運命なんて知らない

なかた

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いつも通りがいい

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霜の発情期が終わってから、あの日の喧嘩はなかったことかのように今まで通りだ。
でも、今回の発情期で気になったことがある。


霜と先輩は運命の番かもしれない。


霜が先輩の匂いを不快に思ってないこと発情期も早まっただけだけど、充分ある話だ。霜は好きではなさそうだけど、先輩は多分好きなんだろうな。
霜は気づいてないけど、本当しっかりマーキングされてるし。
本当にそろそろ、弟離れしないと。
ポケットに入ってるスマホが揺れた。
三佳巳さんから電話だ。
母さんのことで電話番号だけ教えたんだった。

「もしもし」

「雪くん、君たちのお母さんが入院することになって話すのは結構後になるかも」

「え、あ、大丈夫なんですか?」

「うん。今は手術が成功して落ち着いてる。脳に腫瘍があって」

「脳?結構大変なやつじゃないですか!」

「そんなに大きくないうちに手術で摘出出来たから大丈夫だって」

「よかった。あのお見舞いって行けますか?」

「うん。もう少し回復したらお見舞い大丈夫になるから、今度一緒に行こうか」

「ありがとうございます!」

「うん。じゃあ切るね」

「はーい」

大事にならなくてよかった。
まだ話も聞けてないし、でも本当によかった。
霜と先輩のこともあるけど、母さんとのこともあって最近はずっと考える気がする。
こないだ買った煙草は終わっちゃったけど、霜に吸ってるのがバレたばかりだし吸いたくないな。
でも、考える時に吸ってたせいですごく吸いたい。

「電話、誰から?」
「三佳巳さんから、母さんが入院したんだって」
「大丈夫なの?」
「うん。手術して大丈夫になったんだって」
「よかったね。雪、今日は鍋にしよう。俺が作る」
「本当? 作れる?」
「うん。任せて。動画見てめっちゃ美味しそうだったから作ってみたくて」
「何作るの?」
「肉団子が入ってる鍋」
霜が料理を作るのは珍しい。
普段は僕が作っているから、霜に料理を教えた方がいいのかな。やっぱり、いつかは別々に暮らさないといけなくなるだろうし。でも、やっぱりまだ離れたくない。
いきなりなんて離れられない。
これはまた今度考えよう。
「雪。やっぱり肉団子以外作ってくれない?」
「えー、自分で作ってみなよ」
「お願い!肉団子は完璧に作るから」
「もー。しょうがないなぁ。じゃあ、肉団子は任せた」
「了解!」
肉団子以外を作るといっても野菜切って鍋に入れて鍋の素を入れればできてしまうから簡単だ。
「2人で料理するの久々だね」
「引っ越してきた時は確か交代で作ってたよね」
「あの時は忙しくて、スーパーで割引のお惣菜買ってお米だけ炊いてたから」
「今じゃ考えられないな。お惣菜でよく満足してたな」
「バイトにレポートに忙しすぎて、食べる暇なかったよね。霜はあの頃なんのバイトしてたっけ?」
「大学1年なら、回転寿司とカラオケを掛け持ちしてた頃かな。雪は?」
「そうだったね。僕は居酒屋とコンビニ」
「あー。雪、コンビニのお客さんにストーカーされたの思い出した」
「あったね。忙しくて僕は気づいてなかったけど霜が気づいたんだよね」
「マジで焦った。家は特定されなかったけど、駅まで着いて来てたし。でも、雪が彼氏いるって言ったら治ったんだよね?」
「そうそう。彼氏いるって言ったら走ってどっか行っちゃってから、もう来なくなったんだよ」
「普通に怖かった」
「まあ、やめてくれたんだし」
「高校の時もさ、めっちゃモテてたじゃん」
「さすがにΩの子に告白された時はびっくりした。Ω同士なら僕はどっちなんだろうって思って抱きたいのか抱かれたいのかどっちなのか聞いたら」
「抱きたいだったんだよね。Ωすら抱きたい男ってよばれてた」
「心外だったけどね。あの子の方が可愛かったから」
「その可愛いあの子が抱きたいなんて、雪は周りから見ても相当可愛いんだね」
「それは霜もでしょ? 告白すごいされてたじゃん」
「雪には敵わないよ」
「僕は今まで生きてきた中で霜以上に可愛くてかっこいい人見たことないけどね」
「そういう思わせぶりな態度取るからストーカーされるんだよ」
「霜以外には言わないよ」
「本当に雪が心配」

いつものように会話が弾む。
やっぱり、喧嘩よりいつも通りがいい。
このくらいが一番だ。

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