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第二十六話 偽装
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「魔王にしては弱そうな見た目をしてますね」
マーガレットの指摘にロランは人差し指を振る。
「強そうな見た目をしてるとかえって目立つでしょ? そうなったら存在感あり過ぎて、引きこもれないじゃん。僕は目立ちたくないんだよね」
「戯言を……」
ギリオンがぼそりとつぶやくもそれはロランには聞こえなかった。マーガレットは内心ヒヤリとしたが安堵する。
「何よりさ、美しくないじゃないか。やはり、見た目は美しいのに限る。なにごとにもね。この姿が一番気に入っているんだ。君たちもそう思わないかい?」
後ろに控えている兎耳のメイドに尋ねた。すると兎耳のメイドは首を縦に振る。
「はい、とてもお似合いだと思いますぴょん」
「でしょ?」
「我らが至高なる御方はどんなお姿をしていてもお美しいニャー」
そういって猫耳のメイドがゴロニャンと甘えた声を出した。すると、他のメイドたちも同意するようにうさ耳のメイドと同じポーズを取る。
「うん、ありがとうね。そう言ってくれると嬉しいよ~」
「ニャァン♪」
少しでもロランに取り入ろうと媚びる獣のメイドたち。それに眉をピクリと動かしたのはリベルだった。
「……あの、我々がどうして生かされているのか、その理由をお聞かせ願いたいのですが……」
「あぁ、そうだ、そうだ。忘れるところだった。君たちを殺さない理由は簡単だよ。僕は無益な争いはしたくない。そこで君たちにはあることを協力してもらいたんだ」
それにマーガレットは笑ってしまう。
「何を今さら……どれほどの勇者を貴方は殺したのですか」
「それはあいつらが悪い。勝手に僕を悪者にして、攻撃してきたんだよ? ただやられるわけにもいかないから全員、返り討ちにしてやっただけのことさ」
先に仕掛けてきた方が悪い、というロランの主張に確かにと思ってしまう部分もあったが相手は相手だ。魔物を統べる王なのだ。戦いを挑まれて当然ではないか、そう心の中で思ったが口にはしなかった。
「……それで、私たちに協力して欲しいことというのは?」
「君たちはフェレン聖騎士の調査隊だったよね?」
「えぇ。そうですが」
「君たちにはフェレン聖騎士団の本部に「何もなかった」と報告してほしいんだ」
それにマーガレットは眉を顰めた。
「どういうことですか?」
「つまり、君たちは闇の魔法の痕跡をたどって、調査しに来たんだよね? だったら、犯人はそうだな……。そう、ネクロマンサーだったことにして、それを討伐したってことにしよう!」
「……」
あまりにも馬鹿げた話だった。だが、確かにネクロマンサーなら闇系の魔法を使う。死霊使いともいわれる彼らは死体をゾンビとして甦らしたり、強力な霊を呼び出したりすることができる。
「でもどうして、そんなことをしないといけないのですか?」
「そうすることで、僕たちの存在を隠すことができる」
それにマーガレットは首を横に振った。
「それは無理ですね。我々の他に複数の騎士隊が動いています。別の部隊が調査しに来るでしょう」
「ふふふ。それなら大丈夫。 この街ごと偽装するつもりだから」
「街全体を……一体どうやって?」
「街の住民たちがね、懇願してきたんだよ。帝国にただ殺されるよりも僕の側についた方が得だって」
その言葉の意味が分からず、困惑するマーガレットだったが、隣にいるリベルは何かに気付いたようでハッとした表情を浮かべていた。
「まさか……魔王様、隠密を得意とするカミラではなく、オドを向かわせたのは街の者を救おうとすることを見通していた、ということですか?」
「え? あ、ん~まぁ、そういうことになるかなぁ」
ロランの言葉にリベルは愕然としていた。
「じゃあ、こうなることもすべて計算の内だと!?」
「う、うん。そ、そうだよ」
おぉ、と執務室から歓声が上がる。
(―――いや、そこまで全然考えてなかったけど、なんか、みんな勘違いしてくれてるみたいだし、いっか!)
「我ら至高なる魔王様はまさか、そこまでお考えとは、さすがだニャ」
「まさに人知の及ばない優れたお方ですぴょん」
「流石は我らが魔王様」
獣メイドたちが褒め称えると、ロランは照れた様子で頭を掻いた。
「まぁ、そういうわけだ。でだ、君たちも協力してもらうよ。街は何もなかったように見せなくちゃいけないんだ」
「……」
マーガレットはそれに対して、安易に首を縦に振ろうとはしなかった。交渉相手は魔王だ。フェレン聖騎士団にとっては、騎士団として創設されることになったきっかけでもある。簡単に首を縦には触れない。
「別に断ってもいいよ。その時はどうなるかはわかるよね?」
それと同時にいつの間にか忍び寄っていた兎耳のメイドと猫耳のメイドが腰に下げていた剣を抜いて、剣刃を首筋に突き付けていた。
「っ……なかなか強引じゃないですか? 断ったら殺す、ってことですよね?」
「僕はオドと同じで、無駄な殺生は好まない主義でね。平和的にいこうじゃないか」
ロランは椅子に深く座ると足を組みながら頬杖をつく。そして、微笑みを浮かべるのだった。
「平和的にね……」
ギラリと剣刃が光沢を帯びる。
「さぁ、君たちの返答はいかに?」
マーガレットは悔しそうな表情をする。ここで反抗しても殺されてしまうだろう。ギリオンも同じく、抵抗はしない様子だった。
「……わかりました」
「ふむ。賢明な判断だ」
満足げに笑うロラン。
こうして、フェレン聖騎士マーガレットと魔王ロランとの間で半ば強引な交渉が成立し、この日より、マーガレット率いる第十九騎士隊の聖騎士たち三十人は魔王の配下に入ることになったのだった。
マーガレットの指摘にロランは人差し指を振る。
「強そうな見た目をしてるとかえって目立つでしょ? そうなったら存在感あり過ぎて、引きこもれないじゃん。僕は目立ちたくないんだよね」
「戯言を……」
ギリオンがぼそりとつぶやくもそれはロランには聞こえなかった。マーガレットは内心ヒヤリとしたが安堵する。
「何よりさ、美しくないじゃないか。やはり、見た目は美しいのに限る。なにごとにもね。この姿が一番気に入っているんだ。君たちもそう思わないかい?」
後ろに控えている兎耳のメイドに尋ねた。すると兎耳のメイドは首を縦に振る。
「はい、とてもお似合いだと思いますぴょん」
「でしょ?」
「我らが至高なる御方はどんなお姿をしていてもお美しいニャー」
そういって猫耳のメイドがゴロニャンと甘えた声を出した。すると、他のメイドたちも同意するようにうさ耳のメイドと同じポーズを取る。
「うん、ありがとうね。そう言ってくれると嬉しいよ~」
「ニャァン♪」
少しでもロランに取り入ろうと媚びる獣のメイドたち。それに眉をピクリと動かしたのはリベルだった。
「……あの、我々がどうして生かされているのか、その理由をお聞かせ願いたいのですが……」
「あぁ、そうだ、そうだ。忘れるところだった。君たちを殺さない理由は簡単だよ。僕は無益な争いはしたくない。そこで君たちにはあることを協力してもらいたんだ」
それにマーガレットは笑ってしまう。
「何を今さら……どれほどの勇者を貴方は殺したのですか」
「それはあいつらが悪い。勝手に僕を悪者にして、攻撃してきたんだよ? ただやられるわけにもいかないから全員、返り討ちにしてやっただけのことさ」
先に仕掛けてきた方が悪い、というロランの主張に確かにと思ってしまう部分もあったが相手は相手だ。魔物を統べる王なのだ。戦いを挑まれて当然ではないか、そう心の中で思ったが口にはしなかった。
「……それで、私たちに協力して欲しいことというのは?」
「君たちはフェレン聖騎士の調査隊だったよね?」
「えぇ。そうですが」
「君たちにはフェレン聖騎士団の本部に「何もなかった」と報告してほしいんだ」
それにマーガレットは眉を顰めた。
「どういうことですか?」
「つまり、君たちは闇の魔法の痕跡をたどって、調査しに来たんだよね? だったら、犯人はそうだな……。そう、ネクロマンサーだったことにして、それを討伐したってことにしよう!」
「……」
あまりにも馬鹿げた話だった。だが、確かにネクロマンサーなら闇系の魔法を使う。死霊使いともいわれる彼らは死体をゾンビとして甦らしたり、強力な霊を呼び出したりすることができる。
「でもどうして、そんなことをしないといけないのですか?」
「そうすることで、僕たちの存在を隠すことができる」
それにマーガレットは首を横に振った。
「それは無理ですね。我々の他に複数の騎士隊が動いています。別の部隊が調査しに来るでしょう」
「ふふふ。それなら大丈夫。 この街ごと偽装するつもりだから」
「街全体を……一体どうやって?」
「街の住民たちがね、懇願してきたんだよ。帝国にただ殺されるよりも僕の側についた方が得だって」
その言葉の意味が分からず、困惑するマーガレットだったが、隣にいるリベルは何かに気付いたようでハッとした表情を浮かべていた。
「まさか……魔王様、隠密を得意とするカミラではなく、オドを向かわせたのは街の者を救おうとすることを見通していた、ということですか?」
「え? あ、ん~まぁ、そういうことになるかなぁ」
ロランの言葉にリベルは愕然としていた。
「じゃあ、こうなることもすべて計算の内だと!?」
「う、うん。そ、そうだよ」
おぉ、と執務室から歓声が上がる。
(―――いや、そこまで全然考えてなかったけど、なんか、みんな勘違いしてくれてるみたいだし、いっか!)
「我ら至高なる魔王様はまさか、そこまでお考えとは、さすがだニャ」
「まさに人知の及ばない優れたお方ですぴょん」
「流石は我らが魔王様」
獣メイドたちが褒め称えると、ロランは照れた様子で頭を掻いた。
「まぁ、そういうわけだ。でだ、君たちも協力してもらうよ。街は何もなかったように見せなくちゃいけないんだ」
「……」
マーガレットはそれに対して、安易に首を縦に振ろうとはしなかった。交渉相手は魔王だ。フェレン聖騎士団にとっては、騎士団として創設されることになったきっかけでもある。簡単に首を縦には触れない。
「別に断ってもいいよ。その時はどうなるかはわかるよね?」
それと同時にいつの間にか忍び寄っていた兎耳のメイドと猫耳のメイドが腰に下げていた剣を抜いて、剣刃を首筋に突き付けていた。
「っ……なかなか強引じゃないですか? 断ったら殺す、ってことですよね?」
「僕はオドと同じで、無駄な殺生は好まない主義でね。平和的にいこうじゃないか」
ロランは椅子に深く座ると足を組みながら頬杖をつく。そして、微笑みを浮かべるのだった。
「平和的にね……」
ギラリと剣刃が光沢を帯びる。
「さぁ、君たちの返答はいかに?」
マーガレットは悔しそうな表情をする。ここで反抗しても殺されてしまうだろう。ギリオンも同じく、抵抗はしない様子だった。
「……わかりました」
「ふむ。賢明な判断だ」
満足げに笑うロラン。
こうして、フェレン聖騎士マーガレットと魔王ロランとの間で半ば強引な交渉が成立し、この日より、マーガレット率いる第十九騎士隊の聖騎士たち三十人は魔王の配下に入ることになったのだった。
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