上 下
93 / 140
(野菜狂信者は)何とか肉食できんのか?

2度目の物々交換・タルトタタン添え

しおりを挟む
「お待たせしました」

「ちゃんと酒を用意したんだろうな?」

来たな、いきなり酒の話はどうかと思うが前回は大量の米の代金代わりにベーコンとバーボンで返す約束だったから仕方ない。

何やら見慣れない人もチラホラ居るが……まあいいか。

どうせ酒盛りか物々交換の間に知れるだろ。

まずは前回の米の代金代わりのベーコンとバーボンを差し出して、サーマが桃花に礼を言って……ここから物々交換だ。

「試してみましたがリボベジは上手く行かなかったので、やはりキャベツは欲しいですね……それと紫芋も」

「ウチもリボベジは失敗したからな、キャベツとアンチョビが欲しい」

「ならアンチョビは木炭、紫芋は例の甘味料だな……キャベツは生で食える卵と重曹がいい」

しかしリボベジは失敗したか……まあ土の栄養とか気候とかの問題だとしたら俺にはどうしようもないからな。

なるべく機会を作って大量に用意してやるぐらいしか出来ん。

「おっと、鰹節とカボチャも欲しいです」

「こっちは酒とベーコンだな」

因みに可愛い妹は子供達の面倒を見ているが……間違っても手を出すんじゃないぞ?




「今回も全部捌けたな……代わりに色んな物が増えたけど」

「モモちゃん……ちょっと回復魔法お願い」

って可愛い妹がボロボロに!?

「またこっぴどくやられましたね……強かったでしょう?」

「かなり……あの大盾を構えたエルフのアプさんって人、ひょっとしたら師範と同じぐらい強いかも」

「あたしの義母ですからね、体感ですが全力なら師範より強いですよ」

例のトゥール様の分体とかいう師範より強いって……

義母とか言ってたが旦那か嫁さんのどちらかの母親って事でいいのか?

「あたしの嫁の母親ですね、余談ですが我が家だと旦那のもう1人の嫁が最強です」

更に上が居ると申したか?

何やらロウと一緒になってキャリと話をしている様だが……

「そういえばあのクティって青い髪と目をしたメイドの人も強かった」

ああ、何故かハイドラ様の様な雰囲気のある美人のメイドさんか……

ってタープもマリアも俺を睨むんじゃない。

浮気する気は微塵もないから。

「まあ似てるでしょうね、クティはそのハイドラ様の娘であたしの宿敵ですから」

「女神の娘が宿敵って……お前はどんな壮絶な生き方をしたんだ?」

「失礼な、クティから喧嘩を吹っ掛けて来たのを買っただけですよ」

いや、何があったのかは知らんけど買うなよ。




よし、夕飯の準備をするか。

今回は前にあいつと約束したラム肉を焼いて、大食いだらけなのを考慮してベンネのサラダにいつぞやのカボチャシチューも作ろう。

それとキャリのリクエストでハチミツ味のハンバーグも出す。

可愛い妹にマリアもキャリのリクエストならば嫌な顔はするまい。

ラム肉もローズマリーとマスタードを効かせたラムチョップとぶつ切りと大量の野菜を一緒に炒めるちゃんちゃん焼きの2種類を作る。

タープとマリアは妊娠中でローズマリーは毒らしいし、桃花もローズマリーの香りは苦手だとか聞いたからな。

「何か品数が多そうだし、手伝ってやるよ」

「私も手伝います!」

「助かる……そういや桃花はローズマリー以外に苦手な物ってあるのか?」

「ああ、確かセロリだけは食えないとか言ってたな」

よりによってセロリか……あれはオヤッサンの力を持ってしても育たなかったんだよなぁ。

まあ仕方ない、納豆の仕返しで嫌いな物があれば軽くおみまいしてやるぐらいの物だったし……素直に諦めよう。

「……所でハイドラ様の娘とか言ってたクティ、だったか?そんなにジーっと見られるとやり辛いんだが?」

「わたくしの事はお気になさらず、話に聞いた甘いハンバーグとやらが気になっているだけですから」

いや、作り方なら教えるから……せめてもう少し離れてくれないか?

嫁の居る身ではあるが美人が近くに居たら落ち着かん。

「諦めろ梅夫、離れて欲しいならさっさと作った方が早い」

「そうか……マレスはベンネのサラダを頼む、マカロニは既に出来てる」

「解りました!」

そういや可愛い妹と桃花は……ベルと組手をしているのか。

まあベルはその為に来た訳だしな。

それにしても本当に桃花の左手から電気が出てるが……あれ食らったらただじゃ済まないだろ。



ふぅ、ラムチョップをアルミホイルで包んだしソースも出来た、後はシチューを夕飯の直前まで煮込んでハンバーグを焼くだけだ。

あいつにはちゃんちゃん焼きを頼んだけど、何か俺が作るより美味そうな匂いがするぞ。

「これでも名古屋で育った身だぜ、味噌の扱いならお手の物だよ……まあ転生した時間の方が長くなっちまったけどな」

そういや名古屋で肉屋をやってたんだったな。

とりあえず手が空いたし、何かツマミでも仕込んでおくか。

「ぅぅ……キュアさん強過ぎます」

「いやいや、ベルちゃんも中々の腕でしたよ」

組手は終わったのか……そしてベルが負けたと。

怪我はなさそうで良かった、もしも痕が残ったらジョニーさんに何をされるか解らん。

「お兄ちゃん、デザート作るから私のコンロに火を入れて、それとダッチオーブンも借りるよ」

「おう、それで何を作るんだ?」

「今回はタルトタタンだよ」

タルトタタン……酒豪のスコッチさんが唯一好んだスイーツか。

砂糖とバター、好みでラム酒を使いながら炒めたリンゴに生地を被せて焼くだけながら力量がハッキリと出てしまう、ある意味おそろしい奴だ。

そして相変わらず型がえげつない大きさだが今回は子供が多いし、割り当ては少なく済むだろ。

「モモちゃんが簡単に作れるスイーツを知りたいって言ってたからね……まあラム酒がないから代わりにレモンのワインを使うけど」

「確かに言いましたけどね……何しろあたし、日本に居た頃は甘い物より炭水化物を優先せざるを得ませんでしたから、そういうのに疎いんですよ」

あの時やけにパエリヤをがっついていたのはそういう事か。

そういえば確かあの時は桃花と可愛い妹にもう1人いたよな?

「……ふと気になったんだが、苺心と桃花の他に焼きリンゴを貪っていたのが居たけどそいつはどんな奴なんだ?」

「あ、リリーちゃんの事ね」

「まあ一言で言うなら腐った女子ですかね?」

いわゆる腐女子って奴か……

逆に疑問が増えたんだが、趣味思考が丸っきり違うお前達はどうやって仲良くなったんだ?

「後、甘い物とカレーが何よりも好きだったな……何だか会いたくなってきた」

「とはいえ、こうしてあたしとベリーちゃんが再会できたのも奇跡ですからね……流石に3人が揃うのは無理でしょう」

来たら来たでカレーのないこの世界は可哀想だろ。

まあ焼きリンゴぐらいなら幾らでも作ってやるが。

「いかんな……カレーと聞いたら食いたくなってきた」

「その気持ちはよく解る、だが俺はカレー粉の作り方なんて知らんぞ」

「あたしもカレー粉は解りませんね」

「私はお菓子やスイーツしか知らないから」

まあカレー粉は専門の知識が必要だとか聞いた事があるからな……

こうなったらトゥール様にソース味の料理をおみまいしまくってカレー粉を頼むしかない。

「お兄ちゃん、流石にそれはどうかと思う」

「……だな」

こうなったら後から来るだろう迷い人に期待するしかないか。

ってもういい時間だし、夕飯を仕上げよう。




「マスタードのソースがローズマリーの香るラム肉に合うな……美味い」

「あのシロガラシの種を砕いて砂糖と酢を混ぜれば出来るからな、後で詳しい作り方を書いてやるよ」

まあこいつの腕は確かだし、俺のと同じコンロも作ってやったから再現は可能だろう。

羊肉は余り食わない世界らしいが、これは牛のロース肉で作っても中々だからな。

「甘いハンバーグ美味しい!」

「これおかわり!」

どうやら子供達はハンバーグを気に入ったらしい……

だがおかわりは焼けるのを待ってくれ。

「美味しいですねタルトタタン……名前的に難しいだろうと思ってましたがかなり簡単に作れる様ですし」

「ラム酒があればもう少し香りが良くなるんだけどね」

この世界にも砂糖はあるからサトウキビもあるだろうし、作れなくはないんだろうが……今度ジョニーさんに相談してみるか。

あの人はバーボンを作ってるから、何か解るかもしれん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

俺は5人の勇者の産みの親!!

王一歩
ファンタジー
リュートは突然、4人の美女達にえっちを迫られる!? その目的とは、子作りを行い、人類存亡の危機から救う次世代の勇者を誕生させることだった! 大学生活初日、巨乳黒髪ロング美女のカノンから突然告白される。 告白された理由は、リュートとエッチすることだった! 他にも、金髪小悪魔系お嬢様吸血鬼のアリア、赤髪ロリ系爆乳人狼のテル、青髪ヤンデレ系ちっぱい娘のアイネからもえっちを迫られる! クラシックの音楽をモチーフとしたキャラクターが織りなす、人類存亡を賭けた魔法攻防戦が今始まる!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...