77 / 380
破格の召喚士シグレ
しおりを挟む
「ほな、改めて自己紹介しよか。あたしは、シグレ。見ての通り、召喚士や」
シグレは、そう言いながら、ハルスの向かいの席に腰をかけて、腕の中にいるニーをギュっと抱きしめる。
「召喚士……ねぇ」
ハルスは、その単語に耳をピクっとさせた。
逆なでされる響き。
反射的に、心拍数が高まったが、すぐに自分を律して鼓動を落ちつかせる。
「テイマーじゃねぇのか?」
「この子は捕獲したノラやなくて、ちゃんと契約した召喚獣やで。ウチんとこのニーをそこらのスライムと一緒に考えんといてや? 格とかケタとか色々ちゃうから。なんせ、存在値89億のスラ神やからな」
(……おいおい、だいぶキマってんな。もしかして、どえらいジャンキーに絡まれたパターンのやつか、これ)
心の中で呟きながら、ハルスは、サードアイを使って、シグレが抱えているスライムを覗き見る。
(……何の力も感じねぇ。やはり、この女、陽気にラリったヤバいヤツか……この時期、多いとは聞くが……さて、どうしたもんか……流石の俺様も、飛んでるヤツは相手にできねぇ)
どうやって逃げようかと、また、思考が振り出しに戻ったその時、
シグレの手の中にいるスライムが、スルっと目を合わせきて、ニコっと微笑んだ。
(ん? …………なっ?!)
突如、そのスライムから、強大なオーラが噴出しだした。
「……ぅ……っっ!!」
ハルスの額に汗が出る。
とてもスライムとは思えない、膨大な波動。
決して禍々しくはないが、その深い圧力に押されて脂汗が滲んだ。
(フェイクオーラを使っていやがったか。生意気な――てか、こいつ、強ぇ! もちろん、カースソルジャーとくらべればクソだが、あのイカれた例外を除けば、このスライムの強さは、召喚獣としては破格中の破格……)
世界一の召喚士であるラムドが召喚するバケモノ共は、『例外なく例外』なのだ。
『実際のラムド』が召喚した『最強の召喚獣』の存在値は驚愕の『60』。
それは、ほとんどありえない数字。
もちろん、魔王や勇者など、存在値60を超える者はいるのだが、
召喚獣というくくりでその数字は異常。
この世界で召喚される召喚獣の平均存在値は、20を切っている。
召喚出来る召喚獣の存在値が15を超えていれば及第点、25以上を使役できれば達人と呼ばれ、30を超えていれば歴史に名を残せる。
――ちなみに、『本物のラムド』が本契約を交わしている召喚獣は全部で7体いるのだが、すべて、存在値30を超えており、内2体は50を超えている。
召喚獣とは、契約さえ交わしてしまえば、いつでもどこでも、多少の魔力を消費するだけで召喚出来て、おまけに絶対服従で維持費もかからないという便利な味方。
その使い勝手のよさは圧倒的だが、当然、強大な魔を召喚するのは凄まじく難しい。
だからこそ、『最高位の召喚獣をアホみたいにポンポン召喚できるラムド』は、各国の上層部から『最大級の脅威』として警戒されているのだ。
(このスライムの力は……サーバンと同等……いや、流石に、サーバンよりは少し弱いか……しかし、ほとんど差はない。仮にサーバンの存在値を10とした場合、このスライムの存在値は9・5ってところか……はっ……)
ハルスはそこで、キっと、シグレを睨みつける。
(ハンパねぇモンを使役してんじゃねぇか……)
サーバンの強さは、冒険者の中でも、上から数えた方が早いレベル。
そのサーバンに限りなく近い力を持った召喚獣など、ラムドでも数体しか使役していない。
(スライムの姿は擬態だろうな。……おそらく、本来の姿は、龍か鬼……まあ、となれば、擬態してねぇと色々めんどうだわな)
龍を連れて街に入る訳にはいかない。
セファイル王国の場合、『龍を連れての入国が法律違反になる』という訳ではないが、それは、『そんな当たり前の事まで明文化されてはいない』というだけで、『国内で龍を連れまわしても問題にならない』という訳では決してない。
※ もちろん、セファイルの法律の中には、『国の許可なく高位の魔物を』を国内に入れてはならないというのもあるのだが、龍や召喚獣を、『魔物』とひとくくりにするべきなのかという問題が生じるため、まっこうからの法律違反になるかと言えば否となる。
(だが、スライムの姿なら、その手の面倒事は全てなくなる)
テイマーは便利な中級職なので、修めている者は多い。
そして、テイマーの大半が、スライムを手懐けている。
スライムは攻撃手段が皆無に等しく、魔法に弱い上、状態異常もかかりやすいが、HPが多く、物理攻撃に対して高い耐性を持っているため、戦士相手の盾としてはそれなりに使えるモンスター。
何よりも、捕獲しやすく、どこにでもいる。
(存在値89億ってのは、ちょっと何言っているのか分からねぇが……確かに、このスライム、そこらのモンスターとは格とケタが違う)
シグレは、そう言いながら、ハルスの向かいの席に腰をかけて、腕の中にいるニーをギュっと抱きしめる。
「召喚士……ねぇ」
ハルスは、その単語に耳をピクっとさせた。
逆なでされる響き。
反射的に、心拍数が高まったが、すぐに自分を律して鼓動を落ちつかせる。
「テイマーじゃねぇのか?」
「この子は捕獲したノラやなくて、ちゃんと契約した召喚獣やで。ウチんとこのニーをそこらのスライムと一緒に考えんといてや? 格とかケタとか色々ちゃうから。なんせ、存在値89億のスラ神やからな」
(……おいおい、だいぶキマってんな。もしかして、どえらいジャンキーに絡まれたパターンのやつか、これ)
心の中で呟きながら、ハルスは、サードアイを使って、シグレが抱えているスライムを覗き見る。
(……何の力も感じねぇ。やはり、この女、陽気にラリったヤバいヤツか……この時期、多いとは聞くが……さて、どうしたもんか……流石の俺様も、飛んでるヤツは相手にできねぇ)
どうやって逃げようかと、また、思考が振り出しに戻ったその時、
シグレの手の中にいるスライムが、スルっと目を合わせきて、ニコっと微笑んだ。
(ん? …………なっ?!)
突如、そのスライムから、強大なオーラが噴出しだした。
「……ぅ……っっ!!」
ハルスの額に汗が出る。
とてもスライムとは思えない、膨大な波動。
決して禍々しくはないが、その深い圧力に押されて脂汗が滲んだ。
(フェイクオーラを使っていやがったか。生意気な――てか、こいつ、強ぇ! もちろん、カースソルジャーとくらべればクソだが、あのイカれた例外を除けば、このスライムの強さは、召喚獣としては破格中の破格……)
世界一の召喚士であるラムドが召喚するバケモノ共は、『例外なく例外』なのだ。
『実際のラムド』が召喚した『最強の召喚獣』の存在値は驚愕の『60』。
それは、ほとんどありえない数字。
もちろん、魔王や勇者など、存在値60を超える者はいるのだが、
召喚獣というくくりでその数字は異常。
この世界で召喚される召喚獣の平均存在値は、20を切っている。
召喚出来る召喚獣の存在値が15を超えていれば及第点、25以上を使役できれば達人と呼ばれ、30を超えていれば歴史に名を残せる。
――ちなみに、『本物のラムド』が本契約を交わしている召喚獣は全部で7体いるのだが、すべて、存在値30を超えており、内2体は50を超えている。
召喚獣とは、契約さえ交わしてしまえば、いつでもどこでも、多少の魔力を消費するだけで召喚出来て、おまけに絶対服従で維持費もかからないという便利な味方。
その使い勝手のよさは圧倒的だが、当然、強大な魔を召喚するのは凄まじく難しい。
だからこそ、『最高位の召喚獣をアホみたいにポンポン召喚できるラムド』は、各国の上層部から『最大級の脅威』として警戒されているのだ。
(このスライムの力は……サーバンと同等……いや、流石に、サーバンよりは少し弱いか……しかし、ほとんど差はない。仮にサーバンの存在値を10とした場合、このスライムの存在値は9・5ってところか……はっ……)
ハルスはそこで、キっと、シグレを睨みつける。
(ハンパねぇモンを使役してんじゃねぇか……)
サーバンの強さは、冒険者の中でも、上から数えた方が早いレベル。
そのサーバンに限りなく近い力を持った召喚獣など、ラムドでも数体しか使役していない。
(スライムの姿は擬態だろうな。……おそらく、本来の姿は、龍か鬼……まあ、となれば、擬態してねぇと色々めんどうだわな)
龍を連れて街に入る訳にはいかない。
セファイル王国の場合、『龍を連れての入国が法律違反になる』という訳ではないが、それは、『そんな当たり前の事まで明文化されてはいない』というだけで、『国内で龍を連れまわしても問題にならない』という訳では決してない。
※ もちろん、セファイルの法律の中には、『国の許可なく高位の魔物を』を国内に入れてはならないというのもあるのだが、龍や召喚獣を、『魔物』とひとくくりにするべきなのかという問題が生じるため、まっこうからの法律違反になるかと言えば否となる。
(だが、スライムの姿なら、その手の面倒事は全てなくなる)
テイマーは便利な中級職なので、修めている者は多い。
そして、テイマーの大半が、スライムを手懐けている。
スライムは攻撃手段が皆無に等しく、魔法に弱い上、状態異常もかかりやすいが、HPが多く、物理攻撃に対して高い耐性を持っているため、戦士相手の盾としてはそれなりに使えるモンスター。
何よりも、捕獲しやすく、どこにでもいる。
(存在値89億ってのは、ちょっと何言っているのか分からねぇが……確かに、このスライム、そこらのモンスターとは格とケタが違う)
0
お気に入りに追加
1,559
あなたにおすすめの小説
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました
うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。
そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。
魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。
その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。
魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。
手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。
いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる