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第一章 あれ?腐った呪いなの?

じゅうなな

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んーーーーーー!
はあ……。
よく寝た~。
目を覚ますとなんと!膝枕だよ。
それも麗しの姉様の。
男が一度はしてみたい、かわゆい女の子の膝枕ですよ。
まあ……肉親なんですけどね。

え?前世で妹?
いや、してくれないよー。
する側だったもんよ。曰く、兄いの膝枕は、なかなかっすよ?だそうです。
え?俺への呼び方?
うち妹は呼び方一定しないよ。
ちっさい頃はにぃにって、可愛かったけども。育った今は、兄貴、にいちゃん、お兄様、春くん、おにぃ…… etc etc……なのです。

「ハル、起きた?」
「……姉様、ごめんなさい。」
「え?なんで謝るの?」
「お膝、重たかったでしょ?」

結構、いがいに人の頭って重いじゃない?
俺、1時間の膝枕で足痛かったよ?
まして、姉様だって7歳だ。

「ふふ、ハルくらい大丈夫よ?……せっかく、ジャンケンに勝ったんだもん。」

ジャンケンとな?
向かいに残念そうな顔の兄の姿が。
……ああ、寝てしまったハノエルの膝枕をどちらがするかで、ジャンケン勝負って奴ですか?
勝った方が疲れる側とはこれいかに!って、思うのは俺だけですかね?

で、兄がおもむろに立ち上がり、こちらにくると抱き上げられて……そのまま姉の向かい側で膝抱っこ。
うん、流れるような動作だったよ。
所作が綺麗な人は、抱っこさえも綺麗ですねえ。

「もう、お兄様はいつもずるいわ。私だって、ハルを抱っこできるのに!」

って、ハノエルからしたら7歳の少女に軽々抱っこは情けない案件じゃない?
といっても、10歳の少年に軽々も……以下同文。
たしかに、幼児すぎる体型だけどもね。
まあ、後は二人とも大きいんだよね。
この世界、ハノエル以外は皆でかいのです。

「そうそう、クリスだけでなくディンゲルも来るみたいだよ。追加の手紙がさっき届いたよ……。」

――ディン嫌い……

ん?今なんかフッと声入り映像が見えた気がした。俺の心の声ハノエルがものすごい嫌悪感を上げている。
よほど嫌いらしい。
ハノエルは、嫌いな奴なんていないと思ったのに……。
ディンゲルなんて、ゲームには出てこなかったけど、誰だ?

「えーーー!ディンも?すっごく嫌!」

どうやら姉様も嫌いらしい。

「まあ、仕方ないね。第一王子はよくて第二王子はダメなんて言えないだろう?」
「……そうだけど、あの子乱暴だし、いつもハルをいじめるんだものっ!」

へー、第二王子なのか。
で、このかわいいハノエルをいじめるだとぉ?
それは許せん。
しかし、彼を嫌うだけで、記憶が見えてこない。
なんかあったんだろうけど。
それか、なんか起こるんだろうか?
いや、やめよう。
またフラグがたってしまいそうだ。

「あの、兄様。僕、あんまり覚えてないみたい。」
「ん?そうか……覚えてない方がいいのか、悪いのか。
いいかい?絶対にあいつがいる間は私から離れちゃだめだよ?」
「そうよ!私だけじゃだめだわ。
残念だけど、私じゃ勝てないのよね……あいつ馬鹿力だし!
そうだ!あとはクリストファー様なら大丈夫ね!だから、お兄様か、クリストファー様といるのよ?」
「うん、後は父上か母上の目の届く場所にいるんだよ?」

そこまでかい。

「はあい。」

どうも、二人からするととんでもない人物らしい。
なんでハノエルの記憶にないのかはわからないが、嫌ってるということは、忘れたい記憶の中であるということだよね?

何度も言うけど、すっごく嫌ってるのはわかるんだもん。

しっかし、こんなかわいいハノエルをいじめるなんて……俺は絶対にゆるさんよ?




そんな感じでお茶の時間も終わって、午後はまったりとした時間を過ごす。
姉様がピアノを弾いてくれたり、兄様がバイオリンを弾いてくれたり……。ハノエルは、体が弱いのであまりお稽古ごとはしていない。
でも、できたら剣とか習ってみたいです。
もちろん、魔法で無双できたら素敵です。
なんで、普通のファンタジーなゲームに転生しなかったんだろうか?

そんなゆったりとした優しいいつもの日々……幸せだと思う。

さて、そろそろ寝るには良い時間。
今現在、俺は兄と同じ部屋で寝ています。
なぜ?って?
あの薬の後遺症かどうかはわからないんだけど、夜中になると不安、恐怖、絶望……といった感情に支配されて魘されるんだよ。というか、らしいんだ。
夜中に俺のあげた悲鳴を聞きつけて、メイドが駆けつけると俺は泣き叫んで暴れて手がつけられなかったらしい。
無理に抑えるといっても魔力暴走の兆しが見えてしまうし……ただ、兄カレイドが抱きしめると、ようやく大人しくなるらしい。
しかしながら、俺は覚えていないんだよね。
だから、制御ができないんだ。
もしかしたら、俺の中のハノエル自身の『恐怖』なのかもしれない。
ということで、試しに兄が一緒に寝てみたら、夜中の悲鳴がだんだん減ったんだとか。
悲鳴を上げて飛び起きても、兄が抱きしめるとすぐに止んで眠りにつくらしいです。
今は、兄が一緒に寝てれば大丈夫みたい。
というのも魘されなくなったと部屋を別にした途端、また再発。
俺自身全く覚えていないから……どーにもできないんだよね。
本当に兄様には、頭があがらないね!

「ハノエル、寝ようね。」
「うん。でも兄様、いつも一緒で嫌じゃない?」
「まったく、ぜんぜん。私はハルと一緒にいるのが一番安らぐよ。」
「ほんと!僕も、兄様が一緒なの嬉しい!」
「ふふ、じゃあ、両思いだね。」
「うん。」
「じゃあ、ゆっくりおやすみ。」
「おやすみなさい、兄様。」

静かに明かりが消える。
これもある種魔法かな。
魔道具の明かり。
電気じゃなく魔力で動くらしい。
暖かさと安心感で俺の意識は、だんだんと夢の中へ。




また今日もゆめうつつ、はっきりしない声がする。

「ほんと、マジかわいい。ハル……離さないからね?」




このヤンデレ発言は………?


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