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第二十一話 お茶会……?
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♦♦♦♦♦
シルビアはおもむろに振り向く。視線の先には雑木林が広がっている。その場所へ目を細めた。彼女の様子に気が付いた部下が尋ねる。
「いかがいたしましたか?」
「誰かに監視されている気がするな」
シルビアの言葉に周りにいた部下たちが彼女の視線先を追うように振り返ったが何もなかった。
「何も見えませんが……」
「当たり前だ。見えるはずがないだろうが。まぁ、気のせいかもしれん」
その瞬間、シルビアは自分の身の危険を感じ身体を少し傾けた。するとそこを矢が通り抜けていく。部下の一人の胸を貫き、馬から転がり落ちていくのを見届けたあと、楽しそうな表情を浮かべた。
「アハッ。まだ戦いたいんだ」
視線を前に戻すとそこには生き残ったオーソルの弓兵らが岩陰や塹壕から一矢報いようと矢を放ってきていた。
狙いは彼女だ。自分に当たりそうな矢だけを細剣で弾き、軌道を逸らす。
「うんうん。良いぞ。もっと私を楽しませてみろ。 私に歯向かうことがどれほど恐ろしいのか、その身に刻み込んでやる。アハハハハ」
そういって、シルビアは笑い声をあげながら、小高い丘を駆け上っていく。
♦♦♦♦♦
その頃、オーク族を率いるオークキングことオドは全身、鋼鉄製の鎧を身にまとった状態で兵士を率いながらレオがいたソリアの街へと向かっていた。
ロランの居城シュトルハイムからかなり近い場所でもあるこの街が今、どのような状況なのかを確かめるため、少数精鋭を率いて、偵察に来ていたのだ。
進むにつれて、破壊された街の城門が見えてきた。煙もまだくすぶっているようだった。木の陰から覗き込むように見るオドは目を細める。
「城門の守備は……やはりフェレン聖騎士か」
その言葉に隣で同じように見ていた副官のオークが声をかける。
「えぇ。そのようですね。いかがいたしますかオド様」
「ううむ。敵の数はどれくらいだ?」
「カラスによるとおよそ数百名ほど。帝国兵もいるとのことです」
「そうか。それは厄介だな。水晶をここに」
「はっ」
そういうと、副官のオークは懐から手のひらサイズの小さな水晶を取り出しオドに手渡した。それを握り締めると水晶が淡く光る。
そして、水晶の中からロランの後ろ姿が浮かび上がる。
この水晶は離れた場所でも水晶を通して、会話ができるという優れものだつた。
ロランの後ろ姿が浮かび上がってくる。見た限りではロランの私室のように見えた。そこで、幸せそうにクッキーを頬張っているのが見える。その様子にオドは瞼を何度も閉じて、もう一度、水晶を見た。
「………」
どうやら見間違いではないらしい。オドは咳ばらいをしたあとロランの背後に向けて声をかける。
「魔王様?」
オドの呼びかけに驚いたように飛び上がった。
『お、オド??!!』
「はっ、オドにございます」
そう言って恭しく頭を下げる。
『こ、これはだな、その、あれだ、僕の大切な客人でもあるレオがどうしてもお菓子と紅茶が飲みたいというから」
『え、わたし、そんなこと言ってないんですけど……』
『そ、それは……』
ロランは笑みを作って見せるとレオとともにフレームアウト。それから声がした。
『ちょっと僕に話を合わせてもらってもいいかな??』
『えーでも……』
『いいから! じゃないと、僕がお菓子大好魔王だと思われて、威厳を失うじゃないか』
と小声でヒソヒソと話しているようだが、オドたちには全部、丸聞こえだった。チラリと部下を見る。それに部下たちは苦笑いして、何も聞かなかったことにしようと互いに言い合う。オドも賛成というように頷く。ようやく、ロランが戻って来た。
『……ごほん。それより、えっと、どうだい、街の様子は?』
「はっ。人間の街ですが、フェレン聖騎士団と帝国軍が占拠しているようです」
それにロランが驚いたような顔をしたあと、水晶に顔を近づける。
『それは本当ッ!?』
「間違いございません」
『うーむ。どうしたものか。それで、街の住民は? 生き残りはいるのか?』
それにオドは真横にいた部下に視線を向ける。小声で報告する。
「少ないですが、生き残りが数百人ほど。街の中央にある教会へ集められております」
オドは部下が言った言葉をそのままロランに答えた。それを聞いたロランはそれに少し考えるような素振りを見せた。
ロランはフェレン聖騎士団とはあまり関わりたくない様子だったが、それでも帝国軍の動きも気になる。このまま、放置というわけにもいかなかった。
『今のところ、静観してほしい。もし、僕の居城がバレたらその時は全員生かして帰すな』
皆殺しにしろ、と平然と言った。それにオドは思うところがあったのか、少しの間があったが、王の命令だ、と深々と頭を下げた。
「承知いたしました魔王様」
『んじゃあ、引き続きよろしく!』
そういって、ロランは水晶から映し出される映像を切る。オドは唸るような声を漏らした。
「いかがされましたか、オド様?」
「いや、街の住民たちが気になってな。いやな予感がする」
「というと?」
部下の一人が疑問を問いかけた時、街の様子を見に出ていた偵察が慌てて引き返してきた。オドの前に膝をつくと報告する。
「申し上げます。帝国兵たちが街の住民を殺害し始めました」
「なに?」
オドは眉をしかめた。部下は引き続き、報告を続ける。
「集めた住民たちがいる教会にも火を放ちました」
「なぜだ? なぜ、そのようなことを……」
部下の報告を聞きながらオドは疑問する。同じ人間同士で殺していることに理解ができない。オドは黙ったまま、顎に手を当てて考え込む。しばらくして、オドは顔を上げると決意した顔をした。傍に置いていた戦斧を肩に担ぎ、待機しているオーク兵に振り向き言い放つ。
「者ども!! これより我々はフェレン聖騎士団及び帝国軍の殲滅に向かうぞッ!!」
それにどよめき声が起きたのであった。
シルビアはおもむろに振り向く。視線の先には雑木林が広がっている。その場所へ目を細めた。彼女の様子に気が付いた部下が尋ねる。
「いかがいたしましたか?」
「誰かに監視されている気がするな」
シルビアの言葉に周りにいた部下たちが彼女の視線先を追うように振り返ったが何もなかった。
「何も見えませんが……」
「当たり前だ。見えるはずがないだろうが。まぁ、気のせいかもしれん」
その瞬間、シルビアは自分の身の危険を感じ身体を少し傾けた。するとそこを矢が通り抜けていく。部下の一人の胸を貫き、馬から転がり落ちていくのを見届けたあと、楽しそうな表情を浮かべた。
「アハッ。まだ戦いたいんだ」
視線を前に戻すとそこには生き残ったオーソルの弓兵らが岩陰や塹壕から一矢報いようと矢を放ってきていた。
狙いは彼女だ。自分に当たりそうな矢だけを細剣で弾き、軌道を逸らす。
「うんうん。良いぞ。もっと私を楽しませてみろ。 私に歯向かうことがどれほど恐ろしいのか、その身に刻み込んでやる。アハハハハ」
そういって、シルビアは笑い声をあげながら、小高い丘を駆け上っていく。
♦♦♦♦♦
その頃、オーク族を率いるオークキングことオドは全身、鋼鉄製の鎧を身にまとった状態で兵士を率いながらレオがいたソリアの街へと向かっていた。
ロランの居城シュトルハイムからかなり近い場所でもあるこの街が今、どのような状況なのかを確かめるため、少数精鋭を率いて、偵察に来ていたのだ。
進むにつれて、破壊された街の城門が見えてきた。煙もまだくすぶっているようだった。木の陰から覗き込むように見るオドは目を細める。
「城門の守備は……やはりフェレン聖騎士か」
その言葉に隣で同じように見ていた副官のオークが声をかける。
「えぇ。そのようですね。いかがいたしますかオド様」
「ううむ。敵の数はどれくらいだ?」
「カラスによるとおよそ数百名ほど。帝国兵もいるとのことです」
「そうか。それは厄介だな。水晶をここに」
「はっ」
そういうと、副官のオークは懐から手のひらサイズの小さな水晶を取り出しオドに手渡した。それを握り締めると水晶が淡く光る。
そして、水晶の中からロランの後ろ姿が浮かび上がる。
この水晶は離れた場所でも水晶を通して、会話ができるという優れものだつた。
ロランの後ろ姿が浮かび上がってくる。見た限りではロランの私室のように見えた。そこで、幸せそうにクッキーを頬張っているのが見える。その様子にオドは瞼を何度も閉じて、もう一度、水晶を見た。
「………」
どうやら見間違いではないらしい。オドは咳ばらいをしたあとロランの背後に向けて声をかける。
「魔王様?」
オドの呼びかけに驚いたように飛び上がった。
『お、オド??!!』
「はっ、オドにございます」
そう言って恭しく頭を下げる。
『こ、これはだな、その、あれだ、僕の大切な客人でもあるレオがどうしてもお菓子と紅茶が飲みたいというから」
『え、わたし、そんなこと言ってないんですけど……』
『そ、それは……』
ロランは笑みを作って見せるとレオとともにフレームアウト。それから声がした。
『ちょっと僕に話を合わせてもらってもいいかな??』
『えーでも……』
『いいから! じゃないと、僕がお菓子大好魔王だと思われて、威厳を失うじゃないか』
と小声でヒソヒソと話しているようだが、オドたちには全部、丸聞こえだった。チラリと部下を見る。それに部下たちは苦笑いして、何も聞かなかったことにしようと互いに言い合う。オドも賛成というように頷く。ようやく、ロランが戻って来た。
『……ごほん。それより、えっと、どうだい、街の様子は?』
「はっ。人間の街ですが、フェレン聖騎士団と帝国軍が占拠しているようです」
それにロランが驚いたような顔をしたあと、水晶に顔を近づける。
『それは本当ッ!?』
「間違いございません」
『うーむ。どうしたものか。それで、街の住民は? 生き残りはいるのか?』
それにオドは真横にいた部下に視線を向ける。小声で報告する。
「少ないですが、生き残りが数百人ほど。街の中央にある教会へ集められております」
オドは部下が言った言葉をそのままロランに答えた。それを聞いたロランはそれに少し考えるような素振りを見せた。
ロランはフェレン聖騎士団とはあまり関わりたくない様子だったが、それでも帝国軍の動きも気になる。このまま、放置というわけにもいかなかった。
『今のところ、静観してほしい。もし、僕の居城がバレたらその時は全員生かして帰すな』
皆殺しにしろ、と平然と言った。それにオドは思うところがあったのか、少しの間があったが、王の命令だ、と深々と頭を下げた。
「承知いたしました魔王様」
『んじゃあ、引き続きよろしく!』
そういって、ロランは水晶から映し出される映像を切る。オドは唸るような声を漏らした。
「いかがされましたか、オド様?」
「いや、街の住民たちが気になってな。いやな予感がする」
「というと?」
部下の一人が疑問を問いかけた時、街の様子を見に出ていた偵察が慌てて引き返してきた。オドの前に膝をつくと報告する。
「申し上げます。帝国兵たちが街の住民を殺害し始めました」
「なに?」
オドは眉をしかめた。部下は引き続き、報告を続ける。
「集めた住民たちがいる教会にも火を放ちました」
「なぜだ? なぜ、そのようなことを……」
部下の報告を聞きながらオドは疑問する。同じ人間同士で殺していることに理解ができない。オドは黙ったまま、顎に手を当てて考え込む。しばらくして、オドは顔を上げると決意した顔をした。傍に置いていた戦斧を肩に担ぎ、待機しているオーク兵に振り向き言い放つ。
「者ども!! これより我々はフェレン聖騎士団及び帝国軍の殲滅に向かうぞッ!!」
それにどよめき声が起きたのであった。
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