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第13話:新たなる脅威

#01

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 皇国暦1563年10月15日。ノヴァルナをはじめ、ウォーダ家の主力部隊は皇都惑星キヨウを離れ、ミノネリラ宙域の惑星バサラナルムへ帰還した。


我が軍大勝利!―――


 新星帥皇ジョシュア陛下を擁してロッガ家を撃破、『アクレイド傭兵団』とミョルジ家を、皇都宙域から追い出したノヴァルナとウォーダ軍を、ミノネリラとオ・ワーリの民衆は熱狂と共に迎えた。NNLの動画チャンネルはこぞって、ウォーダ軍の勝利の軌跡番組を特集し、あらゆる植民惑星で祝賀の催しが開かれる。
 特にノヴァルナが幼少時代から飛躍の時までを過ごした、惑星ラゴンのナグヤ市民のお祭り騒ぎは桁違いとなった。

 失笑ものなのは、かつてはノヴァルナを“カラッポ殿下”だの、“イミフ王子”だのとSNSで散々批判していた人間達が、こぞって今のノヴァルナに賛辞を送っている事であった。それの何が失笑ものかといえば、「子供の頃からモノが違っていた」だの「昔から只者じゃないと思っていた」などと、見事な“手のひら返し”を行っている領民が多い事だろう。

「ま、いいんじゃね?」

 10月20日。この話をギーフィ城内を移動中に、小耳に挟んだノヴァルナは、あっけらかんと応じ、さらに「世の中ってなぁ、そんなモンだろ」と言い捨てる。
 これでこの先、ウォーダ家の旗色が悪くなるような事態になれば、どうせまた批判の声が大きくなって来るに違いないが、ノヴァルナにすればそれも“世の中そんなモン”なのである。外野がどのように騒ごうが、知った事ではないというスタンスは、昔から変わらぬ流儀だ。

 そんなノヴァルナに従う事務補佐官のジークザルトも、十四歳とは思えない達観した意見を述べる。

「少なくとも口が軽くなって、そのぶん財布の紐も緩くなれば、経済効果が生まれますから、それはそれで良しとすべきでしょうね」

 それを聞いてノヴァルナは不意に立ち止まり、ジークザルトを振り返って胸元を指さすと、まじめな表情で「おまえな」と呼びかける。
 一般的な流れからすると言動を注意される流れだが、そこでノヴァルナはニタリと不敵な笑みを浮かべて言い放つ。

「そういう考えは、嫌いじゃねぇ」

 そして再び前を向くと、そこにあるのは大会議場の扉であった。両側に立つ衛兵が敬礼をして扉を開く。扇状に机が並ぶ会議場に待つのは、艦隊司令官以上のクラスの武将達だ。主君の入場に一斉に立ち上がり一礼する。ノヴァルナは“よう”という感じで、軽く右手を挙げながら歩を進めた。軍の大規模再編の発布である。


皇国暦1563年11月1日新編制 ウォーダ軍基幹艦隊群

■ウォーダ軍中央集団

 第1艦隊/司令官ノヴァルナ・ダン=ウォーダ直卒

 第7艦隊/司令官カッツ・ゴーンロッグ=シルバータ

 第8艦隊/司令官トゥ・シェイ=マーディン

 第9艦隊/司令官ツェルオーキ=イクェルダ

 第18艦隊/司令官シンモール=ザクバー

 第19艦隊/司令官ヨヴェ=カージェス

 第29艦隊/司令官ヨッズダルガ=クーギス
 
 第31艦隊/司令官ヨリューダッカ=ハッチ

 第36艦隊/司令官トゥ・キーツ=キノッサ


■ミノネリラ宙域軍

 第2艦隊/司令官ヴァルターダ=ウォーダ

 第10艦隊/司令官リーンテーツ=イナルヴァ

 第11艦隊/司令官モリナール=アンドア

 第12艦隊/司令官ナモド・ボクゼ=ウージェル

 第16艦隊/司令官ダルノア=サートゥルス

 第17艦隊/司令官セーリン=マクシミリアム

 第20艦隊/司令官リカード=サイドゥ

 第21艦隊/司令官レヴァル=サイドゥ

 第32艦隊/司令官マーズビット=サーガイ


■オ・ワーリ宙域軍

 第3艦隊/司令官ルヴィーロ・オスミ=ウォーダ

 第5艦隊/司令官ブルーノ・サルス=ウォーダ

 第13艦隊/司令官シウテ・サッド=リン

 第14艦隊/司令官ヨヴェ=カージェス

 第15艦隊/司令官カルネード=ウォーダ

 第22艦隊/司令官ナルマルザ=ササーラ

 第23艦隊/司令官ヤズル・イセス=ウォーダ

 第24艦隊/司令官ブンカー=ウォーダ

 第30艦隊/司令官バルザヴァ=ウォーダ


■オウ・ルミル宙域軍

 第4艦隊/司令官ナルガヒルデ=ニーワス

 第6艦隊/司令官カーナル・サンザー=フォレスタ

 第25艦隊/司令官ヴァルカーツ=ウォーダ

 第26艦隊/司令官ヴァルタガ=ウォーダ

 第27艦隊/司令官コーバル=ゴードン

 第28艦隊/司令官コルモル=シドン

 第33艦隊/司令官スーゲット=アーチ

 第34艦隊/司令官カートビット=ガモフ

 第35艦隊/司令官ヴェルージ=ウォーダ


■ヤヴァルト宙域駐留軍

 第1防衛艦隊/司令官ミディルツ・ヒュウム=アルケティ

 第2防衛艦隊/司令官フジッガ・ユーサ=ホルソミカ

 第3防衛艦隊/司令官マスクート・コロック=ハートスティンガー


■ザーカ・イー防衛艦隊/司令官ウォルフベルト=ウォーダ



 これらの人事が筆頭家老のシウテ・サッド=リンから読み上げられる度に、会議場に集まったウォーダ軍の武将達の間から、「おお…」という声が漏れた。




▶#02につづく
 
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