上 下
4 / 69
閑話一覧(番外編のようなもの)

閑話 ハロウィン?いえ。モンスターパーティーです

しおりを挟む


街や村によって変わるパーティー。
脅かせてお菓子をあげる行事だったり。モンスターの仮装をしてお菓子を貰う行事だったり、土地や地域によって微かに違う。


「ハロウィンといえば?」

「お菓子!」

「お化け!」

「モンスター!」

「ガキがたくさん!」

「おいおい、お前もガキだろうが」


今回はハロウィンパーティー(モンスターパーティー)をやるということで孤児院に来ている。暫く小さな町に泊まっていたが、依頼で狩った魔物の肉が余り棄てるのは勿体ないので孤児院に分けた結果、冒険者は珍しいのか元気な子供達が遊んでと休みの日に遊ぶことが増えていった。
院長の方は食料を貰ったお返しとして近々行われる行事に参加しないかと勧められた。

捨てられた子供や育児放棄。家族の事情で預かった子供たちがたくさんいる。ハロウィンの衣装はゴブリンやらハーピーやら様々なモンスターの仮装をして家を回る。孤児院の子供もそうだが一般の子供達も混ざって参加するそうだ。
俺もなりきろうとカボチャの形をした帽子を被りタキシードっぽい服装にしてある。
衣服店はこの季節だけ仮装用の服が大量生産される。しかもオーダーメイドという事でリクエストされたモンスターや魔物の衣装を作るそうだ。


「おにいちゃん!お菓子ちょうだい!」

「ほら」

「わーい!」

「わたしもちょーだい!」

「オレも!」

「お菓子をくれないとイタズラするぞ!」

「「ちょーだい!」」

「わ、わかったから並べ並べ、まずはよ」


何故か子供達が群がりこの為に買ったチョコや貰ったチョコを配っていくが、もう底が見えている。大体並ばせて配っていると肩を叩かれて振り返ると狼男ならぬ狼女の衣装を着たひーちゃんがいた。
モフモフが、狼耳かわいい………。


「竜くん人気者だね」

「他の大人から貰えばいいんだけどなぁ。何故だろう………」

「冒険者だからじゃないかな?この村って冒険者が少ないから」

「あー。それもあるかもな。ヘンリーの方も子供達に遊ばれてるし」


横目で見ていたがヘンリーはお菓子を配らずアスレチックの様に子供達を持ち上げている。子供達の笑い声や叫び声がここまで届いている。


「楽しそうだな」

「ねぇ。終わったらお菓子交換し合わない?こっちはイチゴのチョコなの」

「俺は焼きチョコかな。ほら、溶けにくいやつの」

「わぁ、好きなやつだ。サクサクして美味しいよね」


お菓子の事で盛り上がっていると幽霊の服装をした男の子が近付いてくる。


「お菓子ください!」

「溶ける前に食べるんだよ」

「味わって食べろよ。ん?そんなにお菓子を集めてどうするんだ」


その子供は籠にたくさんのお菓子が詰められている。お楽しみに取っておくにしては多い。


「これね。これなかったいもうとにあげるやつなの。ママが今日はいもうととようじがあってこれないって」

「用事か。それならおまけやるよ妹にもあげろよ」

「いいの!?ありがとうおじさん!」

「え、」


元気に走っていく姿を見てさっきの発言を撤回してもらうかどうかと迷ってしまった。おじさんって………(泣)


「竜くんがおじさん………w」

「おい笑うな。それだったらひーちゃんもおばさんになるから」

「はい、ごめんなさい」


まだ高校二年生の俺達でも、おじさんおばさんと言われれば傷つく。同い年のひーちゃんも、いや。全国の高校生が言われれば傷つくだろうな。



「そろそろお菓子を補充してこないとな」

「竜くんの焼きチョコって何処から貰ってるの?買ったもの?」

「実はこれ全部Jジェイの試作なんだよ。で、失敗したやつが焼きチョコなんだけど」

「焼きチョコ作れるドラゴン………!?」

「だけど、焼きチョコは失敗作とかいって貰ってきたんだよ。考えていたチョコと違う!とか嘆いてた」

「え、明らかに成功してるよね!?」

「なんか納得できないんだと。何回も作り直してる」

「一体どんなチョコを作ろうとしてるんだろう。それはそれで気になる」


ドラゴンが人間になっていても手先が不器用なイメージがあるが、そんなことはなくJテキパキと容器にチョコを流し込んだり市販で買った形で固めたりと時々ドラゴンだということを忘れてしまいそうな動きだった。

失敗したという焼きチョコだがこれでも子供達には好評で、レシピを教えて欲しいという大人まで出てきた。失敗作だからJが覚えているかどうか。


「おーい」

呼び声が聴こえた方向へ向けるとチョコが完成したのか大きめのバケットを二つ抱えたJが走ってきた。


「J。どんなチョコにしたんだ?」

「それは子供達に配ってのお楽しみだ!これは自信作だぞ」


自信作満々な顔で抱えたバケットを大事そうに持っている。俺も少々気になってきた。
片方のバケットは失敗作の焼きチョコが大量に入っている。あれから失敗は続いたものの、やっとの思いで完成したという。
子供達が新しいお菓子が貰えるとわかってJに群がっている。バケットから一つ一つ子供達に配っていく。途中から大人もお菓子を貰う姿があった。


「フフフ…。計画通り」

「一体どんなチョコ作ったんだよ」

「私も気になる!実際に食べてみたいし」

「それはな。これだ!」

バケットから取り出されたチョコを二人で見つめる。これは……。


「ドラゴンを型どったチョコ?」

「ただ型どっただけではないぞ。よーく観察してくれ」

「あ!細かく鱗もある」


袋詰めされた二匹の白と黒のドラゴンチョコにはうっすらと鱗が並べられている。目の部分は小さいチョコを入れてある。


「この鱗の部分、これ全部削ったのか?」

「うむ!時間がかかってしまったが完成して満足したぞ。これを何百個も作ったのだからな」

「技術力高いね。本当にドラゴンなの?」

「我はドラゴンだが、他のドラゴンより器用で出来ることだってあるぞ」

「もう商売できそうな技術力だな……」


むしろそれで稼いでいけそう。


「子供達も喜んでいて良かった。やはりドラゴンな人気だな」

「失敗作の焼きチョコも評判良かったけどな。あ、このレシピって覚えてる?欲しい人が教えてくれと言われてさ」

「焼きチョコ?ただ焼いただけのチョコだぞ?それでもいいのなら教えるが……」

「このレシピが欲しいやつにあげたいから、紙に書いてくれない?説明するより書いた方が楽だろ」

「雑な説明よりそっちの方がいいな……。よし、わかった」


すんなり了承して紙に作り方を書いている。まだ子供達がお菓子をねだっているので代わりに俺達が焼きチョコとドラゴンチョコを配っていく。


月の光が村を照らしている中モンスターパーティーが終わり、子供達はそれぞれの家へ帰っていく。
残ったチョコは食べたが色んなチョコが置かれてあり、小さなチョコ展みたいなのが出来上がるような精彩なチョコや動物の形をしたチョコもたくさんあった。

しばらく食べるお菓子はチョコ続きだと思う。











次の日にはJの許可を得て、焼きチョコのレシピが欲しいと言った大人に話しかけレシピを渡した。レシピを何回も見て興奮気味に瞳が輝いて、跳び跳ねるような勢いで嬉しそうにしている。そんなに焼きチョコのレシピが欲しかったのか。
お礼として日持ちする食べ物や乾燥させた干し肉をくれた。長い旅になるだろうとわざわざ日持ちするものばかりをくれた事に感謝しても足りなさそう


その焼きチョコはこの村を発展させる名物になるとは俺達は知りもしなかった(嘘)




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お菓子をくれないとチョコ吹っ掛けるぞ!………なーんてね。
ハロウィンの日の新宿ってヤバイよな。
更新遅れて申し訳ないです。

次回の番外編は未定です。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~

星天
ファンタジー
 幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!  創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。  『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく  はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

処理中です...