実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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俺は冒険者として生きている

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 クタクタだった俺は風呂上がりにはもうぐっすり寝入っていた。ソファの上で意識が切れた気がするが、朝起きたらベッドの上にいた。

 ただし身動きできず。なんでだと思う?自分よりデカイ図体に挟まれていたら身動きできなくなるに決まってるだろ!



 「こらーっ!狭いベッドに無理矢理入り込むな!」



 足蹴にしようにも体格の良い面々に挟まれているので動かせそうにない。仕方ないので大声で訴えてみても少し唸るだけで起きる気配がない。

 隣では眉間にシワを寄せて俺を抱えて寝ているコクヨウに、逆隣には気持ちよさそうに鼻をプスプスならして寝ているコハクが俺の腹を枕にしていた。

 よくこんな状態で起きなかったな。なんて思いつつも、今日は朝早くから魔獣討伐任務の集会があるのだ。準備をしなくてはいけないのに。

 ぐおおおっ!なんて力任せに引き剥がしにかかるもびくともしない。困った…。




 「ワハハ、朝から元気よなアルディウスよ。」
 「あっ!ハクア!頼むからこいつら引き剥がしてくれ!」
 「随分と可愛がられておるなぁ。」
 「そんなこと言ってないで助けてください!俺、今日は集会あるんだ!準備しないといけないんだ!」



 和やかにこちらを見て笑うハクアに助けを求めてみるが、愉快に笑うだけで助けてくれる様子はない。

 俺が暴れれば暴れるほど寝ているコクヨウの拘束が強まる。いでででで!体が軋むほど抱きかかえられてしまえば悲鳴に近い声が出る。藻掻く俺の揺れに腹を枕にしていたコハクが目を覚ます。

 むぅ~、なんて腹に頭を擦り付けてからゆっくりと体を起こすハクアに、俺は必死に助けを求める。ハクアは頼んでも助けてくれない!



 「コ、コハク助けてくれ!このままじゃ死ぬっ!死ぬぅー!!」
 「むにゃ…アル様ぁ…?」
 「あだだだだっ!歪む!俺の体壊れちゃうって!」
 「にゃにして………はっ!」



 寝ぼけ眼を擦ってからコハクはこっちの様子に気づいたようで、驚いた顔をしてから急いでコクヨウを引き剥がす。しかしながら力はコクヨウが勝っているのか腕を引き剥がそうにもびくともしない。

 怒ったコハクは熟睡しているコクヨウの顔面をバシバシと平手打ちをしまくる。まさに滅多打ちである。コハクの攻撃に少し拘束が緩み、体が痛みが収まる。しかしまだ解放されるにはまだまだ…。



 「おバカ~!か弱いアル様になんてことしてるの~!」
 「頑張れ!頑張れコハク!」
 「待っててねアル様~!僕が助けてあげるんだからね~!えいっ!えいっえいっ!」
 「うぐっ、ブッ…!………おいっ!てめぇ何しやがる!」




 バシンバシバシっ!と激しいビンタを何回かされた後にコクヨウがキレながら起きた。俺はまだ解放されていない。

 ぎゅうぎゅうに押しつぶされて声も出せずに数十分も戦う羽目になった。コクヨウとコハクの言い争いを聞きながら思う。これはいつ終わるのだろう…俺は暫く振り回されるのだった。



 
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