74 / 184
第三章 学園で???……まだ始まらないよね?
ナナジュウヨン
しおりを挟むSide カレイド (回想編)
入学式では、糞な展開で頭にくる。
正式な婚姻ではないにしろ、正式に届けて陛下自らが承認した婚約であるにも関わらず、だ、手を出してこようとするなんて!
全く、国のトップとは思えない行動だ。
唯一の救いは周りがまともな人間が多いという点だろう。
父上しかり、宰相様しかり、伯母上しかり、だ。
これが野心しか考えていない親だったなら最悪だ。
間違いなく、ハノエルは陛下に差し出されただろう。
だが、ハノエルを溺愛する父上がハノエルを差し出す訳もなく、もちろん離反になろうと俺が譲るわけもない、いや、絶対に渡さない。
ようやく手に入れることができると思った矢先に、この事態でハルは熱を出してしまった。
いや、熱を予期するべきだった。
初めての学園、人の群れ、推して知るべしことだったと反省する。
俺も気持ちがはやっていたのだろう。
出かけた日の夜に……手にいれようとするなんて……今までの経験から無理なことくらいわかりそうなのに。
しかし、ハルも待っていてくれたとは……嬉しい。
この世界、実際には早熟で……ハルはある意味規格外。
なぜなら成長も遅く、未だウブなままで……聖女然としているリオーラだって閨のことは熟知しているはずだ。そのための侍女たちであるし。
ハルに関しては……見た目が幼く中身は聡いが純粋でキス一つ見られたくらいで真っ赤になる。
おかけで皆が、性教育を見送っている。
あのキラキラした純粋な瞳で見られたら……俗物的なものは近づけたくなくなる。特にセバスはその傾向が強い。
実際にはセバスやルイから閨教育は、はいるはずなのだが……俺に一任してきた。
まあ、わかるよ。
純粋すぎるからね。自分の心が汚れてるように感じるほど。
ただ、そんな中でハルは襲われる、襲われる。
なんからかの意図でもあるのか、どこに警備の隙間があるんだという状態で襲われるのだから……なんとも困る状況だ。
そのための警備も下手をすれば、犯罪者を増やすだけ。
なんとも人は汚れている。
綺麗なものほど汚したいと思う者が多い事実に……ハルに関わる者は更なる選定が必要だった。
まあ、しかたがない。
ただ、良かったのはハルには魔力値が高い(高いなんてものではなかったが……)し、身を守る魔法を使えるということだ。
実際には体力的には魔力はあまり関係ないのだが、コントロールに精神力が必要なため、精神疲労から体力を減らすらしい。
ごくごく普通の魔力値で体力ならば、体力より魔力切れが先になるため、直接的な命の危険はない。が、ハルの場合は無尽蔵に魔力を消費できるため、使い続けることが可能。つまり、コントロールによる精神疲労から先に体力が根を上げるわけだ。
だから、アズリアからは魔術師団には入れない方がいいと言われていた。『理由なら簡単だ、体力が持たないから。』でいいと。嘘でもなく、事実だ。詳細を言わないだけで。
まあ、そういうわけで、魔法での身の守りはなんとかなる。
ヴァルたちも役立っているしね。
あの猫たちは、命をかけてハルを守護する気でいるようだからね。
この日を楽しみにはしていたが、ハルが元気なのが何よりだと思い。
その日は、ハルを抱きしめて眠った。本当に春樹のようだとっおもった。
だから、たまに思ってしまう。
もしかして、俺と同じく転生を?と。
いやいや、まさかだ。
なぜ?って?
春樹と俺の死んだ年数が離れすぎている。逆ならまだしも、俺より先に死んだ春樹が俺より後に転生しているわけがない。
そのまま、ハルの温もりを感じながら眠りについた。
翌朝は、俺は次の日から始まる学園の準備をすることにした。
部屋での作業ならば、ハルと同じ空間にいられるから。
ハルも今日は大人しく過ごしている。
もしや、俺の言った今夜を考えて?それならば嬉しい。
しかし、ハルは考え込むと周りがお留守になるなあ。
先程から眺めていると一人で百面相をしている。
ノックされ、リオーラに入室を許可したのも見えてないし、聞こえていないようだ。
明日からが心配だ。
リオーラと談笑しながら、猫を構う二人は、微笑ましく可愛らしい。
俺の自慢の妹弟。
本当に可愛い。
二人を傷つける奴は絶対に生まれたてきたことを後悔させてやる。
前世では、無理だが……この世界では有効な考えだ。
今日、ハルを守るために父は城に出かけていった。
たぶん、宰相様に相談しに行ったのだろうと思う。陛下のそばで唯一まともに陛下に苦言できる人物だからだ。まあ、父上の親友でもあるからね。
まったく、陛下は何を考えているのか……。
あとはクリスもだ。
クリスはともかく、あの陛下はとても正気とは思えない。
あのような方だっただろうか?
まったく、モテすぎる婚約者を持つと心配ごとが多いというものだ。
だが沢山の守りを得ることは、可愛いハルを守るために必要なことだからね。
ぜひ、父上には頑張ってもらわねば。
ゆっくりとした一日の最後に家族での食事時、父からの朗報が。
なんと、伯母上もハルの警護に一役かってくれることに。
感謝だ。
伯母上なら信用できる。
セシウスも真面目堅物のおかげで、信用にたる人物だ。
それに、リオーラが少し気にしているのも知っている。
従兄弟同士でもあるが、俺的にはリオーラの相手として不足はないと思う。
それに、昨日友達になったというゴールネイ公爵家の次男。
ゴールネイ公爵はうちとかなり友好な家だ。長男のルンバともいい関係を築いているしね。
リオーラの話では次男はハルを庇ったらしい。
陛下に立て付くなんて、見所があるじゃないか。
入学式も悪いことばかりではなかったということか。
そして、夜。
ああ。思い出すとニマニマが治らない。
とりあえず、ハルにこのニヤケすぎた顔は見せられないと。
早々に学園に登校したのだ。
―――――――――――
次回は、エッチのカレイド回想予定です。……たぶん。
0
お気に入りに追加
1,935
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
平凡くんと【特別】だらけの王道学園
蜂蜜
BL
自分以外の家族全員が美形という家庭に生まれ育った平凡顔な主人公(ぼっち拗らせて表情筋死んでる)が【自分】を見てくれる人を求めて家族から逃げた先の男子校(全寮制)での話。
王道の転校生や生徒会、風紀委員、不良に振り回されながら愛されていきます。
※今のところは主人公総受予定。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる