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第三戦 VSアルフレシャ 自称王女と螺旋の槍
封鎖された王都
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「一応聞くけど、正気?」
『いつも通り正気とはいいがたいかと』
「酷くないか? それは」
そんなアルフレシャはタクマの手を離すことはしない。ただ、流されているだけだ。
「お前目的とかあるのか?」
「……暇つぶし?」
「適当かよ」
「適当だよ」
そんな会話を終えて、タクマは孤児院へと入る。
そこにはある意味いつも通りに子供たちと遊んでいるプリンセス・ドリルがおり、その近くには長親とメガネがいた。どうやら調査会議をここでやっていたようだ。
「お邪魔します」
『失礼ですが、院長先生をお呼びしていただけませんか?』
「……明太子か」
そう呟いたのは長親だった。しかし、その声にこれまであった警戒心はなくなっていた。おそらくドリルが何か言ったのだろうな、とタクマは思う。
そしてそのドリルは、タクマの声を聞いてこちらに顔を向けようとしながら声をかけてくる。
「それぐらいは構いませ……何ですとぉ!?」
そして、そのキャラに似つかわしくない声を上げるのであった。
それは当然である。ドリルはアルフレシャの魂を戦いの中で感じているのだから。見た目がヒトガタに変わっても分かるのだ。
「タクマくん、あなたは何をしているのですか! その、女は、敵でしてよ!」
「……そういえば、明太子のログにあったな。アルフレシャの中身に顔が似ている」
「そう、私はアルフレシャの中の人」
『中の人と言うのですね』
「というかその文化異世界にもあるんだな」
そんな会話をしていると、いち早くメガネが院長先生を連れてきてくれた。
その瞳には殺意が残っているが、先日よりは幾分かマシに思えた。単にアルフレシャに対しての戸惑いの方が大きいのかもしれないが。
「それで、どうして私をここに?」
「この孤児院、使ってる土地が王族ご用達のトコだったからあるんだよ。城門近くまでの抜け道が」
『それを使わせてもらいたい。というのが私たちの要求ですね』
「城門の外に行くの?」
「そうじゃなきゃ戦闘の余波で街が悲惨なことになるだろうが」
「……その割には、タクマは殺す気なんて持ってないよね」
その言葉に、イエスともノーとも答えられないタクマとメディ。
タクマにとって、”殺すこと”に意志や覚悟は関係ないからだ。
やると決めたら、やれてしまう。それこそが風見琢磨の欠陥なのだから。
「まぁ、気にするな」
『その通りです。別に私たちはあなたが暴れ始めなければ仕留める理由はないのですよ』
「それじゃあ一緒に行こうかな。見ていると結構楽しいし」
「誰をだよ」
「タクマとメディ」
その言葉に首を縦に振って同意するドリル。タクマは内心で「そんなに面白いことやっただろうか?」とメディに尋ねるも、メディも心当たりはないようだ。
そうして、院長先生の許可が下り、タクマとアルフレシャ。そして念のためにと付いてきたドリルと長親、メガネは地下通路を渡って城門の近くに出た。
ここ北門では、軽く見たところ民兵の存在は認識できなかった。
だが、やはり様子がおかしい。どの衛兵もどこか殺気立っているのだ。
『何かあったとみて動くのが得策かと』
「なら、俺が話を聞いてくる」
そういってメガネは特に視力に関係のない伊達メガネをくいッと上げて、物陰から外に出る。
「メガネさんのあのこだわりって何なんですか?」
「そんなもの、愛に決まってますわ」
「……つまり考えるだけ無駄だという事だ」
そんなタクマ達を残して、メガネは独りのプレイヤーとして衛兵に話しかけていた。
「すみません、少しよろしいですか?」
「……見ない顔だな。あんた稀人か?」
「はい。メガ・ネビュラスと申します。メガネとお呼びください」
「そうか、ならメガネさんよ。人魚を見なかったか?」
「……人魚?」
「今この国を支えている”農耕将軍”が病気らしくてな。それの治療のためには人魚の肉が必要なんだよ。だからこうして見張りなんぞをしているわけだが」
「他の方法では治せないのですか?」
「国の名医たち……つってもそんなに残っていないんだが、そいつらの腕ではその治療は不可能だった。なら後は奇跡に頼るしかないってな」
「……なら、そいつが治れば話は終わるんだな?」
「まぁそうだが、どうしたんだアンタ。口調が変わってんぞ」
「気にするな。大したことじゃあない。それと質問なんだが──」
そうして話し込むメガネと衛兵。内容は病気の農耕将軍の症状について。
たしかに、この世界の医術では治療が不可能でも現代医術と組み合わせれば治療法は見つかるかもしれない。なかなかに頭の回転が早い、頼れる人である。
そしてその話にかなり時間がかかるようだちお思ったタクマたちは、万が一にも見つかることのないように隠し通路の中へと戻っていくのだった。
────────────
「結論は出た。農耕将軍こと”退役騎士ジュリアス・ムーラン”の病は癌だ」
「いきなり帰ってくるなりそんなことを言わないでくださいまし。J二枚でイレブンバック。階段と色縛りが発生しているので自動的にスキップになりますわ。そして、8切りで4を二枚! 上がりですわ!」
「……貴様らは俺が情報を集めている間に何をやっているのだ」
「見てわからないのか?」と長親が。
「そうですわ。これは古くから伝わるトランプゲーム!」とドリルが。
そして息を揃えてこう言った。
「大富豪!」/「大貧民!」
「「……あ?」」
そして本気でにらみ合う。こんなことばかりだなと思うメディであった。ちなみにタクマは大富豪派である。
この二人、長親とドリルの呼び方問題はなかなかに根深いもので、30分ほど話し込んでいたメガネが戻ってくる間、ずっとこんな感じであった。
言い出しっぺはドリルだが、勝率はよくはない。基本的に長親とビリ争いをしている。
それほどまでに、タクマ(というかメディ)とアルフレシャのプレイングは上手だった。
「それよりメガネさん、門の外に抜けられそうでした?」
「無理だろ。弓持ちが常に城壁の上で陣取ってる。射抜かれて死にたいってんなら構わんが」
「この世界の弓使いは平然と高速の飛来物を打ち落とすからな……」
「ええ、鍛えているとは伊達ではないのですよね……」
「それで、メガネさんは計画を何か思いついたんですよね」
『現代医術で農耕将軍様を治療するという話に思えましたが……』
「その通りだが、さすがにナノマシンなしで癌を切除しろとは無理な話だろう。故に、ナノマシンの代わりになるようなモノを使えるゲート使いを探すのが先決だな」
「じゃあ、ここでお別れですかね?」
「ああ、そもそもこの人魚騒動がなぜ起こったのか、そう言った背景情報がまるでない。ならば、ここいらでボス殺しと元凶探索に分かれたほうがいいだろうよ」
そうして、当然のように分かれるタクマとメガネ。
だが、ドリルと長親は奇妙なことにタクマと同行することを選んだ。
『念のため、理由を聞いても?』
「人探しより民兵との大立ち回りの方が楽しそうですから」
「……という、コイツを止める者が必要だろう。そんな理由だ」
「ありがとうございます。ドリルさん、長親さん」
「うん、けどこの3人合わせた力より私の方が強いよ? 大丈夫? タクマ」
そんなアルフレシャの声に対して、タクマは言う。
「別に力の大小は関係ないだろ。急所にいいのを入れればだいたいの生き物は死ぬんだから」
「それもそうですわね」
「このゲームはそれが本当に顕著だからな」
そう言った3人は、歴戦の猛者の空気を、少しだけ身にまとっていた。
「それなら、安心?」
そんな言葉には、アルフレシャの少しの疑問と”高揚感”がにじみ出ていた。
この戦士たちと殺し合える。そんな高揚感が。
『いつも通り正気とはいいがたいかと』
「酷くないか? それは」
そんなアルフレシャはタクマの手を離すことはしない。ただ、流されているだけだ。
「お前目的とかあるのか?」
「……暇つぶし?」
「適当かよ」
「適当だよ」
そんな会話を終えて、タクマは孤児院へと入る。
そこにはある意味いつも通りに子供たちと遊んでいるプリンセス・ドリルがおり、その近くには長親とメガネがいた。どうやら調査会議をここでやっていたようだ。
「お邪魔します」
『失礼ですが、院長先生をお呼びしていただけませんか?』
「……明太子か」
そう呟いたのは長親だった。しかし、その声にこれまであった警戒心はなくなっていた。おそらくドリルが何か言ったのだろうな、とタクマは思う。
そしてそのドリルは、タクマの声を聞いてこちらに顔を向けようとしながら声をかけてくる。
「それぐらいは構いませ……何ですとぉ!?」
そして、そのキャラに似つかわしくない声を上げるのであった。
それは当然である。ドリルはアルフレシャの魂を戦いの中で感じているのだから。見た目がヒトガタに変わっても分かるのだ。
「タクマくん、あなたは何をしているのですか! その、女は、敵でしてよ!」
「……そういえば、明太子のログにあったな。アルフレシャの中身に顔が似ている」
「そう、私はアルフレシャの中の人」
『中の人と言うのですね』
「というかその文化異世界にもあるんだな」
そんな会話をしていると、いち早くメガネが院長先生を連れてきてくれた。
その瞳には殺意が残っているが、先日よりは幾分かマシに思えた。単にアルフレシャに対しての戸惑いの方が大きいのかもしれないが。
「それで、どうして私をここに?」
「この孤児院、使ってる土地が王族ご用達のトコだったからあるんだよ。城門近くまでの抜け道が」
『それを使わせてもらいたい。というのが私たちの要求ですね』
「城門の外に行くの?」
「そうじゃなきゃ戦闘の余波で街が悲惨なことになるだろうが」
「……その割には、タクマは殺す気なんて持ってないよね」
その言葉に、イエスともノーとも答えられないタクマとメディ。
タクマにとって、”殺すこと”に意志や覚悟は関係ないからだ。
やると決めたら、やれてしまう。それこそが風見琢磨の欠陥なのだから。
「まぁ、気にするな」
『その通りです。別に私たちはあなたが暴れ始めなければ仕留める理由はないのですよ』
「それじゃあ一緒に行こうかな。見ていると結構楽しいし」
「誰をだよ」
「タクマとメディ」
その言葉に首を縦に振って同意するドリル。タクマは内心で「そんなに面白いことやっただろうか?」とメディに尋ねるも、メディも心当たりはないようだ。
そうして、院長先生の許可が下り、タクマとアルフレシャ。そして念のためにと付いてきたドリルと長親、メガネは地下通路を渡って城門の近くに出た。
ここ北門では、軽く見たところ民兵の存在は認識できなかった。
だが、やはり様子がおかしい。どの衛兵もどこか殺気立っているのだ。
『何かあったとみて動くのが得策かと』
「なら、俺が話を聞いてくる」
そういってメガネは特に視力に関係のない伊達メガネをくいッと上げて、物陰から外に出る。
「メガネさんのあのこだわりって何なんですか?」
「そんなもの、愛に決まってますわ」
「……つまり考えるだけ無駄だという事だ」
そんなタクマ達を残して、メガネは独りのプレイヤーとして衛兵に話しかけていた。
「すみません、少しよろしいですか?」
「……見ない顔だな。あんた稀人か?」
「はい。メガ・ネビュラスと申します。メガネとお呼びください」
「そうか、ならメガネさんよ。人魚を見なかったか?」
「……人魚?」
「今この国を支えている”農耕将軍”が病気らしくてな。それの治療のためには人魚の肉が必要なんだよ。だからこうして見張りなんぞをしているわけだが」
「他の方法では治せないのですか?」
「国の名医たち……つってもそんなに残っていないんだが、そいつらの腕ではその治療は不可能だった。なら後は奇跡に頼るしかないってな」
「……なら、そいつが治れば話は終わるんだな?」
「まぁそうだが、どうしたんだアンタ。口調が変わってんぞ」
「気にするな。大したことじゃあない。それと質問なんだが──」
そうして話し込むメガネと衛兵。内容は病気の農耕将軍の症状について。
たしかに、この世界の医術では治療が不可能でも現代医術と組み合わせれば治療法は見つかるかもしれない。なかなかに頭の回転が早い、頼れる人である。
そしてその話にかなり時間がかかるようだちお思ったタクマたちは、万が一にも見つかることのないように隠し通路の中へと戻っていくのだった。
────────────
「結論は出た。農耕将軍こと”退役騎士ジュリアス・ムーラン”の病は癌だ」
「いきなり帰ってくるなりそんなことを言わないでくださいまし。J二枚でイレブンバック。階段と色縛りが発生しているので自動的にスキップになりますわ。そして、8切りで4を二枚! 上がりですわ!」
「……貴様らは俺が情報を集めている間に何をやっているのだ」
「見てわからないのか?」と長親が。
「そうですわ。これは古くから伝わるトランプゲーム!」とドリルが。
そして息を揃えてこう言った。
「大富豪!」/「大貧民!」
「「……あ?」」
そして本気でにらみ合う。こんなことばかりだなと思うメディであった。ちなみにタクマは大富豪派である。
この二人、長親とドリルの呼び方問題はなかなかに根深いもので、30分ほど話し込んでいたメガネが戻ってくる間、ずっとこんな感じであった。
言い出しっぺはドリルだが、勝率はよくはない。基本的に長親とビリ争いをしている。
それほどまでに、タクマ(というかメディ)とアルフレシャのプレイングは上手だった。
「それよりメガネさん、門の外に抜けられそうでした?」
「無理だろ。弓持ちが常に城壁の上で陣取ってる。射抜かれて死にたいってんなら構わんが」
「この世界の弓使いは平然と高速の飛来物を打ち落とすからな……」
「ええ、鍛えているとは伊達ではないのですよね……」
「それで、メガネさんは計画を何か思いついたんですよね」
『現代医術で農耕将軍様を治療するという話に思えましたが……』
「その通りだが、さすがにナノマシンなしで癌を切除しろとは無理な話だろう。故に、ナノマシンの代わりになるようなモノを使えるゲート使いを探すのが先決だな」
「じゃあ、ここでお別れですかね?」
「ああ、そもそもこの人魚騒動がなぜ起こったのか、そう言った背景情報がまるでない。ならば、ここいらでボス殺しと元凶探索に分かれたほうがいいだろうよ」
そうして、当然のように分かれるタクマとメガネ。
だが、ドリルと長親は奇妙なことにタクマと同行することを選んだ。
『念のため、理由を聞いても?』
「人探しより民兵との大立ち回りの方が楽しそうですから」
「……という、コイツを止める者が必要だろう。そんな理由だ」
「ありがとうございます。ドリルさん、長親さん」
「うん、けどこの3人合わせた力より私の方が強いよ? 大丈夫? タクマ」
そんなアルフレシャの声に対して、タクマは言う。
「別に力の大小は関係ないだろ。急所にいいのを入れればだいたいの生き物は死ぬんだから」
「それもそうですわね」
「このゲームはそれが本当に顕著だからな」
そう言った3人は、歴戦の猛者の空気を、少しだけ身にまとっていた。
「それなら、安心?」
そんな言葉には、アルフレシャの少しの疑問と”高揚感”がにじみ出ていた。
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