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第一章 マジ異世界ですね
No.21
しおりを挟むドオォォーッンという、辺りを震わせるほどの音と共に目の前に、もう金輪際、見たくないと思っていた男が笑っていた。
はあ、二度目のご登場だよ。
「はは、お前の魔力はすぐわかるな。本気で逃げられるとでもおもったのか?だったら、お生憎だったな?
魔力のランクは変わらずとも、流石にレベルには差はあるだろう?
まして、体力がないんだったか?俺は、絶対に逃す気はない。」
そう……。
こいつが魔力感知を持っていたのを忘れていたよ。
その上、こいつもやっぱり転移できるわけで……なんてこったい。
「にゃんで、そんにゃにこだわるの?べつに、あたちでなくてもいいじゃにゃいか!」
「いや、俺はおまえがいい。俺はお前が物凄く気に入ったんだ。」
「ろりこんにゃの?」
「なんだ?そのろりなんとかって……意味はわからんが、とてつもなく嫌な感じだ。」
ロリコンは、やはり通じないか。しかし、『嫌』な感じはわかるんだ?不思議だな。しかし、これは上手く翻訳されていないのか?
「あの。」
なぜだが、奏歌が手をあげる。
「なんだ?」
「あの、ロリコンは幼女趣味ってことで幼女が好きなの?勇者さんって。」
「は?いや、もちろんアレコレ……ゴホッ……は、育ってからに決まっているだろうが!
まあ、ただ10年もすりゃ……ねーちゃん以上にはなるんだろう?」
「えーと、私っていくつに見てます?なんか、会話を重複してるみたいで嫌だけども!」
「……12歳くらいか?」
「今現在、んん、……15歳ですよ、もうすぐ16にもなります!もう!何回この会話をすりゃいいの?で、ちなみに、ママ……ショウが10年たっても13歳だからね?私ほどにもならないからね!」
「15?本当に?ショウは、ただ今だけ小さいとかじゃないのか?あの喋りは、3歳じゃないだろが?………変態っていわれた意味が今わかった。すまん、15年待つ。では……ダメか?」
かなり、ショックを受けつつも諦める気はないようで。
「んーと、あと根本的に勇者のおじさんは間違ってるもの。」
「お、おじ……いや、今は……間違ってるって何がだ?」
おい、娘。
当事者を置いてけぼりにして、何で相談にのっている?
勇者も勇者だ。大の大人がまだあどけない(私の主観だよ)少女に諭されるって……情けなかろ?
ラナンもなんで頷いているんだ。
こいつら、私を無視してやがるっ。今になって仲間はずれなんて……。
「まずさあ、いきなり子供を産めはないでしょう?
どう考えても、エッチだけさせろって言ってるようなものだもん。」
「ん?何が悪いんだ?あと、エッチとはなんのことだ?」
「えー?そこから?うわあ、めんどくさいなあ。」
「エッチがわからんが、何故、俺の子を産めがダメなんだ?最高の求婚で求愛だろう?全てに責任を持つと言っているんだろ?」
「……は?ちょっと待って、求婚求愛?」
「そうだ。子を産めってのは、養う気があるから言った。つまり、その、伴侶としてってことだぞ?どこがおかしい?」
「……ロドリヌス様、あんた、あれ婚姻を申し込んでたのかい?」
「当たり前じゃないか。婚姻を結ばず子を作るなどせんわ!」
おや、存外にこの勇者は真面目らしい。顔も微妙に真っ赤だしな。もしかして……純情オヤジなのか?
いやいや、普通に子作りを先に言い出す時点……おかしかろ?
普通じゃないだろ?あ、異世界だ、普通じゃなかったな。
でも、ラナンも頭を傾げてるってことは……やっぱりおかしいんじゃないですかね?
……でもラナンがごく一般の女子じゃなかったら……。
「なら、おじさん。まずはさあ『結婚を前提にお付き合いください』からだよ。
……そんなさあ?いきなりさあ、小さな子に『子を産め!』なんてさ。そんなの変態にしか思えないじゃん。それも、上から目線だから命令にも取れるし?
私たちは、この国にいつの間にかだけども。来たばっかりなんだよね。だから、いきなりあんなこと言う奴は、はっきり言って敵認定なんだよ。
もともと、私とかママは恋愛脳じゃないんだもん。だからさ、よくあるお花畑ちゃんみたいに、『私の王子様がやってきたわ♡』って考えられないわけなの。
もう、本当に恋愛系は二の次なんだよね。
まずとりあえず、生活の基盤を作りたいわけなの。だって、家もないし、冒険者もなりたてだし。
どうせ、10年以上はママと結婚できないわけじゃない?
ママが成人したらさ、再度申し込んでみたらいいと思うな。」
「……その間に取られたくない。だってなやっとだぞ?やっと見つけたんだぞ?同じ強さの、同じ色の魔力を……。」
遠くを見つめた瞳に影がさす。『孤独』の色が見えた。かつて、あんな瞳をした人を私は知っている。
そう、孤独の時間にずっとずーっと耐えてきた瞳だ。
私の中に、あいつに対するほんの少しだけ……優しい気持ちが生まれてしまった。
「……姉のほう、ソカと言ったか?いま、生活の基盤と言ったよな。それなら俺が養うんではだめか?生活全てを面倒みる……だから、せめて側にいてくれないだろうか?」
「んーと、ママどうする?」
えー、ここで私にふる?ふられた私は困るんですけども!
「だって、これってさあ。結局は、ママ……ショウの問題じゃん?たださあ、えっとおじさん。」
「ロドリヌスだ。」
「えー、言いにくい。」
「ロドで許す。」
「ロドさん、年の差すごくない?だってさ、10年経ったらロドさんは、爺さんにならん?爺さんにママを任せるのはちょっと……ねえ?」
歯に衣着せないやつだ。はっきり言ったよ、この子。
だが、まあ……私はぴちぴちの3歳児だからな(泣)!
「?何を言っているんだい?ソカ。ん?この世界のことを根本から知らないとか?あのな、魔力が高いと年を取りにくいことは常識なんだけどな。」
「は?何それ。どういうこと?」
「……なあ、質問な?ハリーとハロルドとミリとあたしなら、誰が一番年上か知っているかい?」
「えーー?んー?」
私的にはハリー、ハロルド、ラナン、ミリかなあ。
見た目も30、28、25、20くらいかな?
「ハリーさんかなあ。」
「ミリだよ。」
「エーーーーーーー!うそっ!」
「次があたし。でハリー、ハロルドだよ。ちなみに年なんだけどね。あたしが146歳だって言ったら、わかるかい?
まあ、だいたいみんな成人すると年がゆっくりになるんだが、魔力は、それにかなり影響するんだよ。
まあロドリヌス様とショウの年の差は……あんまり変わらないかもしれないけどなあ。なにせ、二人とも魔力が普通じゃないだろ?
ショウがまったく年取らなそうで怖い。
ちなみに、ミリは、200歳超えてるからね?」
あの一番若いミリオンが200歳以上。つまり、魔力がかなり高いってこと?
「……じゃ、40歳近くに見えるおじ…じゃなかった、ロドさんって魔力多いんだよね……で見た目がそれって……幾つなの?」
「見た目?40歳……喜んでいいのか、わからん。ヒゲのせいか?そんなにミリとは変わらんと思うのだがな。」
「いやいや、全然ちゃうよ?ミリさんは、20代にしか見えないもん。ロドさんはその倍に見えるよ。まあ、ヒゲは、老けさせてるかもだけど。ね、ママ。で、ロドさん、いくつなの?」
ウンウンと頷く。どーみても40歳代だぞ?まあ、髭面だからかもだが。剃ったとこで30歳が限度じゃない?ちなみに、前の私なら釣り合うかもね。
で、いったい年は幾つよ!
「……1000年は超えた。」
ほうほう、1000年とな?すんごいって…………………………………………………………………1000!先年、前年、1000って一千年のことじゃないよね?まさかだけどさ!
聞き間違えじゃないよね?
それも超えたと言ったぞ!
で、さあ思い出してみて!
神さまスマホ!
『寿命もこっちの世界に合わせた。』ってあったよね?
魔力……高いよね?私ら。
幾つまで生きるんだ?私ら。
人間やめてないよね?私ら。
「だから、あと十数年くらいは待てる。だから、どうだろうか。」
「………。」
「まあ、ショウがどうしたいかだね?あたいもさあ、あの股を開く発言でかなり頭にきたけどさ。よっく、考えたら騎士団の奴らが言ってただけで、ロドリヌス様が言ってたわけじゃないんだよな。」
確かに。『俺の子を産め』がプロポーズなら、ずっと求婚されていたわけで…………って、わかりづらいわ!
「んーと。おともだちから?」
「……婚約は、ダメか?面倒見るし。」
「えーと、しょーしゅると、ことわるのできにゃくなるじゃにゃいか?」
「……断るのか?」
いや、あのしょんぼりはやめよう。
男やもめでしょんぼりは、ちょっと罪悪感わくからやめてくれ。
ああ、ロドリヌスの後ろに超でっかい犬が。うんうん。しょんぼりボンのバーニーズが見えてしまったよ。
「いや、そこはわからないじゃん?おじ……ロドさんも我慢しようよ。」
「……側にいたい。」
「だが、ロドリヌス様が住んでんのは王城だろ?ちょっとなあ。」
「王城……。」
ぜーったいに行きたくないねー。そりゃ、娘の嬉し楽し恥ずかしがあるかもしれないし、玉の……んん、良い出会いがコロコロしているかもしれないけども。
……所詮は庶民だし、レベルも上げたいしな。
面倒も嫌だしな。
魔力……利用されそうだしさあ。権力者ってさ、はっきり言って嫌いなんだよねー。
それにせっかく、ギルド登録したんだもん。
ねえ?やっぱさ、ファンタジー世界、冒険したいじゃない?
「わかった。なら、王城は出るし、別に屋敷も建てるから。……なら構わないか?」
いや、それってねえ?囲うみたいじゃないかな?愛妾宅みたいじゃん。やだよ。家は、いつか奏歌と二人で建てたい。
「ロドさんさ。ママ……ショウがそんなに気に入ったの?
……言っちゃ悪いけど、どこが?」
娘よ……酷くない?あの、どこがって……いや、自分でもわからんが……もうすこし言いようってもんが……。というか、娘のこの発言…母として泣いてもいいですか?
「全部?」
いや、ロドリヌス、お前もなんで疑問形っよ?そこはきっぱりはっきりいい切れよな!
「へー、やっぱ幼女好き?」
「ちがう!……なんだか、達観しているところとか、その姉を大切にするところとか、魔力の色とかオーラとか……だ。」
最後普通じゃ見えないものキター!
見えんのか。お前は。あ、波動が一緒だとか言ってたもんな。
「けっこう、惚れていたりして?」
「でなきゃ、求婚はしない。」
「……やっぱ、ロリ?」
あ、黙った。あの、マジでロリのロドリヌスじゃあ……ないですよね?
「改めていう、俺と結婚を前提に、一緒に暮らしてほしい。」
私の前に膝をつき、手を差し出す勇者。
うむ……乙女ならば夢見るしゅんかんですな。
はい!異世界にきて2日目……完全なプロポーズ、いただきました!
さて、どうしましょうか?
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