泡沫の欠片

ちーすけ

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怒涛の催事

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そして戻りました、ホテルのSPHYに用意された豪華部屋。
戻ったと開いた扉の先に広がる、ちょっとアレな視界に、清牙の足を蹴っ飛ばす。
「てめぇっ」
「こっち来る」
コソコソと移動し、テレビ前で仲良くマリオカートをしているミーと舞人君の元へ。
「アレ、何?」
「見たまんま」
いや、見たまんまって貴方。
椅子に座ってギター弄ってる駆郎君の足元で、うっとり駆郎君を見つめる希更の姿。
当然、希更の目はハートである。
「アレ、何?」
重要なので2度言いました。
それに、今度は画面からチラリと視線を流したミーが一言。
「相思相愛」
は?
「あ、来た」
なんかアイテムでも飛んできたのかと思いきや、駆郎君の視線が希更に流れ、嬉しそうににっこり。
それを受けて沙希もにっこり。
いや、希更はさらに、耳まで真っ赤になってうっとり?
「ロリコン「清牙」」
貴方はだまらっしゃい。
思わず足を踏んでから、ミーの横に座る。
「ずっと、あんな感じ」
は?
「背中が痒くなるわな」
私、鳥肌立ちそうですが?
「事後か?」
「清牙君?」
本当に黙ってなさい。
「手繋いで戻ってきて、シャワー浴びて…ちゃんと分かれて普通にだぞ」
大丈夫。
清牙じゃあるまいし、そこは疑う余地はない。
「そして、駆郎が秒で迎えに行って、ゲームするしない、飲み物飲む飲まないやって、希更が「ギター弾け」って強請って、あの状態」
は?
「結構な時間経ったよね?」
「うん。マリオワールド終わらせて、カートしてる。そろそろ飽きてきた」
2人とも居たたまれないながらも、大丈夫だと思いつつ、若干の不安が残ったため、同じ部屋で大人しくゲームをしていたと。
「部屋使えよ」
「なんにだよ?」
思わず、清牙の腕…つねる肉がなかったので叩き落し、溜息を吐く。
「駆郎さんって…」
ミーが不機嫌そうに唇を尖らす。
気持ちは分かる。
あれを見て微笑ましいと言えるかはかなり疑問。
希更の純愛大爆発はまあいいよ。
若い勢いもあるし、元々、駆郎君のキャラから見た目から、希更好み。
そんな相手に、突然のお姫様抱っこ…椅子込みだったけど、まあ、大切に大切に守られた瞬間にゃあ、何もかも爆発して燃え上がろうってもんよ。
だけど、ねぇ。
穏やかに嬉しそうに楽しそうな駆郎君の目に、流石にハートはない。
有ったら怖いが、気持ちの温度差が、痛々し過ぎる。
希更は今、色々が積み重なっって絶好調。
だけど、駆郎君はまあ、ステージの興奮やら色々があって感情過多になってるだけで…。
本当に、加減分からず妹分を可愛がってるだけなんだろうし。
「時間に任せるしかないよね」
ここで希更の重愛ぶった切るのも余計なお世話。
だからって、それを駆郎君に責めてぶつけるのも大きく違う。
「希更がいくら縦にデカくても突っ込んだら、裂け「黙れ」」
どうしてそこにしかいないのか?
そう言う問題じゃないだろうに。
「希更もなんで」
ミーも思うところあり過ぎて、口調が珍しくキツイ。
「俺じゃないんだろうな」
「本気で黙れ」
清牙は頓珍漢過ぎる。
会話を読め!
感じろ!
お前、作詞作曲もしてるんだろ?
空間読めよ!
そんな微妙な空気にやっと我に返ったのか、意識が途絶えたのか、元気な希更の声が上がる。
「もおっ、帰ってきたらただいまでしょ! 二人ともお帰りなさい!」
自覚があるのかないのかご機嫌な希更は、ニコニコとこっちを見てから駆郎君を見て幸せそう。
そこにかかる、清牙の心ない言葉。
「お前、それ、楽しいの?」
出てしまった言葉は戻らず、思わず清牙の背中を叩くが、言われた希更はニコニコだった。
「うん。駆郎君色々弾いてくれるし、凄く優しい」
あ、アカン奴や。
幸せそうにうっとりとか、完全に女の顔である。
「ふーん。物好きだな。まあ、いいや。抜いてくる」
空気が一瞬で固まった瞬間である。
「金〇重い」
瞬間的に皆が動いた。
駆郎君は、近場に有ったヘッドホンを希更の頭に被せ、舞人君はミーの頭を抱えるように抱き込んで清牙から距離を取る。
そして私は後頭部を叩こうとして腕を掴まれてジタバタ。
「一緒にシャワー浴びる?」
なぜに、そうなるのか?
「阿保が!」
「清牙、後2日ぐらい我慢出来ないの?」
重そうなヘッドホンの上からさらに手で押さえて、希更の耳に音を入れないように告げる駆郎君の目が死んでいる。
さっきまでにこやかだったのに。
「今溜まってるもん出さなきゃだろ」
知るか、そんな事。
「他でやれ」
「あ゛?」
何を、この状況で不機嫌になるのか?
「ああぁぁ、健吾に調達させるか?」
「舞人!!」
希更にもミーにも、聞かせたくない話ではあるよね。
まあ、それでどうにかなるのなら、それはそれで?
「楓、おっぱい貸して」
こいつ、本気で馬鹿じゃなかろうか?
「惚れた男以外はごめん被る」
「あ゛?」
だから、どっから声を出しとるのじゃ。
清牙、本気でお馬鹿なの?
「人には好みってもんがあるんだよ」
「あ゛? こんなに歌が上手くてカッコイイ俺のどこに、惚れない要素があるって? 太さはねぇけど、長くて巧いんだっつってんだろうがっ!!」
最低だな。
本日の流れが、最悪過ぎる。
そしてのその発言の終着点も。
「好みの範疇から逸脱し過ぎ」
序に言うなら、
「腕放せ。私、シャワー浴びてくる」
このまま清牙を放っておくのはアレだが、私もいい加減すっきりしたい。
「ふざけんな。序なんだし、部屋移動すんの面倒ぃだろ」
「断る」
それ、面倒臭いのは私なので合って、清牙関係ないじゃん。
ここが、清牙達の滞在している部屋なんだし。
そして何についでがかかるのかは、全く興味がないし、聞きたくもない。
「移動して、シャワー浴びて戻ってって、面倒ぃだろ」
「何普通の事を」
「さっさと終わらせて、飯、食いに行こうぜ」
何をさっさと終わらせるのかも、聞きたくねぇよ。
「今から行くのかよ」
燃費の悪い清牙に今食わせても、すぐになんか言いだすじゃん。
面倒だし、世話係責任者健吾君がいる時にしろよ。
「後でもう一回行けばいいだろ」
「そんなに食えねぇよ」
「見てればいいだろ」
「それこそ……」
清牙とポンポン言い合っていたら、なぜか白んだ視線が集まってきた。
「何あっても自由なんですけど、ここに未成年がいるの、忘れてないですか? カエさん、保護者ですよね?」
駆郎君、黒い笑顔で言っているが、そこの少女に色々…まあ、何かを起こしたのは君だからね。
そして、私に黒くなるのは止めろ。
「ああ…なんか、どうなん?」
舞人君?
君が言いたいことがさっぱり分からない。
分からないが、上の娘さんの見えてる肌が全身ピンクだから、ちょっとばっかり手加減してくれないかな?
貴方普通にイケメンで結構な筋肉系。
一般的に間違いなくモテる男。
いい加減気付いて!!
そもそも、だ。
「私に何の責任が?」
清牙が我が儘猪王子なのは今更だし、下に突っ走って唯我独尊なのも今更だし、私の所為じゃ無くね?
「姐さん。その胸思い出してよおおく考えろ」
舞人君は何を言いだすのか?
「私のおっぱいデカいのは遺伝子上の結果であって、私に責任はない」
「カエさん。清牙と変わらないですよ?」
マジで?
それはヤバイ。
同レベルで下に走ってる?
「そもそも、清牙を甘やかした、自己責任でしょ」
駆郎君、ヤケに当たりがきつくないかね‥と見ていたら、舞人君の腕から抜け出したミーが私の胸元を指さす。
「それ、お化粧、だよね?」
あ、忘れてた。
そう言えば、ドロドロ清牙に胸に抱き着かれて…。
「十代男子なんざ、胸の谷間見ただけで発情できるのに、激怒と興奮のジェットコースター後の清牙だぞ? 餌与えんなよ」
それ、私の所為違う。
「ホント、未成年には刺激が強過ぎるので、他所でどうにかして下さい」
そしてなぜか、清牙ごと、部屋から追い出される不思議。
ガチャンと閉まる扉の音を聞いて、大人しく押されるがままだった清牙が口を開く。
「気、遣わせたか?」
「絶対にちげーよ!!」
どうしてそうなる!?
「いや、だって、この後どうしろって?」
「ご飯でも食べてくれば?」
「一緒にすっきりした後シャワー浴びて?」
絶対に、順番がおかしいだろうとかは言わないからな。
「私は部屋でシャワー浴びてくるから、ブッフェでご飯食べてくれば?」
「俺だって、汗でどっろどろっなんだよ」
それ追い出したの、貴方のお仲間ですから。
「聞こえません」
「絶対許さん。1人で終わらせようってか?」
「如何わしい言い方すんな!」
私は発情してない。
汗流したいだけじゃ!!
そんなじゃれ合いにかかる、聞き覚えのある低い声。
「人が死にそうに忙しい時に、お前ら、不特定多数が通る場所で如何わしい会話すんな」
眼の下クマこさえた、スタッフジャンバー来た眼鏡事マー君に頭を叩かれた清牙は、口を尖らせブスくれる。
「こいつ、本気で腹立つんっすけど」
「聞いた。お前のライブすっぽかしてQEENBEに行った上に、ギナにとっ捕まって、駆郎が喚いて逃げたって」
なんか、駆郎君の行動が残念表現になっている気がしないでもなく?
「客がライブ選んだ、結果だよな」
「キシャアアア」
また、おかしな声を出してるし。
清牙、野生に返り過ぎである。
「これ以上、俺の仕事増やすな」
凄みのあるマー君の言葉に、清牙が急に大人しくなった。
清牙は戦闘能力ではマー君に勝てないらしい。
だから、マー君の、ゆっ君にも勝てないので、双子のいう事には大人しく従う。
その為、双子はSPHY関係者には重宝されているらしい、と。
だとしても、だ。
マー君、生気薄れてるよ?
まあ、フェスの総監ともなれば、現在進行形中は死ぬほど忙しいか、高みの見物かのどちらかなんだけど…。
間違いなく、マー君は自分で何もかも抱え込んで、本番ギリギリまで死にそうになって動き回っているんだろうし。
「ゆっ君に手伝わせれば良かったのに」
「アイツは手伝う前に仕事を増やす」
まあ、悪魔だからね。
仕事をしない訳じゃないんだけど、面白いだけでやる事や予算を馬鹿上げしてきそう。
眼の下の熊も凄いが、肌が汗と疲れでボロボロ。
まだ明日もあるのにと、ポケットにつっこんでいた、のど飴を出す。
「マー君、あーん」
「あ?」
口を開けてこちらを向いたマー君が、音を立てて後ろに下がる。
そして、飴を掴んだ私の手が清牙の口の中へ。
「おい、こら」
「ああ、もういいから」
マー君が疲れたように、首を振ってから清牙の頭を叩く。
「このフロアは関係者だけだが、他所で暴れんなよ」
もう一度、ブスくれた清牙の頭を叩いてから、後ろへと首をひねる。
「なんか、面白いことになってんぞ」
そう言って手をヒラヒラさせて、部屋の一室に消えたマー君。
そして、マー君の示した先に連なる首。
扉からひょこんと出ている首4つ。
ホラーじゃなければただのギャグ。
間違いなくギャグである。
「なんか、知らない人とカエちゃんが仲良し」
「清牙が動いたけど、上手く躱されたな」
「あれ、今回のフェスで一番偉い人で、希更ちゃんのお母さんとも仲が良い人だよ」
「ママもカエちゃんも、なんで、そんな人と知り合いなんだろう?」
「なんでだろうね?」
そこ、和やかそうだな。
つーか…。
「清牙、お腹空いてるんなら、本気でブッフェ行ってくれない?」
なぜに、人様に挙げた飴まで奪うのか?
挙句の果てに、清牙はいきなり走り出す。
そこに響く二つの声と、扉が乱暴に叩き締められる音。
「糞が」
「二人は入って」
珍しく強い口調の駆郎君に、ぼんやり視線を流した途端、ガツンとすごい音がした。
見れば、清牙が、スタッフジャンバーを着た男の子らしき子を蹴倒している。
「おおっ、学習したな」
舞人君?
何が嬉しいの?
「死ねや」
清牙、いきなり死刑宣告はしないでと私が動くよりも、走り込んでくる駆郎君が早かった。
恐らく、清牙が男の子の背中を蹴って蹴倒し、その頭をそのまま蹴り込んだ足で踏みつけて押さえているところに走り込んできた駆郎君が、背中に乗り上げて腕を掴んだ。
「駆郎。手、使うな」
「阿保なの? 拘束するのに頭抑えただけじゃ、清牙の体重じゃ逃げられるだろ」
「俺は軽くねぇっっ」
「馬鹿だって言ってるんだよ」
突然始まった喧嘩に、訳が分からないまま、扉の前にきっちり立って、娘二人の好奇心からの開け閉め塞いだ舞人君は、どこぞに電話。
そんなバタバタが聞こえたのか、何か感じたのか、下だけ履いてきたマー君は眼鏡なしのずぶ濡れだった。
「勘弁してくれ」
今にも膝から崩れ落ちそうなマー君の顔は土気色。
なんか良く分からんが、またもや問題勃発で、マー君のわずかな休憩時間が無くなった模様。
どうでもイイが、私はいつになったらシャワーが浴びれるんでしょうか?
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