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第二章 異世界というものは

No.7

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「ほーーー?誰が主だと?なあ?ショウ?」
「我が主は、ショウ。この者の全ては我の物にすると決めたのだ。」

は?なんで?なぜでしょうか?

「誰が?誰のものだと?」

凄い殺気に部屋の温度は低下している気がする。
……ブリザード?

「あのさあ、シャルだっけか?」

私が何を言ったらいいのか考えあぐねていたら、奏歌が助け舟を出してくれるらしい。
さすが、我が娘。ありがとう!
どーにかしてくれ!
情けない母ですまんけども、私は何を言ったらいいかわからん。
もう、全力で現実逃避に羽ばたきたい!

「いかにも。」
「うーん、貴方はママを幸せにできるの?」

は?何を言っている?なんで、急にそれ?

「どういうことだ?」
「まずね?貴方がやったことは、ま…ショウと契約してキスして魔力を奪ったこと、誰にもあげないってハードなキスをしたこと?だよね?でも……ショウは一つも幸せになってないでしょ?それより、困らせてる方が大きいじゃない?」

娘ー!今言うとこなの?
ねえ、キスのこと言うのはさ、やばくない?
ねえ?……勇者の気が怖いんだけど、絶対に魔力が吹き出しているよね?
うう、大丈夫かな?部屋壊れないかな?
って思うくらい、魔力を感じるのは気のせい?じゃないよね?

「契約?魔力を奪う?キスがなんだかは知らんが、何故かかなり頭にくる言葉だな!ちなみに、ソカ?説明をしてほしい、キスとは?」
「んー、口付け?接吻?って言えばわかる?」
「………。」

ばかっ、なんで言っちゃうのさ。わからないなら、そのまま誤魔化せば……あーーー!ほらほら、なんか宙に浮かび始めたし!
漫画でよくある、後ろにオーラごと石とかが浮き上がるの。
リアルで見ると……やばいってくらい冷や汗が(タラリ)

「ほーーーー?」

「あーーーー!まて、まって!ろどしゃんおちついてぇ!
これはひとじゃないの!そのね!魔神だから!」
「まじん?」
「そう、そうにゃの!魔神の短剣のけーやく!なの!
で、魔神の短剣の魔神で、魔力がひつようで、魔力がにゃくにゃってて、で、でなんでしゅ!ご、ごはんにゃんだよ!ね?だから!」

ああ、もう、焦りすぎて自分で自分が何を言ってるかわからない!
うー、恨むぞ!奏歌!
すると、ピコーンピコーンとメールが届いた。
何?
ーーこーゆーのは隠すと逆に不味いのだよ。
でも、ショウは言えないじゃん?だから、言ってあげた。私に感謝してくださいねー。ーー
じゃ、ねーよ!って、もう、勘弁してよー。
話すにもタイミング必要でしょうが!
って、まだ15の奏歌に求める私が悪いのか?

「幸せ……?ふむ。命は全力で守るし、そうだな?育った暁には最高の快楽を。」
「いらんわ!」

何を言いだすんじゃ、この魔神は!
第一、私の幸せは一つだ!

「……あたちは……。あたちのちあわせは、ソカが幸せになることなの!
シャル、ソカを守るための力以外で、あたちから直接、力とるのはきんちだからね。
で、にゃんで出てきちゃったの?今、でてくるひつよう、にゃいよね?」
「……牽制?」

だれが、なんのために!

「にゃんで?にゃんのために?」
「二人の男に言い寄られているのを指を咥えて、中からみていろと?」

ん?どーゆーこと?

「ふーん、シャルもショウが好きなの?」

奏歌、何をいってるの?

「好き?」
「そう、違うの?」
「いや、誰にも渡したくない。誰にも触れさせたくない。ただそれだけだが。」
「ふーん、私が触るのは?」
「それは、血を結ぶものゆえ。」
「じゃあ、ラナンさんは?」
「同じ性ゆえ。」
「ミリさんは?」
「……この者は、ショウを欲してはいまい?」
「つまり、ショウのことを好きって言った人がショウに触るのが許せないわけよね?」
「……そうだな。」
「なら、好きなんじゃん?」
「は?好き……ショウを?」

と、今まで飄々とした魔神然としていたシャルがいきなり、私をみてボンって爆発するように真っ赤になった。
……え?
なんだ?

「我はショウを好きなの……か。そうか……これが。」
「恋だね。」
「これが!」

ちょーっと、そこで茶番劇をしないでくれ!

「そうか、お前もショウが好きなのか?だが……ショウに口づけしたとか言ったな?
……ファイ!」 

ロドの手にいつのまにか取り出した剣が燃え出す。
おーい!
まさか、まさかのバトル再開!
やめよう!室内だし。

「ま、まって、ロドしゃんまって!」
「いいや、ショウは危ないからおいで。大丈夫だ。魔神の短剣なんぞ無くとも俺が守るから。」
「ぬかせ、我をお前ごときが倒せると?」

ふふふと二人が怖い笑みを浮かべて、見つめ合う……もとい、睨み合う。

「ちょお、まってよー!にゃ、にゃんでヤル気にゃってんの?やめてよー!」
「まってまって、シャルの魔力の源って、ショウだよ?また、キスされちゃうじゃん。」
「大丈夫だ、そんなことはさせないからな。短剣が壊れるならよかろう?」
「えー!壊しちゃうの?勿体無くないかな?だってすごく強いらしいし?」
「だから、代わりに俺が守ると言っている。」

はあ、とでっかくため息をついて、ミリオンが二人の間に立つ。

「……ロドリヌス様?まあ、落ち着いたらどう?
そもそも、その魔神って、人じゃないのでしょう?
まあ、ショウの守護神だと思ったらいかが?」
「いーや、こいつは肉欲を持っている。即ち獣だ、害獣だ。それは敵でしかない!」

「ばっ、な、に、ばかーーー!」

私は真っ赤になって叫んだ!なんなんだよー、もう!
馬鹿だろ!馬鹿だよね?肉欲だあ?って?
だ か ら !
私は3歳児だっつーの!たしかに、キスはされた、されました。はじめのは、いわばご飯だよ!エネルギーなの!
2度目のはよくわからないけども!
もう、嫌だ……すごく疲れたよ。
もう、わけわからん。
私はスカートをまくり、短剣を抜いた。
キレた!
ハッキリいって、キレました。
当事者を無視して、何をやってんだって話ですよ!
好き?
なら、なんだってんだ!
言葉は悪いかもしれない。でもね?私は馬鹿なことを言う奴らには払う敬意は持ってないんだよ!

私はバシンと短剣をテーブルに置く。手が痛かったけど、そこは我慢した。……ちょっと涙目だけども。

「シャル、契約の解きかたは?」
「は?なに?」
「もー、おにゃかいっぱいなんでしょう?なら、とけばいいのでちょ?もう、二人ともいらにゃい。……ちゃんにんか。……もう、あたちはソカ以外いらにゃい。」

一人残すとたぶん、こいつらは納得しないだろうことはわかるから。

「あたちは、『おとこ』はいらにゃい。もうソカとふたりで、くらちていく。
もう、めんどくしゃいのは嫌。
べつに、おんにゃ宿にいたらいいんだもん。もう、多くはのじょまにゃい。あたちの中の一位は、ソカだけだから。
ラナンしゃんもミリオンしゃんも、あたちをふちゅうの子供とちて、あちゅかうからとりあえじゅ、ふたりとなら行動ちてもいい。でも、ソカに手をだしゅなら、二人ももういらにゃい。ちつれいなのは、承知の上でいわせてもらう。
自由恋愛に口をだしゅきはないけども!今はとくに……めんどくちゃいことばっかにゃら、もういらにゃいの!
………ソカ、帰ろう。
もう、ちゅかれたし。」

ものすごく疲れたし。
また、人が増えて疲れる人間関係ばかりなら……もう、ソカと二人だけで生してみせる。幸いにも魔力過多らしい。
常識とか……わからないけど、食べて寝てができれば、この魔法世界。魔法でなんとかできるはず。

「ま、まって、ロドリヌス様の結界があるから。」

ミリオンが慌てて、私を止める。
でも、私はもう止まらない。
帰るってきめた!

「んーと、めんどくちゃい!いらない!」

いらない!と叫ぶと何かがパラパラと壊れて降ってきたような気がした。実際には
奏歌の手を握って、叫ぶ。

「テレポート!」
「ま、まて!……

なんかいっていたのが聞こえたが、すぐに目の前は女宿の部屋の中にいた。
とりあえず、奏歌が『宿に連絡だけしてくるね?』と言って部屋から出て行った。
とりあえずはそれほどの危険はないと思う。
たぶん、ここまで馬を飛ばしてもかなり時間がかかるだろうし。
流石にここにロドは、飛んでこないだろうと思う。
シャルは短剣ほんたいを置いてきたしね。
しばらくして、奏歌が戻ってきた。

「もう、ママは……しょうがないなあ。まあね?ママの気持ちもわかるよ?面倒と言ったらそれまででしょうよ。
たしかに今は、3歳だよ?でもさ、中身は38歳じゃん?
現在の三人と年離れてないじゃない?精神的にさ。
むしろ、ママのが老成してるんじゃない? 
な~んて、私は思ったりもしたなあ。
それにさあ?ママは、三人を好きじゃないの?」
「……わかんない。」
「んー、でも、嫌じゃないんでしょ?」
「んーーーーー。」

たしかに、嫌ではないし、嫌いではない。
触られても気持ち悪くはないし、恐怖に怯えることもない。
でも……さ。
子供になったからかもしれないじゃない?

「ママはさあ。もう少し、自分を知るべきだとおもう。
いーじゃん、貢ぎたいって言うなら、貢がせればさ。?
闘いたいなら闘わせりゃいいじゃん。ほら、ここってさ『本能』のが強いような世界じゃない?動物的っていうの?だからさ、よく動物が求愛行動で雌に貢いだり、好きな雌のために戦ったりするじゃない?それだと思えばさあ。
……私はママがほしくて、闘ってでも、ママを手に入れたい人を応援し……タタタタ。」

ほっぺたを引っ張ってやった。
人は『本能』に抗うための力があるでしょう?『理性』というものが。それを失ったら『獣』なんだよ。

「もう、痛いなあ。」
「あたちは、人が傷つけ合うのは好きじゃないの。……ちってるでちょう?」

偽善だと言われても。目の前で争うのは嫌だ。見たくない。

「それに、3歳児相手に『肉欲』とか言っちゃう……大人はまじゅいとおもう。」
「ふーん。でもさ、ママ、『肉欲』ってなあに?」

キラキラと無邪気なを向けられて……さすがにそれを説明するのは……勘弁してほしい。

私は静かにスマホを見せた。
辞書は使えたから。

にくよく【肉欲/肉慾】 
ーー異性の肉体を求める性的欲望。性欲。情欲。

ぐわああああっと変な雄叫びを上げて、奏歌は真っ赤になってスマホを投げたのだった。

私は耳が痛いです。
……声量がありすぎなのわかって?


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