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アダム「ごめんね~、負ける気しな~い」

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「二言にごんはありませんね?」




「いいから、とっととかかってこい」







「――では」







 アダムが消えたと認識――と同時に、センは、吹っ飛んだ。

 肉の軋み、その知覚が、かなり後から追いかけてくる。

 電気の音が、骨を砕く音を追い越す。







 ――凶悪な一撃。







 重たさを感じる余裕がないほどの重厚感。

 痛みの先――




(見えなっ――)




 止まらない連撃。

 アダムの動きは、どこまでも華麗で雅みやび。




 流麗な点が、交差する線の中で落雷の煉獄を描く。

 衝撃波は吹雪になった。







 誰の目にもとまらない。

 アダムは、はやすぎる。







「がはっ!!」







 続けての一撃も、見えなかった。




 ただ、吹っ飛ばされた。

 どの方向に飛ばされたのかすらわからない。




 神経が錯綜。

 R‐R間隔がどんどん短くなる。










 ――もし、俺に一撃でもいれる事ができたら――










 ……あっさりと二撃もいれられた。

 対処どころか、視界にとらえることすらできない攻撃を二発。




「くっ」




 吹っ飛ばされている途中――空中で、どうにか停止して、自分の状況を確かめる。

 ようやく気付く。




 後頭部と、脇腹に損傷。

 ダメージでいうと、5%ってところ。

 ――マジかっ?!

 ホンモノの驚愕。




(どうやら、ガチで、アダムの存在値は、異常な領域にあるらしい……素の究極超人化だと、ステ差がありすぎて、何もできねぇ……アダムの速度を認識するには、最低でも究極超神化5は必要……)
















「主上様……」
















 そこで、アダムが、蕩けたような顔で、




「約束……絶対に守っていただきますよ」




 そんな事を言ってくる。

 情欲にまみれた表情で、かるく小指を噛んでいた。

 欲望の化身となり、濡れた目でセンをナメるように見る。







「私の神、私だけの神……私を自由にしてくださった、最強の神……その瞳も、頬も、唇も……すべて……私の……」







 センは、




(自由にしてくださった? ……ああ、サイから奪い返した時のことか)




 心の中で、一度、そうつぶやいてから、










「まだ、俺は、お前のものじゃねぇ。その所有物を見るような目は不快だぜ」










 言いながら、ググっと丹田に力をこめて、




「一撃……だけじゃなく、二撃もくらっちまったな。しゃーねぇ。俺が提示した約束の方は果たしてやるよ」




 輝く龍のようなオーラが、センを包み込んだ。

 死に餓えた鬼のように荒々しい瞳がギラリと光る。




 グゴゴゴっと、地獄を揺らして、気血を充実させる。




「……しかし、お前と交わした不愉快な約束が果たされることはねぇ……」




 センはそう吐き捨てた。




「今から、きちんと、『現実』を教えてやるから、身の程をしりやがれ」




 語気が強くなる。

 眼球に血が走る。




 センの言葉を聞いて、




「……」




 アダムは、わずかにシュンとして見せて、

























「……少し、悲しいです」




 ボソっと、




「私ではダメでしょうか?」

























 その弱気な声を聞いて、センは、ハッキリと、










「前にも言っただろ。俺は、お前に惚れている」










 言われて、アダムの顔がボっと赤くなる。

 ドクンと、体の芯が熱く震える。

 脳味噌が、幸福という痺れで満たされていく。




 視界が歪むほどの幸福。

 頭がおかしくなりそうなほどの快楽。







 悦だけが、魂を包み込んで離さない。

 永遠にして飾りたい時間。







「――だが、俺にもプライドはある……ていうかなぁ……」




 センは、

 スゥウっと息を吸い、




「俺のプライドは、かなりエグい方なんだよ……流石に、シューリには負けるがなぁ」




 センの発言が、アダムの魂を現実に引き戻した。

 聞き逃せない名前――




(シューリ? ……まさか、酒神の事?)




 脳がグルグルとまわった。

 甘い熱が冷たい電撃に変化する。

 全身を豪速で暴れ刺してくる焦燥。

 気付けば、魂が炎上して、轟々と――




(……なぜ、あの程度のカスのことを、それほどまで親しげに……)




 嫉妬の炎を燃やしているアダムを睨みつけたまま、

 センは、




「流石に練武時間が短すぎて、『究極超神化6』をノータイムで使えるまでには至らなかったが……究極超神化5までなら、なんとか、ほぼノータイムでも発動できるようになった……これなら、最前線のタイマンでも使える」




 スゥウっと息を吸い、







「……究極超神化5」







 流石に気合いを入れるだけでは使えないが、五秒もあれば変身できる。

 聖なる覚醒。

 それは、最果てを示す道標。

 センのコアオーラが、解放されて、グワァアっと膨れ上がった。

 栄光の銀河、神の威圧感。

 洪水のようなエネルギー。

 狂気的とも言える煌めき。




 それを見て、アダムは、




「ああ、美しい。流石でございます」




 ほめたたえる。

 そこには嘘はない。

 アダムはセンを愛している。

 いつだって、真剣に、センに憧憬の眼差しを向けている。

 歪んですら見える暴力的な深き愛。

 今も、膨れ上がり続けている熱情。

 センエースという神の輝きに夢中。

 留まりかたを忘れた、敬意と恋慕。

 これまではもちろん、

 これからだってずっと。




 ――が、













「けれど、負ける気がいたしません……もうしわけございません、主上様」
















 ニタっと笑いながら、少しだけ頭をさげた。

 慇懃いんぎんに畏かしこまりて、しかし、嗤わらう。




























 センのボルテージが、また一段階上がった。

 ……アップは終わった。

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