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第五章 とうとう?カウントダウンか?

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ヴァルを学校に連れてきて良いことになって、はしゃいでいた俺です。
わりとまあ嫌なことはあっても平和に過ごしていたわけですよ。日常茶飯事的なことはあってもねー。
なのに!
一週間、二週間、三週間と日々が過ぎていく中……ヴァルが変な噂というか、ムカつく噂を持ち帰った。
いやね、俺自身は一人でうろちょろ出来ないじゃない?
だって、一人になるとあいも変わらずに『人攫いさん』に出会うんですよね。
だから、魔法猫のヴァルさんにお願いしています。
だって、情報収集は戦略の基本でしょう?
いやまあ、戦略するわけじゃあないけど、逃げるには知らないと。
でないとつかまるじゃあない?
で、一族全てが露頭に迷うようになるなんて、冗談じゃないわよ~なのだ。
しかし、思うんだよね。
ほら、何でもそうだけどさー?
王族やら貴族やらが偉い!って世界にいて、元平民の主人公ヒロインを虐めただけで、処刑やらってさあ?なんか矛盾してるよね。
まあ、虐めた方がわるいけども。
だけど、今の姉様はいじめたりしたない。
というか、俺の側からは離れていないんだ。
なのに!
ヴァルが持ち帰った噂だよ、う、わ、さ!
冒頭でも言ったけど!胸糞悪い。
嫌な噂。
ありえない噂。
悪意ありありの噂!

1、 姉がサーチスを階段から突き落とした→いや、だから俺と一緒にいましたからっ!
2、 姉が色仕掛けで、クリス殿下やレンミリオンやルザベルトやらを誘った→だから、俺と一緒に常にいたのっ!
3、 姉がサーチスの持ち物を焼却した→だから!以下同文
4、 姉がサーチスと俺が友達になるのを邪魔している→俺がなりたくないんですけどっ!
5、 姉が………

とまあ、姉が悪さをしている云々云々……まあ、ありえない噂が出るわ出るわ出る!
マジで、ありえないんすけど?

わたくしそんなことしていないのに。」
「大丈夫、私はリオーラの味方よ!」
「ミリアンナ。でも、貴女まで悪く言われてしまうわ。」
「リオーラがそんなことしてるわけないのわかってるもの!
それに、おかしいじゃない?」

ええ、ものすごくおかしいんですよ!

「だって、貴女が一人になることなんてないわよね?」
「ええ、でもみんなその噂を信じてしまっていて……。」

でも全部が嘘っこ!
嘘の噂ばかり!
あ、四番はまあそうも取れるけど!アレは俺が困ってるから弟思いの姉としたら当たり前でしょう?
それに!噂の出所なんて、一つだよね?
だって、被害にあってるって言ってる奴は一人だもの!

「よくもまあ、嘘が……ふふ、ふふ、ふふ……ふはははははっ!」
「「は……る?」」
「ハル様が…こわれた……。」
「ハル、しっかりしろっ!」

いやもう!
だって、これが笑わずにいられますかって!

「もう……怒っていいよね?」
「ハル、あの、落ち着け?」
「ああ、ハル。ごめんなさい。わたくしが弱気になったから!」
「弱気?というか、姉様を傷つけて……僕は許さないよ。
ふふ、もうね?頭きたの。」

たぶん、今のハノエルは、あのハノエルの表情だよね。
無機質なほど冷たく見える顔。
姉にも兄にも嫌われてるって、思い込んだハノエル。
自分は汚れきってるって思い込んだハノエル。
自分が犠牲になれば、兄や姉が助かるんだって思い込んでたハノエル。
そのハノエルは、表情を全てなくしていたんだよね。
まあ、エロエロムービーはそのギャップも楽しめたらしいけどっ!
まあね、助言もツンツン系だったし。
主人公ヒロイン助けて、お礼を言われても『君を助けたわけじゃない。』ってね。
うん、そう。
実際にはハノエルは、主人公ヒロインがどうなっても良かったみたい。
主人公ヒロインを陥れて、傷つく姉が見たくなかっただけ。
つまり、究極のブラコンでシスコンな無表情な虚弱児……それがハノエルなのですから。

だから、そんなハノエルとしては、姉を陥れられて幸せに兄とイチャコラなんてしてるわけないでしょう?

春樹お兄さんは、怒りましたよ!
ふふ、シスコンのハノエルの怒りを味わうがいい。
やっぱり、目には目を歯に歯を……噂には噂かな?





――――――――――――

Sideマッケンシー

今日、ハルの表情が怖かった。
兄が前に言っていた言葉をおもいだした。
『マッケン、いいかい?普段、怒ることが滅多にない人間ほど、怒らせてはいけない。』
うん、俺はぜったいにハルを怒らせないって決めた。

あの冷たい魔力……あの表情……神がお怒りになったら……きっとあんな感じ……。


俺は日記にそう記し、自分で自分を抱きしめた。
そして、ハルを敵に回したやつに少しだけ同情した。
ほんとに、馬鹿なやつ……と。






後日、俺はぜったいに敵に回しちゃいけないって……まわす気はないけど、心に刻んだ。


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