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「かはぁーっ!?」
「ひぅっ」

 女の声がして、思わず腕を振った。

「あうっ」

 バンっと腕に何かがぶつかる音と感触がして、女が──セシリアが倒れた。

「うぁ。わ、悪いっ。大丈夫かセシリア!?」
「いいぃぃ……ぁい」

 返事はしたが、かなり傷むみたいだ。
 どうやら俺が肘鉄を喰らわせてしまったようで、右頬が赤くなっている。唇も切ったようだ。

「ごめん、ほんとごめん」
「ぁい。ぁ、ぁ……おう、しとぁの?」

 どうしたの……か。
 痛い思いをしたのは自分だろうに。

「ちょっと嫌な夢を見たんだ。ぜ──昔、人に騙されて死にそうになった時のことをな」

 実際には死んでるんだけど。
 
「唇切ってるな。ほっぺたも赤く腫れてきてるし……ゴミポーションを使うか、それとも神父の所にでもい──」

 ふわりと、俺の髪にふれるものがあった。

 撫でられている。
 セシリアが俺の頭を撫でている。

「は、おい、ちょっ」

 子供に撫でられるとか恥ずかしいんですけど!?

「おし、おし」

 そう言ってセシリアは俺の頭を抱き寄せた。
 
 とくん。

 聞こえるのは彼女の鼓動。
 それとも……俺の?

「おしおし」
「いや、それ言うなら『よしよし』だから」
「お……いぃぃ……」

 なんで怒るんだよ。八つ当たりだろ、それ。

 まったく。年下のお子様になでなでされるとか、恥ずかしいったりゃありゃしねえ。
 しかもこいつ……また一段とお胸様の発育が──

 ──隆二、私の胸、気持ちいい?

「うぐっ」
「いぃ、いい?」

 気持ち悪い。

「いーば、いば……」
「悪いセシリア、少し……少し離れてくれ……」

 気持ち悪い……

 女が気持ち悪い。

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