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第二章 異世界というものは
No.56
しおりを挟む「さてと。じゃあ話してくれるのか?」
と明るい声でハロルドが言ってきた。暗い顔の私を元気付けているようだ。
「うん……。」
「ママ、もういい加減さあ復活して?」
だって……忘れたことなんてなかったから……。自己満のことだとしてもかなりショック…………。
はあ、でも。こんなことではいけないよね。気を取り直していかなければ。
そう、娘が言っていたように…私たちは転移ではなく転生したって言っていたはず。生き返らせたって。だから、たしかに此処に来た日が誕生の日。
来年は二人でその日を祝うことにしよう。
「うん。わかった。来年は絶対に忘れない!」
「というか、明日の引越しパーティーと一緒にお祝いしちゃましょう?せっかく、大人仲間入りなんですもの。ふふふ。」
「だな!」
と話が変わってしまった。
自分の落ち込みのせいとはいえ、なんだか苦笑しているハロルドに申し訳ない。
「ソカの誕生祝いと引越しパーティは、とりあえずだ。やるとして……話してくれるか?」
あっ、やることは決まりなんだ……。まあ、そうか。皆んなの奏歌ちゃんだもんね。
「うん。」
そうして私たちは、前世で親子だったことを話した。それもショウが母でソカが娘だと。
更には一緒に死んだであろうところまで。
そのあとは、何がどうなってか……(さすがに神様の声云々は、なしで……そもそも会ってないしね。)気がついたらあの森にいて、前世の記憶とガードのような魔道具みたいなもの(スマホ)しか無かった。ただ、自分たちには魔力があるのは知っていた……というか気づいていたし……。現世の記憶(ないのだけども!)がなかろうと自分たちが、家族であることには違いない。
だから、とりあえず人のいる所を目指した。そのあとは、ハリーやハロルドが知っての通りだと。
ただ、なかなか言えなかったのは、どう見ても姉妹にしか見えない上に母の方が下で幼児という事実から……信じてもらえないかもしれないし、自分たちにもどう説明していいか、わからなかったからと。
自分たちの存在だってよくわからないのだから。(そもそも神仕様なんだもんなあ……。)
流石に神様云々は、やっぱり置いておいたが。
だって、それこそ荒唐無稽じゃない?
話全てではないけど、神様に関わること以外を話し終えると知っている二人は、静かに目を閉じていた。
他の三人は言葉を無くしているのか、それとも信じられず……痛いやつだと思われているのか、静かだった。
「……はあ。」
ハロルドがでっかい溜息を吐く。
「なんだよ、そっか。いやあ、そんな程度のことならよかった。ん、まあ、想定内だな?」
「本当に。」
「なんだ。そんな程度か。」
は?
彼は一体何を聞いていたのかな?
私たちの話……おかしくないのか?
えーと、前世しか記憶がないって……のが、その程度?って、ドノテイドサッ!!!!
想定内って、どこのお偉いさんの言葉なのさっ!!!!
想定内って、想定内って……どんだけうちらは……。
「いやあ、もうさあ、神様の使徒だとか……、実は人間じゃなくて、ホントに女神だとか。もしくは、魔王の仮の姿とか、聖霊王の娘だとか……、いやあ、もう、いろいろと考えすぎちゃったよ。」
あははははははは……と笑っているが使徒ではないが神様がかかわっているので、なんだかちょっと気まずい。
そんな私の心境を読んだのか、ミリオン大魔王から恐怖の微笑み攻撃が!!
「ふふふふ、ねえ?ショウちゃん?まだ何か隠してな~い?」
怖、ミリオン、怖!
私はブンブンと首を振った。
……後で落ち着いて考えると神様云々を話してもよかったんだとわかるんだけども。だって、口止めされてないしね。
で、私よりも聡い奏歌がそれに気づいたわけなんですよね。
「隠す気はないんだけども、う~ん、私たちもにわかに信じらんないんだけど。それでも聞きたい?」
「えっ。そそそか?」
「んー、ここまで来たらさあ。なんか、もうどうでもよくない?目立っちゃったし?ママは王族にたてついちゃったし?魔法やらもねえ?
そもそも、またあんなことがあったら、目立とうが……またでっかい魔法を自重しないでしょう?」
「…………確かに。」
うん、自重する気ないよね。たぶん。目立ちたくはないけれど、やっぱり大切な家族、友達に危険が迫れば躊躇なく使うだろう。
「私は、王族やらさあ権力のある人だからって信じることはできない。でもさ、ここにいる5人は信用してる。まあ、裏切られたら……私たちの見る目がなかったってことだよ。」
「「「「「裏切らん!!!!!」」」」」
「ふふ、信じてるよ。ね?まあ、いいじゃん。なんかさあ、ごまかすのもめんどーなんだもん。」
という奏歌の顔は『もう、すべてが面倒くさいんだ』と言っていた。
ごまかすのも何もかもがと。
まあ、確かにいるはずのない親を捜されても困るし。神様からのメールをごまかしたりも確かに面倒くさい。
「うん。そうだね。まあ、なんかあったら……逃げればいいか……。」
本気で逃げて……ついてこれそうなのは、ロドリヌスくらいしかいないしね。
「…………逃がさねえがな……。」
ロドリヌスが案の定、不穏な言葉をつぶやいたが……わかっていたのでスルーした。
「さて、二人が納得したところで……洗いざらい吐いてちょうだいな。」
奏歌と顔を見合わせて、頷きあう。
神様からの声を聞いて答えたのは、私なので……私が説明をすることにした。
「まあ、本当に信じてくれるか……わからないと思うんだけども……。」
そうして、私は話を始めた。
私たちがもともと違う世界に生きていたこと、事故にあったのだが本当は事故にあう予定じゃなかったらしいが……それについてはよくわからないこと。
ただ、奏歌だけは死なせたくなくて、神様に願った……それにこたえてくれたらしいこと。
でも、さらに予定外で私を子供にしてしまったらしいが、それをしたのは生き返らせてくれた神様ではないということ。
で、その神様が私たちを蘇生できる世界がこの世界だったこと。
魔道具ではなく、自分たちのスマホという通信機器を神様が便利グッズにかえてくれていたり、神様がストーカーみたいに自分たちを見守っているらしい。こちらからは、連絡取れないけどあっちからは、たまに連絡がくること。
神様仕様の体のためなのか?かなりの魔力量やらスキルやらがおまけされていたこと。この世界にはこのままの姿と記憶で転生したことなど、途中途中で奏歌が付け足しをしつつ、全てを話し終えた。
「って、わけなんですが……。」
「…………神……ね。」
やっぱ、信じられないよね?
私だっていきなりそういわれたら……頭大丈夫ですか?って思ったり、厨二かよ、痛いやつって思うもん。
「信じない?」
奏歌がみんなに問う。
「…………いや、逆に合点がいったなと。」
ロドリヌスが。
「そうだな。ちょっと想定内とはいいがたいが神の使徒も、あながち間違いじゃないってやつだな。」
ハロルドが。
「ま、そんなところよね。」
ミリオンが。
「あははは、どうりでね。」
ラナンが。
「なるほど。」
ハリーが。
「我はしっていた。」
って、シャル……いつの間に。ドヤァって顔でロドリヌスを見てるし。
「まあ、お前らのすごさの原因がわかって……逆にほっとした。」
「そうね。……ただ、なおさら教会には気を付けなくてはね。」
「ああ、そうだな。まあ、このメンバーから奪える奴がいるとは思えねーがな。」
って、5人は大笑いしたけどシャルはスルーされて、若干ふてくされてるように見えたのだった。
しかし……神様が云々……を気にしないって……と遠い目になっても許されるよ…ね?
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