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「はぁ……やぁーっぱり冒険者カード持ってやがった」
「え? なんでモンスターが冒険者カードを?」
「んあ? なんだ知らなかったのか。ダンジョンモンスターに食われるとな、胃袋行った時点で即消化されるんだよ」
「即消化!? こわっ」
ただし即消化出来るのは肉だけ。他は素材によって消化時間が異なるそうだ。
トレインマンは食われすぐだ。だから消化されたのは肉体だけ。
つまりあそこに落ちているのは、奴の持ち物ってことになる。
「冒険者ギルドのルールでな、正当な理由なくして他の冒険者を殺めてはならないってのがあるんだ」
「正当な理由って、たとえばどんな?」
「自分を殺しに来てる冒険者を返り討ちにするのは、正当な理由として認められる。まぁつまりはだ。こいつはそんな理由もなく、ただ自分が楽しむために同じ冒険者を殺そうとしてたってことだ」
そんな奴はやられても文句を言えないし、やった奴は誰にも責められないから安心しろ。
神父は俺にそう言った。
それから──
「これは戦利品だ。ありがたく貰っとけ」
「……あんた本当に聖職者かよ」
「なぁに言ってんだ。死人には不要なもんだろ? だったら生きてる奴が有効利用してやったほうがいいに決まってるじゃねえか。あ、ほら。二人ともドロップアイテム忘れんなって。いっぱい落ちてんだから」
モンスターを倒すのに必死で、何一つ拾ってない。
魔石や他のアイテムが、そこかしこに散乱したままだ。
「セシリア、大丈夫か?」
「うん。アイエムひおぉう」
セシリアはにっこり笑って落ちている物を拾い始めた。
魔石以外のアイテムもいっぱいある。一個ぐらいレア物がないかなぁ。
しかし……多すぎる。
十二階に下りた時には、セシリアの鞄も俺の背負い袋もほとんど空きがなかった。
「生臭ぁ、これ全部拾っても入れる物がないぞ」
「お嬢ちゃんの外套にでも包んで持って帰るしかねえな。とりあえず集めようや」
「あっ──」
セシリアの弾むような声が聞こえた。
「い……リヴァ、ふくぉあったの」
「フクロウ?」
「いいいぃぃーっ。ふく、ふくろ!」
袋か?
もしかしてトレインマンが持っていた物だろうか。
まぁ冒険者だったら持ってても不思議じゃないよな。
セシリアが持って来たのは、手のひらサイズの巾着だった。
小さい。
「これじゃあ魔石十個も入れられないぞ……」
「よねぇ……」
さっきとは打って変わって、セシリアもがっかりしている。
まぁ……ないよりはマシか。
「おいおい、待てよ。ちょっと見せてみろ」
「なんだよ生臭。こんな巾着なんて珍しくないだろ」
見せろというので神父に手渡すと、えらく真剣な顔して巾着をまじまじと見つめていた。
え……珍しい巾着なのか?
「はっ。お前ら、最高に運がいいなぁ」
「は?」「ぅ?」
神父はニィっと笑みを浮かべ、巾着の口を開いた。そして手にした魔石をじゃらじゃらと入れていく。
足元に集めた魔石も、魔獣の毛皮も、トレインマンが持っていたのだろう武器も──は?
いやいや、いくらなんでも入り過ぎだろ。
「まさかそれ……」
「そう、まさかだ。こいつは空間収納袋だぜ」
見た目に反して物を大量に収納出来る、異空間と繋がった魔法道具《マジックアイテム》だった。
「え? なんでモンスターが冒険者カードを?」
「んあ? なんだ知らなかったのか。ダンジョンモンスターに食われるとな、胃袋行った時点で即消化されるんだよ」
「即消化!? こわっ」
ただし即消化出来るのは肉だけ。他は素材によって消化時間が異なるそうだ。
トレインマンは食われすぐだ。だから消化されたのは肉体だけ。
つまりあそこに落ちているのは、奴の持ち物ってことになる。
「冒険者ギルドのルールでな、正当な理由なくして他の冒険者を殺めてはならないってのがあるんだ」
「正当な理由って、たとえばどんな?」
「自分を殺しに来てる冒険者を返り討ちにするのは、正当な理由として認められる。まぁつまりはだ。こいつはそんな理由もなく、ただ自分が楽しむために同じ冒険者を殺そうとしてたってことだ」
そんな奴はやられても文句を言えないし、やった奴は誰にも責められないから安心しろ。
神父は俺にそう言った。
それから──
「これは戦利品だ。ありがたく貰っとけ」
「……あんた本当に聖職者かよ」
「なぁに言ってんだ。死人には不要なもんだろ? だったら生きてる奴が有効利用してやったほうがいいに決まってるじゃねえか。あ、ほら。二人ともドロップアイテム忘れんなって。いっぱい落ちてんだから」
モンスターを倒すのに必死で、何一つ拾ってない。
魔石や他のアイテムが、そこかしこに散乱したままだ。
「セシリア、大丈夫か?」
「うん。アイエムひおぉう」
セシリアはにっこり笑って落ちている物を拾い始めた。
魔石以外のアイテムもいっぱいある。一個ぐらいレア物がないかなぁ。
しかし……多すぎる。
十二階に下りた時には、セシリアの鞄も俺の背負い袋もほとんど空きがなかった。
「生臭ぁ、これ全部拾っても入れる物がないぞ」
「お嬢ちゃんの外套にでも包んで持って帰るしかねえな。とりあえず集めようや」
「あっ──」
セシリアの弾むような声が聞こえた。
「い……リヴァ、ふくぉあったの」
「フクロウ?」
「いいいぃぃーっ。ふく、ふくろ!」
袋か?
もしかしてトレインマンが持っていた物だろうか。
まぁ冒険者だったら持ってても不思議じゃないよな。
セシリアが持って来たのは、手のひらサイズの巾着だった。
小さい。
「これじゃあ魔石十個も入れられないぞ……」
「よねぇ……」
さっきとは打って変わって、セシリアもがっかりしている。
まぁ……ないよりはマシか。
「おいおい、待てよ。ちょっと見せてみろ」
「なんだよ生臭。こんな巾着なんて珍しくないだろ」
見せろというので神父に手渡すと、えらく真剣な顔して巾着をまじまじと見つめていた。
え……珍しい巾着なのか?
「はっ。お前ら、最高に運がいいなぁ」
「は?」「ぅ?」
神父はニィっと笑みを浮かべ、巾着の口を開いた。そして手にした魔石をじゃらじゃらと入れていく。
足元に集めた魔石も、魔獣の毛皮も、トレインマンが持っていたのだろう武器も──は?
いやいや、いくらなんでも入り過ぎだろ。
「まさかそれ……」
「そう、まさかだ。こいつは空間収納袋だぜ」
見た目に反して物を大量に収納出来る、異空間と繋がった魔法道具《マジックアイテム》だった。
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