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二人旅
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「ぁ……あの……」
サーバンの姿が見えなくなってから、セイラが、
「ぁたし……わたしぃ……」
ボロボロと泣きながら、ハルスの腰にしがみついてきて、
「ぁりがとう……ありがっ……た、助けてくれて……ありがとぉ……っ」
「脳がねぇのか、この生物は」
「誰も……今まで……」
「あん?」
「誰も助けてくれなかった……たすけてって……たくさん、さけんだのに……おねえちゃんを……わたしを……だれも……わたし、わたし……」
「言いたい事があるなら、最低限、まとめて喋れ。お前はアレか? 俺を怒らせる選手権、決勝出場者か? 今大会における仕上がり具合についてインタビューできるほど、今の俺に余裕はねぇぞ」
「ありがとう……うぁあああ……あり、がっ……うあぁあああ」
自分にしがみついて、ワンワンと泣き出したセイラを見下ろして、
ハルスは、天を仰ぎ、右手で顔を隠し、
「……ドン引きだぜぇ。これから、この莫大な負債を抱えて生きていくのか……あまりの途方のなさに、目眩がとまらねぇ」
「ありっ、がと……うわぁあああああああ―――――っ」
やかましいセイラの口を、強引に手でふさぐ。
右手でセイラの後頭部を掴み、左手で、しっかりと口を閉じ込める。
「お前が、俺の殺意を稼ぐ天才だってのは、もう充分わかったら、流石に、もう黙れ」
「――むっ――ぅ」
「今後、お前を守ってやる。共に生き、ありとあらゆる外敵から全力で守ってやる」
「っ!」
ハルスの言葉に、セイラは顔をカァアアアと真っ赤にして、目をクゥゥっと見開いた。
「いいか、これは契約だ。絶対に守ってやる。だから、頼むから、俺をイラつかせるな。感謝するな、泣くな、わめくな。分かったら、頷け」
まだポロポロと涙を流しているが、セイラは、コクっと頷いた。
「契約を無視したら、俺はお前の前から消える。いいな? 手を放すぞ。その下水を下回る汚ぇ水が止まっていなかったら、わかっているな?」
手を放すと、セイラは、目と口をギュっと閉じて、自分のフトモモを必死につねっていた。
どうにか、抑えようとしているが、
ぽろ、ぽろ、
と、一瞬だけ、涙袋に水玉をつくってから、ゆっくりと垂れる。
声も、わずかにこぼれてきている。
(まさか、この俺に、ガキのお守をする日がくるとは……精神を鍛える修行とでも思わねぇとやってられねぇなぁ)
深く長いため息をついたところで、
キュ~
と腹のなる音がした。
セイラが、バっとお腹を抑える。
さきほどとは少し性質の違う、真っ赤な顔で俯いた。
不思議と、涙が引いた。
「はわ、はわわ……ちがっ……これ――」
セイラの感情など無視して、ハルスは、
「腹か……減ったな、俺も……」
言いながら、最初の一歩を踏み出した。
「まず、どっかでメシを食って、食糧を買って、それから……グロラリアのダンジョンでも行くか。ガキの装備、どうすっかなぁ……こいつのサイズに合う装備ってなれば、最適化の魔法がかかった魔道具しかねぇ……持ってねぇんだよなぁ……ぁあ、めんどうくせぇ。もういいか、装備なしでも。俺の『光壁ランク5』を壊せるヤツなんざ、そうそういねぇし、仮に、そんなヤツに攻撃されたら、そこそこの装備品を身につけていても意味ねぇ」
ブツブツ言いながら、路地裏を進んでいくハルスの背中を、
「っっ――ま……まっ……てっ」
慌てて追いかけるセイラ。
勇者ハルスあらため、魔人ハルス、
人生初めての二人旅スタート。
サーバンの姿が見えなくなってから、セイラが、
「ぁたし……わたしぃ……」
ボロボロと泣きながら、ハルスの腰にしがみついてきて、
「ぁりがとう……ありがっ……た、助けてくれて……ありがとぉ……っ」
「脳がねぇのか、この生物は」
「誰も……今まで……」
「あん?」
「誰も助けてくれなかった……たすけてって……たくさん、さけんだのに……おねえちゃんを……わたしを……だれも……わたし、わたし……」
「言いたい事があるなら、最低限、まとめて喋れ。お前はアレか? 俺を怒らせる選手権、決勝出場者か? 今大会における仕上がり具合についてインタビューできるほど、今の俺に余裕はねぇぞ」
「ありがとう……うぁあああ……あり、がっ……うあぁあああ」
自分にしがみついて、ワンワンと泣き出したセイラを見下ろして、
ハルスは、天を仰ぎ、右手で顔を隠し、
「……ドン引きだぜぇ。これから、この莫大な負債を抱えて生きていくのか……あまりの途方のなさに、目眩がとまらねぇ」
「ありっ、がと……うわぁあああああああ―――――っ」
やかましいセイラの口を、強引に手でふさぐ。
右手でセイラの後頭部を掴み、左手で、しっかりと口を閉じ込める。
「お前が、俺の殺意を稼ぐ天才だってのは、もう充分わかったら、流石に、もう黙れ」
「――むっ――ぅ」
「今後、お前を守ってやる。共に生き、ありとあらゆる外敵から全力で守ってやる」
「っ!」
ハルスの言葉に、セイラは顔をカァアアアと真っ赤にして、目をクゥゥっと見開いた。
「いいか、これは契約だ。絶対に守ってやる。だから、頼むから、俺をイラつかせるな。感謝するな、泣くな、わめくな。分かったら、頷け」
まだポロポロと涙を流しているが、セイラは、コクっと頷いた。
「契約を無視したら、俺はお前の前から消える。いいな? 手を放すぞ。その下水を下回る汚ぇ水が止まっていなかったら、わかっているな?」
手を放すと、セイラは、目と口をギュっと閉じて、自分のフトモモを必死につねっていた。
どうにか、抑えようとしているが、
ぽろ、ぽろ、
と、一瞬だけ、涙袋に水玉をつくってから、ゆっくりと垂れる。
声も、わずかにこぼれてきている。
(まさか、この俺に、ガキのお守をする日がくるとは……精神を鍛える修行とでも思わねぇとやってられねぇなぁ)
深く長いため息をついたところで、
キュ~
と腹のなる音がした。
セイラが、バっとお腹を抑える。
さきほどとは少し性質の違う、真っ赤な顔で俯いた。
不思議と、涙が引いた。
「はわ、はわわ……ちがっ……これ――」
セイラの感情など無視して、ハルスは、
「腹か……減ったな、俺も……」
言いながら、最初の一歩を踏み出した。
「まず、どっかでメシを食って、食糧を買って、それから……グロラリアのダンジョンでも行くか。ガキの装備、どうすっかなぁ……こいつのサイズに合う装備ってなれば、最適化の魔法がかかった魔道具しかねぇ……持ってねぇんだよなぁ……ぁあ、めんどうくせぇ。もういいか、装備なしでも。俺の『光壁ランク5』を壊せるヤツなんざ、そうそういねぇし、仮に、そんなヤツに攻撃されたら、そこそこの装備品を身につけていても意味ねぇ」
ブツブツ言いながら、路地裏を進んでいくハルスの背中を、
「っっ――ま……まっ……てっ」
慌てて追いかけるセイラ。
勇者ハルスあらため、魔人ハルス、
人生初めての二人旅スタート。
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