215 / 380
神? ははっ
しおりを挟む
混乱する。
上から命令が下ってくるのは、よくある事ではないにしても、これまでにも何度かあった。
というか、天下は、天上の命を受けて動く実行部隊。
上の命令を受けるのは当たり前の事。
ただ、これまで、十人蒼天が受けてきたのは、高くとも五聖命王からの指令。
大概は(といっても滅多にないが。現世でどんな問題がおきても、基本的には、十人蒼天よりも遥かに下の組織だけでも余裕で解決できる)、九華から発令され、十席が下に持ってくる。
かつて、アンドロメダは、一度だけ、『三至天帝ゾメガからの命』を受けた事がある(その際は、パメラノが下まで降りてきた)が、その時は大騒ぎになった。
ただ、その経験があったものだから、
バロールが直接、命令を伝えにくると聞いた際、
(これは、二度目がきたか……? おそらく、ミシャンド/ラ陛下の……)
と、予測をしていた。
どんな大きな仕事を任されるのだろうとワクワクしていた。
だが、そんな想いはふっとんだ。
「神……帝……?」
アンドロメダは、思わず、ボソっとそう声にだしてしまった。
それを聞いたバロールは、
「私はバカではない。ゆえに、本気でそう思っている訳ではない……が、立場上、聞かねばならない。アンドロメダ……まさか、貴様、今、神帝陛下を呼び捨てにしたのか?」
軽く殺気を放たれて、アンドロメダは、思わず立ち上がり、汗を振りみだしながら、
「あっ、ありえなっ……ありえません!!」
「当たり前だ。愚か者……座れ」
「はっ、失礼いたしましたっ!」
威厳もクソもなく脂汗を流すアンドロメダから視線を外すと、
バロールは、円卓に右手の人指し指を、トンと置いて、
「軽くでいい……まずは、これに目を通せ」
言葉が終わると同時、円卓の上に、膨大な量の『資料』が出現した。
『これはいったい何ですか?』などという愚かな質問をする者はいない。
猊下が『目を通せ』と仰った。
ならば、急いで目を通すだけの話。
アンドロメダたちは、それぞれ、まだ心の整理がついていないものの、しっかりと命令には従う。
他の者達は、心の中で、
(神帝陛下って……確か、三至天帝陛下を全て合わせた時の別名じゃったっけ?)
(神帝陛下のう……おそらく、『ゼノリカ天上の総意』……という意味じゃろうな)
(ふふ……神帝陛下か。昔、聖典で読んだな……確か、死後、神の世界で『神の神』になった御方じゃったっけ……ははっ)
彼らにとっての最高権威は三至天帝であり、それより『上』はない。
神はおとぎ話。
あくまでも、空想上のヒーロー。
ゆえに、アンドロメダとアクエリアス以外の全員は、神帝陛下について、
勝手に『こういうことだろう』とテキトーな結論をつけてスルーしたのだ。
みな、凄まじい速度で資料を読みこんでいく。
パララララララっと、冗談のような速度で資料をめくりながら、
眼球を全速ではしらせて、情報を頭の中に叩きこんでいく。
十秒ほど目を通してから、アクエリアスが、
「これは、どこかの……中級世界エックスの資料でしょうか?」
と、質問を投げかけた。
「そうであるともいえるし、そうでないとも言える」
「それは、いったい――」
「貴様らが気にする事ではない」
「我々ごときでは、知る権利がない……ということで?」
「違うな。権利がないというより、意味がない」
「……了解いたしました」
そこで、バロールは、全員の顔を見渡して、
「最低限は頭に入ったようだな……では、神帝陛下の命を伝える」
言葉を待っているアンドロメダたち。
「……」
「……」
なかなか切りださないバロール。
妙な空白時間を前にして、何人かが、首をかしげた。
直後、アンドロメダがハっとして、
「し、神前の礼を尽くせ」
慌てて立ちあがり、全員に命令を下す。
と、同時に、皆も、「ぁあ……っ」という顔になり、慌てて席から立ち上がる。
神帝陛下の命を受ける時の礼節……もちろん、頭には入っているが、しかし、そんな経験は今まで一度もなかったし、そんな『いもしない存在から命令がくる』などとは夢にも思っていなかったので、とっさには気付かなかった。
これまでは、神帝陛下の命を受ける時の礼節は、『ゼノリカに属する者として、知っておかなければならない』というマナーの一つでしかなかったのだ
皆、その場で両膝をつき、
『神の言葉を聞ける』という事に対する賛辞を述べて、いっせいに頭を地につけた。
「仕方がないとはいえ……たるみすぎだ」
バロールが、ボソっと苦言を呈した。
(こっちだって、厄介なのが上司について、色々と大変なんだから、細かいところでイライラさせるな、まったく……)
心の中で愚痴をはく……
が、すぐに、気持ちを切り替えて、
「これより、貴様らには――」
上から命令が下ってくるのは、よくある事ではないにしても、これまでにも何度かあった。
というか、天下は、天上の命を受けて動く実行部隊。
上の命令を受けるのは当たり前の事。
ただ、これまで、十人蒼天が受けてきたのは、高くとも五聖命王からの指令。
大概は(といっても滅多にないが。現世でどんな問題がおきても、基本的には、十人蒼天よりも遥かに下の組織だけでも余裕で解決できる)、九華から発令され、十席が下に持ってくる。
かつて、アンドロメダは、一度だけ、『三至天帝ゾメガからの命』を受けた事がある(その際は、パメラノが下まで降りてきた)が、その時は大騒ぎになった。
ただ、その経験があったものだから、
バロールが直接、命令を伝えにくると聞いた際、
(これは、二度目がきたか……? おそらく、ミシャンド/ラ陛下の……)
と、予測をしていた。
どんな大きな仕事を任されるのだろうとワクワクしていた。
だが、そんな想いはふっとんだ。
「神……帝……?」
アンドロメダは、思わず、ボソっとそう声にだしてしまった。
それを聞いたバロールは、
「私はバカではない。ゆえに、本気でそう思っている訳ではない……が、立場上、聞かねばならない。アンドロメダ……まさか、貴様、今、神帝陛下を呼び捨てにしたのか?」
軽く殺気を放たれて、アンドロメダは、思わず立ち上がり、汗を振りみだしながら、
「あっ、ありえなっ……ありえません!!」
「当たり前だ。愚か者……座れ」
「はっ、失礼いたしましたっ!」
威厳もクソもなく脂汗を流すアンドロメダから視線を外すと、
バロールは、円卓に右手の人指し指を、トンと置いて、
「軽くでいい……まずは、これに目を通せ」
言葉が終わると同時、円卓の上に、膨大な量の『資料』が出現した。
『これはいったい何ですか?』などという愚かな質問をする者はいない。
猊下が『目を通せ』と仰った。
ならば、急いで目を通すだけの話。
アンドロメダたちは、それぞれ、まだ心の整理がついていないものの、しっかりと命令には従う。
他の者達は、心の中で、
(神帝陛下って……確か、三至天帝陛下を全て合わせた時の別名じゃったっけ?)
(神帝陛下のう……おそらく、『ゼノリカ天上の総意』……という意味じゃろうな)
(ふふ……神帝陛下か。昔、聖典で読んだな……確か、死後、神の世界で『神の神』になった御方じゃったっけ……ははっ)
彼らにとっての最高権威は三至天帝であり、それより『上』はない。
神はおとぎ話。
あくまでも、空想上のヒーロー。
ゆえに、アンドロメダとアクエリアス以外の全員は、神帝陛下について、
勝手に『こういうことだろう』とテキトーな結論をつけてスルーしたのだ。
みな、凄まじい速度で資料を読みこんでいく。
パララララララっと、冗談のような速度で資料をめくりながら、
眼球を全速ではしらせて、情報を頭の中に叩きこんでいく。
十秒ほど目を通してから、アクエリアスが、
「これは、どこかの……中級世界エックスの資料でしょうか?」
と、質問を投げかけた。
「そうであるともいえるし、そうでないとも言える」
「それは、いったい――」
「貴様らが気にする事ではない」
「我々ごときでは、知る権利がない……ということで?」
「違うな。権利がないというより、意味がない」
「……了解いたしました」
そこで、バロールは、全員の顔を見渡して、
「最低限は頭に入ったようだな……では、神帝陛下の命を伝える」
言葉を待っているアンドロメダたち。
「……」
「……」
なかなか切りださないバロール。
妙な空白時間を前にして、何人かが、首をかしげた。
直後、アンドロメダがハっとして、
「し、神前の礼を尽くせ」
慌てて立ちあがり、全員に命令を下す。
と、同時に、皆も、「ぁあ……っ」という顔になり、慌てて席から立ち上がる。
神帝陛下の命を受ける時の礼節……もちろん、頭には入っているが、しかし、そんな経験は今まで一度もなかったし、そんな『いもしない存在から命令がくる』などとは夢にも思っていなかったので、とっさには気付かなかった。
これまでは、神帝陛下の命を受ける時の礼節は、『ゼノリカに属する者として、知っておかなければならない』というマナーの一つでしかなかったのだ
皆、その場で両膝をつき、
『神の言葉を聞ける』という事に対する賛辞を述べて、いっせいに頭を地につけた。
「仕方がないとはいえ……たるみすぎだ」
バロールが、ボソっと苦言を呈した。
(こっちだって、厄介なのが上司について、色々と大変なんだから、細かいところでイライラさせるな、まったく……)
心の中で愚痴をはく……
が、すぐに、気持ちを切り替えて、
「これより、貴様らには――」
0
お気に入りに追加
1,558
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移パパは不眠症王子の抱き枕と化す~愛する息子のために底辺脱出を望みます!~
北川晶
BL
目つき最悪不眠症王子×息子溺愛パパ医者の、じれキュン異世界BL。本編と、パパの息子である小枝が主役の第二章も完結。姉の子を引き取りパパになった大樹は穴に落ち、息子の小枝が前世で過ごした異世界に転移した。戸惑いながらも、医者の知識と自身の麻酔効果スキル『スリーパー』小枝の清浄化スキル『クリーン』で人助けをするが。ひょんなことから奴隷堕ちしてしまう。医師奴隷として戦場の最前線に送られる大樹と小枝。そこで傷病人を治療しまくっていたが、第二王子ディオンの治療もすることに。だが重度の不眠症だった王子はスリーパーを欲しがり、大樹を所有奴隷にする。大きな身分差の中でふたりは徐々に距離を縮めていくが…。異世界履修済み息子とパパが底辺から抜け出すために頑張ります。大樹は奴隷の身から脱出できるのか? そしてディオンはニコイチ親子を攻略できるのか?
【R-18】記憶喪失な新妻は国王陛下の寵愛を乞う【挿絵付】
臣桜
恋愛
ウィドリントン王国の姫モニカは、隣国ヴィンセントの王子であり幼馴染みのクライヴに輿入れする途中、謎の刺客により襲われてしまった。一命は取り留めたものの、モニカはクライヴを愛した記憶のみ忘れてしまった。モニカと侍女はヴィンセントに無事受け入れられたが、クライヴの父の余命が心配なため急いで結婚式を挙げる事となる。記憶がないままモニカの新婚生活が始まり、彼女の不安を取り除こうとクライヴも優しく接する。だがある事がきっかけでモニカは頭痛を訴えるようになり、封じられていた記憶は襲撃者の正体を握っていた。
※全体的にふんわりしたお話です。
※ムーンライトノベルズさまにも投稿しています。
※表紙はニジジャーニーで生成しました
※挿絵は自作ですが、後日削除します
【R18】転生エルフ姫は魔王に溺愛される
雪月華
恋愛
ムーンライトノベルズにも掲載、アルファポリスでは、序盤から新たにエピソード複数を追加。プロローグから大幅に加筆修正して甘味成分を増量中(辛味成分はカット)。……勇者が魔王を滅ぼした後の世界に、エルフの少女として転生した渚。妖精の森で出会った魔族の王カインに連れ去られ、結婚させられてしまう。未熟な二人が少しずつ成長して、ドロドロに溶けていくような性愛の世界へ。剣と魔法の世界観だけど、カインと渚のふたりの愛の物語が主軸です。(3話に一度位の頻度でR18あり)
過去と未来を行き来し、甘く切なく愛し合う二人。女性向けファンタジー官能小説。
ゲロトラップダンジョン-女騎士は適量とペースを守って酒なんかに負けたりはしない!-
春海水亭
ファンタジー
女騎士ノミホ・ディモ・ジュースノーム(20)は王命を受け、ダンジョンの攻略に挑む。
だが、ノミホの屈強なる精神力を見込まれて赴いた先は、
すえた吐瀉物と濃いアルコールの臭いが立ち込めるゲロトラップダンジョンであった。
ノミホは先人が残した嘔吐マッピング機能を利用して、ゲロトラップダンジョンの攻略を開始する。
【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~
大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア
8さいの時、急に現れた義母に義姉。
あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。
侯爵家の娘なのに、使用人扱い。
お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。
義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする……
このままじゃ先の人生詰んでる。
私には
前世では25歳まで生きてた記憶がある!
義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから!
義母達にスカッとざまぁしたり
冒険の旅に出たり
主人公が妖精の愛し子だったり。
竜王の番だったり。
色々な無自覚チート能力発揮します。
竜王様との溺愛は後半第二章からになります。
※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。
※後半イチャイチャ多めです♡
※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。
【猫画像あり】島猫たちのエピソード
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
【保護猫リンネの物語】連載中! 2024.4.15~
シャーパン猫の子育てと御世話の日々を、画像を添えて綴っています。
2024年4月15日午前4時。
1匹の老猫が、その命を終えました。
5匹の仔猫が、新たに生を受けました。
同じ時刻に死を迎えた老猫と、生を受けた仔猫。
島猫たちのエピソード、保護猫リンネと子供たちのお話をどうぞ。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
【完】大きな俺は小さな彼に今宵もアブノーマルに抱かれる
唯月漣
BL
「は? なんで俺、縛られてんの!?」
ゲイである事をカミングアウトの末、ようやく両想いになったと思っていた幼馴染みユウキの、突然の結婚の知らせ。
翔李は深く傷付き、深夜の繁華街でやけ酒の挙げ句、道路端で酔い潰れてしまう。
目が覚めると、翔李は何者かに見知らぬ家のバスルームで拘束されていた。翔李に向かってにっこり微笑むその小柄な彼……由岐は、天使のような可愛い外見をしていた。
「僕とセフレになってくれませんか。じゃないと僕、今すぐ翔李さんを犯してしまいそうです」
初めての恋人兼親友だった男から受けた裏切りと悲しみ。それを誤魔化すため由岐に会ううち、やがて翔李は由岐とのアブノーマルプレイの深みにハマっていく。
「お尻だけじゃないですよ。僕は可愛い翔李さんの、穴という穴全てを犯したい」
ただのセフレであるはずの由岐に予想外に大切にされ、いつしか翔李の心と体はとろけていく。
そんなおり、翔李を裏切って女性と結婚したはずの親友ユウキから、会いたいと連絡があって……!?
◇◆◇◆◇◆
☆可愛い小柄な少年✕がたいは良いけどお人好しな青年。
※由岐(攻め)視点という表記が無い話は、全て翔李(受け)視点です。
★*印=エロあり。
石鹸ぬるぬるプレイ、剃毛、おもらし(小)、攻めのフェラ、拘束(手錠、口枷、首輪、目隠し)、異物挿入(食べ物)、玩具(ローター、テンガ、アナルビーズ)、イキ焦らし、ローションガーゼ、尿道攻め(ブジー)、前立腺開発(エネマグラ)、潮吹き、処女、無理矢理、喉奥、乳首責め、陵辱、少々の痛みを伴うプレイ、中出し、中イキ、自慰強制及び視姦、連続イカセ、乳首攻め(乳首イキ、吸引、ローター)他。
※アブノーマルプレイ中心です。地雷の多い方、しつこいエッチが苦手な方、変わったプレイがお嫌な方はご注意ください。
【本編完結済】今後は時々、番外編を投下します。
※ムーンライトノベルズにも掲載。
表紙イラスト●an様
ロゴデザイン●南田此仁様
【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー
光城 朱純
ファンタジー
空から落ちてる最中の私を助けてくれたのは、超美形の男の人。
誰もいない草原で、私を拾ってくれたのは破壊力抜群のイケメン男子。
私の目の前に現れたのは、サラ艶髪の美しい王子顔。
えぇ?! 私、仙人になれるの?!
異世界に飛んできたはずなのに、何やれば良いかわかんないし、案内する神様も出てこないし。
それなら、仙人になりまーす。
だって、その方が楽しそうじゃない?
辛いことだって、楽しいことが待ってると思えば、何だって乗り越えられるよ。
ケセラセラだ。
私を救ってくれた仙人様は、何だか色々抱えてそうだけど。
まぁ、何とかなるよ。
貴方のこと、忘れたりしないから
一緒に、生きていこう。
表紙はAIによる作成です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる