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エピローグ

そして10年後

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地の女神が起こした騒動を解決してから早10年……あたしも24歳になりました。

たまに女神様達に呼び出されては甘味を作りに行ったり、デストさんに誘われてダンジョンに入ったり、王様に召集されて悪徳貴族の元へカチコミに行ったり、イブに頼まれながら料理を教えたり、何かにつけてクティと戦ったりしていますが……この世界は概ね平和です。

「キュア、麺がなくなったぞ」

「マジですか……ではここで品切れです」

「「「チクショーッ!?」」」

今やあたし以外にもラーメンを出す屋台が増えたというのに何故こんなに並んでいるのかが謎ですよ。

トンコツラーメンだけは未だにあたしの屋台でしか出されていませんけど。




あたしは大神官まで出世しましたが相変わらず屋台を引きながらラーメン、たまに焼きそば等を売りつつ神殿の視察をする旅をしております……

視察は他の神官に任せた事もありましたが、賄賂やら色仕掛けやらで虚偽の報告をされる事が多く……仕方なく自分で見ていますよ。

「もう私、キュアちゃんからの報告しか信じられない!」と、精神を病みかけたジェネさんのお願いでもありますし。

とりあえずは一段落したのでボリアへ戻らなくてはなりませんが……また書類と戦う日々が始まるのですね、はぁ。

「ままー、ごはん!」

「今しがた屋台が終わったばかりなんですが……もう少しだけ、トウカと遊んで待ちなさい」

「はーい」

「ミャアーッ!?」

助けてくれって?諦めて下さい。

あたしとロウの間に生まれた子供は地の女神の生まれ変わりなのに男の子でした……サーグァ様やトゥグア様にも確認して貰ったので間違いありません。

男嫌いを治す為に男の子にするって何かがおかしい様な気もしますが、特に害はないので大丈夫でしょう。

クティにとっては性別なんて関係ないそうですし……せめてもの情けという事で名前はテップにしましたよ。

理由はまあ言わずもがな、地の女神と同様に某這い寄る混沌からです。

因みにクティは付いて来られると邪魔なので、出立する時アプさんとナクアちゃんに押さえつけて貰いました。

「パパー、だっこー!」

「ちょっと待ってな、今トウカをテップの噛みつきから解放するから……それまでスパウンと遊んでてくれ」

「はーい!」

「こ、こらナチャ!我を口に入れたら腹を壊すぞ!」

ナチャはロウとナクアちゃんの間に生まれた女の子……母親に似て非常に甘えん坊です。

名前はアトラさんが付けてくれました。

それにナクアちゃんの疎通を受け継いでいるらしく、動物との会話が出来る様で……何故かイケボスライムと仲良しです。

ロウはデストさんみたいな細マッチョになって、相変わらず同性愛者からお尻を狙われながらトウカを頭に乗せていますよ。

因みにトウカとイケボスライムは全く成長していません……何故?

それとザトーですが……あのシスコン忍者は相変わらずナクアちゃんには嫌われていますがナチャにだけは好かれていて、端から見た言動が完全な変質者なので必要のない時は指輪に幽閉しています。

ナチャが生まれた時点でロウを殺す気はないらしく、ちゃんとした契約は未だにしてないので適当な命令を与えて解放してやろうかと相談されていますが……あのまま野に放つ方が恐いんですよね。

下手したらナチャのストーカーになりかねませんし。

「さて、ワイルとヘルデは良い子にしていますかね?」

「どうだろうな……ワイルはコカに似たけど、ヘルデは誰に似たんだか暴れん坊だからなぁ」

きっとあたしとアプさんに似たのでしょう……否定はしません。

ワイルとヘルデは……まあお察しですね、あたしとコカちゃんの間に生まれた双子で、アプさんが名付けしました。

最初は女の子同士でどうやって妊娠するんだ?って思いましたが……まあ、うん。

詳しくは言いませんけど、薄い本みたいなご都合展開があったと思って下さい。

一応言っておくと双子は両方共男の子で、不思議な事に子供達は全員誕生日が一緒になりましたよ。

「本当ならヘルデも連れて来たかったんですけどね……」

何せヘルデはまだ4歳ながら空手の才能がありますからね……

一応ナクアちゃんに指導を頼んでおいたから稽古はしてる筈ですけど。

「仕方ないだろ、ヘルデとワイルはアプさんにベッタリだし……」

アプさんも孫には激甘でしたからね……リベンさんとビートさんは激々甘でしたが。

しかもそろそろ平均寿命である500歳に届くというのに一向に衰えないし……今度は曾々孫を抱っこするまでは死なん、とか言ってましたよ。

頑張って長生きして下さい。



子供に甘いと言えば……王様達との付き合いも続いていますよ。

あの後エリナ様は男子、マリー様とサーグァ様が女子を出産されて国を挙げての祭りにまで発展してしまいましたし。

王様も自分の子供を嫁と同様に愛しておりますが……特に女の子だと成長してもそのままでは嫌われる可能性があるから注意して下さいよ?

ただ……今年で10歳になる王様の息子が4歳のナチャにアプローチをしているのを見たからか、婚約を迫っているのですけど流石に早過ぎませんかね?

貴族や王族なら珍しくはないんでしょうけど、あたし達は平民ですよ?

王様は奴隷であろうと構わず嫁にしていましたけど。

「そういや、兄貴とアトラさんの方もそろそろか?」

「予定日は確か来月でしたが……あくまでも予定ですからね、可能性はあります」

因みにデストさんも王様と同様、子供にはデレデレしています。

それに大方の予想通りミラさんやジェネさんの尻に敷かれており……ミラさんとの間には男の子、ジェネさんとの間に女の子が生まれています。

余談ですがヴァレンさんも孫に甘々でした。

「後は……イブに頼まれてた名付けは?」

「それならもうヨグとシアエという名前を送っておきましたよ」

一応男の子用、女の子用で2つの名前を送ったので……仮に双子でも問題はないでしょう。

両方男の子、または両方女の子だったりした場合はその時に考えますけど……まあ双子なんて滅多に生まれませんし。

とはいえ、この名前を考えたのはあたしじゃなくてヨグソ様なんですけどね……あたしはただ橋渡しをしただけです。

ヨグソ様からすればイブの子供は曾々孫に当たりますから、そりゃ可愛いでしょう。

ただ、生まれる前から子供同士を婚約させましょうとか言うのは勘弁してくれませんかね?

あたしの子なら信用出来ますとか言われても困りますよ……しかも最近じゃヨグソ様まで便乗して断り難くなってます。

あたしを尊敬してくれるのはいいんですがイブの場合は重過ぎるんですよ……未だに敬語だし。

何でイブのあらゆる感情はとてつもなく重くなるんでしょうか?

生まれる前からイブの子供が心配でたまりません。

むしろあたしはそんなイブの、一歩間違えれば病んでしまいかねないぐらいに重過ぎる愛情を一身に受け止め続けているクロマ君を尊敬しますよ……かなり本気で。

たまにロウとデストさんがクロマ君を連れて飲みに行きますけど……愚痴の類は一切出ず、逆にノロケているそうですからね。

頑張って受け止め続けて下さい。




そんなこんなで久しぶりの我が家です。

庭ではナクアちゃんがヘルデに稽古を……

「やー!」

「うん、凄いよヘルデ!もう魔拳が使える様になるなんて!」

4歳児に何を教えてるんですかナクアちゃーん!?

しかも属性は炎……火事になったらどうするんですか!

「あ、キュアおかーさんだー!」

「お帰りマスターっ!」

それにしてもナクアちゃん……中身が一向に成長する兆しが見えませんね。

一応あたし達をさん付けで呼ぶ様になって、ロウの事はマスターと呼ぶ様になりましたけど。

身体と空手の腕前は物凄く成長したのに、特に胸が……あたしとコカちゃんは未だにぺったんこだというのに、ちくせう。

因みにナクアちゃん……既にあたしやクティはおろか、アプさんよりも強いです。

「キュアおかーさん、これ見てー!」

おや、さっきの魔拳ですね……って鋼ぇ!?

あたしが苦労して収得した鋼を4歳児が自在に……流石はあたしの息子です。

デュロックさんも編み出した技をここまで使いこなす者が現れれば一片の悔いすらないでしょう。

「いや、デュロックのオッサンはまだ死んでないだろ……というかキュアも子供に甘いよな」

「ロウには言われたくありませんけどね……」

あたしとロウは育った環境がアレだったせいかイマイチ子供との距離感が掴めず苦労していますが……

アプさん達も手伝ってくれてますし、何とかなってる……と信じたい。

「ようやく帰って来ましたわね……」

「くてぃー、ただいまー!」

クティはグヌットの酒場を潰してまでこの家のメイドをしておりますが……仕事は見事と言う他ないにも関わらず基本的にテップのお世話しかしないのですよ。

いい加減クビにしてやりたいんですけど、「クビになったら白と黒を片っ端から集めて各地で暴れさせてやる」とか言われたら出来ませんよね……ぐぬぬ。

まあテップはクティによくなついていますけど、ナクアちゃんが目を光らせているから邪な手出しはさせませんよ。

「キュアかーさん、おかえり!」

「ワイル、いい子にしてましたか?」

「うん!」

ワイルは生まれつき身体が弱いんですが魔力は凄いので、きっとコカちゃんみたいなプロフェッサーに向いているのでしょう。

というか暴れず騒がず家事も率先して手伝ってくれるワイルは本当に良い子です。

今では炊飯なら1人で出来る様になりましたよ。

「それとね、ロウとーさんとキュアかーさんにおきゃくさんがきてるよ!いまはコカかーさんがおあいてしてる!」

余談ですがあたし達の子供にはロウを父、あたしとコカちゃんとナクアちゃんは母と教えています。

一緒に生活してるから誰が両親で叔父、叔母なのかとか……非常にややこしいので呼称を統一しました。

それにしてもあたしとロウに客ですか……

またサーグァ様かトゥール様がおやつをねだりに来たんですかね?




「あ、2人とも……おかえり」

「はい、今帰りましたよ」

コカちゃんは……背が伸びた以外の変化はほぼありませんね。

まあハーフエルフですし。

昔に比べればハキハキと喋る様にはなりましたけど。

「やっほー、久しぶり」

「翡翠さん!久しぶりだなぁ」

本当に久しぶりですよ……神界へ甘味作りに行った時はライコに会う事もありましたけど翡翠さんはあれきりだったから……10年振りでしょうか?

見た目は全然、全く、これっぽっちも変わっていないのは……やはり眷属補正とやらのせいでしょう。

今年35歳になったサーグァ様も見た目に変化がありませんからね、補正は確実に存在します。

「このひとがひすいさん?ロウとーさんのおししょーさま?」

「そうだよ、水の女神様の眷属でもある、偉い人なの」

「ちょっとコカちゃん、その説明は間違ってないけど……私はそんなに偉くはないよ?」

何を仰りますか、ハイドラ様の眷属なら充分偉いでしょうに。

というか一体どの様な要件で?

大方また神界で何か作ってくれとかそういう……

「あ、そうだった……実はロウくんの娘の、名前はナチャだったよね?その子にロウくんと同じ素質があるらしくて、トゥグア様とハイドラ様に指導をお願いされちゃったんだよ」

「え……マジで?」

珍しく料理関係ではないのですね。

まあ……ナチャは幻獣使いと幻獣の間に生まれた娘ですからね、おまけに疎通まで受け継いでいたし納得ではあります。

つまり翡翠さんはナチャを指導する為に来た、と。

「そういう訳だから、また暫くは宜しくね」

「りょーかい、って翡翠さんが来てるという事は……」

「当然、皆も来てるよ」

おやおや、一気に賑やかになりますね……夕飯は久しぶりにライコの腕前を見せて貰いましょうか。

でもある意味丁度良かったかもしれません。

「ここに住むのは構いませんが、その間テップをクティの魔の手から守ってくれませんか?」

「お安い御用だよ」

翡翠さんはクティを押さえつけられる数少ない強者……あたしでは引き分けが精々ですし、ナクアちゃんもずっと付いていられはしませんからね。

まあでもテップが成人した後に、本人の意思でクティと結ばれたいと言うなら止めませんけど……それまでは余計な事を吹き込まない様に、徹底的に遮断しなければ。

というかあたしの宿敵で、ナクアちゃんの母という扱いであるクティが義理の娘になるのは嫌過ぎますからね……きっとあの頃のハイドラ様もこんな心境だったに違いありません。

ついでに言うとあたしとクティの勝敗は……全戦全引き分けです。

「そういえばアプさんは?」

「母さんはキュアちゃん達と入れ違いで、商団を連れてグヌットに行くって」

ああ、またガリクとジンジャーの仕入れに駆り出されたんですね……非常に安く買えるからって半年に1度は必ず呼ばれていますから。

多分あたし達の中で1番見た目に変化がないのはアプさんでしょう……まあエルフですし。

硬さや回避力は跳ね上がっていますけどね……シワ1つ増えていないあの美肌は羨ましいです。

「あ、それとキュアちゃん……来週トゥール様が迎えに来るから予定を空けておいてくれって」

「ああ、また甘味作りですかね……解りました」




「さて、夕飯もお風呂も終わりましたし……お祈りをしたら寝ますよ」

「「はーい!」」

個人的に全員でトゥグア様に祈りたい所ですが……テップは元が地の女神、ナチャは暫くの間ハイドラ様の眷属である翡翠さんの指導を受けるとあって無理強いは出来ません。

まあ誰がどの女神様に祈るかは自由ですからね……自分の子供といえど口出しはしませんよ。

信仰は自由であれ、それが平和の秘訣です。





親愛なるトゥグア様……

ここまで色んな事がありましたが、トゥグア様のお陰であたしは今幸せに生きていられます。

どうかこれからもそれが続きます様に……

願わくば子供達の将来も幸ある物であります様に。

「「「ふんぐるい むぐるうなふ トゥグア ほまる はうと うがあ ぐああ なふる たぐん…… ふんぐるい むぐるうなふ トゥグア ほまる はうと うがあ ぐああ なふる たぐん……」」」



『って、いつまでその詠唱を唱え続けているんですかーっ!?』
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