上 下
25 / 35

24話 魔道具講義

しおりを挟む

「おはよう…… ドモン義父とうさん…… 」
「おは…… よう…… ヒイロ…… 」

 ヒイロとドモンの二人は、丁度同じ時間に起床した。それをわかっていたかのように、レインはテーブルに二人分の食事を用意して待っている。

「二人共おはよう、ほら顔洗って来て。ご飯よ」

「おう…… 」
「はい…… 」

 言われた通りに、部屋備えの洗面台へ顔を洗いに行く二人。まだ寝ぼけているようで魔道具の蛇口へ魔力を通さず、ひたすら捻ったり押したりするヒイロ。完全に前世の仕草である。
 
「ヒイロ、寝ぼけてるのか?魔力を流すんじゃ…… 」
「あっ、そっかぁ…… 」

 ドモンが指摘し、ようやく魔力を流して水を出し交互に顔を洗い、木製の歯ブラシを同時に口へと突っ込み歯磨きを始める二人。その動きがシンクロしていて、

「ふふふ♪ 何もそこまで似なくても」
 
 それを見ていたレインから笑い声が漏れた。



 ようやく二人共目がしっかりと覚め、食事を済ました後、依頼されたブルーダの義眼作りの打ち合わせを始める。

「それで、どういう方向性で作るんじゃ?」

「先生の義眼で使える一部の機能を参考に、それに特化した物にするつもりだよ。火と水、この二属性で熱画像サーモグラフっていう温度の視覚化の義眼にするんだ」

「ほう、それは鍛冶師ならではだのう」

「うん、これで炉の温度や熱した素材の温度はわかるはず。だけどブルーダさんは水属性が得意じゃないから先生に訓練をお願いしたんだ」

「ふむ、それはどんな風に見えるんじゃ?」

「温度が高ければ赤く、温度が低ければ青く見えるよ。高温すぎると白くなって変わらなくなるし、低温すぎると黒くなって変わらなくなるから、そこの感度をかなり変更出来れば…… 」

「超高温でも見れるってわけか」

「うん、基本鍛冶って冷やす事するけど、水が氷になるほど低温にすることなんてないでしょ?」

「ああ、今のところはそんな加工技術聞いたことがないな」

「だから水属性は最低限でいいはずなんだ。ブルーダさんは、元々火属性の適正が高いし、火魔法の魔力操作も凄いから」 

「ちなみに、わしらの体温はどんなふうにみえるんじゃ?」

「上が赤、下が青ってことは?」

「緑じゃな!」

「正解!流石ドモン義父とうさん」

「ふん、当たり前じゃろ」

「もし興味があるならドモン義父とうさんの分も作る?」

「いいのう、ならレインやヒイロも使えるようなサイズ調節出来るようにしたいのう」

「それいい、凄くいい!」

「なら、早速作り始めるか」

「うん、一応図面は描いてあるから確認して」

「ほう、ふむふむ、なるほどのう。サイズはわかった。問題なかろう。しかし魔力回路は、ここを直せばより効率が良い。それと、もう少し深く溝を掘ればもっと多くの魔力に耐えられるぞ」

「でも、これ以上魔力回路の溝を深くすると強度の問題が…… 」

「ならば魔鉄より上の魔合金を使えばよい」

「魔合金?」

「そうじゃ、鉄に魔力を込め精製したのが魔鉄なのはわかるな?」

「うん…… 」

「銀に魔力を込めて精製すれば魔銀ミスリルじゃ、そして金に魔力を込めて精製すれば魔金オリハルコンとなる。これが魔合金じゃ。勿論、天然物と人工物とでは若干の差はあるがのう」

「そっかぁ 魔鉄は魔力と鉄の合金ってことなのか」

「なので、先ずは金でフレームを制作した後、魔力を込めて魔金にすれば強度は問題がなくなるぞ」

「えっ、そんなこと可能なの?」

「ふん、わしを誰だと思っていやがる」 

「なるほど、そっかぁ~ 金なら加工がしやすいから、加工後に魔金に変えれば強度があがる。魔力含有量が多ければ、一時的に高出力で義眼を発動しても使用者への魔力負担をかからない」

「で、魔力回路に流し込む魔石粉の種類はどうする?」

「種類?」

「そうじゃ。道具に溝を掘り、そこへ魔石粉を溶かし流し込む。それで魔力回路ができ、道具が魔道具へと変わる。その道具によって用途が変わるように、使用者に最適な属性の魔石で魔力回路を作れば、より効率よく高出力の魔道具になるぞ」

「そうなんだ。そこまでは先生も教えてくれなかった。 無属性でいいって…… 」

「そうじゃ、基本は無属性の魔石粉を使う。そうしなければ万人に使えなくなるからのう。これは基本オーダーメイド時に使う技術じゃ。ヒイロ、魔石粉はなにでできている?」

「えっ!魔石を粉にした物だよね」

「そうじゃ。ならば火の魔石を補助に使い、火魔法と水魔法を発動しようとするとどうなる?」

「火魔法は威力が上がり水魔法は発動しない…… なるほど、そっか!同じ属性じゃなければ発動しないから、誰でも発動できるように属性が無い魔石粉がいいんだ。そうすれば属性干渉が起きないで魔力だけで動くし発動するから」

「そうじゃ、よく勉強しているようじゃのう」

「へへへ」

「しかし、今回はブルーダの特別受注生産オーダーメイドとして考え、火の魔石で魔石粉を作り魔力回路を精製すれば?」

「魔力使用量を大幅に減らせる!」

「そうじゃ、覚えておくといいぞ」

「やっぱり凄い、凄いよドモン義父とうさん!」

「これから色々と本格的に鍛冶も魔道具も教えていくから楽しみにしておれ」

「うん!」

(多分セツナは二人がこうなるように、そこまで教えなかったのよね。本当にどこまで考えてるのかしら) 

 二人の会話を聞いていたレインは、二人を少しだけ羨ましく思いながらも、セツナの先を考えた言動に、改めて一人感心していた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

処理中です...