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俺は冒険者として生きている
幼馴染だった王子の嘆き1(王子視点)
しおりを挟むアルディウスが姿を消して数年が経ち10年という歳月の節目で、ついにアルディウスの捜索が打ち切られた。こんな長い期間捜索出来たのは、私とアーダングラウド家が資金を出し続けたからだ。
私は王子として全うしなければならない責務がある。しかし、どうしてもアルディウスを諦めきれなかった。アルディウスに謝ることも出来ずに時間が過ぎていくのが許せなかった。
すぐに見つけてあげないと…怖い思いをしているかも知れない。泣いてないといいな、と思うばかりで目ぼしい情報は手に入らず、モヤモヤとさらに時間ばかりが過ぎていった。
アルディウスの兄弟達は意外にもアルディウスの捜索に尽力していた。何を今更な、と思ったがそれは自身にも言える事だと気づいて私は勝手に悲しくなった。
捜索が始まり3年が経つと、すっかりアルディウスの噂話は聞かなくなった。薄情だなと思ってしまう。私の最愛をまるですでに死んだように話す奴らもいる。
私には耐えられなかった。アルディウスは私の大事な人なのに、それを理解してくれない。早く婚約者を決めろとΩの男がすり寄って、女達が甘い声で囁いてくる。
腹の底から苛立ち、肝が冷えて何も考えられなくなった。こんな思いをするくらいなら、いっそ王子で無ければよかったのに。
環境に耐えられなくなるのは早かった。アルディウスが消えて6年目には王族を抜け、一代限りの公爵となった。誰も自分に近づかせない為の苦肉の策だった。
それでもメイドに扮して寝込みを襲いに来たり、怪しげな薬で酩酊状態にしようと画策された。うんざりだった。
私に色目や肉体関係を持とうとする奴らは容赦なく犯罪奴隷にした。勧告を出しているのに知らぬ存ぜぬと言う訳にはいかないだろう?
「相変わらず派手にやりましたね。大老貴族が震え上がっていますよ?」
「構わん、そのまま大人しくしていればよい。二度と私には近寄らせん。」
「……いまだに、アルディウスは生存していると思っておられるのですか?」
「当たり前だ!!アルディウスがいない世など地獄だ…早く見つけてあげないと…。」
「しかしもう10年も経とうとしております。我が弟はか弱く泣き虫でした。」
「エリン、お前にアルディウスを語る資格があると思うか…!」
「貴方も同じでしょうに…。」
淡いピンクブロンドの髪を後ろで結い、炎のような紅の目を細めてエリンティウスは言う。アーダングラウド家の次男、アルディウスの兄である彼は私の部下の一人。兄であるフィリスティウスはアーダングラウド家の当主となり、経済を支える人間となった。
皆が皆、アルディウスのことを蔑ろにしてきた。いざ、彼がいなくなると寂しくて堪らないなどと、ほざく。私のその一人…自業自得とはいえ、かなり堪える。
王都の端に生まれた小さな新しい領地の屋敷で、私は今だに信じているんだ。絶対にアルディウスは生きていると。
「……ひとつ、情報が入ってきております。お聞きになりますか?」
「勿体ぶるな!……ッチ、お前はいつも私を苛立たせる…!」
「おや、気が合いますね。私も同じように思っておりますよ。」
口元だけがニンマリと笑う表情は、少しばかりアルディウスに似ていてズキリと胸が痛んだ。早く会いたいよアルディウス…。
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