乙女ゲームにこんな設定いらなくない？〜BL（受）の声優は乙女ゲームに転生する（泣）〜改

第五章 ゲームカウントダウン？それとも開始とか？ヤバイんですが（泣）

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Side カレイド

ハルが気を失っている間もハルのお腹は淡い光を放っていた。
内出血を酷く起こすほど踏みつけられた跡は、軽い打ち身程度の赤みまで治った。
どうやら光はハルを癒していたらしい。
アズリアはハルが吐き出した薬を魔法分析にかけていた。
徐々に分析されていくのと比例して、アズリアはどんどん顔を顰めて機嫌が悪くなっていく。
どうやら、ロクな薬ではないらしい。
そもそもハルは、妊婦だ。
忘れてしまいがちなほど、普通の体だが……それは第二種の性質のためだ。
前世では三年以上も妊娠するなんてあり得なかったが、第二種は通常でも二、三年後に出産するという。
ただ、本当の妊婦……つまり女性の妊娠と同じスタートライン立つのは出産する半年前というからすごい。
女性からしたら妊娠期間が半年というのは羨ましいかもしれないが。
第二種は、デメリットが多いので許してやってほしい。
まず、女性は280日（だいたいだが）かけてゆっくりと胎児が成長していくのに対し、第二種は170日ほどで一気に成長するそうだ。
しかし、女性にある安定期は出産する1ヶ月ほど前にならないと無理らしい。多少個人差はあるが。
だからこそ生まれる率も少ない。
アズリアに言わせるとなんで第二種は『優秀な遺伝子を持った男児が生まれ続ける』という話が流れているのかわからないという。
実際にアズリアの研究では第二種の子供自体が少ないし、無事妊娠して無事出産した者を探しても中々見つからないという。
どうやら、デマが真として流れているらしい。
……俺が考えるに……このゲームの変な矛盾を誤魔化すためのデマなのではないか？
と思ってしまう。

閑話休題話を戻そう

つまり、急激に育つ胎児。それも高魔力の胎児。
妊婦に負担にならないわけがない。
普通の魔力保持者ならば、枯渇するほど母体から子への魔力供給が必要らしい。
まあ、だからこその第二種なんだろうが……第二種の内包魔力はすごいというのが定説であるから。
それをさらに……3段階くらい上の魔力を保持しているのがハルなのだ。
とはいえ、外に放出できる魔力は持っている魔力の五分の一とも十分の一とも言われている。
全ての力を使うことが可能な魔法使いはいないのだから。
まあ、前世ではいうなら脳を全て使うというものかもしれない。

まあ、そんなわけで第二種は後期にはかなり体に直に負担がくる。
ハルにはあまり詳しくは話していないが。
そして何より前期と言われる、胎児の『種』とも言えるもの。
それが安定して胎児の本当に元になる存在……アズリアは『生命いのち』と呼ぶべき存在だという。
その存在が確認したところで中期となるわけだ。
ただ、前期は流れやすいというか『生命』に発展できないことが多いそうだ。
まず、気づかれにくい。
そして、ほかの精が毒になる。
つまり、いろんな奴が好き勝手に第二種を犯せば、種にすらならないということだ。

そして、中期……これが長い。
これは個人差がありすぎて、何年とはいえないが平均的には二、三年。ハルはすでに三年。
しかし、まだ後期には来ていない。
まあ、だから学園に来れるのだが。
それでこの中期なんだが。
わりと丈夫に過ごせる。
しかし、やはり過度の暴力や怪我は避けるべき問題だ。
何故か？
ハルはあまり気にしていないのだが、感覚か通常の二倍になる。
エロ面では俺的にウェルカムなのだが、痛みも二倍なのだ。
そして、外部より内部が傷つきやすい。
周りを緩衝材で梱包された薄いガラスと思っていただきたい。
普通なら守れるが叩きつければ外が大丈夫でも中が割れている……そんな体なのだ。

まあ、だから光は外より中を癒していたのではないかと思う。


「まったく、頭にくる。この薬がハルに聞いていたかと思うと……恐怖でしかない。
それも、あのハルを襲っていた奴らが持っていた魔石をみたか？
あれは対象者の魔法を阻害するものだ。故に強力。
アレを壊すほどの魔法を暴走させたら、あの部屋自体を消滅させるだろうな。
ハルはルイが人質になっていて、余計無理だろな。
で、この薬なんだが。」


薬は、口にするのも嫌なものだった。
娼館で使われているらしい薬。
それも三流の場末と言われてる娼館だ。
つまり、ボロボロにされ売られた第二種と女性の娼館だろうと。
子供ができたら働けない。
しかし『堕胎』は教会が禁止している。もちろん、自然に流れてしまったものは仕方がないが。
だから、薬だ。
病気で流れたように見えるらしい。
それもかなりの痛みが伴うものだとか。それを媚薬を混ぜることで発情で誤魔化すんだというじゃないか。その上、その薬で発情している第二種も女性も抱く側には、ものすごい快楽なんだとか。
それこそ、壊れるまで抱かれ続けるほど。
……この薬を使われて、正気を保っていられたものはいないというものだ。
それなのに、第二種は妊娠しているかわからなくてもワザと使われることもあるという。
客が喜ぶというだけで！

そして中期に薬は厳禁なのだ。
感覚が二倍……つまり、薬の効き目も二倍ということ。
俺は、最悪ハノエル春樹を失っていたかもしれないと言われて、体が恐怖に震えるのだった。

「でも、安心して。まったく、一切溶けてもいないのよ……。
一定時間、体の中にあったはずなのに。」
「もしかしたら、私が聞いた声らしきものと関係があるのかもしれない。」
「ああ、息を吹き込むとかってやつ？」
「そうだ。それをしたら吐き出したから。」
「そうね、癒してくれた光と声。ハルちゃんには強力な守護霊でもいるのかもしれないわね。
ただ、さっきサーチしたんだけど、お腹の子の魔力発作が出そうなのよ……。」
「……魔力を消費したと？」
「たぶんね。」

アズリアと俺は、声には出さないがハルの守護霊がなんとなくわかったような気がした。

「でも、これはお口にチャックよ。」
「ですね。」


とはいえ、ハルには一応説明しなければ。
ならば、屋敷に思ったところでハルが目を覚ましたのだった。


……なんと説明するにしても、まずは屋敷に戻ろう。