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第二章 あれれ?王都でドキ?はやすぎない?

ゴジュウ二

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痛みに意識すら失えず、気が遠くなるほどの時間苦しんだ。
意識を失えばマシだと思うほどの痛みに耐えた……いや、耐えていないか。
痛みが酷すぎて泣き叫ぶこともできないなんて、春樹の時じゃ考えられなかったわ。
春樹?ん?だれ?
あれ?俺は……俺?

「ハル、かわいそうに。」

ハル?だれ?
かわいそう?だれが?
ああ、痛みにのたうちまわるやつ?
ああ、俺か?私か?ぼくか?
ん?
落ち着け、落ち着くんだ。

声を上げることさえ痛みを呼び、
呼吸するだけで痛みにうめく。
だが、痛みに耐えて深呼吸をする。
痛みからなのか、記憶が混濁していて自分がわからない。
なんだ、なんでだ?
俺は………。

「きゃあああぁぁぁぁぁぁ!」
「ハル、ハル。アズリア!どうすれば!」
「くっ、なんで中に!カレイド、とにかく、落ち着けろ、痛む場所を探せ!」
「ハル、どこが痛い?ハル、頼む、私を見て!」

痛い!
焼けつく!
だれか、助けて!
痛い、怖い!

なぜ?私を傷つけるの?
なぜ?私はここにいるの?
帰りたい、帰れない。

「背中みたいだ!アズリア。」
「服を脱がせてくれ。」
「わかった、やってみる。」

いや、私の姿を見せないで!
いや、あの人に嫌われてしまう!
いや、離して!

「ハル、だいじょうぶだから。ハル、私がわかるだろう?」

知ってる?
知らない?
ここはどこ?
あの人は……?
あの人はどこにいるの?

「こ、これは!」
「あざが……。」

まって?
………なにを?
違う。
俺は……ハノエルで、春樹で……。
目の前にいるのは……。
手をのばし、彼に触れる。

「愛する、あ…なた。」

兄の瞳を見た。
その瞬間、痛みが引いていく。
だが、すでに痛みに疲弊すぎたハノエルの体力はもたなかった。
……意識は闇へと沈んでいく。

大丈夫。

俺は春樹でハノエル。
じゃあ、これは?
この『気持ち』はだれのもの?

「ハル?ハノエル!」

兄の悲痛な声が耳にこだました。
でも、それに応える体力はハノエルにはすでに残っていなかった。

ハノエルに何が起きたのか、ハノエルには理解できず、ただ眠りに身を任せるしかなかった。














――――――――

知らない天井だ。
いや、知ってるんだけどね。
お約束というか。
なんだっけ?

「ハル、気がついた?」
「……?」
「ハル?」
「……兄様?」
「そうだよ?痛いところはない?」
「……ない。」
「そう。よかった。」

そうだ。
兄、俺の大事な兄だ。
俺の唯一。
?唯一?なんでそう思った?
いや、唯一だけどさ。

「どうしたの?ハル。やっぱり、痛いのかな?」
「……大丈夫。」

痛みはない。
というか、なんで痛い?
何かあった?

「ハル、まさか覚えてない?」

覚えて?
…………………………………………………………………………………………………………!!!

「本!」
「本?」

そうだ!天使と魔王の本を読んでいて……………………………………………………………………………………………………………?
どうしたっけ?

「ハルは、二日も寝込んでいたんだよ?急に背中が痛いと言って。」
「本を読んでいたのは覚えてる。」
「本?なんの本?」
「図書室で借りた本。」
「図書室へ?なんのこと?」
「えっと、兄様が図書室に連れて行ってくれて、『天使と魔王』という本を借りて読んだと……。」
「?ハルは私との話をしていた最中にんだよ?
背中が痛いって。ただ、ハルは私以外を受け入れなくてアズリアさえもこの中に入れなかった。
わかる?まだ、ハルの力の中にいるんだよ?
でも、これは魔力を感じない……結界なんだ。」
「魔力じゃないから……。」

「魔力じゃない?ハル?どういうこと?」

あれ?どういうこと?
なんでと思った?
なんで?

「わからない。僕は……どうしたの?」

わからない。
本を読んだ……はず。
なんの本?
あれ?
思い出せない。
図書室で見つけた。
図書室?
………頭が痛い。

「ハル?」
「兄様、頭が痛い。」
「わかった。ハル?この力を止められる?」
「…うん。」  

消えてと思ったら、あっけなく消えた。
七色のオーロラのようだった。
七色?なんだろう知ってる。
なんで知ってるんだろう。

アズリアが俺を診察してくれた。

「熱はないかな。痛いのは頭だけ?」
「うん。」
「背中は痛くない?」
「痛くはない。」

でもなんか違和感がある。

「ハノエル、君が背中を痛がっていたのは覚えている?」
「……何となく?」
「私が診察に入れなくて、カレイドが背中を見せてくれたのは?」
「知らない。」
「そう……セバス、鏡を二つ用意してほしい。」

手鏡を渡され、後ろが映るように姿見を置かれた。

「ハル、上着をぬがせるよ?」
「う……(ズキっ)いや!」

いや、いや、いや!
見ないで、見ないで!

なんっ、に?
俺の気持ちじゃない。
ハノエルでもない。
もう一人の俺が、嫌がってる。
なんで?
俺は一体どうなっちゃったの?
ねえ?
ゲームにこんなのなかったよね?
というか、『ハノエル』にこんなに沢山のイベントも試練もいらないんだけど!

「大丈夫。ハル、私がついてるから。だからいい?」
「うん。」

大きく深呼吸して、嫌がる自分の中の自分を抑える。
一体、ハノエルに何が起きているんだ?

上着を脱がされるど真っ白な肌が晒されてる。
手鏡で姿見に映った背中を見た。

「なに?なんで?」

俺の背中のアザが変化していた。

マジですか?

ハノエルは、本当に『マイスイートエンジェル』とかしてしまったようです。

小さな小さな七色の翼が引きちぎられ切断されたような状態で背中にあった。
確か『小雨覆』という部分だけがある感じ?といえばわかるだろうか。
つまり、翼が生えているがすでに無理矢理切断された後の翼が生えているのだ。

……ねえ?
このゲームに翼人なんて、でてきましたっけ?
そもそも、ハノエルは人間だよね?
ハノエル、まだ人間やめる気ないんですけど……。

ハノエルは、一体どうなってしまったんでしょうかね?


俺はただ呆然とその翼の成れの果てを見つめることしかできなかった。








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