80 / 380
パーティ結成
しおりを挟む
「はっ。なんだ、プライドだけは一丁前だな。龍の威を借りているだけの小娘が、カッコ良く謳うたうじゃねぇか。くく……まあ、いいさ。冒険者になるまで限定だが……『金』の価値は、事実、重い」
そこで、ハルスは、セイラに目配せをする。
セイラは、しっかりと空気を読んで、ハルスの膝から降りると、
綺麗に直立してから、スっと腰を曲げて、
「私達を雇ってください、おねがいします」
「どうだ、御望み通りの殊勝な態度だぜ。心よく雇ってやれよ」
「さっき利かせたドスは、あんたに向けたもんなんやけど」
「俺は、こいつの剣だ。お前は、いちいち、所持品にも挨拶させんのか? 変わってんな。じゃあ、まずは、セイラが着ている、この汚ぇ服から挨拶させるから、ちょっと待ってくれや。おい、セイラなんかに着られている可哀そうな服。こちらのお嬢様が、挨拶を御望みだ。頭を下げろ。――おいおい、反抗的な態度じゃねぇか。頭が高ぇぞ。こちらのお嬢様を、どなたと心得る」
「……もうええわ」
シグレは、渋い顔で折れて、
「……あんた、性格、悪いな」
「不思議な事に、よく言われんだよ。なんでだろうな。俺は、こんなにも素敵なお兄さんだってのに」
(なぁ、ニー……あたし、この男を雇うん、イヤになってきたんやけど)
(無理強いはしないよ。ニーは、いつだって、シグレの自由を尊重する。けど、冒険者試験に合格する確率を少しでも高めたいなら、この人の力はあった方がいい)
(なあ、ニー……こいつ、ほんまに、『世界最強の勇者』なん?)
(うん、間違いないよ。ご主人の呪いをくらっているから、魔人になっているけど、能力はほとんど変わっていない。彼は、間違いなく、この世界で最強の人間。もし、『チーム力』の高さによって合否が決まる試験だった場合、この男がいるだけで合格できるレベルだよ。そうじゃなくても、手伝ってくれるなら、色々と役にたつ。逆に、敵にまわすとかなり鬱陶しいよ。この男は、頭も力も世界最高峰という万能の天才だから)
(うーん……うーん……)
ニーと念話でおしゃべりしてから、
「はぁ」
と、一度ため息をついて、
「報酬は、ここでの支払い含めて、金貨20枚でどうや?」
「くはは……凄まじく安い買い物じゃねぇか。この俺を金貨20枚ぽっちで動かそうなんざ、昨日までなら、神でも出来なかった暴挙だぜ。――が、いいさ……冒険者試験が終わるまでの生活費と考えれば充分な額……冒険者になっちまえば、以降はほとんど金なんざいらねぇし、必要になったとしても、いくらでも稼げる。ちなみに、報酬は前金で頼むぜ。これだけは流石に譲れねぇ」
「ええよ。ただし、アリア・ギアスをかけてな」
ハルスは、当然だとでも言いたげに軽く首肯すると、右手をシグレの方に差し出して、
「――契約する。可能な限り、冒険者試験で手を貸す。俺も合格するつもりで受けるから、もし、『俺とお前、どちらかしか受からない』という状況になったら、その時は自分を優先させてもらうが、『努力さえすれば、どちらも受かる』という状況下でなら、必ず全力でサポートすると誓う。異存がなければ了承を」
シグレは、ハルスの右手に、自分の右手を重ねて、
「――冒険者試験で、助けてもらう。条件はのむ。代わりに、金貨20枚を支払う。ここに契約は結ばれた」
キィンっと音がして、二人の両手が、質量のない不可視の鎖で繋がれた。
別に離れられない訳ではなく、ただの『契約が交わされた』という証。
この世界の指きりゲンマン。
契約のアリア・ギアス。
破る事のできない約束。
ただし、抜け道はいくつかあるので、国家間同士での約束などで、契約のアリア・ギアスが用いられる事はない
たとえば、今交わされた約束くらいならば、存在値20を超えている魂を十人分ほど生贄にすれば解除する事ができる。
金貨で言えば、ハルスが、金貨200枚ほど用意すれば、この契約を解除する事も可能。
わざわざ、その手間をかけるくらいなら、冒険者試験で手を貸した方がマシだし、ハルス自身が、シグレの手を借りなければいけない可能性だってある。
そういう意味で、この契約が破られる事はないと断言できる。
「ちなみに、お前、召喚できるのは、そのスライムだけか?」
「え? ぁあ……うん、そうやで」
「あきらか嘘つきやがったな。まあ、いいけどな。切り札を隠すのは当然だ。しかし、黙っている以上、俺は、常に、『今のお前』を想定して動く。仮に、『お前がもっと優れた召喚士』で、俺と『本気のお前』が全力を出せばどうにかなるかもしれないという場面に遭遇したとしよう。その際、『今のお前』と俺では『突破できない』と判断できたら、俺はお前を見捨てる。それは契約の範囲内だ。いいな」
「ええよ。それが筋ってもんや」
そこで、ハルスは、セイラに目配せをする。
セイラは、しっかりと空気を読んで、ハルスの膝から降りると、
綺麗に直立してから、スっと腰を曲げて、
「私達を雇ってください、おねがいします」
「どうだ、御望み通りの殊勝な態度だぜ。心よく雇ってやれよ」
「さっき利かせたドスは、あんたに向けたもんなんやけど」
「俺は、こいつの剣だ。お前は、いちいち、所持品にも挨拶させんのか? 変わってんな。じゃあ、まずは、セイラが着ている、この汚ぇ服から挨拶させるから、ちょっと待ってくれや。おい、セイラなんかに着られている可哀そうな服。こちらのお嬢様が、挨拶を御望みだ。頭を下げろ。――おいおい、反抗的な態度じゃねぇか。頭が高ぇぞ。こちらのお嬢様を、どなたと心得る」
「……もうええわ」
シグレは、渋い顔で折れて、
「……あんた、性格、悪いな」
「不思議な事に、よく言われんだよ。なんでだろうな。俺は、こんなにも素敵なお兄さんだってのに」
(なぁ、ニー……あたし、この男を雇うん、イヤになってきたんやけど)
(無理強いはしないよ。ニーは、いつだって、シグレの自由を尊重する。けど、冒険者試験に合格する確率を少しでも高めたいなら、この人の力はあった方がいい)
(なあ、ニー……こいつ、ほんまに、『世界最強の勇者』なん?)
(うん、間違いないよ。ご主人の呪いをくらっているから、魔人になっているけど、能力はほとんど変わっていない。彼は、間違いなく、この世界で最強の人間。もし、『チーム力』の高さによって合否が決まる試験だった場合、この男がいるだけで合格できるレベルだよ。そうじゃなくても、手伝ってくれるなら、色々と役にたつ。逆に、敵にまわすとかなり鬱陶しいよ。この男は、頭も力も世界最高峰という万能の天才だから)
(うーん……うーん……)
ニーと念話でおしゃべりしてから、
「はぁ」
と、一度ため息をついて、
「報酬は、ここでの支払い含めて、金貨20枚でどうや?」
「くはは……凄まじく安い買い物じゃねぇか。この俺を金貨20枚ぽっちで動かそうなんざ、昨日までなら、神でも出来なかった暴挙だぜ。――が、いいさ……冒険者試験が終わるまでの生活費と考えれば充分な額……冒険者になっちまえば、以降はほとんど金なんざいらねぇし、必要になったとしても、いくらでも稼げる。ちなみに、報酬は前金で頼むぜ。これだけは流石に譲れねぇ」
「ええよ。ただし、アリア・ギアスをかけてな」
ハルスは、当然だとでも言いたげに軽く首肯すると、右手をシグレの方に差し出して、
「――契約する。可能な限り、冒険者試験で手を貸す。俺も合格するつもりで受けるから、もし、『俺とお前、どちらかしか受からない』という状況になったら、その時は自分を優先させてもらうが、『努力さえすれば、どちらも受かる』という状況下でなら、必ず全力でサポートすると誓う。異存がなければ了承を」
シグレは、ハルスの右手に、自分の右手を重ねて、
「――冒険者試験で、助けてもらう。条件はのむ。代わりに、金貨20枚を支払う。ここに契約は結ばれた」
キィンっと音がして、二人の両手が、質量のない不可視の鎖で繋がれた。
別に離れられない訳ではなく、ただの『契約が交わされた』という証。
この世界の指きりゲンマン。
契約のアリア・ギアス。
破る事のできない約束。
ただし、抜け道はいくつかあるので、国家間同士での約束などで、契約のアリア・ギアスが用いられる事はない
たとえば、今交わされた約束くらいならば、存在値20を超えている魂を十人分ほど生贄にすれば解除する事ができる。
金貨で言えば、ハルスが、金貨200枚ほど用意すれば、この契約を解除する事も可能。
わざわざ、その手間をかけるくらいなら、冒険者試験で手を貸した方がマシだし、ハルス自身が、シグレの手を借りなければいけない可能性だってある。
そういう意味で、この契約が破られる事はないと断言できる。
「ちなみに、お前、召喚できるのは、そのスライムだけか?」
「え? ぁあ……うん、そうやで」
「あきらか嘘つきやがったな。まあ、いいけどな。切り札を隠すのは当然だ。しかし、黙っている以上、俺は、常に、『今のお前』を想定して動く。仮に、『お前がもっと優れた召喚士』で、俺と『本気のお前』が全力を出せばどうにかなるかもしれないという場面に遭遇したとしよう。その際、『今のお前』と俺では『突破できない』と判断できたら、俺はお前を見捨てる。それは契約の範囲内だ。いいな」
「ええよ。それが筋ってもんや」
0
お気に入りに追加
1,559
あなたにおすすめの小説
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ
ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた
いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう
その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った
だけど仲間に裏切られてしまった
生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい
そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる