上 下
81 / 140
(野菜狂信者は)何とか肉食できんのか?

羊の解体・ラムチョップソテー添え

しおりを挟む
フレンチマスタード作りで一悶着あったが、ローズマリーも用意してようやく着いたぞ。

今回は一泊のみの強行軍だが、出産を終えて落ち着いたら二泊はしたい所だ。

それにたまにはレクタさんを連れて温泉にも行きたいが、温泉ならペスカタだろうな。

「おー、久しぶりっすねぇウメオっち!マレスっちにキャリちゃんも久しぶりっす!」

「相変わらず馴れ馴れしく呼ぶなお前は……別に構わんが、まず羊を見せて貰えるか?」

「りょーかいっす!前街長からも【美味い物なら積極的に取り入れろ】って言われてるし、ウメオっちの料理は美味しいから期待してるっすよ!」

レシピは俺が考えた訳じゃないけどな……

だが羊肉が美味いのは間違いないから期待していろ。

「そういやアンカーはどうした?」

「前街長なら既に領主の所へ向かったっす!」

つまり引き継ぎは完全に終わった、と。

……一抹の不安を感じるのは俺だけだろうか?

「とりあえずウメオっちが言ってた、歯が生え変わったばかりの羊を何頭か集めといたっすけど」

ほう、流石は肉食文化のカーニズ……肥り過ぎずかつ適度な脂肪を蓄えたいい羊だ。

羊肉はラムとマトンという呼び方がありラムは生後一年未満、マトンはそれ以上を指す。

味はマトンの方が濃厚だが独特な臭みも出てくる。

なので羊の味を教えるならば最初はラムの方がいいだろう。

俺はマトンも好きだけどな。

「……よし、こいつとこいつが食べ頃だな」

「ほー、どっちも性格が荒くて去勢した奴っすけど……お肉はメスの方が美味しくないっすか?」

「牛や豚ならその通りだが、羊はどっちでも美味いんだ」

まあ味に差はないけどマトンと同様に臭みの有無がある。

それも去勢してあれば出ないし、何ならじっくりと脂を落としながら焼けば消える。

「そしたら解体だが、手順や取れる部位は牛や豚と変わらんから任せるけどロースだけは骨を付けたままにしてくれ」

「解ったっす!」

その間に可愛い妹や嫁達への土産を見繕っておこう。

特にこの前の物々交換でありったけ飲まれたラズベリーワインはたっぷり補充しておかねば。

買ってもすぐには飲めんが。

「そういえば師匠、イチゴちゃんからラズベリーをジャムにして持ち帰って欲しいとお願いされたんですけど」

「ああ、何故かここでしか売ってないからなぁ……作り方は解るなら任せる」

「解りました!」

「キャリも手伝う!」

最近キャリはよく可愛い妹と一緒にお菓子を作ろうとしてるからなぁ……

個人的に肉料理を覚えて欲しい所だが、まあ娘のやりたい様にやらせてやるのが親の務めって奴だろう。

この世界なら学歴なんて必要ないし。




よし、土産選びが終わった所で始めるか。

今回使うのは羊の骨付きロース肉、通称ラムチョップをフライパンで焼く。

個人的に牛ならランプ肉、豚ならヒレ肉が一番美味いと思うが羊ならやはりこの部位だろう。

「ンナー……」

「ヒャー……」

お前等……キャリの側に居なくていいのか?

別に見るのは構わんが。

気を取り直して、フライパンにオリーブオイルを馴染ませたらローズマリーを炒めて……そこに塊のままのラムチョップを突っ込む。

焼く時のコツだが、肉は薔薇の色……ミディアムレアに仕上げるのが重要だ。

それ以上に火を通したら固くなる。

いい感じに焼けたら毎度お馴染みのアルミホイルに包んで暫く休ませよう。

このままローズマリーをどかして、フライパンの中に溜まったオリーブオイルと肉汁にマスタードとハチミツを温めながらよく混ぜて、と。

直火から離したらベーコン作りに欠かせないリンゴの木の木片を砕かずにくべてコンロに蓋をして……後は夕飯を待てばいい。

「ベーコンにエビフライ、サイドを作ってる間につまみ食いしたら飯抜きだからな?」

「ンナッ!」

「ヒャッ!」

返事はともかく、猫と鳩なんだから敬礼までせんでいいぞ。

というか何で出来るんだよ。

まあいい、ラムチョップの付け合わせならやはりトマトとポテトが欠かせない。

なので今回はオリーブオイルで炒めた薄切りのジャガイモとベーコンを溶き卵で閉じて、その上に薄切りのトマトを並べつつチーズを削って掛けて暫く放置しておこう。

味付けはベーコンと塩コショウだが、薄いと思うならケチャップを掛けてもいいし醤油を垂らしてもいい。

個人的に醤油のが美味いと思うが、今考えるとチーズに醤油って変わった組み合わせだよな。

でも美味いんだから仕方ない。




「おぉーっ!このリンゴの香りがしてツーンとくるソースに噛むほど肉汁が溢れる羊の肉が美味しいっす!いやぁ羊って毛を取るだけじゃないんっすね」

「コツはミディアムレアに焼く事と、歯が生え変わったばかりの羊の肉を使う事だ……鮮度が良ければローズマリーと塩コショウだけでも美味いからちゃんと覚えておけよ」

「解ったっす!」

一応ローズマリーはここでも栽培する様にしたからな、採れ過ぎても羊や牛が食うから問題はないだろ。

マスタードは……シロガラシはまだしもレモンのワインはペスカタにしかないし作るのは無理だろう。

念のためにイチゴのワインで作った酢でも作ってみたが甘味がマスタードの刺激を殺してしまったからな……多分ラズベリーのワインでも同じ結果になるだろう。

因みにラム肉なら以前にも作ったラズベリーソースで食っても美味いぞ。

「じゃあこれ、ウメオっちに頼まれたお土産用で氷らせた羊のロース肉と肩肉っす」

「スマンな」

「所で一つお願いがあるっすけど……朝になったらあの辛くて美味しいベラバーガーっていうのを作って欲しいっす」

あれを朝飯に食うと申したか?

別に材料を用意するなら幾らでも作ってやるけどな。

……どうせたっぷり食うだろうし、寝る前にバンズを焼いておくか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す

MIRICO
恋愛
オレリアは幼馴染に失恋したのを機に、薬学魔法士になるため、都の学院に通うことにした。 卒院の単位取得のために王宮の薬学研究所で働くことになったが、幼馴染が騎士として働いていた。しかも、幼馴染の恋人も侍女として王宮にいる。 二人が一緒にいるのを見るのはつらい。しかし、幼馴染はオレリアをやたら構ってくる。そのせいか、恋人同士を邪魔する嫌な女と噂された。その上、オレリアが案内した植物園で、相手の子が怪我をしてしまい、殺そうとしたまで言われてしまう。 私は何もしていないのに。 そんなオレリアを助けてくれたのは、ボサボサ頭と髭面の、薬学研究所の局長。実は王の甥で、第二継承権を持った、美丈夫で、女性たちから大人気と言われる人だった。 ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。 お返事ネタバレになりそうなので、申し訳ありませんが控えさせていただきます。 ちゃんと読んでおります。ありがとうございます。

輪廻の花〜運命からは逃れられない〜

スズキアカネ
恋愛
私は同じ生を繰り返している。 先に待ち受ける悲劇を食い止めようと頑張っても、待ち構えているのは死。この世は私に非情で優しくない。私はただ、人並みの幸せが欲しかっただけなのに。 ──ただこの先に待つのが地獄だと決まっているなら、いっそこの手で。 (全5話) 明治・大正時代の雰囲気で描いています。 ■□■ 無断転載等は禁止しております。Do not repost.

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

木漏れ日の中で…

きりか
BL
春の桜のような花びらが舞う下で、 その花の美しさに見惚れて佇んでいたところ、 ここは、カラーの名の付く物語の中に転生したことに俺は気づいた。 その時、目の前を故郷の辺境領の雪のような美しい白銀の髪の持ち主が現れ恋をする。 しかし、その人は第二王子の婚約者。決して許されるものではなく…。 攻視点と受け視点が交互になります。 他サイトにあげたのを、書き直してこちらであげさしていただきました。 よろしくお願いします。

あたたかな鳥籠を君に、優しい口づけをあなたに

サイ
BL
完結しました。 読んでくださった方々、本当にありがとうございました!! 古くからの伯爵家に生まれたユリアは13の時、両親は断罪され、平民となった。姉の残した1歳の甥と共に、地獄のような生活を送り心に深い傷を負う。 やがてたどり着いた公爵領で、ユリアは公爵ヘルマンに仕え、あたたかく見守られながら成長する。 過去の傷を抱えながらも希望を失わず、懸命にヘルマンに仕えるユリア。 自分の中にある欲求を嫌悪し愛を諦めていたヘルマン――。 強いドミナント(支配欲求)、心に傷を持つサブミッシブ(服従欲求)の二人のはなし。 D/sであってSMではないので、痛くはないと思います。 第一章:不幸のどん底〜両思いまで。完結しました! 第二章:溺愛・イチャコラします 第三章:真相解明 ユリアの過去だけ強い虐待がありますので、苦手な方は(過去)を飛ばして読んでください。 (※)にも無理やりありますので、ご注意ください。

とびきりのクズに一目惚れし人生が変わった俺のこと

未瑠
BL
端正な容姿と圧倒的なオーラをもつタクトに一目惚れしたミコト。ただタクトは金にも女にも男にもだらしがないクズだった。それでも惹かれてしまうタクトに唐突に「付き合おう」と言われたミコト。付き合い出してもタクトはクズのまま。そして付き合って初めての誕生日にミコトは冷たい言葉で振られてしまう。 それなのにどうして連絡してくるの……?

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

処理中です...