!
途中で拡張が止まったが、縦三メートル強、横二メートル弱まで広がった。
「ほぉ。これなら素材をもっと積み込めるではないか」
「こんな隠し機能あるんなら、教えてくれればよかったのに」
「でも後になって知るのって、それはそれで楽しそうじゃない。ね、もしかしてテントの方も?」
テント、広がるのかな?
アイラと顔を見合わせ、俺たちはウキウキしながらテントを引っ張ってみた。
するとだ──
「これは……想定外の結果だな」
「ま、まぁこれはこれでありじゃない?」
テントは大きくなった。総合的に見て大きくなった。
でもまさか、横にまったく同じテントが増えて、2ルームテントになるとは思わなかった。
二つのテントは本体を覆うフライトシートで繋がっているようだ。
テントの入り口は元々二カ所ある。奥のファスナーを開けると、すぐ目の前に隣のテントへ入る出入口のパネルがあった。
「あ、こ、これで二部屋だし、アイラと俺で一部屋ずつ使えるな」
「あ、そう、ね。う、うん。広々使えるわね」
ま、まぁ、今さらでもあるんだけど。
最初の頃は恥ずかしくてなかなか寝付けなかったけど、最近は隣に彼女がいても気にならなくなった。
それでも二部屋になるのはいいことだ。
お互い着替える時はどちらかが外に出て待っていたが、その必要もなくなる。
着替え……あ、そうだ!
「アイラ。やっぱ一度町に戻ろう。カートが大きくなったから、素材をたくさん積めるようになったが、キャンプグッズが血まみれになるのは嫌だし。他にも欲しいものが出来たんだ」
異世界キャンプは快適だが、唯一、そうでない部分がある。
それを解決出来るかもしれない。
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