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 今回の依頼をさっさと終わらせて町へと帰還。
 ずっと地上での依頼ばかりしていたのもあって、手持ちの魔石が底をついて来たな。

「セシリア、暫くはダンジョンで魔石拾いをしよう。どうせこの先は雪が降る季節だしな、外回りは辛くなる」
「強奪どうするの?」
「そうなんだよなぁ。一日一回、お使いクエストでもなんでもいいから、受けられるといいんだが」

 依頼を受けた店に素材を卸し、冒険者ギルドに寄ってどんな依頼があるか確認してみた。
 ダンジョンで狩りが出来、尚且つ地上にも出られる依頼……探せば意外と見つかるもんだ。

 内容は変わらず素材集めだが、ギルドに届けるもよし、直接持ち込むのもよし。そんな依頼がいくつかある。

「解熱剤か。これからの季節、風邪ひくやつが出てくるからだろうな」
「魔石も拾えるし、いいと思う」
「稼ぎとしては少ないが、地上にも出れるからいいかもな」

 ある程度の数が欲しいようだから、何日かに分けて届ければそれだけ上にも出られる。
 まぁ依頼主にとっちゃ、まとめて寄こせと思われるだろうけどな。

 依頼の張り紙を持ってカウンターへ行き、今日までの報告と新しい依頼の受諾を同時にやる。
 それから地下街に下りてライガルさんへ無事の報告と、ガキどもにお土産を届けて──

「お前たちか。外で素材狩りをして町の職人たちに売りさばいているのは」

 ギルドを出る前に突然呼び止められた。
 その声が高圧的で癪に障る。

「依頼を受けてやっているだけだ。それがどうしたってんだ」
「困るのだよ、そんなことをされては。一部の職人にだけ素材がいきわたれば、他の職人から不満の声が上がることを知らないのか?」
「だからここ最近は、ダンジョン産じゃなく地上産の素材収集依頼が増えてんじゃねえか。おかげでこっちは忙しい身だけどな」

 あれから一年が経とうってのに、未だに狩場の独占をしているクランがある。
 というか噂じゃ地下十五階より下は、大手クラン三つが競うようにして独占していて、他の中小クランや未所属パーティーなんかはまともに狩りが出来ない状態らしい。
 そのせいか最近は俺のように地上で素材狩りをするパーティーが何組かいると、ギルドの職員から聞いた。
 今後もそういったパーティーが増えるなら、素材の相場も下がって来るだろうとも言っていた。

「ちっ。それが困るつってんだよ」

 あぁなるほど。
 こいつは狩場を独占しているクランのやつだろう。
 相場を吊り上げてから一気に売り出す予定が、俺のせいで上がるどころか下がる兆しが出て来た。
 だから俺が邪魔なんだろう。

「まぁ待てゴルトア。君たち、随分と素材で儲けているようだね。どこで狩りをしているんだい? よかったら狩場情報を買い取らせてくれないだろうか?」
「さっさと下に戻るぞ。こんな奴らに構ってる時間が勿体ない」

 セシリアの肩を寄せ、男らを無視して歩き出す。

「下? そうか地下街出身か。それで地上狩りばかりしているのだな。はは、分かった分かった。じゃあこうしよう」

 男は俺たちの前に躍り出ると、その進路を塞いだ。
 それから憐みのような視線で俺を見下ろすと、ニタりと笑う。

「我々のクランに入れてやろう。そうすれば地上での居住権も手に入る。もちろんタダでだ」
「今夜の晩飯は何にするかなぁ」
「おい、クランに入れてやると言っているんだぞ。Aランクのクランにだぞ!?」
「AだろうとSだろうと興味ない。それに居住権なんてすぐにでも買えるから、てめーらの恩着せがましい善意なんて必要ねえから」

 最初の予定だと、ギルドの貢献度を上げて居住権をタダ買いするつもりだったが、その前に金のほうが貯まる。
 貢献度もちょいちょい貯まってはいるが、居住権を貰えるのに必要なポイントの半分ほどしかない。
 
「という訳なんで、じゃあな」

 ギルド内にある階段で地下へと下りて建物を出る。
 奴ら、諦めてないみたいだな。距離は取っているようだが、尾行しているのは気配でバレバレだ。

「セシリア、そこの路地に入るぞ」
「うん。でもどうするの?」
「さぁて、どうするかは向こうの出方次第だな」
 
 二人で路地を曲がって人気のない所まで入った時だ──

「いい気になりやがって!」

 そんな声と共に、奴らが拳を振りかざして飛び掛かって来た。
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