上 下
106 / 122
決戦

VSイケボスライム ※コカ時点

しおりを挟む
いきなり目の前が真っ白になって、気が付いたらボクはセラエの入口前に立ってた……

何をされたのかは解らないけど……多分クティちゃんの仕業、だよね?

という事はこの辺りにあのスライムが……あ、あの白いのは……マジックスライムかな?

……まだボクには気付いてない?

あの時と同じなら、近くには黒いスライムが居る筈……なら。

「セラエだったのは……運がなかったね」



念入りに準備してから戻って来たけど、やっぱりマジックスライムと一緒に居た……

探す手間が省けたからいいんだけど。

「……見付けた」

「ふむ、予想よりも来るのが遅かったがまあいい……久しぶりだなハーフエルフの娘よ」

あの時のスライム……前に見た時より2倍は大きくなってる。

それにあの時と同じぐらいの数のマジックスライムも引き連れて……先に見てはいたけどちょっと多いな。

「よもや卑怯とは言うまい?これは遊びではない、れっきとした戦いなのだ……ならば我が仲間を連れていても問題はないだろう?」

当然、それは理解してる。

ボクが迎え打つ側なら、きっと同じ事をしたと思うから。

可能ならキュアちゃんと一緒に戦いたかったけど……母さんとロウくんは魔法が使えないし。

でもキュアちゃんはクティちゃんと戦わなきゃだし、元々ボクは1人で戦うつもりで準備をしてた。

でも……

「その理屈なら……ボクが仲間を連れて来ていても、問題は……ないよね?」

「なっ!何故ここにウィザードが4人も!」

確かに……あのスライムの人海戦術……スライム海戦術?はボク1人と戦うなら効果的だったと思う。

実際にボクの魔力だけじゃ無力化しきれなかった可能性が高いし、用意した秘策があってもマジックスライムまでは対処が出来なかった。

でも相手がスライムで、セラエに飛ばされたのはボクにとっては幸運だった……

このスライムの居場所を突き止めた時、一旦宿に向かって……マジックスライムの脅威を理解しているウィラコさんに協力を仰げたから。

ただ……本当の事を言う訳にはいかなかったから、【王様からの命でマジックスライムが繁殖しているという噂を聞いて調査に来た】って説明をしたけど。

実際に繁殖はしてたから丸っきり嘘ではないけど……後でサーグァ様に口裏を合わせてくれる様にお願いしなきゃ。

ウィラコさん達は前に来た時マジックスライムの亜種に手を焼いてたから……人手と秘策の確保をしてくれた。

手伝いを買って出てくれたウィザード達は以前その亜種に大怪我をさせられて、マジックスライムに恨みがある人達だって言ってた。

まあでも、その代わりにボクが知ってるキュアちゃんのレシピ……いくつか教える事になっちゃったけど、現金で要求されずに済んだのは助かった……かな?

お金……なくはないけど、結婚式の為に貯めておきたいし。

「……まあ良い、貴様に奴等以外の仲間が居たとは知らなかったがウィザードならば我が仲間達で対処出来る、お前達はあの魔術師達をやれ」

マジックスライムはウィザード達を狙う様に分散……上手くあのスライムと一騎討ちする形になれたね。

「それじゃ……皆さん、作戦通りに!」

戦闘……開始!



「【複製】【フレイムボール】」

「フン、相変わらずの炎魔法か……【キャンセル】……あれ?消えていないだと!【キャンセル】!……よし、消えたな」

やっぱり……図書館で見付けた禁呪の研究記録にも書いてあった通り、キャンセルは1度に1つの魔法しか消す事が出来ないみたい。

プロフェッサーの固有技能【複製】……直後に放つ魔法を魔力の消費は半分ぐらいで、もう1度だけ打てる様になる……魔力を減らしている分だけ威力は下がるけど、あのスライムには効果的だね。

更に調べて解ったのは倍の魔力を消費する、というのは唱えれば勝手に減る訳ではなくて……この魔法にはこれぐらいの魔力、という知識と感覚が必要……らしい。

つまりあのスライムは……半分の魔力で打った魔法にも通常の消費をして、魔力の無駄使いをしているんだね。

それにあのスライム……頭が悪そうだし、きっとクティちゃんが頭じゃなくて身体に叩き込んだんだろうなぁ。

覚えさせるのに相当な苦労をしたんだろうけど、それを無駄にさせるみたいで申し訳ないね。

キュアちゃんの敵だから容赦はしないけど。

「スクロール……【バーストレイン】、【複製】、【フレイムランス】!」

「【キャンセル】!【キャンセル】!【キャンセル】!?……ええい、魔法の三重発動とは器用な真似をしおって!」

うーん……実際の魔法じゃなくて、スクロールの魔法なら消されないんじゃないかって意見があったらしいけど……普通に消されちゃったね。

これはウィラコさんに教えて、そのまま王様に伝えて貰った方がいいかな?

禁呪とはいえ、習得が出来ない訳じゃないみたいだし、備える必要はありそうだからね……まあ習得にはそれなりに長い年月が掛かるらしいし、ボクは覚える気ないけど。

「スクロール、7枚発動……【バーストレイン】」

「今度は七重発動だと!?ええい、【キャンセル×7】!」

スクロールは魔力を込めるだけで使えるから、手に持てる分だけ同時に使えるけど……一応試したけどボクの場合、1回につき最大で15枚まで使えた。

ただスクロールを作るのも、使うのにも魔力を使うし……何より紙も無料タダじゃないから余り使いたくはないんだけどね。

普通に発動するより少ない魔力で打てるから使ってるけど。

それにバーストレインのスクロールは1枚800ハウトで売れるから勿体ないんだけど……紙の代金を合わせれば、これまでで6416ハウトがパァだよ。

結婚式の為の資金の目標の……大体8分の1がこれだけで消えるって……かなりのストレスだよ?

「ぐっ……何故か奴の眼から光が消えているし流石にこうなると我だけでは分が悪い、お前達、我を……あれ?」

あ、マジックスライムの方はもう終わってたみたいだね。

あちこちに小さな白い球が転がってた。




「馬鹿な!魔法に対して無敵な我が軍勢が、ウィザードに負けたというのか!?」

「だって……皆は魔法、使ってないからね」

キュアちゃんが言ってた、骨を持たない生物は塩で身体が縮むという生態……

実際マジックスライムの亜種……確かナメクジとか呼んでたモンスターにも効果があったし、その後に研究用のマジックスライムでも試して、これなら勝てるって思って準備をしてた。

またマジックスライムを従えていたのは予想していなかったけど……亜種が現れたセラエの近くに居たのが運の尽きだったね。

一応、マジックスライムに塩を掛けながらあのスライムにも掛かる様に……ってお願いしたけど、予想以上に効果があったよ。

因みにこのスライムの対策は、騎士団にも伝わってて……遠征する時は食料以外にも塩を持ち歩く事にしたみたい。

「それはそうと……今の自分の身体、どうなってるか……解る?」

「え……あれ?何だか我の目線が低くなっている様な?」

スライムなのに目……あったんだ?

端から見てるとただの黒い球体なんだけど……どの辺りが目なんだろ?

ちょっと興味が出てきたな……教育係として登城する間に、暇を見繕って研究しようかな?

「視覚があるのは……驚いたけど……味覚は、ないみたいだね」

「確かに我は味という物が解らぬ……だがそれと何の関係があるのだ?」

うーん……既にリンゴぐらいの大きさまで縮んでるし、もう大丈夫かな?

一応、用意しておいた残りの塩を頭から掛けて……と。




「実はスライムって……塩をかけると、身体が縮むんだって……知らなかった?」

「……そういえばクティ様は釣りなら好きなだけやってもいいが海には絶対に入るな、と厳命されていたが」

海は塩水だからね……

説明してる間に硝子で作られた瓶に入れて、同じく硝子で作られた蓋をして……と。

「ぬおお……何故だ?この容器を破壊も、取り込む事も出来んのは何故だ!?」

スライムは何でも食べちゃうと思われてるけど、実は硝子と水晶は取り込む事が出来ない……ってあの時のプロフェッサーが残してた研究記録に書いてあった。

だからムリアに居る時、デストさんにお願いして作って貰っておいたんだけど……ちゃんと役に立って良かった。

それとスライムは飲まず食わずで20日は生きられるらしいから……合流するまではこのままでいいよね。

後、破壊が出来ないのは……単純に壊せるだけの力がないから、だね。

それにしても瓶の端でポヨポヨと頭突きを繰り返してるスライム……ちょっとだけカワイイかも。

このスライムの声は全く可愛くないけど。

「それじゃ……この黒いスライムは……王様に報告する時に、必要だから……持って行きますね」

「解りました、確か次はイレムに向かうそうですが……明後日の出発で良ければ自分と支部長がムリアの支部まで報告に向かう為馬車を出しますので、今日は休んで行きませんか?」

報告の為に……馬車を出すんだ。

出発は明後日で、行き先がムリアまででも……今から歩いて向かうよりは早く着くし。

明日は食堂を手伝わされそうだけど……馬車代と思えば安いよね。

「それじゃ……お言葉に甘えて」

あ、戻る前に……母さんか翡翠さんにテレパス、送らなきゃ。




【スライム、ホカクカンリョウ】

他の皆……キュアちゃんとロウくんは大丈夫かな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢になんてさせません。

夜船 紡
ファンタジー
侯爵家に奉公することになった貧乏子爵家の三女 エリゼ。 初めて仕えるマリアにあった時に前世の記憶を思い出す。 マリアは自分の読んでいた小説の悪役令嬢だった。 マリアの環境を見てみると、彼女の両親は彼女に関心が無く、教育も衣食住も使用人に全て任しっきりの精神的ネグレクトを受けていることに気が付く。 そんな彼女に母性が働き、うちの子(マリア)を絶対にいい子にしてみせる!とマリアの侍女見習いとして働くことに・・・

なにがなにやら?

きりか
BL
オメガバースで、絶対的存在は、アルファでなく、オメガだと俺は思うんだ。 それにひきかえ俺は、ベータのなかでも、モブのなかのキングモブ!名前も鈴木次郎って、モブ感満載さ! ところでオメガのなかでも、スーパーオメガな蜜貴様がなぜに俺の前に? な、なにがなにやら? 誰か!教えてくれっ?

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

指輪一つで買われた結婚。~問答無用で溺愛されてるが、身に覚えが無さすぎて怖い~

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約破棄をされて実家であるオリファント子爵邸に出戻った令嬢、シャロン。シャロンはオリファント子爵家のお荷物だと言われ屋敷で使用人として働かされていた。  朝から晩まで家事に追われる日々、薪一つ碌に買えない労働環境の中、耐え忍ぶように日々を過ごしていた。  しかしある時、転機が訪れる。屋敷を訪問した謎の男がシャロンを娶りたいと言い出して指輪一つでシャロンは売り払われるようにしてオリファント子爵邸を出た。  向かった先は婚約破棄をされて去ることになった王都で……彼はクロフォード公爵だと名乗ったのだった。  終盤に差し掛かってきたのでラストスパート頑張ります。ぜひ最後まで付き合ってくださるとうれしいです。

木漏れ日の中で…

きりか
BL
春の桜のような花びらが舞う下で、 その花の美しさに見惚れて佇んでいたところ、 ここは、カラーの名の付く物語の中に転生したことに俺は気づいた。 その時、目の前を故郷の辺境領の雪のような美しい白銀の髪の持ち主が現れ恋をする。 しかし、その人は第二王子の婚約者。決して許されるものではなく…。 攻視点と受け視点が交互になります。 他サイトにあげたのを、書き直してこちらであげさしていただきました。 よろしくお願いします。

処理中です...