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第四章 あれ?ヒロインは何人いるの?

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Side カレイド

目の前で血だらけのハルを奪われた。
ただ一歩間に合わなかった。
相手の力に競り負け、ようやく抗う力を手に入れた瞬間、ハルがもっていかれてしまったのだ。

許せるわけなどない。

恐ろしいほどの力が漲るのを感じたのに。
そして。
そう。
……今、わかる。
己の力がなにか。

そう……そうか。
そうだったのか。

俺が『魔王化』するのは、ヒロインなんかの所為でも為でもない。
ただ、唯一の愛しい者、ハルのためにハルのためだけに『魔王化』するのだ。
ずっと、この身が『カレイド』として生まれ落ちることになって、『カレイド』の元の魂の記憶?というか、そういうものが胸の奥にあった。
それがいつもハノエルを『愛おしく』『愛している』と伝えてくる。
まあ、俺が入りその愛は加速したが。
何故って、ハルが春樹に酷似しているからにきまっている。
姿形もさることながら、何というか『雰囲気』?とでも言えばいいのだろうか?それさえも似ているんだから。

……でもまさかな?

いや、そんなことは流石にないだろう。
『ハノエル』が『春樹』だなんて。

それこそ、俺の願望からなる儚い夢だ。

だがいまは、そんなことはどうでもいい。
後に考えればいいことだ。
最優先はハルを取り戻す。

「か、カレ、イド…さ、ま。」
「セバス、動けるか?」
「は、い、なん、とか。」
「セシウス、ルイはどうだ。」
「だ、大丈夫です。」
「なんとか、動けます。」

さすが、騎士だな。
あの消える瞬間の波状攻撃のような魔力の波。
セバスは、その前に重力魔法のような……いや、クリスがそんな魔法を使えるなど聞いたこともない。
クリスは金の王子らしく光系の魔法を主としていたはず。
まあ、攻撃に特化しているとかで、癒しは苦手らしいが。
だが、あの魔力は闇でもなく……イメージは穢い魔力。汚れたというか穢れたというか……ヘドロを纏うような……嫌な魔力の波動。
それが『魔王』ということなのか?
たしか、俺のほかに二人魔王化する。
一人はたしかにクリスだった。
しかし……。
俺は『魔王化』したが、質が違うような気がする。
俺が今感じている力は闇だ。
闇よりさらに深い闇というか……。
そして、すべての魔法を使えるであろうということ。
とはいえ、神聖魔法だけは使えないようだ。力を感じない。
しかし、この力があれば、ハルを救い出せるだろう。
いや、救い出してみせる。

俺はさらに魔力を高める。

「カレイド様、それは!」
「……翼が……。」

翼?
水面に映る自分の背に翼が見えた。
金色の翼。
何故?
そして、さらには髪色までが金に?
どういうことだ。
ハルのように小さな翼ではなく、大きな翼。
ふと意識すれば思うように動く?
……ゲームで魔王化したカレイドには黒い翼があったが……金ではなかったはずだが。

『……光の天使……』

だれの声だ?

『いって……はや…………が……わ、れ……ま、に………』

だれが?
誰が壊れる?
ハル?
ハノエルが壊れる?と?
あいつはハルにずっと固執していた。
まさか、無理やり?
いや、あのディンの兄弟……だ。
それに……ピアスがハルの場所を教えてくれる。
方角からすれば、王宮にいるということになる。
あの一瞬で王宮に飛んだことになる。
この世界には『転移』の魔法はなかったはずなのに。
いったい、クリスに何がおきた?

しかし、王宮……。
ものすごい嫌な予感がする。
声も翼も謎は後回しだ!

とにかく、ハルを。

「セバス、私はこれから王宮に向かう。ハルはそこにいる。
セバスは父上に知らせてくれ。
……もしかすると公爵家を捨てることになるかもしれないと。」
「かしこまりました。ルイ、すぐに公爵様に。セシウスは、アズリア様に。」
「「かしこまりました。」」
「カレイド様、わたくしは、一緒に参ります。
けしてもう、足手まといにはなりませぬ。絶対にぼっちゃまを取り戻します。わたくしの全てにかけて!」

すぐに散開し、セバスを伴い王宮に向かう。
すごいな、俺のフルスピードにセバスがついてくる。

……俺以上に闇の気配をセバスに感じる気がする……。



ハル!すぐに助けにいから!無事でいてくれ!









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