35 / 110
18-1
しおりを挟む
「はぁ、なんだよこりゃ。俺様のモンハウが潰れてんじゃねーか!」
まさかの展開に、俺はセシリアの手を引いて通路の奥へと走ってしまった。
直ぐにしまったと思った。どうせなら回れ右して階段の上に行くべきだったと。
今なら間に合う──そう思って振り返った時、男とすれ違った。
「はっ。女連れでダンジョンデートとま、最近のガキはほんっとムカつくぜ!」
「なっ。誰がデートだ──「いば!!」──げっ」
なんて足の速い奴だ。くそっ。
こいつ、トレインマンか。
わざとモンスターを連れ回して、他人にそれを擦り付ける。
まさかそうやってモンハウを階段下に作ったのか!?
「セシリア走れ! 階層のどこかに魔法陣があるはずだ。今ならモンスターも付いてきている。だったら魔法陣まで引っ張って行けば、階段下からは消える」
「ぁ、あい」
「そうすれば階層の魔法陣を使えば階段に移動しても安全なはずだ」
「はいっ」
返事はいつものように元気だが、さっき魔力切れ寸前までいったんだ。
そう長くは走れないだろう。
それは俺も同じだ。
座って少しは回復したが、目頭が今でも少し傷む。
早く魔法陣を見つけなきゃ。
「い、いばっ」
「セシリア、頑張れ!」
彼女の手を掴んで振り返ると、すぐ後ろにモンスターの群れが。
「止まれっ」
「いばっ。いぃ……うぅぅーっ。い、いしっ」
「石? 魔石をどうしようってんだ」
「ちがぁ。石っ。まおう石っ」
魔王? ま……
「魔法……魔法なのか!?」
「そうっ。石、石ちょーあい」
魔法石──名前からすると、何かの魔法が封印されているとかそういうのか?
繋いだ手を解いて巾着を取り出す。
どれだ……どれが魔法石だった?
「セシリア、魔法石どれだ?」
「ここ、ここっ」
横に並んだセシリアが、紫色の石を掴んだ。
「まおぉ、いぅ!」
「魔法? え、魔力切れじゃ!?」
「まおーいし! ────っ!」
たちまち風が巻き起こる。
その風がモンスターを薙ぎ払った。
もしかして消費する魔力をあの石が代用しているのか!?
だけどあの石がどのくらい持つか。
他に魔法石があるかもしれない。
巾着を開くと紫色の石が三粒入っているのが見えた。
「セシリア、魔法石だ」
「ぁ、あい」
もしかすると、俺の一時停止にも効果あるんだろうか?
二つをセシリアに渡して、一つを自分で握る。
彼女の隣に立って一時停止使用。
何かが──体の中に流れてくる感じがした。
これ、魔力の代用じゃなくって、魔力を補充するアイテムかよ。
目頭の傷みが引いた。
やれる!
「セシリア、魔力残量は?」
「まあいいっ」
まぁいい、のかまだいい、のか。
「俺がモンスターの動きを止める。十秒だ。止められるのは十秒。ただし何度か連続で使える」
「はいっ」
まぁ数日とはいえ、一緒にいたのならもう分かってるよな。
「奥の奴は止められない。だけど動かない奴が壁になってこっちまで来れないだろう。お前は魔力消費量の少ない方法で言ってくれっ」
「はいっ」
モンスターが動き出す──一時停止。
「おぉー、なかなか粘るじゃねえか」
「は?」
「ほうら、追加だ」
声がした。後ろからだ。
さっきのトレインマン!?
振り向いた時には奴は直ぐそこに──止めてやる!
「はっ」
「は?」
き、消えた?
なんで──いや、今はそれどころじゃない。
止まれ!
まさかの展開に、俺はセシリアの手を引いて通路の奥へと走ってしまった。
直ぐにしまったと思った。どうせなら回れ右して階段の上に行くべきだったと。
今なら間に合う──そう思って振り返った時、男とすれ違った。
「はっ。女連れでダンジョンデートとま、最近のガキはほんっとムカつくぜ!」
「なっ。誰がデートだ──「いば!!」──げっ」
なんて足の速い奴だ。くそっ。
こいつ、トレインマンか。
わざとモンスターを連れ回して、他人にそれを擦り付ける。
まさかそうやってモンハウを階段下に作ったのか!?
「セシリア走れ! 階層のどこかに魔法陣があるはずだ。今ならモンスターも付いてきている。だったら魔法陣まで引っ張って行けば、階段下からは消える」
「ぁ、あい」
「そうすれば階層の魔法陣を使えば階段に移動しても安全なはずだ」
「はいっ」
返事はいつものように元気だが、さっき魔力切れ寸前までいったんだ。
そう長くは走れないだろう。
それは俺も同じだ。
座って少しは回復したが、目頭が今でも少し傷む。
早く魔法陣を見つけなきゃ。
「い、いばっ」
「セシリア、頑張れ!」
彼女の手を掴んで振り返ると、すぐ後ろにモンスターの群れが。
「止まれっ」
「いばっ。いぃ……うぅぅーっ。い、いしっ」
「石? 魔石をどうしようってんだ」
「ちがぁ。石っ。まおう石っ」
魔王? ま……
「魔法……魔法なのか!?」
「そうっ。石、石ちょーあい」
魔法石──名前からすると、何かの魔法が封印されているとかそういうのか?
繋いだ手を解いて巾着を取り出す。
どれだ……どれが魔法石だった?
「セシリア、魔法石どれだ?」
「ここ、ここっ」
横に並んだセシリアが、紫色の石を掴んだ。
「まおぉ、いぅ!」
「魔法? え、魔力切れじゃ!?」
「まおーいし! ────っ!」
たちまち風が巻き起こる。
その風がモンスターを薙ぎ払った。
もしかして消費する魔力をあの石が代用しているのか!?
だけどあの石がどのくらい持つか。
他に魔法石があるかもしれない。
巾着を開くと紫色の石が三粒入っているのが見えた。
「セシリア、魔法石だ」
「ぁ、あい」
もしかすると、俺の一時停止にも効果あるんだろうか?
二つをセシリアに渡して、一つを自分で握る。
彼女の隣に立って一時停止使用。
何かが──体の中に流れてくる感じがした。
これ、魔力の代用じゃなくって、魔力を補充するアイテムかよ。
目頭の傷みが引いた。
やれる!
「セシリア、魔力残量は?」
「まあいいっ」
まぁいい、のかまだいい、のか。
「俺がモンスターの動きを止める。十秒だ。止められるのは十秒。ただし何度か連続で使える」
「はいっ」
まぁ数日とはいえ、一緒にいたのならもう分かってるよな。
「奥の奴は止められない。だけど動かない奴が壁になってこっちまで来れないだろう。お前は魔力消費量の少ない方法で言ってくれっ」
「はいっ」
モンスターが動き出す──一時停止。
「おぉー、なかなか粘るじゃねえか」
「は?」
「ほうら、追加だ」
声がした。後ろからだ。
さっきのトレインマン!?
振り向いた時には奴は直ぐそこに──止めてやる!
「はっ」
「は?」
き、消えた?
なんで──いや、今はそれどころじゃない。
止まれ!
1
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」
リオール
恋愛
「リリア、お前は要らない子だ」
「リリア、可愛いミリスの為に死んでくれ」
「リリア、お前が死んでも誰も悲しまないさ」
リリア
リリア
リリア
何度も名前を呼ばれた。
何度呼ばれても、けして目が合うことは無かった。
何度話しかけられても、彼らが見つめる視線の先はただ一人。
血の繋がらない、義理の妹ミリス。
父も母も兄も弟も。
誰も彼もが彼女を愛した。
実の娘である、妹である私ではなく。
真っ赤な他人のミリスを。
そして私は彼女の身代わりに死ぬのだ。
何度も何度も何度だって。苦しめられて殺されて。
そして、何度死んでも過去に戻る。繰り返される苦しみ、死の恐怖。私はけしてそこから逃れられない。
だけど、もういい、と思うの。
どうせ繰り返すならば、同じように生きなくて良いと思うの。
どうして貴方達だけ好き勝手生きてるの? どうして幸せになることが許されるの?
そんなこと、許さない。私が許さない。
もう何度目か数える事もしなかった時間の戻りを経て──私はようやく家族に告げる事が出来た。
最初で最後の贈り物。私から贈る、大切な言葉。
「お父様、お母様、兄弟にミリス」
みんなみんな
「死んでください」
どうぞ受け取ってくださいませ。
※ダークシリアス基本に途中明るかったりもします
※他サイトにも掲載してます
本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~
日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。
そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。
ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。
身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。
様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。
何があっても関係ありません!
私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます!
『本物の恋、見つけました』の続編です。
二章から読んでも楽しめるようになっています。
婚約者が継母や妹に陥れられそうになっているので、それを利用して継母たちを陥れることにした
柚木ゆず
恋愛
母フルールの病死による父ドナルドの再婚により、伯爵令嬢アレットは現在継母であるカロル、半分血の繋がらない妹クラリスと共に生活をしていました。
そんなカロルとクラリスはアレットに逆恨みをしていて様々な形で嫌がらせを行い、父ドナルドは二人を溺愛しているため咎めることはありません。それどころかいつもカロル達の味方をして、アレットは理不尽だらけの毎日を過ごしていました。
そしてついにカロル達は、『トドメ』となる悪巧みを計画。アレットの悪事を複数個捏造し、アレットを屋敷から追い出そうとし始めるのですが――。カロル、クラリス、ドナルドも、まだ知りません。
様々な事情により、手出しできずにいたアレットの婚約者オーバン。彼にその行動を利用され、まもなく人生が一変してしまうことを。
※申し訳ございません。タイトルを再変更させていただきました。
動く死体
ozuanna
現代文学
⎯⎯ それはまるで真夜中の火事 ⎯⎯
夏の日、僕の部屋に現れたのは、『加納沙詠の死体』だった。 夏休みのほんの数日、まるで真夜中の火事のように、誰にも気付かれずに燃え尽きたものは何だったのだろう。ただ、彼は覚えている。忘れることはできないから。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~
日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。
もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。
そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。
誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか?
そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる