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風使いと〈斬撃の巫女〉
斬撃
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それは暗闇の中での一戦。一真はビニール傘を振り相手を叩き斬っていく。その様を那雪は見守っているくらいことしか出来ない。次から次へと倒れて数を減らしていく不良たち。ハッキリ言うととてつもなく弱かった。
「弱過ぎる……魔力庫の話は別件だっていうのか」
一真ひとりで半壊する集団、あまりの手応えのなさに一真は自身の推測を疑う。
そんな一真を前に那雪は辺りを見回していた。
「なゆきち、どうし」
その言葉は言い終えるまでもなく斬られてしまった。
「敵なのか、なん」
叫ぶ一真の言葉はまたしても言い終える前に斬られてしまう。
「俺の言葉が途ちゅ」
それもまた斬られていく。
那雪は辺りを見回して探り探り探り行く。得体の知れない恐怖と斬られる空気の音。吹いて来る風は途切れ途切れ、強い風と無風が交互に那雪の頬を叩く。
明るい夜闇には黒い線のようなものが張り巡らされており、その切れ目を眺めようとするもなぜだか見る事すら叶わない。
静かな闇の中、女の声が響きわたる。
「そこには何もないのですから、見ようとしてもムダな事なのですよ」
声の主を探すも那雪にはその姿を見付けられない。
またしても声だけがどこからか響いて来る。
「この声の方向性は断ち切られているのですから、聴こうとしてもムダな事なのですよ」
突如、一真の足元で音が鳴った。一真は地を確かめるとそこにあったのは傘、それも柄のない傘。一真は握っていたはずの傘を見るとそこにあったのは柄だけ。傘がズレて、地に落ちた。その事実を思い知った一真は叫ぶ。
「なゆきち! 逃げろ! 流石にこれはダメだ」
駆け出す那雪だったが、路地から出ようという時この瞬間。那雪の身体は進まない。脚をいくら動かして逃げようとしても身体は一寸たりとも先へは進まない。一寸先の光をその手でつかむ事は叶わない。
「空間を切断させていただきました。あの不良たちを蹂躙したように蹂躙されれば良いのです。これはあなた方がした事なのですよ」
一真の腕にこの世の全ての何よりも鋭い痛みが走る。一真が苦痛に顔を歪めながら腕を押さえるとその手は紅く染まり行く。
-斬られた……一体どこからどうやって-
力を入れて目を凝らし、魔力で目を凝らし、魔力の根源をその手、その目で探り行く。壁の向こう、見えないそこから魔力の火の揺らぎを見た。
-見えてもいないのに……狙えるのか、そんなはずはないよな-
一真はそこから凝らしていた目を逸らし、那雪の方を見つめるのであった。
「弱過ぎる……魔力庫の話は別件だっていうのか」
一真ひとりで半壊する集団、あまりの手応えのなさに一真は自身の推測を疑う。
そんな一真を前に那雪は辺りを見回していた。
「なゆきち、どうし」
その言葉は言い終えるまでもなく斬られてしまった。
「敵なのか、なん」
叫ぶ一真の言葉はまたしても言い終える前に斬られてしまう。
「俺の言葉が途ちゅ」
それもまた斬られていく。
那雪は辺りを見回して探り探り探り行く。得体の知れない恐怖と斬られる空気の音。吹いて来る風は途切れ途切れ、強い風と無風が交互に那雪の頬を叩く。
明るい夜闇には黒い線のようなものが張り巡らされており、その切れ目を眺めようとするもなぜだか見る事すら叶わない。
静かな闇の中、女の声が響きわたる。
「そこには何もないのですから、見ようとしてもムダな事なのですよ」
声の主を探すも那雪にはその姿を見付けられない。
またしても声だけがどこからか響いて来る。
「この声の方向性は断ち切られているのですから、聴こうとしてもムダな事なのですよ」
突如、一真の足元で音が鳴った。一真は地を確かめるとそこにあったのは傘、それも柄のない傘。一真は握っていたはずの傘を見るとそこにあったのは柄だけ。傘がズレて、地に落ちた。その事実を思い知った一真は叫ぶ。
「なゆきち! 逃げろ! 流石にこれはダメだ」
駆け出す那雪だったが、路地から出ようという時この瞬間。那雪の身体は進まない。脚をいくら動かして逃げようとしても身体は一寸たりとも先へは進まない。一寸先の光をその手でつかむ事は叶わない。
「空間を切断させていただきました。あの不良たちを蹂躙したように蹂躙されれば良いのです。これはあなた方がした事なのですよ」
一真の腕にこの世の全ての何よりも鋭い痛みが走る。一真が苦痛に顔を歪めながら腕を押さえるとその手は紅く染まり行く。
-斬られた……一体どこからどうやって-
力を入れて目を凝らし、魔力で目を凝らし、魔力の根源をその手、その目で探り行く。壁の向こう、見えないそこから魔力の火の揺らぎを見た。
-見えてもいないのに……狙えるのか、そんなはずはないよな-
一真はそこから凝らしていた目を逸らし、那雪の方を見つめるのであった。
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