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風使いと〈斬撃の巫女〉

お迎え

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 歩いていくひとりの男。夜はあの闇の中、鈴香の家から怜の家に歩いて朝は空を跳んで行った。つまり鈴香が怜の家の帰り道を知っているわけがない。菜穂から躾られた事以外はてんでダメな怜とはいえどもそんな簡単な事は流石に分かっていた。
 朝に鈴香の提案を聞いていたため学校の位置は完全に把握していた。あのワガママに対してこの時ばかりは感謝していた。
-今から迎えに行くから待ってろ-
 風を床にして跳ねて風を滑り風に流されて学校へと向かっていく。
-風の障壁張ってりゃ見えねぇからな-
 安全圏、昔なら気にせずに魔力を節約して誰に見られようともお構い無しであっただろう。しかし、今は守るべき人がいるのだ。鈴香と共にいる人物がおかしな存在、一般人にそう思われてしまう事だけは避けておきたかった。
 出来る限り学校に近いところまで滑り、そして誰もいない狭い地面に着地する。そして地を踏んで歩いていく。校門にてカバンを両手で持つ小さな少女を目にしてその名を呼ぶ。
「鈴香! 迎えに来たぞ」
 歩み寄るイケメンに甲高い声を上げる女の子たち。
「鈴香いつものお兄ちゃんじゃないじゃん! 何? なんでそんなイケメンが迎えに来てるの」
 はしゃいで鈴香の頬をつつく女、やたらに騒ぐ女、みな同級生なのだろう。鈴香は冷静なまま、いつも通りの口調で答える。
「勇人の…………同級……生」
 怜は鈴香に手を差し出す。その仕草ひとつで女の子たちは顔を覆う者、ニヤけながら眺める者、顔を赤くしてただ見つめる者、それぞれにこの日常の一ページを楽しんでいた。
「怜……ゴメン、なさい」
 俯き謝る鈴香の頭を撫でて怜は優しく言ってのけた。
「いいよ、気にすんな。鈴香は何も悪くないから」
 鈴香は顔を赤くして目を見開いていた。目の前の男を見つめるのが恥ずかしくてでも嬉しくて。
 そしてふたりは手を繋いで歩き出すのであった。
 少女たちの声がいやにうるさい印象のお迎えであった。
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