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「モーリアの森の迷宮探索チーム募集! 残り二枠だ。魔術師優先!」
「魔術師在籍の森の迷宮パーティーに参加させてくれぇ」
な、なんだ?
ギルドの建物の周辺では、パーティーを募集する奴らが何十人もいるじゃないか。
その理由は看板にあった。
【モーリアの森で新たに見つかった迷宮の探索には、安全を考慮して五人以上のパーティーで挑むこと】
と書いてあった。
つまり日頃ソロや少人数パーティーで行動している連中では、中に入れないってことだ。
そして俺たちも……。
「いったん中に入るか」
「うん、はいっ」
ギルドの建物の中は外程騒がしくはない。
既にパーティーが決まった者たちが、探索への参加申請をしているぐらいだ。
「あ、リヴァさん、セシリアさん、こんにちは。ふふ、新婚生活はどうですか?」
「ふあ!? し、新婚生活っ」
「スミアン、若いお二人をあまりからかうんじゃありません。お二人は町に来られるのは数日ぶりですよね?」
ベテランの職員がそう言ってやって来た。
十日ぶりだと答えると、この騒動はまさに今朝から始まったのだと教えてくれた。
「お二人が発見されたダンジョンですが、ようやく探索の準備が整いまして」
「準備って、あれから三カ月も経ってますよね」
「えぇ。新規ダンジョンが発見された場合、探索できるようになるまでいろいろ面倒な手続きなどあるんですよ」
まずはその土地の所有者に、ダンジョンで得られる利益の配当について。
それから冒険者が探索するための準備として、最低限、入口近くにギルド支部や休息のための宿の建設が必要になる。
「あの森の所有者というのが特にいなかったので、隣接する土地の領主である貴族が名乗り出たのですが──」
「名乗り出た貴族が三名いらっしゃったので、最終的には王国が管理することになったんですよ」
「国管理のダンジョンか……それでギルド支部とか宿は?」
「支部は出来ましたが、宿の方は平屋のものが一軒だけですので、行かれる際はテント必須ですよ」
三カ月じゃそんなもんだろう。
「探索は三日後から可能になります。お二人は探索期間中についてご存じですか?」
「いや、そういうのは初めてで」
「私も、知らないです」
ベテランの方が頷き、カウンター席に案内してくれた。
「司祭様にお聞きになってもよいかと思いますが、今回はモーリアの森の迷宮についても簡単にご説明しますね」
「よろしくお願いします」
職員が笑顔で頷き、それから一つずつ丁寧に説明してくれた。
まず新規ダンジョンが発生したら、位置の特定を行う。
偶然発見されることもあれば、賢者が聖女が感知することもあるという。後者の場合、アバウトな位置情報しかないので実際に探すしかない。
そして発見すれば、土地の所有者との交渉。そしてギルド支部などの建設が始まる。
「ここまでやって、ようやく探索が出来るようになります。探索期間というものがあって、約三カ月間ございます」
「その期間は何か特別なことでも?」
「はい。この期間内は転移魔法陣の使用が無料です。と言いましても、今現在は魔法陣すらないのですが」
魔法陣がないのに無料をアピールするのは何故か。
その魔法陣も探索の過程で設置されていくそうだ。
「魔術師がいるパーティーには、事前に転移魔法陣設置用のマジックアイテムをお渡ししております」
「最初にその階層に到達したパーティーが?」
「はい。そのパーティーにはボーナスが支給されます」
「待ってくれ。どのパーティーが設置したかとかはどう判断するんだ?」
「マジックアイテムは対になったアイテムですので、設置されれば入口に魔法陣が刻まれます。どのパーティーに渡したものかは、刻まれた魔法陣に浮かび上がりますので分かるのですよ」
なるほど。外で魔術師魔術師言われていたのは、これだったのか。
「魔術師在籍の森の迷宮パーティーに参加させてくれぇ」
な、なんだ?
ギルドの建物の周辺では、パーティーを募集する奴らが何十人もいるじゃないか。
その理由は看板にあった。
【モーリアの森で新たに見つかった迷宮の探索には、安全を考慮して五人以上のパーティーで挑むこと】
と書いてあった。
つまり日頃ソロや少人数パーティーで行動している連中では、中に入れないってことだ。
そして俺たちも……。
「いったん中に入るか」
「うん、はいっ」
ギルドの建物の中は外程騒がしくはない。
既にパーティーが決まった者たちが、探索への参加申請をしているぐらいだ。
「あ、リヴァさん、セシリアさん、こんにちは。ふふ、新婚生活はどうですか?」
「ふあ!? し、新婚生活っ」
「スミアン、若いお二人をあまりからかうんじゃありません。お二人は町に来られるのは数日ぶりですよね?」
ベテランの職員がそう言ってやって来た。
十日ぶりだと答えると、この騒動はまさに今朝から始まったのだと教えてくれた。
「お二人が発見されたダンジョンですが、ようやく探索の準備が整いまして」
「準備って、あれから三カ月も経ってますよね」
「えぇ。新規ダンジョンが発見された場合、探索できるようになるまでいろいろ面倒な手続きなどあるんですよ」
まずはその土地の所有者に、ダンジョンで得られる利益の配当について。
それから冒険者が探索するための準備として、最低限、入口近くにギルド支部や休息のための宿の建設が必要になる。
「あの森の所有者というのが特にいなかったので、隣接する土地の領主である貴族が名乗り出たのですが──」
「名乗り出た貴族が三名いらっしゃったので、最終的には王国が管理することになったんですよ」
「国管理のダンジョンか……それでギルド支部とか宿は?」
「支部は出来ましたが、宿の方は平屋のものが一軒だけですので、行かれる際はテント必須ですよ」
三カ月じゃそんなもんだろう。
「探索は三日後から可能になります。お二人は探索期間中についてご存じですか?」
「いや、そういうのは初めてで」
「私も、知らないです」
ベテランの方が頷き、カウンター席に案内してくれた。
「司祭様にお聞きになってもよいかと思いますが、今回はモーリアの森の迷宮についても簡単にご説明しますね」
「よろしくお願いします」
職員が笑顔で頷き、それから一つずつ丁寧に説明してくれた。
まず新規ダンジョンが発生したら、位置の特定を行う。
偶然発見されることもあれば、賢者が聖女が感知することもあるという。後者の場合、アバウトな位置情報しかないので実際に探すしかない。
そして発見すれば、土地の所有者との交渉。そしてギルド支部などの建設が始まる。
「ここまでやって、ようやく探索が出来るようになります。探索期間というものがあって、約三カ月間ございます」
「その期間は何か特別なことでも?」
「はい。この期間内は転移魔法陣の使用が無料です。と言いましても、今現在は魔法陣すらないのですが」
魔法陣がないのに無料をアピールするのは何故か。
その魔法陣も探索の過程で設置されていくそうだ。
「魔術師がいるパーティーには、事前に転移魔法陣設置用のマジックアイテムをお渡ししております」
「最初にその階層に到達したパーティーが?」
「はい。そのパーティーにはボーナスが支給されます」
「待ってくれ。どのパーティーが設置したかとかはどう判断するんだ?」
「マジックアイテムは対になったアイテムですので、設置されれば入口に魔法陣が刻まれます。どのパーティーに渡したものかは、刻まれた魔法陣に浮かび上がりますので分かるのですよ」
なるほど。外で魔術師魔術師言われていたのは、これだったのか。
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