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俺は冒険者として生きている
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しおりを挟むあの日から俺はコクヨウにみっちり鍛えてもらいながら過ごしていた。すっかり体が鈍ってしまっていたので、少し走り込みをしただけで息が上がる。酷いときは過呼吸にもなる。
俺ってこんな弱っちゃったの!?絶望するのに時間はかからなかった。そんな様子の俺をみんな慰めてくれるが、冒険者としての復活は問題なくできると思っていたのに…!
体力が減ったことは当然だが、エルダに体について調べてもらったら大量の魔力が体から抜けて枯渇状態らしく体力を消費して魔力をギリギリ保っている状態らしかった。
ドブ薬の効果は自分の体に染み付いた俺以外の魔力を中和すること、そして再生力をあげること。体の肉は再生する代わりに魔力は消費され続けた結果がこれである…。
「うわわぁぁぁっ!なんてこった俺の肉体がーっ!!」
「あぁっ、泣くでない!直ぐによくなるからな!頑張ろうぞ!」
「い、いっぱい食べて~!体力つけて運動しようね~!」
「うえぇぇえーっ!介護だ介護ーっ!俺まだ20歳なのにこんな弱体化したなんて信じたくないーっ!」
「メソメソしても状況はかわらんだろううに…今日は休むか?」
「やだ!俺もとに戻るまで休まないからあぁぁぁ!ああぁぁぁーっ!」
「泣くか怒るかどっちかにしろ…。」
だって悲しい!下級冒険者よりも体力ないってどうしよう!?これ山篭りとかしたほうがいいのかなぁ!?
頭の中がぐちゃぐちゃになっている俺を宥める様にハクアとコハクが項垂れる背中をせっせと撫でてくれているのがわかる。しかし、そんなことで俺は復活出来ないのである。
「……確かに、この魔素の少ない場所では魔力の回復は追いつかんのかもしれんなぁ。さて、どうしたものか。」
「じゃあ~、エンベンデルに行ってみる~?」
「エンベンデルか!それはいい案かもしれない。先にアルの魔力を回復させてから体を鍛えたほうが良さそうだしな。」
「………エンベンデルって何?」
「まぁ、人間からしたら秘境みたいなものだな。踏み入れることが出来るのはごく一部のみだ。」
コハクから案で出てきたエンベンデルとは、大森林ギルドがある場所ではから遙か北にある氷山に入り口がある魔境なのだそうな。
そこには多種多様な魔力元素というものが飛び交っていて、その中に俺と相性が良いものもいるかもとのことだった。通常よりも早く魔力が回復し、魔力回路も修復されて正常な体になるかもとのこと。
確かに体もボロだったが、コクヨウの攻撃的な魔力を浴びた影響か体を巡る魔力がぎこちない感じもしていた。
「エンベンデルは~、コハクの実家みたいなものだから~、アル様は安心して大丈夫だからね~?」
「行く気満々だな。」
「もっちろ~ん!エンベンデルには他にも珍しい冷たい果物もあるよ~?」
「ちょっとそれはそそられる…。」
「じゃあ~、みんなでエンベンデルに遊びに行こ~う!あそこで過ごせば~、自然と体力もつくからね~、ちゃんとアル様が成長出来る環境だよ~?」
にっこり、コハクは満足げに笑って言う。北と言うからには寒い環境なのかな?大森林ギルドはどちらからといえば熱帯地域寄りだから、寒さ対策をしっかりして行かないと!
こうして、俺はエンベンデルにて山篭りをする事にしたのだった。エンベンデル以外の土地でも数年、……結果6年もな!!
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