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第2章 幼馴染
第17話 ヘンリーの気持ち②
しおりを挟む俺の起床は早い。タンスから、お気に入りの黒いコートを出し、魔獣の毛皮でできた服の上に着る。
外に出ると、隣にある豪邸のメイドさんが俺に気づいたのか、小走りで近づいてくる。
「おはようございます、ヘンリー様!今日はどこへ?」
「あー、今日も散歩だよ。やることないし、自由もいいけど……冒険者だった頃が懐かしいよ」
「冒険者か~。憧れるし、夢一杯すぎるね!……でも、辞めちゃったんですよね?どうしてなんですか」
俺の過去を知らない奴は、大抵そう言う。その時はいつも通りにこう返す。
「冒険者は、そんな甘くなかったってことさ。理由は他にあるが、今は話したくない。ごめん」
「あらら、こっちもごめんね。冒険者は危険がいっぱいって言うから。メイドの方がまだまだ甘い……か。」
「ケルちゃーん!こっちお願い!」
「はい!今行きま~す!じゃあね、ヘンリー様」
メイドは上司に呼ばれ、俺から離れていく。メイドもメイドで大変そうなんだけどな。気を取り直して、散歩の続き。
屋台で買った『ミノタウロスの串焼き』を食べながら、町を眺めた。昨日も見た夕焼け。一昨日も見た絶景。全てが退屈だった。
(ギルドの方はどうなってんだろ………)
辞めてから数年立ったが、今のところ平和そうだ。絶景を目に焼き付けて、家に帰ろうと商店街を歩いている。と………。
『ほらぁ、早く行こうぜぇ?いい居酒屋があるからよぉ』
『すいません。お酒はちょっと………』
『大丈夫だよ。ノンアルコールもあるから。さあ、こっちにおいで?』
路地裏に続く道に、頭がハゲている中年男性らしい二人が、少女を逃がすまいと囲んでいる。
腕を捕まれているらしく、必死に抵抗している。
(居るんだよな……。そういう変態が)
このまま放置しては、路地裏の評判がさらに悪くなる。最近、路地裏で何人か死体で倒れているが発見されている。
町の評判が悪くなり、観光客が減ってしまうのはまずい。元冒険者として、二人の男性を止めようと思った。
「そこで何してる!」
怒鳴りつけると、一人の男性が俺を睨み付けながらこちらに来る。
「おい!今、お楽しみ中なんだよ。ガキはあっち行ってろ!」
威嚇してくる男性は、俺の事を知らない様子で睨み続けている。あまり絡まれる事がないので、俺は面白くなり、睨み返すことにした。
「そうかそうか。ならさ?彼女は何で嫌がってるの?」
睨み付けながら、バカにする男性を見て、新鮮な気持ちが溢れてくる。これは面白くなるな。
こちらからは見えない彼女が心配になり、様子を確かめながら、男性の愚痴を聞く。
「嬢ちゃんがお酒飲めないってぇ………。そんな事より、キーの言う通りガキは引っ込んでくれよぉ」
弛んでる声で言うな、が、名前を教えてくれた事には感謝している。ここらで、暴れている愚か者が路地裏を占拠していると聞いていた。
見かけた顔をしているなと思ったら、ギルドでEランクパーティーを虐めていた一人だったな。
ギルドから追放して、大人しくしているかと想像したが、反省の色もないようだ。
「喧嘩売ってんのか?もう一回言うが、ガキは大人しく……………!」
近づいてきたことを良いことに、どうやら、俺が元冒険者だった事に気づいたようだ。遅いんだよ。
「ガキがだって?」
今、俺はどんな顔をしているんだろう。にやけているのか、睨み返しているのか、自分でも分からなかった。
どうでもいいが、俺をバカと呼んだキーに威圧を放つ。
「ひぃ!すいませんでした!おいっ!嬢ちゃんを離してやれ、今すぐ!」
普通に威嚇しただけで、ビビるとは堕ちたもんだな。
その後、そいつらは路地裏の奥に尻尾を巻いて逃げていった。彼女のもとへ行くと、暗くて見てなかったが、此処等では見ない服装をしている。
田舎者でも見かけない服から、もしかしたら………と考え事をしていた。
(転生者か?それなら納得するし、そうしとくか)
自己完結するのは良くないが、一応彼女から答えるだろうと、口を出さなかった。
それからは、彼女が『早羽瞳』と名乗り、嘘まで言ってきた。その時に、彼女の魔力が大賢者以上持っている事に気づいた。
(これは……面白くなりそうだ)
密かに彼女に笑い掛けた。勿論、バレないようにな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
(・ω・)〈そういえば、主人公は?
まだ考えていません。はい。
第3章 冒険
次回、ギルドに突入!
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