101 / 124
第三章 異世界を満喫する
No.16
しおりを挟むはあ……なんて幸せなんだ……眠い。でも、眠ってはいけない。
この山の上……少し肌寒く感じるのですよ。
まあ、標高高いなら寒いよね?
といっても結界もしていたし、この服には温度調節の魔法が付与されているので、顔が少しさむいくらいなんですけどね……。
寒さは、気分ですよ。
でもここまで、割と疲れてるじゃないですか。
そこにこの天然のあったかモフモフですよ……眠くなるよねー。だって、身体は幼児だしぃ。
言うなれば、さっむい日に灯油が切れてこたつしかない状態で、あったかこたつに入った感じ!
といえばわかりますかね?
いやもうね。
きーもーちーいーいー!
うん、もうその一言に尽きるね!
いや、もう本当にほかの全てがもうどーでもいいくらいに。
……きっと世のモフラーなら絶対にわかってくれると思う!
ほら、人を駄目にするクッションってあったじゃない?
これは人を駄目にするモフモフだよ!
マジで、触ってみそ?って言いたいくらい、気持ちがいいんだよ。
洗いたての子猫の毛をモフモフな厚み……ピレニーズとかサモエドの冬毛並みに密でフサフサにした子猫の触り心地!
わかる?わからないよね!
だって、大きいモフモフは、硬めの毛になるじゃない?
それがあなた……仔猫って言うか、猫の腹毛というか……。
オフウッとしか声出ません!
そこに自分が埋もれるのだよ?
もう、毛皮の海だよ!
すごいっす。
あ、もちろん黒いんだけどさ。
ああ、もうこのままでいたい。
たぶん、私、一体化してるよね。
黒猫服だもんよ。
「ママ、溺れてない?」
「……ない。堪能中……幸せ、満喫中…………。」
「寝ないでよ?」
「………がんばる。」
「それは……どうなの?」
「(ちかたないの。ぱぱはきもちーの。)」
うん、マジで気持ちいい。
やばい。
しかし、私しか言葉通じないから……寝たらやばいよね?
ロドリヌスたちがまた、剣を抜いたら困るしね。
だが、離れがたい。
ああ、幸せ。
でも、おっきすぎるよね……。
乗り物、無理じゃない?
まあ、なんかひとっ飛びで山越えとか簡単そうなんだけども……。
「ママ、やばい。私も本来の目的を忘れてしまう。でも、そうすると違約金が……。」
「あっ……。」
あったねえ。そういえば、そんなシステム。
そう、依頼は達成できないと違約金が発生してしまう。
結構いい金額なのだ。
まあ、失敗して死亡したりするのを避けるためなんだとか。
つまり、失敗しそうなランクを受けるなってこと。
ぎりぎり、Eランクが一個上のランクでさらにそのランクのなかでは難易度が高いものを受けたら……普通なら失敗するだろう。
だから、それを防ぐために高めの違約金か定められているんだって。
まあ、それでも受ける人はいるみたいだけどね。
私?は、払える。
でも、無駄なお金は払いたくない。
うう、だがモフモフ堪能は『無駄』なんかじゃない。
実に身のあることだと思う。
でも、やはり……違約金はいや。
「うう、今度、遊びに来たい。」
「だねー。」
「(……歓迎しよう♪)」
心なしか、黒サーベルパパは声が弾んでいる気がする。
お腹をめいいっぱい撫でたからかな?
「(爪はどうする?)」
「私が切っていい?」
「(その小さな手で切れるのか?)」
「うん、たぶん。」
「(わかった。ルーク、ポーン、降りてこい。)」
「「((はっ。))」
ダダンっとまた前に二頭の黒サーベル。
でもパパよりも一回り小さい?
「(キング、食い殺しますか?)」
一頭がグルグルと唸る。
後ろで、チャキッと剣を手にするロドリヌスを感じた。
「(しない。我が子の恩人だ、控えろ。)」
「(……冗談です。)」
「(冗談に聞こえないよ?ルーク。)」
「(……うるさい、ポーン。……、このガキ……どチビは、良い香りがします。)」
「(まあ、それは認めるが……では、なく。爪を一本ずつ渡してほしいんだが。)」
「(話は聞いてましたから、呼ばれた意味は理解しています。……しかし、本当に爪だけですか?)」
「本当に爪だけだよ。利き手じゃない方の爪でいいけど、利き手ってあるのかな?」
「(本当に言葉を理解するのですね。私は構いませんよ?できたら左の爪で。)」
「ありがとう。」
「(!!!……貴女、可愛いですね。私の番になりませんか?)」
「ん?つがい?つがいって、番のこと?」
「(人族にはない言葉でしたか?意味は、わかりませんか?)」
「いや、意味は大丈夫だけど……。」
職業がらそれは大丈夫。
あ、私の職業の話なかったか。
動物病院でAHTしてました。今はあんまり、そう言わないかな?簡単に言うと動物病院の看護師ね。
閑話休題
異世界ラノベにも『番』という言葉も出てくるし、意味はわかる。
が、私を『番』にって意味がわからない。
いくら、自由恋愛とは言っても……魔獣とってどうなの?
流石に私は無理かな?
モフモフは愛でるものであって、恋愛には向かないっ!
「だめ!ロドリヌス!」
って、思案してる場合じゃなかった。
つい、焦りすぎて呼び捨てに!
「だがっ!こいつは番と言ったのだろっ!許せるわけないだろっがっ!」
「いや、まって、待ってって。」
私は、今にも剣で飛びかかろうとしているロドリヌスの剣を持つ腕に飛びついた。
「ば、危ないだろっ!」
「もう、危ないのは、ロドさんしょう!」
全く、もう。
私も不用意に言葉にしてしまったから、とりあえず落ち付いていただきたい。
「わやくちゃになるのが面倒なので。まずは、番はお断りします。」
「うんうん、そんなことより爪だよね。」
「そうだねー。」
「(残念です。もしや、獣の姿が嫌とか?でしたら人化いたしますが?)」
できるの?
いや、できてもモフニャンのままのが一番いいです!
「いや、そのままで。って、話が進まないからっ。」
「(すまぬな。では、私のから切ってくれ。)」
白モフのパパが、手を出した。クイッとしてくれると鎌のように鋭爪がピッとなった。
0
お気に入りに追加
1,411
あなたにおすすめの小説
没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!
日之影ソラ
ファンタジー
かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。
しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。
ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。
そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。
こちらの作品の連載版です。
https://ncode.syosetu.com/n8177jc/
物語のようにはいかない
わらびもち
恋愛
転生したら「お前を愛することはない」と夫に向かって言ってしまった『妻』だった。
そう、言われる方ではなく『言う』方。
しかも言ってしまってから一年は経過している。
そして案の定、夫婦関係はもうキンキンに冷え切っていた。
え? これ、どうやって関係を修復したらいいの?
いや、そもそも修復可能なの?
発言直後ならまだしも、一年も経っているのに今更仲直りとか無理じゃない?
せめて失言『前』に転生していればよかったのに!
自分が言われた側なら、初夜でこんな阿呆な事を言う相手と夫婦関係を続けるなど無理だ。諦めて夫に離婚を申し出たのだが、彼は婚姻継続を望んだ。
夫が望むならと婚姻継続を受け入れたレイチェル。これから少しずつでも仲を改善出来たらいいなと希望を持つのだが、現実はそう上手くいかなかった……。
【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました
ユユ
恋愛
毎夜天使が私を犯す。
それは王家から婚約の打診があったときから
始まった。
体の弱い父を領地で支えながら暮らす母。
2人は私の異変に気付くこともない。
こんなこと誰にも言えない。
彼の支配から逃れなくてはならないのに
侯爵家のキングは私を放さない。
* 作り話です
好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。
しゃーりん
恋愛
学園の卒業パーティーで傷害事件が起こった。
切り付けたのは令嬢。切り付けられたのも令嬢。だが狙われたのは本当は男だった。
狙われた男エドモンドは自分を庇った令嬢リゼルと傷の責任を取って結婚することになる。
エドモンドは愛する婚約者シモーヌと別れることになり、妻になったリゼルに冷たかった。
リゼルは義母や使用人にも嫌われ、しかも浮気したと誤解されて離婚されてしまう。
離婚したエドモンドのところに元婚約者シモーヌがやってきて……というお話です。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?
リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。
誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生!
まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か!
──なんて思っていたのも今は昔。
40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。
このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。
その子が俺のことを「パパ」と呼んで!?
ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。
頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな!
これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。
その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか?
そして本当に勇者の子供なのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる