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第3章 二人の冒険
第22話 トカゲな仲間
しおりを挟む豆くらいの大きさだった球体が、徐々に膨らんでいく。形がトカゲに近くなると、そこからはトカゲに無いものが付けられた。
トカゲといえば毛が一切生えていない鱗に覆われた生き物。眼はヘビと変わらない凛とした眼。
海外では竜の子孫ではないかと、噂になったとか無いとか。話題は冷めていくと、日本ではトカゲ等の爬虫類をペットにする人が増加した。
前世の話は置いといて、私の使い魔となるトカゲは肌色に近い色をし、無い物が付けられていた。背中にはもふもふとした毛が付き、尻尾にも白い毛が生えているが、背中の毛とは繋がっていない。
爛々と輝く爬虫類の眼。その眼は私の目を感じるかの様に、見つめ続けている。
「………かわいい」
まさか、もふもふも付いてくるとは思ってもみなかったので、私は物凄く撫でたい衝動になりかけていた。魔法陣が薄くなり、ゆっくりとトカゲは下ろされた。
私はトカゲに近づくと、トカゲは顔を上げてまた、私を見つめる。
「………キュー、キュルル?『貴女が、僕を創ったの?』」
「!トカゲが喋った……」
トカゲはキューと鳴きながらも、頭の中で変換されるように声が判る。ゴブリンの時とは違うが、確かに声が聞こえた。
「キュ、キュー『僕を創ったの?』」
「私の言葉が分かる?」
「キュ『うん。分かる』」
(何この子、賢い)
キューキューと愛らしく鳴くトカゲは、四つん這いで私に近づく。
「キューキュー『名前、欲しい。付けて』」
「そうだね。名前を付けないと………」
名前と言われても『もふもふ』しか頭になく、考えているがもふもふが邪魔をする。
トカゲで………キューと鳴くから。
「……キューカ。鳴き声とトカゲのカを合わせてキューカ」
「キュー?キューキュー『キュー、カ?キューカ、僕はキューカ!』」
気に入ってくれたらしく、私の腕をよじ登り肩まで来る。軽く頭を撫でると、気持ち良さそうに眼を細める。
パチパチパチパチ
後ろから拍手が聞こえたと思ったら、いつの間にかヘンリーが居た。
「そいつがモンスターか。中々可愛らしいじゃないか」
「名前はキューカって言うの。もふもふ付いてるんだよ!撫で放題じゃん」
「キュー『こいつだれ?』」
「ヘンリーだよ。私の先生なんだ」
「何時からお前の先生になった。それは妄想だ」
バカにするように笑っているが、何故か嬉しそうである。誇らしそうにまだニヤけている。
「ななななな!そいつはまさかっ!」
突如、太い声が響き、入り口前にモジャモジャ頭の見知らぬ男性が指を指しながら走ってくる。
「ああ、マグスさん。仕事は終わったのか?」
「終わったの何も、何でバジリスクがいるんですか!ヘンリーさん!早く殺さないと………」
「キュー?『殺すってなに?』」
「何を言うの!この子は私の使い魔よ。生まれたばかりなのに」
この子を『殺す』と言われたら、黙ってられなかった。初対面でその言葉はないんじゃない!睨み付けていると、間にヘンリーが入り、私達を止めようとする。
「一旦落ち着け。お前もカッカするな、こいつはモンスター恐怖症なんだよ。それも上級モンスターのな」
「モンスター全てですよ!ヘンリーさん、何故危険なバジリスクを使い魔にする少女を放置しているんですか。このままでは………、街が」
「あー。問題ないだろ。こいつ、キューカは今生まれたばかりなんだ。赤ちゃんだから問題ない」
「赤ちゃんだから危険なんです!大きくなる前に処分を頼みます!」
「だが断る」
と男の言い合いが続いている。マグスさんの言うバジリスクかどうか、ギルドカードを視てみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇キューカ
種族 バジリスク(新種)
職業 ヒトミの使い魔、モンスター
レベル 1
体力 100/100
魔力 5000/5000
腕力 10
素早さ 2500
スキル
人語(自動不可)、自動再生、毒の牙、回復、人化、死神化、トカゲ化、全魔法耐久、自然回復
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
わー、この子もチートだわ(笑)
マグスさんの言った通り、バジリスクだが新種とは何だろう?もふもふが付いてるからかな。ヘンリーに聞きたいがお取り込み中の様だし、キューカ自身に聞いてみよう。
「キューカは………バジリスクなの?」
「キュー?『バジリスク?僕は貴女に創られたんだよ。バジリスクかどうかは貴女がわかるでしょ?』」
「貴女じゃなくてヒトミと呼んで。まあ、私が創ったんだから、新種になるよね………」
「キューキュー『新種はレア?なんだよ』」
モンスター図鑑によれば、新種は世界で一匹しかいなく、捕まえては売られるというケースが多いらしい。
(知られれば取られて売られる……。教えちゃだめだ、教えたら)
私は新種であることを封印した。ヘンリーの元へ行くと、うんざりとした顔でマグスさんに説得させている。
「バジリスクじゃなくても、殺せと言うんだろ!そろそろ切りたいからこの話は終わりだ」
「何度言ったらわかるんですか!トカゲはバジリスクの子供なんですよっ!ヘンリーさんだってわかってますよね!?」
「モンスター恐怖症を直さないからこうなるんだ!本当にここの管理人なのか、疑問が湧くわ」
あ、管理人はこの人なんだ。
「はぁ。それなら、もしバジリスクが暴走した時は、止めてくださいよ。これでいいですか?」
「それでいい。『殺す』と言ったらその頭、砕いてやるよ」
マグスさんと別れた私達は、ヘンリーの家に帰ったが流石に言い過ぎではないかな?頭を砕くとかどこの漫画なのか………。
(……止めてくれたのは、嬉しかったな)
止めてくれた喜びで、少し笑いそうになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
私もトカゲ大好きです。
次回、主人公、道に迷う。
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