52 / 69
第4章 王都
第46話 ポジション
しおりを挟むメンバーにポポとピピが加わり、改めて攻撃パターンを見直す。
俺とヘンリーは接近戦で戦うタイプ。俺が剣か拳。ヘンリーも拳を使うが、空手に近い戦い方をするタイプだ。
Jはどちらかというと、攻撃のサポートをしてくれるのが多い。
ひーちゃんとピピは、魔法や支援が得意な遠距離タイプ。
ピピは氷系の魔法を得意にしているらしく、真夏とかに魔法で氷を生成して売っているそう。今は関係ないけどね。
ポポはボウガンで敵を貫く遠距離タイプ。
ボウガンは遠くにいる敵に向けて撃つ者で、鋭い槍が仕込まれている。毒やら麻痺を塗って状態異常にさせるのも効果的とか。
6人だとかなり安心感はあるけど………。
遠距離が多いと、こちらも戦いやすいかと思ったが、ヘンリーはそうでもなさそうな顔だった。
「遠距離が多いと何か思うことがあるの?」
「いや、遠距離はいないといるとは規則的に違うから、ビックリしただけだ。小僧。本当にこいつらと番号は合ってるのか」
「同じ25番だよ。………何、頼り無さそうに見える?」
「魔物に殺られないか心配はしている。まだ冒険者になって日が浅そうだからな。あの外見でBランクとは思えないしな………ランクは聞いたのか」
「それはまだ……」
「なら聞いてきたらどうだ。共に戦う仲間だし、少しは知った方がいいだろう」
「仲間、か。そーだな。ちょいと聞いてくる」
冒険者には必ずランクがある。なりたてなのか気になったのか、それもと………。
この話はポポ達に聞いてから考えるか。
両手で果物をミキサーした飲み物を飲んでいるポポとピピは、これから始まる乱闘にワクワクした様子で話していた。
「なぁ。聞きたいことがあるんだけどさ。いいかな?」
「んー?答えられるものならいいよ!」
「………うん。いい」
「ありがとう。で、聞きたいのはポポとピピのランクはどれくらいなんだ」
ピピはギルドカードを取り出し確認している。ポポの方は言いたくてうずうずしている子犬みたいだ。
モフモフの尻尾が物凄く揺れているよう幻が見えた。
ピピはポポの肩をポンと叩き、頷いた。
「コー達のランクは秘密にしてくれる?」
「秘密って。まさか、ダメな事を……」
「ち、違う……。かな。ギルドにはこっそり騙せたけど、おにーちゃんに言ってもいいよね。ピピ」
「……………後悔するより、いい」
「ん。わかったよ。コー達はね。ランクはBランクじゃないの。コーがDランクで、ピピがCランクなの。どうしても戦いたくて、ギルドの受付人を騙したの。……………怒る?」
「はん。そんな事か」
ランクを誤魔化すには相当な覚悟でやるものだ。
分かっててやってしまったのなら、反省する事もできる。
ヘンリーはこの事に勘づいていたのか?
………だったら分かりやすく言って欲しかった。ヘンリーなりの優しさだったのかは、俺には分からないが。
(もう参加申込みもしちゃったし、後戻りは出来なさそうだな。ヘンリーさん)
俺が怒っていると思っているのか、緊張して俺が何を喋るのか待っているようだった。
不安を和らげるため、またフサフサの頭を撫でた。
「怒ってないよ。正直に話してくれてありがとう。別にランクを誤魔化したのは何か理由があるんだろ?この秘密は俺達、パーティーだけの秘密だからな。そんなビクビクするなって」
「ほんと?本当に許してくれるの?」
「ああ。おにーさんとの約束な」
うるうるした目の悲しそう何か顔からパアッと明るい笑顔になった。
やっぱ子供は笑顔が一番だな。それに対してピピは会ってから顔の表情が動いていない。
「よし。ポジションも決まったから皆のとこに行こうぜ」
「うん!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
王都の出入口に番号で決まったパーティー達がズラリといた。
人数が多すぎる為、出入口にはスタッフが誘導している。
俺達は決められたポジション通りに3人が前に、遠距離の3人と別れた。
「何百メガくらい進んで行くらしい。着くまで消耗すると思うから、水を渡しとくぞ」
「ありがとー!おっちゃん!」
「ぷっ。ヘンリーがおっちゃん……」
「子供から見たらおじさんに見えなくも、ないかな?ピピちゃんはどう?」
「……氷で、冷やす」
「あ、そういうことじゃなくてね」
初っぱなからグダグダになってる。緊張感持ってないのかお前達は……。Jも何か喋ってほしいが、こっちはこっちで………ん?
「J。何か感じてんのか?」
「………ああ。かなり離れているが、ビリビリとオーラを感じてな。幹部が混ざっている。長期戦になるかもしれんぞ。リュー」
「……………やばいのか」
「うむ。ポポとピピは我が護ってやる。パーティーを死なせては元もこうもないわ」
「………」
遠くということは、攻めてくるモンスターの中に魔王の幹部がいると言うことか。
『おい!モンスターが見えてきたぞ!』
誰かが叫び、一斉にその方向に視線が集まる。
鎧を着た骸骨やらキメラやらと様々な気味悪いモンスターが迫ってきていた。
ここまでの数だと、全部倒せるか不安でしょうがなかった。
メンバーも流石に静かになり、指揮官らしき男が叫んだ。
『突撃ぃぃぃ!!』
叫び声と共に冒険者はモンスターに斬りかかった。
兵士もモンスターの攻撃を跳ね返しながら斬り、血が大量にこびりつく。
俺達も襲いかかるモンスターに無理矢理、肉を斬る。
ヘンリーは打撃で殴ったり蹴ったりしているが、肉厚が厚そうなモンスターにはあまり効かないらしい。
そこにポポのボウガンの槍がモンスターの腹を貫く。
「ナイス!ポポ」
「イェッサー!もっぉと撃つぞー!」
子供でもボウガンを使いこなし次々と倒していく。Dランクでも流石にやるな。
魔法チームはそれぞれ詠唱している。ピピは氷の魔法で尖った氷をモンスターに突き刺す。
ひーちゃんは、無詠唱で防御力を上げる魔法等。支援を怠っていない。
Jは両手を竜化させ、鋭い爪で骸骨や硬い殻を持つモンスターを砕き、撥ね飛ばしている。楽しそうな顔をして。
「うぅ、らぁっ!」
剣で突進してきた角を持つ、大型モンスターの攻撃を食い止める。
斬っても殴っても、きりの無いモンスターの数にどれくらい掛かるのか。
「ひーちゃん!頼むっ!」
「わかった!」
俺の声に答えて無詠唱で渦巻く炎をモンスターにぶつけた。
炎を消そうと暴れるも、すぐに大人しくなった。
戦いはまだ始まったばかり。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回、幹部
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる