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「なっ、えっ」

 目の前で翼が羽ばたいた。その瞬間、何かが飛んで来て顔に当たる。
 なんだ?
 拭ってみると、それは赤い……血?

 よく見ると、真っ白な翼に赤く染まっている部分がある。
 怪我、しているのだろうか?

 と、そんなことを思っていると、突然女の子が──

「ぶわっ」

 落下した。
 ちょうど両手を差し出していたおかげで、なんとか無事キャッチ。

「お、おい大丈夫か? おいっ」

 見た目は俺より少し幼いぐらいか。苦痛に歪んだ顔は怪我のせいだろう。
 そう思ったら、女の子を抱えた手にぬるりとした感触が伝わった。

「まさかこっちも怪我してんのか!?」

 片手で体を支えてぬるっとした方を見てみると、やっぱり血だ。
 マズい。軽傷じゃ済まないかもしれない。

 ど、どうする。神父の所に連れて行くか?
 いやでも神父からエルフやドワーフの話は聞いたことあっても、羽根の生えた種族の話は聞いたことが無い。
 とするとレアな種族だ。

 このまま町に向かえば、どうしたって人目に付くだろう。
 ロクでもない連中の目に留まれば、何をされるか分かったもんじゃない。

「そうだ。袋の中にゴミポーションが何本かあったな」

 たいした怪我を治せないのは、この三年間で俺自身が身をもって体験しているから分かっている。
 ただ立て続けに使えば、少しは回復するってのも知っている。
 だから狩りに行く時には、これまで拾ったゴミポーションを十本ぐらい持って行くようにしていた。

「今日の分と含めて十三本か」

 まずは傷口の確認だ。
 左の翼と、それに左わき腹に……矢傷か?

「よかった。思ったほど大きな傷じゃねえな。悪いけど服を捲らせて貰うからな」

 と断りを入れても、相手は気絶している。
 すこーしだけ服を捲って、露になった傷口に一本目のゴミポーションを注いだ。
 しゅーっと音がするだけで、傷が塞がっているようには全く見えない。直ぐに二本目、それから三本目も開けてかける。

「やっぱまだ足りないか」

 四、五、六、七……とかけてようやく傷が少しだけ塞がった。
 翼の分も残しておきたかったが無理そうだ。教会の軒下に五十本ぐらい隠してあるから、それも持って来よう。
 残り六本を全部ぶっかけ、万が一を考え彼女を壁際に運ぶ。

「このまま気絶しててくれよぉ」

 聞こえている訳ないだろうけど、そう言って俺は全力で駆けた。

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