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第二章 異世界というものは

No.14

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さて、と五人でテーブルを囲む。
ピロリと広げられたのは、大きな紙だった。それに書いてあるのは、かなりデカイ家の見取り図だ。
小さくていいのに……。
だが、しかしと考える。
デカイ身体をしてるんだもんね……奏歌と私サイズにしたら……狭いか?というか犬小屋サイズなってしまいそうだ……ん、我慢しよう。

「簡単に見取り図はあるんだが、あとはお前たち二人の要望を入れていく。」
「ふふ、私たちの案はもう聞いてもらってるの。だから、後は貴女たち二人の話ね。」
「そうなんだ?んと、もしかして、この二階の続き部屋みたいなところが、私たちの部屋?」
「そうだ。廊下からは一応別々の部屋になってるが、中で扉で繋がる。そこは、一応二人が了解すれば行き来出来るような鍵にするが、外からは完全にそれぞれの認証式だな。勝手には入れない。
まあ、招きがあれば入れるがな。」
「そんなに厳重に……が必要?」

まあ、安心といえば安心だけど。なんか一緒に暮らすにしては、かなり厳重じゃないかな?

「当たり前だ。言っておくが、お前たち二人は幼いが……極上の女だ。だから、たとえ俺たちだとしても油断は禁物だ。」
「まあ、牽制しあうけどね?でも、そうね……少しだけ抜け駆けしてもいいわよね?せっかく、ラナンたちがいないんだもの。」
「ぬけがけ?にゃんの?」
「ふふふ、そうねー。」

にっこりとミリが微笑んで、奏歌の手を取った。

「私は、ソカ、貴女をお嫁さんにしたいわ。」

にっこりとミリオンが微笑んだ。

「私をお嫁さん?ふーん。…………は?お嫁?わたしを?は?」
「そう、まあ?まだ先でいいけど。まあ、そういうわけだから。考えといてちょーだい?」

そう言って、奏歌の頰にキスをした。

「……ショウ、ごめんなさい。とりあえずは剣を下ろしてくれると嬉しいのだけど?」

私は、自分でもびっくりするくらい早く、斜め向かいに座るミリの首筋に短剣を当てていた。
いや、まあやろうとはしたけども、身体が勝手に動いた感じだ。
え?シャルの力?
『我は何していない。』
つまりは、自分の力か。

「早すぎて、反応できないなんて……私もまだまだね。」

私は自分の速さに動揺しつつも、それを悟られないようにする。

「ソカの手をはなちて?これ以上のことをちゅるにゃら、覚悟ちて?」
「ま、ショウ!だ、だ、大丈夫だから!と、とりあえずは、剣、しまって!」

なぜか、奏歌の方が慌てている。
ミリオンは奏歌から手を離し、降参のポーズをした。
イケメンはそれさえも優雅だね。

「まあ、まあ。ショウ。落ち着け。ミリオンも悪ノリしすぎだ。」
「あら?私は本気よ?」
「ちゅまり、ミリしゃんはソカがすきにゃのか?」

首に剣を当てたままで聞いた。

「ええ、結婚したいくらいに。……どうかしら?ソカ。」

首に短剣を突きつけられているというのに、優雅に微笑んでいるミリオンはかなり豪気な性格なのだろうか?
勇者であれば、このくらいでは慌てないのかもしれない。

「あの、あのさ。ま、前にも言ったよ?まだ、恋愛とかは考えられないって。だ、だから、こ、答えはむ、無理です!」
「うーん。すぐじゃなくていいわ。考えていてほしいの。まあ、そうね。恋愛を考えられる余裕ができたら真っ先に私を考えてくれたら嬉しいわ。」
「あ、はい、そ、それなら。」
「……ミリしゃん。ソカとあたちの許可にゃく、さわったらちゅぎは、首がはにゃれるからね?」
「……肝に命じとくわ。ショウ。それにしても、ロド様も大変ねー?」
「クク、いいだろう?絶対に誰にもやりたくないね。」

短剣を鞘にしまうと、ソカの手を取りミリから離した。
頰とはいえ、いきなりキスするなんて!まったく。
シャルも少しは守れ!
『うっ、了解した。しかし、我は主の……』
私より、奏歌を優先!
『り、了解した。』
人化しても心の中で喋れるのは、有難い。
ミリたちが何となく、ソカを気に入っているのは知っていたが……直接手を出すとは思わなかった。
……結婚してを子を産めというような男の後継だ。
うん、少し信用しすぎた。
いや、人としては信用してるよ?でも、男としては…ね?やはり、警戒すべきだった。

「厳重の意味がわかった。だから、しょれでいい。」
「で、ここが俺の部屋。」
「隣にゃの?」
「ああ、で、ソカの隣はラナンの部屋だ。」
「ふーん、まあ、ラナンしゃんにゃら。」
「あら、ラナンだって危ないじゃない。」
「ラナンしゃんは、おんにゃだけど、ちんちてきだも。」
「あら、私だって。」
「ちんちは、ちゅーちない。」
「ほっぺくらいいいじゃないの。」
「だめ。」
「なんで?」
「減る。」
「何がよ……。」
「いろいろ。」

そう、いろいろ減る。私の心とか、精神が主に減る。すんごく減る。

「はいはい、まあゆっくりするわー。」
「すな!」
「ミリさん、あんまりショウをからかわないでください。……もちろん、私も。」
「はーい。」
「……話を進めていいか?」

ロドリヌスが頭をかきながら、……少々呆れているように言った。




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