上 下
5 / 25

五話 怖い……なんで?こんなことに?

しおりを挟む


気を失っていた私は、きつい匂いがして目が覚めた。
ぼーっと周りを見る。
どうやら周囲を沢山の人に囲まれている。
助かったのだろうか?
でも、今度はなに?
体は完全に裸の状態だ。あの時、剥かれたままの状態ということ。
それを沢山の人にジロジロと見られる。
なんて、羞恥。

『たて!』
「なに?なんて言ってるの?」

相変わらず、わからない言葉で強く言われた。
隠しようもないが、手で少しでも体を隠すようにして小さくなる。
脇に立っていた男が手を掴み引っ張られ、無理やり立たされた。

「離して!いたい。」
『なにを喚いてるのか、わからないが。立て。』

なになんなの?
無理やり引きずられるように連れて行かれる。
そこには水を張った……なんといえばいいのだろうか。
階段状になった四角い水遊び用の小さなプールのようなところで、沢山の男たちが待ち構えている。

『急げ。』

私を引きずってきた男は私をプールに投げ入れた。
日が暮れ始め、温度は体感的に二十度前後くらい。
裸で床に横たわっていた時間がどれくらいなのかわからないが、体は冷えて小刻みに震えている。
そこへ冷たい水にぶち込まれたのだ。

「いやあ、寒い。」

カタカタと震えて歯が噛み合わない。中にいた男達に体を洗い始められる。

「いや、いやあ。触んないでー!」

無理やり足を開かれあらぬところどこか、後ろの穴にまで水を入れて洗われる。

なんで?なんでこんなことされなきゃいけないの?

「いやあっ…ひっ、く…やめ…よ…。」

いかな私とて、筋骨隆々の男のたち相手に逃げることも出来ず……当たり前だ、今は子供の体格なのだから。
指を入れられる痛みと恐怖、寒さでガタガタと震える体を乱暴に布で拭かれ、生成りのマタニティの様なつっかぶりの服を着せられる。
下着はない。
…寒い。
一枚着せられた程度で暖かくなるわけもない。
そもそも袖すらない服で。
そのまま担がれ、乱暴に木でできたテーブルのようなところに降ろされる。
寝かされ上で手を掴まれる。
また聞いたことのない言葉で、何かを言われている。

『襲われていたとはほんとか?』
『はい。』
『では、幼いといえどわからんな。まあ、いい。生娘か確かめれば良いことだ。アレをもて!』
『しかし、裂けてしまうのでは。』
『一番細いものなら大丈夫だろう。多少裂けようがかまわん。』

腕をがっちりと抑えられ。さらに左右から膝を立てさせられて、持ち上げられる。あらぬところが下から丸見えにされた。

「やだあ。」
『うるさいわ!』

頰を叩かれる。
黙れとか言われたの?
なんで、こんな目に会わなきゃいけないの?
そして沢山の人が私の大事なところを見ているという羞恥……。
男女いるのに、皆がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべているのは、きっと気のせいじゃない。
神官みたいな長い服を着た人が持ってきたのは杭?なに?
まさか串刺しで殺されるとか。
怖い。
やだよ。
なんで?
同じ死ぬんだって……こんな怖い死に方をしなきゃいけないの?

『やれ!』
「きゃああああああああああ!」

痛い痛い痛い痛い痛い。
本当に串刺しにされた。
私の大事なところに太い杭をグサリとミリミリとの音を立てて刺したのだ。
痛いなんてものじゃない。
ブチブチと中で音がした。
知らず失禁していた…。
それすらも痛みに掻き消された。
クスクスと笑われている。見れば女性もいるのか……なのに、この仕打ち。

『生娘であることは証明された!』
『連れて行け!』

いきなり立たされて痛みがますなんてものじゃない。
ポタポタと滴り落ちるのは、漏らしてしまったものだけではなく大量の血だ。
かなり出血している。
当たり前だ。
私は10歳の子供だ。
たぶん、見たことはないけど、成人男性のほにゃららの太さ程度はあったはず……の杭をいきなり突き刺されて、裂けないわけがない。
即死しなかったのは、幸いなのか、不幸なのか。
こんなので処女を失わされたというのか?大事にとっておいたわけじゃないけど、こんな怖いことのためにあったわけでもない。

痛い。痛い。いたい。
でも私の中にあるのは『痛くて、怖くて、苦しい』だけだった。

背中を押されて、ど突かれながら歩かされる。
出血がだんだんとひどくなるのもおかまいなしだ。
頭の中は痛いしか考えられない。
痛みと貧血からか、意識を手放しそう。でも、足を止めたらど突かれるだけ。それはさらなる痛みをよぶ。
だから、我慢するしかなかった。涙が滝のように流れる。
無理やり手の中に、手紙のようなものを持たされる。
血を流しながら鉄格子のような門の前に立たされて、指をさされる。
痛みに耐えながら指の先を見ると。
かなり先に門のような入り口が見えた。
たぶん、あそこに行けって言われてる。
この状態で?さらにあそこまで?
この人たちは、人ではない。
鬼か悪魔だ……。私はきっと地獄に落ちてしまったんだ。
手前の鉄格子でできた入り口を開けられ突き飛ばされた。
ダンッと前のめりに倒れた。

痛い痛い痛い。

出血がかなりひどくなった気がする。
体から体温も失われていく。
足が震えて歩きにくい。
頭も朦朧とする。
痛みで股の部分が心臓になったみたい。ズックンズックンと痛みが増していく。
後ろがガシャンッと閉められた。
鬼のような人たちから石を投げつけられて、ここにいるなと言われてるようだった。
指を指され、そこに向かうしかない。歩かなくなると、石が沢山当てられた。

痛い痛い痛い。

これ以上痛いのは嫌だった。
歯を食いしばって、前に歩くしかない。
遥か遠く見える門のような入り口を目指す。
たぶん、指差されたのはそこだから。
足を引きずるように歩き出す。
痛みと寒さで目の前が暗い。
あたりも暗いから余計に見づらい。
フラフラとしながらも少しずつ進むしかない。

アオォォォーン!ウォンウォウォン!

いぬ?
まさか狼?
血の匂いがするから?
声がしたとたん、後ろでニヤついていた男たちは慌てて帰った。石を投げ捨てて。
私は狼の餌?
だからわざと出血させた?
なにも……こんなひどいところでなくてもいいんじゃないかと……。

痛い。

もういいかな?
狼さんの餌なら無駄にはならないからいいかな?
もうダメ……歩けない。
フラッと倒れた瞬間……何か温かいものに包まれたそんな気がした。

痛みと寒さで朦朧となった体はすでに意識はほとんどなく……ただ、食べるなら先に殺してねとか……残さず食べてねとか……無駄なことだけを考えたような気がした。
やがて私は、深い闇に沈んでいったのだった。
目覚めることは、二度とないだろうとおもいながら。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Promise Ring

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。 下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。 若くして独立し、業績も上々。 しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。 なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「僕は絶対に、君をものにしてみせる」 挙式と新婚旅行を兼ねて訪れたハワイ。 まさか、その地に降り立った途端、 「オレ、この人と結婚するから!」 と心変わりした旦那から捨てられるとは思わない。 ホテルも追い出されビーチで途方に暮れていたら、 親切な日本人男性が声をかけてくれた。 彼は私の事情を聞き、 私のハワイでの思い出を最高のものに変えてくれた。 最後の夜。 別れた彼との思い出はここに置いていきたくて彼に抱いてもらった。 日本に帰って心機一転、やっていくんだと思ったんだけど……。 ハワイの彼の子を身籠もりました。 初見李依(27) 寝具メーカー事務 頑張り屋の努力家 人に頼らず自分だけでなんとかしようとする癖がある 自分より人の幸せを願うような人 × 和家悠将(36) ハイシェラントホテルグループ オーナー 押しが強くて俺様というより帝王 しかし気遣い上手で相手のことをよく考える 狙った獲物は逃がさない、ヤンデレ気味 身籠もったから愛されるのは、ありですか……?

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった

ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。 あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。 細かいことは気にしないでください! 他サイトにも掲載しています。 注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

処理中です...