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第4章 王都

第46話 ポジション

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メンバーにポポとピピが加わり、改めて攻撃パターンを見直す。
俺とヘンリーは接近戦で戦うタイプ。俺が剣か拳。ヘンリーも拳を使うが、空手に近い戦い方をするタイプだ。
Jはどちらかというと、攻撃のサポートをしてくれるのが多い。

ひーちゃんとピピは、魔法や支援が得意な遠距離タイプ。
ピピは氷系の魔法を得意にしているらしく、真夏とかに魔法で氷を生成して売っているそう。今は関係ないけどね。

ポポはボウガンで敵を貫く遠距離タイプ。
ボウガンは遠くにいる敵に向けて撃つ者で、鋭い槍が仕込まれている。毒やら麻痺を塗って状態異常にさせるのも効果的とか。
6人だとかなり安心感はあるけど………。
遠距離が多いと、こちらも戦いやすいかと思ったが、ヘンリーはそうでもなさそうな顔だった。


「遠距離が多いと何か思うことがあるの?」

「いや、遠距離はいないといるとは規則的に違うから、ビックリしただけだ。小僧。本当にこいつらと番号は合ってるのか」

「同じ25番だよ。………何、頼り無さそうに見える?」

「魔物に殺られないか心配はしている。まだ冒険者になって日が浅そうだからな。あの外見でBランクとは思えないしな………ランクは聞いたのか」

「それはまだ……」

「なら聞いてきたらどうだ。共に戦う仲間だし、少しは知った方がいいだろう」

「仲間、か。そーだな。ちょいと聞いてくる」


冒険者には必ずランクがある。なりたてなのか気になったのか、それもと………。
この話はポポ達に聞いてから考えるか。
両手で果物をミキサーした飲み物を飲んでいるポポとピピは、これから始まる乱闘にワクワクした様子で話していた。


「なぁ。聞きたいことがあるんだけどさ。いいかな?」

「んー?答えられるものならいいよ!」

「………うん。いい」

「ありがとう。で、聞きたいのはポポとピピのランクはどれくらいなんだ」


ピピはギルドカードを取り出し確認している。ポポの方は言いたくてうずうずしている子犬みたいだ。
モフモフの尻尾が物凄く揺れているよう幻が見えた。
ピピはポポの肩をポンと叩き、頷いた。


「コー達のランクは秘密にしてくれる?」

「秘密って。まさか、ダメな事を……」

「ち、違う……。かな。ギルドにはこっそり騙せたけど、おにーちゃんに言ってもいいよね。ピピ」

「……………後悔するより、いい」

「ん。わかったよ。コー達はね。ランクはBランクじゃないの。コーがDランクで、ピピがCランクなの。どうしても戦いたくて、ギルドの受付人を騙したの。……………怒る?」

「はん。そんな事か」


ランクを誤魔化すには相当な覚悟でやるものだ。
分かっててやってしまったのなら、反省する事もできる。
ヘンリーはこの事に勘づいていたのか?
………だったら分かりやすく言って欲しかった。ヘンリーなりの優しさだったのかは、俺には分からないが。


(もう参加申込みもしちゃったし、後戻りは出来なさそうだな。ヘンリーさん)


俺が怒っていると思っているのか、緊張して俺が何を喋るのか待っているようだった。
不安を和らげるため、またフサフサの頭を撫でた。


「怒ってないよ。正直に話してくれてありがとう。別にランクを誤魔化したのは何か理由があるんだろ?この秘密は俺達、パーティーだけの秘密だからな。そんなビクビクするなって」

「ほんと?本当に許してくれるの?」

「ああ。おにーさんとの約束な」


うるうるした目の悲しそう何か顔からパアッと明るい笑顔になった。
やっぱ子供は笑顔が一番だな。それに対してピピは会ってから顔の表情が動いていない。


「よし。ポジションも決まったから皆のとこに行こうぜ」

「うん!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





王都の出入口に番号で決まったパーティー達がズラリといた。
人数が多すぎる為、出入口にはスタッフが誘導している。
俺達は決められたポジション通りに3人が前に、遠距離の3人と別れた。


「何百メガくらい進んで行くらしい。着くまで消耗すると思うから、水を渡しとくぞ」

「ありがとー!おっちゃん!」

「ぷっ。ヘンリーがおっちゃん……」

「子供から見たらおじさんに見えなくも、ないかな?ピピちゃんはどう?」

「……氷で、冷やす」

「あ、そういうことじゃなくてね」


初っぱなからグダグダになってる。緊張感持ってないのかお前達は……。Jも何か喋ってほしいが、こっちはこっちで………ん?


「J。何か感じてんのか?」

「………ああ。かなり離れているが、ビリビリとオーラを感じてな。幹部が混ざっている。長期戦になるかもしれんぞ。リュー」

「……………やばいのか」

「うむ。ポポとピピは我が護ってやる。パーティーを死なせては元もこうもないわ」

「………」


遠くということは、攻めてくるモンスターの中に魔王の幹部がいると言うことか。


『おい!モンスターが見えてきたぞ!』


誰かが叫び、一斉にその方向に視線が集まる。
鎧を着た骸骨やらキメラやらと様々な気味悪いモンスターが迫ってきていた。
ここまでの数だと、全部倒せるか不安でしょうがなかった。
メンバーも流石に静かになり、指揮官らしき男が叫んだ。


『突撃ぃぃぃ!!』


叫び声と共に冒険者はモンスターに斬りかかった。
兵士もモンスターの攻撃を跳ね返しながら斬り、血が大量にこびりつく。
俺達も襲いかかるモンスターに無理矢理、肉を斬る。
ヘンリーは打撃で殴ったり蹴ったりしているが、肉厚が厚そうなモンスターにはあまり効かないらしい。
そこにポポのボウガンの槍がモンスターの腹を貫く。


「ナイス!ポポ」

「イェッサー!もっぉと撃つぞー!」


子供でもボウガンを使いこなし次々と倒していく。Dランクでも流石にやるな。
魔法チームはそれぞれ詠唱している。ピピは氷の魔法で尖った氷をモンスターに突き刺す。
ひーちゃんは、無詠唱で防御力を上げる魔法等。支援を怠っていない。
Jは両手を竜化させ、鋭い爪で骸骨や硬い殻を持つモンスターを砕き、撥ね飛ばしている。楽しそうな顔をして。


「うぅ、らぁっ!」


剣で突進してきた角を持つ、大型モンスターの攻撃を食い止める。
斬っても殴っても、きりの無いモンスターの数にどれくらい掛かるのか。


「ひーちゃん!頼むっ!」

「わかった!」


俺の声に答えて無詠唱で渦巻く炎をモンスターにぶつけた。
炎を消そうと暴れるも、すぐに大人しくなった。




戦いはまだ始まったばかり。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回、幹部
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