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第15話:風雲児VS星帥皇

#13

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 味方が次々と葬られるこの状況に、業を煮やしたのは敵の首領だった。

「ヤツを二重包囲しろ。機体ナンバー奇数は外側。偶数は内側。外側の機体は援護射撃。内側の機体は格闘戦だ。同士討ちを恐れるな。ヤツを斃せば、冗談抜きで一生遊んで暮らせるぞ!!」

 そんな通信を傍受するノヴァルナは、『センクウNX』を宇宙に漂わせながら、思考を巡らせる。銀河皇国を支配するはずの星帥皇を殺害しても、罪を問うどころか星大名の座を与え、一生遊んで暮らせるだけの褒賞を、渡す事が出来る存在について…である。

“普通に考えりゃ、こないだまで星帥皇室と対立していたミョルジ家だが、果たしてそれだけの問題…とは思えねぇな”

 ただ当のテルーザは、そのような事に構う気はないのか、すでに何かを知っているのか、この戦いのはじめに「誰に頼まれた?」と問い掛けただけで、この局面でも委細構わず、敵に立ち向かっていく。
 二重包囲の外側のグループが超電磁ライフルを射撃し、内側のグループがポジトロンパイクやポジトロンランスを手に、『ライオウXX』へ直接仕掛けた。その数は二十機を超える。

 対する『ライオウXX』は恐ろしいほどの回避機動を続けながら、三発、四発と超電磁ライフルを放った。それは後方で援護射撃を行っていた、二機のBSIの胴体を撃ち抜く。そしてその時には『ライオウXX』は機体を大きく翻し、刃を包むポジトロンフィールドをオーバーフローさせたツインランスを、“8に字”に素早く振り抜いた。
 するとオーバーフロー状態の陽電子が、青白いビームの刃となって、格闘戦を挑もうとしていた敵機へ向けて飛び出す。それはパイロットが「うわ」と叫び声を上げきるより早く、乗っていた機体を真っ二つに断した。“ビームスラッシャー”と呼ばれるそれは、搭載する対消滅反応炉の余剰出力が、余程大きくないと出来ない芸当だった。

「なんだ、こ―――」

 別のパイロットも驚愕の声を口走る前に機体ごと引き裂かれ、さらに隣の機体も胸元から両断されると、『ライオウXX』と格闘戦目的の敵機群の間合いは、もう斬撃可能距離だ。まずポジトロンランスを装備するBSIが、『ライオウXX』へ突き掛かる。だが『ライオウXX』はむしろ、自分から踏み込んでツインランスを右へ、左へ薙ぎ払い、突き出された槍を次々と切断してしまった。
 その間にポジトロンパイクを持つ敵機が接近。最初の一機が『ライオウXX』に背後から斬りかかるが、『ライオウXX』はノールックで左腕の超電磁ライフルを向け、トリガーを引く。この一撃は敵機の胸板を貫通し、バックパックも貫いてその背後にいた、もう一機の敵BSIをも撃ち抜いた。
 
 高威力の超電磁ライフルにバックパックまで撃ち抜かれた敵機が、液化反転水素の蒸発放出が間に合わず大爆発を起こす。それに巻き込まれた二機の敵BSIも、頭と腕を吹き飛ばされた。だが『ライオウXX』は全くの無傷で、斬りかかる敵を次々と倒していく。

 援護射撃を行っている敵BSI部隊も、首領の言葉通り味方を撃つのも有りで、銃撃を加えるが当たらない。それどころか『ライオウXX』は、ツインランスで突き刺した敵の機体を、敵の射撃に対する盾代わりにして防ぎながら、接近戦を挑んで来る敵機に、超電磁ライフルのゼロ距離射撃を浴びせる。盾にされた敵の『ミツルギ』はすでにハチの巣状態で動かない、いわゆる人形同然というやつだ。

 援護射撃は効果が無いと判断した首領は、残る全機で接近戦を仕掛けるように、命令を下す。

「外側グループ。援護射撃はもういい。ライフルを撃ちながら間合いを詰め、全機で接近戦を仕掛けて倒すんだ!」

 その直後、『ライオウXX』は盾代わりにしている敵機の腰部背後に、ライフルの銃口を押し当ててトリガーを引いた。高威力ライフルは、すでに味方の銃撃で穴だらけになっていた敵機の腰部を粉々にし、そのまま首領の乗る親衛隊仕様『ミツルギ』の、コクピットがある腹部に大穴を開ける。無論、幾つかの肉片以外、その穴の中に首領の姿は存在しない。

「首領が斃されたぞ!」

「構わねぇ、総攻撃だ!!」

 首領が戦死しながらも、略奪集団に諦める様子はなかった。元からそれほど権限のある首領ではなかったのか、或いはパイロットが薬物を使用しているのだろう。

 ところが、略奪集団の残存BSIユニットが、『ライオウXX』に総攻撃を仕掛けようと得物を構え直したその時、別方向から猛射撃が開始される。ノヴァルナ配下の四機の『ホロウシュ』である。さらに『クォルガルード』も仮装巡航艦部隊に対して、遠距離射撃を開始し始める。当然ノヴァルナの命令だ。

 虚を突かれた形の敵BSI部隊は、これにはさすがに後退した。そこに突撃を仕掛ける『ホロウシュ』達。やがて戦いを妨げられた『ライオウXX』の前へ、『センクウNX』がゆっくりと接近して来る。テルーザはそこで初めて、自分の前に近づいて来た機体のショルダーアーマーに描かれた、『流星揚羽蝶』の家紋に気が付いた。

「その方…オ・ワーリ宙域のウォーダの者か?」

「キオ・スー家のノヴァルナ・ダン=ウォーダ。お初にお目にかかりまする」

 テルーザの問いに答えるノヴァルナは、言葉こそ丁寧な武家言葉だが、口調には挑戦的な響きが含まれている。

「ほほう…噂の“オ・ワーリの大うつけ”か。手出し無用と申したはずであるが、なぜ手を出した?」

 それに対するノヴァルナは、不敵な笑みと共に告げた。

「されば、陛下のお命。このノヴァルナが頂戴つかまつる………」





▶#14につづく
 
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