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第三章 異世界を満喫する

No.16

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はあ……なんて幸せなんだ……眠い。でも、眠ってはいけない。
この山の上……少し肌寒く感じるのですよ。
まあ、標高高いなら寒いよね?
といっても結界もしていたし、この服には温度調節の魔法が付与されているので、顔が少しさむいくらいなんですけどね……。
寒さは、気分ですよ。
でもここまで、割と疲れてるじゃないですか。
そこにこの天然のあったかモフモフですよ……眠くなるよねー。だって、身体は幼児だしぃ。
言うなれば、さっむい日に灯油が切れてこたつしかない状態で、あったかこたつに入った感じ!
といえばわかりますかね?
いやもうね。

きーもーちーいーいー!

うん、もうその一言に尽きるね!
いや、もう本当にほかの全てがもうどーでもいいくらいに。
……きっと世のモフラーなら絶対にわかってくれると思う!
ほら、人を駄目にするクッションってあったじゃない?
これは人を駄目にするモフモフだよ!
マジで、触ってみそ?って言いたいくらい、気持ちがいいんだよ。
洗いたての子猫の毛をモフモフな厚み……ピレニーズとかサモエドの冬毛並みに密でフサフサにした子猫の触り心地!
わかる?わからないよね!
だって、大きいモフモフは、硬めの毛になるじゃない?
それがあなた……仔猫って言うか、猫の腹毛というか……。

オフウッとしか声出ません!

そこに自分が埋もれるのだよ?
もう、毛皮の海だよ!
すごいっす。
あ、もちろん黒いんだけどさ。
ああ、もうこのままでいたい。
たぶん、私、一体化してるよね。
黒猫服だもんよ。

「ママ、溺れてない?」
「……ない。堪能中……幸せ、満喫中…………。」
「寝ないでよ?」
「………がんばる。」
「それは……どうなの?」
「(ちかたないの。ぱぱはきもちーの。)」

うん、マジで気持ちいい。
やばい。
しかし、私しか言葉通じないから……寝たらやばいよね?
ロドリヌスたちがまた、剣を抜いたら困るしね。
だが、離れがたい。
ああ、幸せ。
でも、おっきすぎるよね……。
乗り物、無理じゃない?
まあ、なんかひとっ飛びで山越えとか簡単そうなんだけども……。

「ママ、やばい。私も本来の目的を忘れてしまう。でも、そうすると違約金が……。」
「あっ……。」

あったねえ。そういえば、そんなシステム。
そう、依頼は達成できないと違約金が発生してしまう。
結構いい金額なのだ。
まあ、失敗して死亡したりするのを避けるためなんだとか。
つまり、失敗しそうなランクを受けるなってこと。
ぎりぎり、Eランクが一個上のランクでさらにそのランクのなかでは難易度が高いものを受けたら……普通なら失敗するだろう。
だから、それを防ぐために高めの違約金か定められているんだって。
まあ、それでも受ける人はいるみたいだけどね。
私?は、払える。
でも、無駄なお金は払いたくない。
うう、だがモフモフ堪能は『無駄』なんかじゃない。
実に身のあることだと思う。
でも、やはり……違約金はいや。

「うう、今度、遊びに来たい。」
「だねー。」
「(……歓迎しよう♪)」

心なしか、黒サーベルパパは声が弾んでいる気がする。
お腹をめいいっぱい撫でたからかな?

「(爪はどうする?)」
「私が切っていい?」
「(その小さな手で切れるのか?)」
「うん、たぶん。」
「(わかった。ルーク、ポーン、降りてこい。)」
「「((はっ。))」

ダダンっとまた前に二頭の黒サーベル。
でもパパよりも一回り小さい?

「(キング、食い殺しますか?)」

一頭がグルグルと唸る。

後ろで、チャキッと剣を手にするロドリヌスを感じた。

「(しない。我が子の恩人だ、控えろ。)」
「(……冗談です。)」
「(冗談に聞こえないよ?ルーク。)」
「(……うるさい、ポーン。……、このガキ……どチビは、良い香りがします。)」
「(まあ、それは認めるが……では、なく。爪を一本ずつ渡してほしいんだが。)」
「(話は聞いてましたから、呼ばれた意味は理解しています。……しかし、本当に爪だけですか?)」
「本当に爪だけだよ。利き手じゃない方の爪でいいけど、利き手ってあるのかな?」
「(本当に言葉を理解するのですね。私は構いませんよ?できたら左の爪で。)」
「ありがとう。」
「(!!!……貴女、可愛いですね。私の番になりませんか?)」
「ん?つがい?つがいって、番のこと?」
「(人族にはない言葉でしたか?意味は、わかりませんか?)」
「いや、意味は大丈夫だけど……。」

職業がらそれは大丈夫。
あ、私の職業の話なかったか。
動物病院でAHTアハトしてました。今はあんまり、そう言わないかな?簡単に言うと動物病院の看護師ね。

閑話休題ま、ひとまず置いておく

異世界ラノベにも『番』という言葉も出てくるし、意味はわかる。
が、私を『番』にって意味がわからない。
いくら、自由恋愛とは言っても……魔獣とってどうなの?
流石に私は無理かな?
モフモフは愛でるものであって、恋愛には向かないっ!

「だめ!ロドリヌス!」

って、思案してる場合じゃなかった。
つい、焦りすぎて呼び捨てに!

「だがっ!こいつは番と言ったのだろっ!許せるわけないだろっがっ!」
「いや、まって、待ってって。」

私は、今にも剣で飛びかかろうとしているロドリヌスの剣を持つ腕に飛びついた。

「ば、危ないだろっ!」
「もう、危ないのは、ロドさんしょう!」

全く、もう。
私も不用意に言葉にしてしまったから、とりあえず落ち付いていただきたい。

「わやくちゃになるのが面倒なので。まずは、番はお断りします。」
「うんうん、そんなことより爪だよね。」
「そうだねー。」
「(残念です。もしや、獣の姿が嫌とか?でしたら人化いたしますが?)」

できるの?
いや、できてもモフニャンのままのが一番いいです!

「いや、そのままで。って、話が進まないからっ。」
「(すまぬな。では、私のから切ってくれ。)」

白モフのパパが、手を出した。クイッとしてくれると鎌のように鋭爪がピッとなった。








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