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24話 魔道具講義
しおりを挟む「おはよう…… ドモン義父さん…… 」
「おは…… よう…… ヒイロ…… 」
ヒイロとドモンの二人は、丁度同じ時間に起床した。それをわかっていたかのように、レインはテーブルに二人分の食事を用意して待っている。
「二人共おはよう、ほら顔洗って来て。ご飯よ」
「おう…… 」
「はい…… 」
言われた通りに、部屋備えの洗面台へ顔を洗いに行く二人。まだ寝ぼけているようで魔道具の蛇口へ魔力を通さず、ひたすら捻ったり押したりするヒイロ。完全に前世の仕草である。
「ヒイロ、寝ぼけてるのか?魔力を流すんじゃ…… 」
「あっ、そっかぁ…… 」
ドモンが指摘し、ようやく魔力を流して水を出し交互に顔を洗い、木製の歯ブラシを同時に口へと突っ込み歯磨きを始める二人。その動きがシンクロしていて、
「ふふふ♪ 何もそこまで似なくても」
それを見ていたレインから笑い声が漏れた。
◆
ようやく二人共目がしっかりと覚め、食事を済ました後、依頼されたブルーダの義眼作りの打ち合わせを始める。
「それで、どういう方向性で作るんじゃ?」
「先生の義眼で使える一部の機能を参考に、それに特化した物にするつもりだよ。火と水、この二属性で熱画像っていう温度の視覚化の義眼にするんだ」
「ほう、それは鍛冶師ならではだのう」
「うん、これで炉の温度や熱した素材の温度はわかるはず。だけどブルーダさんは水属性が得意じゃないから先生に訓練をお願いしたんだ」
「ふむ、それはどんな風に見えるんじゃ?」
「温度が高ければ赤く、温度が低ければ青く見えるよ。高温すぎると白くなって変わらなくなるし、低温すぎると黒くなって変わらなくなるから、そこの感度をかなり変更出来れば…… 」
「超高温でも見れるってわけか」
「うん、基本鍛冶って冷やす事するけど、水が氷になるほど低温にすることなんてないでしょ?」
「ああ、今のところはそんな加工技術聞いたことがないな」
「だから水属性は最低限でいいはずなんだ。ブルーダさんは、元々火属性の適正が高いし、火魔法の魔力操作も凄いから」
「ちなみに、わしらの体温はどんなふうにみえるんじゃ?」
「上が赤、下が青ってことは?」
「緑じゃな!」
「正解!流石ドモン義父さん」
「ふん、当たり前じゃろ」
「もし興味があるならドモン義父さんの分も作る?」
「いいのう、ならレインやヒイロも使えるようなサイズ調節出来るようにしたいのう」
「それいい、凄くいい!」
「なら、早速作り始めるか」
「うん、一応図面は描いてあるから確認して」
「ほう、ふむふむ、なるほどのう。サイズはわかった。問題なかろう。しかし魔力回路は、ここを直せばより効率が良い。それと、もう少し深く溝を掘ればもっと多くの魔力に耐えられるぞ」
「でも、これ以上魔力回路の溝を深くすると強度の問題が…… 」
「ならば魔鉄より上の魔合金を使えばよい」
「魔合金?」
「そうじゃ、鉄に魔力を込め精製したのが魔鉄なのはわかるな?」
「うん…… 」
「銀に魔力を込めて精製すれば魔銀じゃ、そして金に魔力を込めて精製すれば魔金となる。これが魔合金じゃ。勿論、天然物と人工物とでは若干の差はあるがのう」
「そっかぁ 魔鉄は魔力と鉄の合金ってことなのか」
「なので、先ずは金でフレームを制作した後、魔力を込めて魔金にすれば強度は問題がなくなるぞ」
「えっ、そんなこと可能なの?」
「ふん、わしを誰だと思っていやがる」
「なるほど、そっかぁ~ 金なら加工がしやすいから、加工後に魔金に変えれば強度があがる。魔力含有量が多ければ、一時的に高出力で義眼を発動しても使用者への魔力負担をかからない」
「で、魔力回路に流し込む魔石粉の種類はどうする?」
「種類?」
「そうじゃ。道具に溝を掘り、そこへ魔石粉を溶かし流し込む。それで魔力回路ができ、道具が魔道具へと変わる。その道具によって用途が変わるように、使用者に最適な属性の魔石で魔力回路を作れば、より効率よく高出力の魔道具になるぞ」
「そうなんだ。そこまでは先生も教えてくれなかった。 無属性でいいって…… 」
「そうじゃ、基本は無属性の魔石粉を使う。そうしなければ万人に使えなくなるからのう。これは基本オーダーメイド時に使う技術じゃ。ヒイロ、魔石粉はなにでできている?」
「えっ!魔石を粉にした物だよね」
「そうじゃ。ならば火の魔石を補助に使い、火魔法と水魔法を発動しようとするとどうなる?」
「火魔法は威力が上がり水魔法は発動しない…… なるほど、そっか!同じ属性じゃなければ発動しないから、誰でも発動できるように属性が無い魔石粉がいいんだ。そうすれば属性干渉が起きないで魔力だけで動くし発動するから」
「そうじゃ、よく勉強しているようじゃのう」
「へへへ」
「しかし、今回はブルーダの特別受注生産として考え、火の魔石で魔石粉を作り魔力回路を精製すれば?」
「魔力使用量を大幅に減らせる!」
「そうじゃ、覚えておくといいぞ」
「やっぱり凄い、凄いよドモン義父さん!」
「これから色々と本格的に鍛冶も魔道具も教えていくから楽しみにしておれ」
「うん!」
(多分セツナは二人がこうなるように、そこまで教えなかったのよね。本当にどこまで考えてるのかしら)
二人の会話を聞いていたレインは、二人を少しだけ羨ましく思いながらも、セツナの先を考えた言動に、改めて一人感心していた。
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