上 下
21 / 124
第一章 マジ異世界ですね

No.21

しおりを挟む


ドオォォーッンという、辺りを震わせるほどの音と共に目の前に、もう金輪際、見たくないと思っていた男が笑っていた。
はあ、二度目のご登場だよ。

「はは、お前の魔力はすぐわかるな。本気で逃げられるとでもおもったのか?だったら、お生憎だったな?
魔力のランクは変わらずとも、流石にレベルには差はあるだろう?
まして、体力がないんだったか?俺は、絶対に逃す気はない。」

そう……。
こいつが魔力感知を持っていたのを忘れていたよ。
その上、こいつも転移できるわけで……なんてこったい。

「にゃんで、そんにゃにこだわるの?べつに、あたちでなくてもいいじゃにゃいか!」
「いや、俺はおまえがいい。俺はお前が気に入ったんだ。」
「ろりこんにゃの?」
「なんだ?そのろりなんとかって……意味はわからんが、とてつもなく嫌な感じだ。」

ロリコンは、やはり通じないか。しかし、『嫌』な感じはわかるんだ?不思議だな。しかし、これは上手く翻訳されていないのか?

「あの。」

なぜだが、奏歌が手をあげる。

「なんだ?」
「あの、ロリコンは幼女趣味ってことで幼女が好きなの?勇者さんって。」
「は?いや、もちろんアレコレ……ゴホッ……は、育ってからに決まっているだろうが!
まあ、ただ10年もすりゃ……ねーちゃん以上にはなるんだろう?」
「えーと、私っていくつに見てます?なんか、会話を重複してるみたいで嫌だけども!」
「……12歳くらいか?」
「今現在、んん、……15歳ですよ、もうすぐ16にもなります!もう!何回この会話をすりゃいいの?で、ちなみに、ママ……ショウが10年たっても13歳だからね?私ほどにもならないからね!」
「15?本当に?ショウは、ただ今だけ小さいとかじゃないのか?あの喋りは、3歳じゃないだろが?………変態っていわれた意味が今わかった。すまん、15年待つ。では……ダメか?」

かなり、ショックを受けつつも諦める気はないようで。

「んーと、あと根本的に勇者のおじさんは間違ってるもの。」
「お、おじ……いや、今は……間違ってるって何がだ?」

おい、娘。
当事者を置いてけぼりにして、何で相談にのっている?
勇者も勇者だ。大の大人がまだあどけない(私の主観だよ)少女に諭されるって……情けなかろ?

ラナンもなんで頷いているんだ。
こいつら、私を無視してやがるっ。今になって仲間はずれなんて……。

「まずさあ、いきなり子供を産めはないでしょう?
どう考えても、エッチだけさせろって言ってるようなものだもん。」
「ん?何が悪いんだ?あと、エッチとはなんのことだ?」
「えー?そこから?うわあ、めんどくさいなあ。」
「エッチがわからんが、何故、俺の子を産めがダメなんだ?最高の求婚で求愛だろう?全てに責任を持つと言っているんだろ?」
「……は?ちょっと待って、求婚求愛?」
「そうだ。子を産めってのは、養う気があるから言った。つまり、その、伴侶としてってことだぞ?どこがおかしい?」
「……ロドリヌス様、あんた、あれ婚姻を申し込んでたのかい?」
「当たり前じゃないか。婚姻を結ばず子を作るなどせんわ!」

おや、存外にこの勇者は真面目らしい。顔も微妙に真っ赤だしな。もしかして……純情オヤジなのか?
いやいや、普通に子作りを先に言い出す時点……おかしかろ?
普通じゃないだろ?あ、異世界だ、普通じゃなかったな。
でも、ラナンも頭を傾げてるってことは……やっぱりおかしいんじゃないですかね?
……でもラナンがごく一般の女子じゃなかったら……。

「なら、おじさん。まずはさあ『結婚を前提にお付き合いください』からだよ。
……そんなさあ?いきなりさあ、小さな子に『子を産め!』なんてさ。そんなの変態にしか思えないじゃん。それも、上から目線だから命令にも取れるし?
私たちは、この国にいつの間にかだけども。来たばっかりなんだよね。だから、いきなりあんなこと言う奴は、はっきり言って敵認定なんだよ。
もともと、私とかママは恋愛脳じゃないんだもん。だからさ、よくあるみたいに、『私の王子様がやってきたわ♡』って考えられないわけなの。
もう、本当に恋愛系は二の次なんだよね。
まずとりあえず、生活の基盤を作りたいわけなの。だって、家もないし、冒険者もなりたてだし。
どうせ、10年以上はママと結婚できないわけじゃない?
ママが成人したらさ、再度申し込んでみたらいいと思うな。」
「……その間に取られたくない。だってなやっとだぞ?やっと見つけたんだぞ?同じ強さの、同じ色の魔力を……。」

遠くを見つめたに影がさす。『孤独』の色が見えた。かつて、あんなをした人を私は知っている。
そう、孤独の時間にずっとずーっと耐えてきただ。
私の中に、あいつに対するほんの少しだけ……優しい気持ちが生まれてしまった。

「……姉のほう、ソカと言ったか?いま、生活の基盤と言ったよな。それなら俺が養うんではだめか?生活全てを面倒みる……だから、せめて側にいてくれないだろうか?」
「んーと、ママどうする?」

えー、ここで私にふる?ふられた私は困るんですけども!

「だって、これってさあ。結局は、ママ……ショウの問題じゃん?たださあ、えっとおじさん。」
「ロドリヌスだ。」
「えー、言いにくい。」
「ロドで許す。」
「ロドさん、年の差すごくない?だってさ、10年経ったらロドさんは、爺さんにならん?爺さんにママを任せるのはちょっと……ねえ?」

歯に衣着せないやつだ。はっきり言ったよ、この子。
だが、まあ……私はぴちぴちの3歳児だからな(泣)!

「?何を言っているんだい?ソカ。ん?この世界のことを根本から知らないとか?あのな、魔力が高いと年を取りにくいことは常識なんだけどな。」
「は?何それ。どういうこと?」
「……なあ、質問な?ハリーとハロルドとミリとあたしなら、誰が一番年上か知っているかい?」
「えーー?んー?」

私的にはハリー、ハロルド、ラナン、ミリかなあ。
見た目も30、28、25、20くらいかな?

「ハリーさんかなあ。」
「ミリだよ。」
「エーーーーーーー!うそっ!」
「次があたし。でハリー、ハロルドだよ。ちなみに年なんだけどね。あたしが146歳だって言ったら、わかるかい?
まあ、だいたいみんな成人すると年がゆっくりになるんだが、魔力は、それにかなり影響するんだよ。
まあロドリヌス様とショウの年の差は……あんまり変わらないかもしれないけどなあ。なにせ、二人とも魔力が普通じゃないだろ?
ショウがまったく年取らなそうで怖い。
ちなみに、ミリは、200歳超えてるからね?」

あの一番若いミリオンが200歳以上。つまり、魔力がかなり高いってこと?

「……じゃ、40歳近くに見えるおじ…じゃなかった、ロドさんって魔力多いんだよね……で見た目がそれって……幾つなの?」
「見た目?40歳……喜んでいいのか、わからん。ヒゲのせいか?そんなにミリとは変わらんと思うのだがな。」
「いやいや、全然ちゃうよ?ミリさんは、20代にしか見えないもん。ロドさんはその倍に見えるよ。まあ、ヒゲは、老けさせてるかもだけど。ね、ママ。で、ロドさん、いくつなの?」

ウンウンと頷く。どーみても40歳代だぞ?まあ、髭面だからかもだが。剃ったとこで30歳が限度じゃない?ちなみに、前の私なら釣り合うかもね。

で、いったい年は幾つよ!

「……1000年は超えた。」

ほうほう、1000年とな?すんごいって…………………………………………………………………1000!先年、前年、1000って一千年のことじゃないよね?まさかだけどさ!
聞き間違えじゃないよね?
それも超えたと言ったぞ!
で、さあ思い出してみて!
神さまスマホ!
『寿命もこっちの世界に合わせた。』ってあったよね?
魔力……高いよね?私ら。
幾つまで生きるんだ?私ら。
人間やめてないよね?私ら。

「だから、あと十数年くらいは待てる。だから、どうだろうか。」
「………。」
「まあ、ショウがどうしたいかだね?あたいもさあ、あの股を開く発言でかなり頭にきたけどさ。よっく、考えたら騎士団の奴らが言ってただけで、ロドリヌス様が言ってたわけじゃないんだよな。」

確かに。『俺の子を産め』がプロポーズなら、ずっと求婚されていたわけで…………って、わかりづらいわ!

「んーと。おともだちから?」
「……婚約は、ダメか?面倒見るし。」
「えーと、しょーしゅると、ことわるのできにゃくなるじゃにゃいか?」
「……断るのか?」

いや、あのしょんぼりはやめよう。
男やもめでしょんぼりは、ちょっと罪悪感わくからやめてくれ。
ああ、ロドリヌスの後ろに超でっかい犬が。うんうん。しょんぼりボンのバーニーズが見えてしまったよ。

「いや、そこはわからないじゃん?おじ……ロドさんも我慢しようよ。」
「……側にいたい。」
「だが、ロドリヌス様が住んでんのは王城だろ?ちょっとなあ。」
「王城……。」

ぜーったいに行きたくないねー。そりゃ、娘の嬉し楽し恥ずかしがあるかもしれないし、玉の……んん、良い出会いがコロコロしているかもしれないけども。
……所詮は庶民だし、レベルも上げたいしな。
面倒も嫌だしな。
魔力……利用されそうだしさあ。権力者ってさ、はっきり言って嫌いなんだよねー。
それにせっかく、ギルド登録したんだもん。
ねえ?やっぱさ、ファンタジー世界、冒険したいじゃない?

「わかった。なら、王城は出るし、別に屋敷も建てるから。……なら構わないか?」

いや、それってねえ?囲うみたいじゃないかな?愛妾宅みたいじゃん。やだよ。家は、いつか奏歌と二人で建てたい。

「ロドさんさ。ママ……ショウがそんなに気に入ったの?
……言っちゃ悪いけど、どこが?」

娘よ……酷くない?あの、どこがって……いや、自分でもわからんが……もうすこし言いようってもんが……。というか、娘のこの発言…母として泣いてもいいですか?

「全部?」

いや、ロドリヌス、お前もなんで疑問形っよ?そこはきっぱりはっきりいい切れよな!

「へー、やっぱ幼女好き?」
「ちがう!……なんだか、達観しているところとか、その姉を大切にするところとか、魔力の色とかオーラとか……だ。」

最後普通じゃ見えないものキター!
見えんのか。お前は。あ、波動が一緒だとか言ってたもんな。

「けっこう、惚れていたりして?」
「でなきゃ、求婚はしない。」
「……やっぱ、ロリ?」

あ、黙った。あの、マジでロリのロドリヌスじゃあ……ないですよね?

「改めていう、俺と結婚を前提に、一緒に暮らしてほしい。」

私の前に膝をつき、手を差し出す勇者ロドリヌス
うむ……乙女ならば夢見るしゅんかんですな。
はい!異世界にきて2日目……完全なプロポーズ、いただきました!

さて、どうしましょうか?



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...