36 / 380
ありがたい汚物は消毒だ
しおりを挟む
(このガキを、さっさと、どうにかしねぇと……このままじゃあ、俺が壊れちまいそうだ。だが、どうやって……ん、いや、待てよ。案外、簡単な話なんじゃねぇか?)
勇者は、自分の呪いについての詳細を思い返す。
(なにも、こいつを殺すのが、俺である必要はねぇ)
死んでくれればそれでいい。
その原因が勇者でなければなけない理由は一つもない。
(……テキトーなダレかに、こいつを殺させればいい。奴隷は、基本、主人が死ねば解放される。そこらのドレイの場合、主人の死は、ただ一時的に苦痛から逃げられるというだけで、本質は何も変わねぇ訳だが、しかし俺の場合は例外。実質的に解放されて、正しく気高い、孤高の俺に戻る)
勇者は笑う。
一気に、気が楽になった。
閉塞的な状況は突破した。
一つでも、突破口を見つければ、心はグっと軽くなる。
(よし、となれば、さっさと、誰かに、このカスを殺してもらおう。そして、その後は、慎重に行動する。二度と、同じ過ちはおかさねぇ)
問題は解決。
正直、魔人化に関してはどうでもいい。
確かに、人間の国家で『魔人』として生きていくのは、大きなハンデとなるだろう。
しかし、それは弱者の話。
どうやら、『力』は変わっていないようだから、特に大きな問題はない。
所詮、この世は力が全て。
今、魔王国が、サミット等で、妙にデカいツラをしているのは、大帝国を滅ぼし、『強大な力を有する国である』と世界中に示したから。
どのような状況であれ、力さえあれば、乗り越える事ができる。
そして、勇者は、その『力を持つ者』の中で頂点に経つバケモノ。
勇者は強い。
勇者は、世界最強の超人。
つまり、何も問題はない。
確かに、色々と鬱陶しい――が、それだけの話。
我慢できるさ。
そのくらいのハンデなら。
『自由に殺せない』ってのも、確かに面倒だが、んなもん、我慢できないほどじゃねぇ。
なんせ、このクソみたいな状況が死ぬまで続く、って訳じゃねぇからなぁ。
(呪いなんざ、かけてきた相手を殺せば解ける。つまり、当初の予定であるカースソルジャーの撃滅を果たせば、それだけで、なにもかも、まるっと全部解決ってわけだ。これから先、数年、ちぃと窮屈な人生になるが、所詮は、それだけの話。国を離れ、俺クラスしか話にならないダンジョンや遺跡を巡っていれば、誰とも会わずに数年過ごすのなんざ余裕。ぁあ……何も問題はない)
勇者は状況を整理しおえると、
(……さて、近くに、手ごろなゴミはいねぇかな?)
ここはスラム。
クソは、頻繁に掃いて捨てなければいけない程いる。
(――おっ?)
ちょうどいいカスを求めて、周囲を見渡した、まさにその時、
「おいおい、セイラ……感心したぞ。お前の逃げ足。正直、驚いたぜ」
いかにもな子分を一人だけ引き連れている、屈強なコワモテが現れた。
その二人を見て、勇者は歓喜する。
(パーフェクツッ! さすが、俺、選ばれているぜ、何かもかもからなぁ)
「ところで、セイラ。そこにいるのは誰だ? まさか、用心棒でも雇ったか? んー?」
見た目だけは屈強そうなバカがそう言うと、その子分が、後ろから、
「アニキ、あの妙な肌のやつ、もしかして亜人ですか?」
「ばぁか、ありゃ魔人だ。亜人が進化したもんだ」
「おぉ、さすが、アニキ。博識ですねぇ」
「一般常識だ、バカ野郎。お前は流石に無知すぎる。もう少し勉強しやがれ」
「いや、はは……どうも、昔から、そういうのは苦手で……」
「言っておくが、本気で言っているんだ。アホだ、アホだとは思っていたが、まさか、自分が住んでいる国の首都すら知らんとは思わなかった。……一応聞いておこうか。流石に、それはありえないと思うが、ゲイド、お前、この国の王の名前をフルネームで言えるか? ……おい、なぜ目をそらす」
フっと、明後日の方を向いた子分『ゲイド』の、ありえないほどカラッポな脳ミソに呆れてから、
「で、セイラ。その魔人はなんだ? まさか、本当に用心棒を雇ったなんてことはねぇよなぁ? もし、そんな金を隠していたとしたら――」
「おいおい、ぉぉい、そこのカス。クソほどの価値もねぇお喋りはそこまでだ。それ以上は一言もしゃべるな。臭くて仕方ねぇんだよ」
勇者は、心底からウザったそうに、小指で耳の穴をほじりながら、
「俺とこいつは、なんの関係もねぇ。というわけで、好きに殺せ。可及的速やかに、な」
「なんだ、てめぇ、モンスターの分際で、人間様の国で、偉そうにしやがって……アニキ、あいつ、どうしてやります? なんなら、俺が、『この相棒』で、あの口が悪いモンスターに、自分の立場ってヤツを教えてやりましょうか?」
ナイフを取りだして、刃をペロリとなめるゲイド。
そんなゲイドの短絡的な態度を見て、勇者はしみじみ思う。
(ありがてぇ……おだやかな対応しかしていない、優しい、優しい、今の俺へ、さっそく純粋な悪意を向けてくれるとは。くく、生まれて初めてだぜ。この手の連中が、この世に存在してくれていて良かったと思ったのは。……さぁ、さっさとかかってこい。腕と足を一本ずつなくしても、ガキの一匹くらい殺せるだろ。それでも、まだ従わねぇようなら、歯を一本ずつ抜いてやる)
勇者は、自分の呪いについての詳細を思い返す。
(なにも、こいつを殺すのが、俺である必要はねぇ)
死んでくれればそれでいい。
その原因が勇者でなければなけない理由は一つもない。
(……テキトーなダレかに、こいつを殺させればいい。奴隷は、基本、主人が死ねば解放される。そこらのドレイの場合、主人の死は、ただ一時的に苦痛から逃げられるというだけで、本質は何も変わねぇ訳だが、しかし俺の場合は例外。実質的に解放されて、正しく気高い、孤高の俺に戻る)
勇者は笑う。
一気に、気が楽になった。
閉塞的な状況は突破した。
一つでも、突破口を見つければ、心はグっと軽くなる。
(よし、となれば、さっさと、誰かに、このカスを殺してもらおう。そして、その後は、慎重に行動する。二度と、同じ過ちはおかさねぇ)
問題は解決。
正直、魔人化に関してはどうでもいい。
確かに、人間の国家で『魔人』として生きていくのは、大きなハンデとなるだろう。
しかし、それは弱者の話。
どうやら、『力』は変わっていないようだから、特に大きな問題はない。
所詮、この世は力が全て。
今、魔王国が、サミット等で、妙にデカいツラをしているのは、大帝国を滅ぼし、『強大な力を有する国である』と世界中に示したから。
どのような状況であれ、力さえあれば、乗り越える事ができる。
そして、勇者は、その『力を持つ者』の中で頂点に経つバケモノ。
勇者は強い。
勇者は、世界最強の超人。
つまり、何も問題はない。
確かに、色々と鬱陶しい――が、それだけの話。
我慢できるさ。
そのくらいのハンデなら。
『自由に殺せない』ってのも、確かに面倒だが、んなもん、我慢できないほどじゃねぇ。
なんせ、このクソみたいな状況が死ぬまで続く、って訳じゃねぇからなぁ。
(呪いなんざ、かけてきた相手を殺せば解ける。つまり、当初の予定であるカースソルジャーの撃滅を果たせば、それだけで、なにもかも、まるっと全部解決ってわけだ。これから先、数年、ちぃと窮屈な人生になるが、所詮は、それだけの話。国を離れ、俺クラスしか話にならないダンジョンや遺跡を巡っていれば、誰とも会わずに数年過ごすのなんざ余裕。ぁあ……何も問題はない)
勇者は状況を整理しおえると、
(……さて、近くに、手ごろなゴミはいねぇかな?)
ここはスラム。
クソは、頻繁に掃いて捨てなければいけない程いる。
(――おっ?)
ちょうどいいカスを求めて、周囲を見渡した、まさにその時、
「おいおい、セイラ……感心したぞ。お前の逃げ足。正直、驚いたぜ」
いかにもな子分を一人だけ引き連れている、屈強なコワモテが現れた。
その二人を見て、勇者は歓喜する。
(パーフェクツッ! さすが、俺、選ばれているぜ、何かもかもからなぁ)
「ところで、セイラ。そこにいるのは誰だ? まさか、用心棒でも雇ったか? んー?」
見た目だけは屈強そうなバカがそう言うと、その子分が、後ろから、
「アニキ、あの妙な肌のやつ、もしかして亜人ですか?」
「ばぁか、ありゃ魔人だ。亜人が進化したもんだ」
「おぉ、さすが、アニキ。博識ですねぇ」
「一般常識だ、バカ野郎。お前は流石に無知すぎる。もう少し勉強しやがれ」
「いや、はは……どうも、昔から、そういうのは苦手で……」
「言っておくが、本気で言っているんだ。アホだ、アホだとは思っていたが、まさか、自分が住んでいる国の首都すら知らんとは思わなかった。……一応聞いておこうか。流石に、それはありえないと思うが、ゲイド、お前、この国の王の名前をフルネームで言えるか? ……おい、なぜ目をそらす」
フっと、明後日の方を向いた子分『ゲイド』の、ありえないほどカラッポな脳ミソに呆れてから、
「で、セイラ。その魔人はなんだ? まさか、本当に用心棒を雇ったなんてことはねぇよなぁ? もし、そんな金を隠していたとしたら――」
「おいおい、ぉぉい、そこのカス。クソほどの価値もねぇお喋りはそこまでだ。それ以上は一言もしゃべるな。臭くて仕方ねぇんだよ」
勇者は、心底からウザったそうに、小指で耳の穴をほじりながら、
「俺とこいつは、なんの関係もねぇ。というわけで、好きに殺せ。可及的速やかに、な」
「なんだ、てめぇ、モンスターの分際で、人間様の国で、偉そうにしやがって……アニキ、あいつ、どうしてやります? なんなら、俺が、『この相棒』で、あの口が悪いモンスターに、自分の立場ってヤツを教えてやりましょうか?」
ナイフを取りだして、刃をペロリとなめるゲイド。
そんなゲイドの短絡的な態度を見て、勇者はしみじみ思う。
(ありがてぇ……おだやかな対応しかしていない、優しい、優しい、今の俺へ、さっそく純粋な悪意を向けてくれるとは。くく、生まれて初めてだぜ。この手の連中が、この世に存在してくれていて良かったと思ったのは。……さぁ、さっさとかかってこい。腕と足を一本ずつなくしても、ガキの一匹くらい殺せるだろ。それでも、まだ従わねぇようなら、歯を一本ずつ抜いてやる)
0
お気に入りに追加
1,559
あなたにおすすめの小説
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
俺がマヨネーズ男爵だとぅ!?~異世界でおっさん領主は奴隷ちゃんと結婚したい
武蔵野純平
ファンタジー
美少女性奴隷と幸せに暮らすため、おっさんは異世界で成り上がる!
平凡なおっさんサラリーマンの峰山真夜は、ある日、自室のドアが異世界につながっている事を知る。
異世界と日本を行き来し、異世界では商売を、日本ではサラリーマンの二重生活を送る。
日本で買ったアイテムを異世界で高額転売し金持ちになり、奴隷商人のススメに従って美少女性奴隷サラを購入する。
愛する奴隷サラと幸せに暮らすため、おっさんサラリーマン・ミネヤマは異世界で貴族を目指す。
日本ではかなえられなかった立身出世――成り上がりに邁進する!
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる