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召喚魔法編
召喚魔法陣を探せ!!
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完全に詰まった。
勇者達から購入した地球製の品物を使って地球の座標を確認しようとしたのだが、開かれた先はこの世界に召喚された勇者達の所ばかりだった。
どうやら魔法陣の追尾機能が、勇者達が持ちこんだプラスチックや金属に引かれてしまっていたのが原因だ。
考えてみれば、他の勇者達も地球産の品を所持しているのだから、そうなるのは当然だった。
参ったなコリャ。
どうやら考え方を変えなければいけないみたいだ。
地球産の品を利用できない以上、やはり召喚魔法陣のオリジナルを探す必要がある。
その方法は2つ、ひとつはメリケ国の現存する王宮魔法使い達がどこかに隠し持っていないか。または処刑した魔法使い達がどこかに資料を隠していないか。もう1つはオリジナルの魔法を持ってきたローブの人物を探し出す事だ。
後者はローブの人物の情報が少なすぎる為、現実的ではない。
となるとまだ可能性が高いのは魔法使い達の遺産を漁る事か。
んじゃメリケ国にまた行くかね。
◆
と言う訳でやって来ましたメリケ国。
と言っても今の俺はこの国の人間でも騎士でもないので、このまま魔法使い達の家に行く事はできない。
だから行動は夜になってからだ。
昼のうちは、町の住人達の会話から今のメリケ国の情勢を調べる事にしよう。
近くにいるオバちゃん達が丁度何か噂している。
「最近は見かけない子供達が増えたわねぇ。髪の毛が黒いけど異国の子供達かしら?」
「あら知らないの? あの子達がこの国を守る為にやってきた勇者様なのよ」
どうやら勇者君達の事を離しているみたいだ。
「あんな子供達が勇者様だったの!?」
どうやらこの国の住民は勇者達の姿を知らなかったみたいだな。
恐らく召喚され戦闘ができるようになるまでは、完全に城の中で飼い殺しにしていたのだろう。
エイナルの知識では教育を施している事は知っていたが、細かい所は部下達がやっていたから知らないみたいだ。
「でも勇者様達は魔族と戦っているんでしょ? 何で王都にいる訳?」
「騎士様達の話じゃウチの国を襲っていた魔族を追い払ったから、一旦戻ってきたみたいよ」
「あら、すごいのねぇ」
いかにもオバちゃんの会話だが、魔族を追い払ったとか言ってるのは国民向けの情報統制かな?
先日出会った勇者君達の話じゃ魔族が撤退した理由については分からないって話してたし。
暫く聞いていたものの、オバちゃん達の話題はどうでも良い世間話に移行してしまった。
あまり同じ場所に居ると疑われそうなので移動するか。
暫く町の中を散策していると、少しずつ日が落ちてきて夕方になる。
俺は少し早い食事をしてから夜になるのを待った。
◆
深夜……と言っても12時くらいだが。
まぁ異世界人にとっては12時は十分深夜だ。
俺は召喚魔法を使って地球人を召喚していた魔法使いの屋敷の前に来ていた。
彼等の屋敷は王国の騎士団が捜索した事で、財産の全てを持ち出され完全な空き家になっている。
普通に考えるのなら探すだけ無駄だ。
だがそれは普通の人間の考えならだ。
異世界人である俺にとって、隠し部屋や秘密の隠し場所が在ると考えるのは当然の事。
ましてや相手は研究者たる魔法使いだ。
絶対一人ぐらいは秘密の研究部屋を持っている筈である。
という訳で、レッツ捜索。
魔法使いの何人かは王宮で用意した宿舎で暮らしている。
これは若く身分の低い魔法使いが他国に技術を流出したり、他国のスパイに技術を盗まれない様にする為だ。
その為高位の魔法使いで研究施設を兼ねた自分の屋敷を持っているのは貴族レベルの魔法使いと言う事になる。まぁそいつ等の中には、かつて処刑した大臣達と同じ様に他国と繋がっていたヤツ等が何人かいたみたいだがな。
ともあれ、自分の家で暮らしていた魔法使いは15名。内、平民より多少良い家に住んでいる者達は10人。コイツ等は昔から国に使えている魔法使いの一族なのでそれなりに国の信用がある。そして研究施設を持った屋敷に住んでいた者は5名。
まずは目の前に立っている一番大きい館から調べる事にしよう。
◆
屋敷の中はもぬけのカラだった。
というのも、俺が憑依していたエイナルの命令で召喚魔法関係の資料は没収され、家主の魔法使い達が処刑された事で屋敷で働いていた使用人達が金になる物を持って逃げ出したからだ。
まぁそれは良い。
どのみち欲しいのは召喚魔法陣に関する資料であり、使用人が回収できるようなモノなら既に騎士達が回収していたはずだからだ。
まずは屋敷の中を一周して隠し床などが無いか調べよう。
と、思ったその時だった。
お……おおおぉ……ぉぉぉぉぉ……
なんだ今のは?
なんか向こうから薄明るいたいまつ見たいのが見えるんだが。
なんか夜なのに半透明の人影が見える。
なんか足が透けてる。
なんか近づいてきてる。
私は……無……実だ……無実だぁぁぁぁぁ!!!!
即Uターン。
走る。
全力で走る。
わだじはむじづだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
なんか生暖かい風が近づいてくる!!
声が近づいてくる。
必死で走っていると、入り口が見えてくる。
助かった、そう思った俺だったが大事な事を思い出した。
不法侵入している事を気付かれないようにしっかりドアを閉めてしまったのだ!!
そうなると外に出る為には、一旦止まってドアを開ける必要がある。
だがこの状況で止まるのは自殺行為だ。
俺は俺は龍魔法を使って肉体を強化し、ドアに向かって体当たりを駆けた。
ガンッ!!!
思いっきり弾かれた。
ドアは木だぞ!? まさか悪霊の霊的エネルギーとかで脱出不可能!?
弾かれた身体を転がして反転、即座にドアに飛びついてドアノブを回す。
カチャリと音が鳴ってドアが開く。
僅かに空いたスキマから俺は外に飛び出す。
だが遅かった。
ガシッ!
俺の足が何者かに掴まれる。
恐る恐る後ろに視線を向ける。
『私は、無実だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
恐ろしい形相をした悪霊が俺にのしかかって来る。
男が触れた部分がおぞましい寒気に襲われ、全身の力が抜けていく。
コレはマズい!
『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
俺はなりふり構わず龍魔法を全開にして体を動かした。
『おおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!』
悪霊も俺を逃すまいと屋敷の中に引きずり込もうとする。
マズイマズイマズイ!!!
予想外に相手の力が強い。
俺は一か八か、抵抗を止める。
すると凄まじい勢いで身体が中へと引きずり込まれる。
全身の力が抜けていくのを必死で耐えながら俺は転移魔法を発動させた。
◆
視界が一瞬で書き替わる。
恐ろしい屋敷の光景は消え去り、今は見覚えのある岩肌が俺の視界を埋めていた。
なんとか転移による逃走は……
『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
「憑いて来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
地縛霊じゃねーのかよ!!!!
ヤバイヤバイ!マジ憑かれた!! お憑かれちゃーん! じゃねーよ!!!
どうすんだコレ!!
今までさんざ取り憑いてきたけど、まさか自分が取り憑かれる日がこようとは!!!
おおおおおぅ! マズイぞマズイ! 全身の力がマジ入らねぇ! このままじゃ取り殺される!!
「さっきから煩いわねぇ。何を騒いでいるのかしら」
それはメリネアの声だった。
俺の悲鳴と悪霊の雄たけびを聞いてメリネアが洞窟の奥からやって来たのだ。
「なぁにその汚い魂は」
『ぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁ!!!!』
侮辱されている事が分かったのだろうか? 悪霊は俺から手を離しメリネアの方に向き直る。
『あぁぁぁ……ぁぁぁぁぁ……ぁぁぁぁ』
なんだ? 様子がおかしいぞ。
まるで怯えているようだ。
「気分が悪いわ。ココは私とその夫の巣よ。お前の様な汚い魂が土足で踏み入れて良い場所では無いわ」
メリネアの目が怪しく光る。
『…………ぁ』
プチッ
悪霊は宝石龍の姿に戻ったメリネアによって踏み潰されてしまった。
彼女の足が引き戻された後には、悪霊の痕跡など全くない。そんな存在など始めから居なかったといわんばかりの光景である。
「貴方様」
メリネアが俺に近づいてくる。
と、とりあえずお礼を言っておくか。危ないところを助けてもらった訳だしな。
「あ、ありがと……」
「変な時間に起きたからお腹が空いてしまったわ。何か作って頂戴」
「はい」
そうして俺は、悪霊に襲われ疲れきった身体に鞭打って、愛する妻の夜食を作るのであった。
勇者達から購入した地球製の品物を使って地球の座標を確認しようとしたのだが、開かれた先はこの世界に召喚された勇者達の所ばかりだった。
どうやら魔法陣の追尾機能が、勇者達が持ちこんだプラスチックや金属に引かれてしまっていたのが原因だ。
考えてみれば、他の勇者達も地球産の品を所持しているのだから、そうなるのは当然だった。
参ったなコリャ。
どうやら考え方を変えなければいけないみたいだ。
地球産の品を利用できない以上、やはり召喚魔法陣のオリジナルを探す必要がある。
その方法は2つ、ひとつはメリケ国の現存する王宮魔法使い達がどこかに隠し持っていないか。または処刑した魔法使い達がどこかに資料を隠していないか。もう1つはオリジナルの魔法を持ってきたローブの人物を探し出す事だ。
後者はローブの人物の情報が少なすぎる為、現実的ではない。
となるとまだ可能性が高いのは魔法使い達の遺産を漁る事か。
んじゃメリケ国にまた行くかね。
◆
と言う訳でやって来ましたメリケ国。
と言っても今の俺はこの国の人間でも騎士でもないので、このまま魔法使い達の家に行く事はできない。
だから行動は夜になってからだ。
昼のうちは、町の住人達の会話から今のメリケ国の情勢を調べる事にしよう。
近くにいるオバちゃん達が丁度何か噂している。
「最近は見かけない子供達が増えたわねぇ。髪の毛が黒いけど異国の子供達かしら?」
「あら知らないの? あの子達がこの国を守る為にやってきた勇者様なのよ」
どうやら勇者君達の事を離しているみたいだ。
「あんな子供達が勇者様だったの!?」
どうやらこの国の住民は勇者達の姿を知らなかったみたいだな。
恐らく召喚され戦闘ができるようになるまでは、完全に城の中で飼い殺しにしていたのだろう。
エイナルの知識では教育を施している事は知っていたが、細かい所は部下達がやっていたから知らないみたいだ。
「でも勇者様達は魔族と戦っているんでしょ? 何で王都にいる訳?」
「騎士様達の話じゃウチの国を襲っていた魔族を追い払ったから、一旦戻ってきたみたいよ」
「あら、すごいのねぇ」
いかにもオバちゃんの会話だが、魔族を追い払ったとか言ってるのは国民向けの情報統制かな?
先日出会った勇者君達の話じゃ魔族が撤退した理由については分からないって話してたし。
暫く聞いていたものの、オバちゃん達の話題はどうでも良い世間話に移行してしまった。
あまり同じ場所に居ると疑われそうなので移動するか。
暫く町の中を散策していると、少しずつ日が落ちてきて夕方になる。
俺は少し早い食事をしてから夜になるのを待った。
◆
深夜……と言っても12時くらいだが。
まぁ異世界人にとっては12時は十分深夜だ。
俺は召喚魔法を使って地球人を召喚していた魔法使いの屋敷の前に来ていた。
彼等の屋敷は王国の騎士団が捜索した事で、財産の全てを持ち出され完全な空き家になっている。
普通に考えるのなら探すだけ無駄だ。
だがそれは普通の人間の考えならだ。
異世界人である俺にとって、隠し部屋や秘密の隠し場所が在ると考えるのは当然の事。
ましてや相手は研究者たる魔法使いだ。
絶対一人ぐらいは秘密の研究部屋を持っている筈である。
という訳で、レッツ捜索。
魔法使いの何人かは王宮で用意した宿舎で暮らしている。
これは若く身分の低い魔法使いが他国に技術を流出したり、他国のスパイに技術を盗まれない様にする為だ。
その為高位の魔法使いで研究施設を兼ねた自分の屋敷を持っているのは貴族レベルの魔法使いと言う事になる。まぁそいつ等の中には、かつて処刑した大臣達と同じ様に他国と繋がっていたヤツ等が何人かいたみたいだがな。
ともあれ、自分の家で暮らしていた魔法使いは15名。内、平民より多少良い家に住んでいる者達は10人。コイツ等は昔から国に使えている魔法使いの一族なのでそれなりに国の信用がある。そして研究施設を持った屋敷に住んでいた者は5名。
まずは目の前に立っている一番大きい館から調べる事にしよう。
◆
屋敷の中はもぬけのカラだった。
というのも、俺が憑依していたエイナルの命令で召喚魔法関係の資料は没収され、家主の魔法使い達が処刑された事で屋敷で働いていた使用人達が金になる物を持って逃げ出したからだ。
まぁそれは良い。
どのみち欲しいのは召喚魔法陣に関する資料であり、使用人が回収できるようなモノなら既に騎士達が回収していたはずだからだ。
まずは屋敷の中を一周して隠し床などが無いか調べよう。
と、思ったその時だった。
お……おおおぉ……ぉぉぉぉぉ……
なんだ今のは?
なんか向こうから薄明るいたいまつ見たいのが見えるんだが。
なんか夜なのに半透明の人影が見える。
なんか足が透けてる。
なんか近づいてきてる。
私は……無……実だ……無実だぁぁぁぁぁ!!!!
即Uターン。
走る。
全力で走る。
わだじはむじづだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
なんか生暖かい風が近づいてくる!!
声が近づいてくる。
必死で走っていると、入り口が見えてくる。
助かった、そう思った俺だったが大事な事を思い出した。
不法侵入している事を気付かれないようにしっかりドアを閉めてしまったのだ!!
そうなると外に出る為には、一旦止まってドアを開ける必要がある。
だがこの状況で止まるのは自殺行為だ。
俺は俺は龍魔法を使って肉体を強化し、ドアに向かって体当たりを駆けた。
ガンッ!!!
思いっきり弾かれた。
ドアは木だぞ!? まさか悪霊の霊的エネルギーとかで脱出不可能!?
弾かれた身体を転がして反転、即座にドアに飛びついてドアノブを回す。
カチャリと音が鳴ってドアが開く。
僅かに空いたスキマから俺は外に飛び出す。
だが遅かった。
ガシッ!
俺の足が何者かに掴まれる。
恐る恐る後ろに視線を向ける。
『私は、無実だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
恐ろしい形相をした悪霊が俺にのしかかって来る。
男が触れた部分がおぞましい寒気に襲われ、全身の力が抜けていく。
コレはマズい!
『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
俺はなりふり構わず龍魔法を全開にして体を動かした。
『おおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!』
悪霊も俺を逃すまいと屋敷の中に引きずり込もうとする。
マズイマズイマズイ!!!
予想外に相手の力が強い。
俺は一か八か、抵抗を止める。
すると凄まじい勢いで身体が中へと引きずり込まれる。
全身の力が抜けていくのを必死で耐えながら俺は転移魔法を発動させた。
◆
視界が一瞬で書き替わる。
恐ろしい屋敷の光景は消え去り、今は見覚えのある岩肌が俺の視界を埋めていた。
なんとか転移による逃走は……
『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
「憑いて来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
地縛霊じゃねーのかよ!!!!
ヤバイヤバイ!マジ憑かれた!! お憑かれちゃーん! じゃねーよ!!!
どうすんだコレ!!
今までさんざ取り憑いてきたけど、まさか自分が取り憑かれる日がこようとは!!!
おおおおおぅ! マズイぞマズイ! 全身の力がマジ入らねぇ! このままじゃ取り殺される!!
「さっきから煩いわねぇ。何を騒いでいるのかしら」
それはメリネアの声だった。
俺の悲鳴と悪霊の雄たけびを聞いてメリネアが洞窟の奥からやって来たのだ。
「なぁにその汚い魂は」
『ぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁ!!!!』
侮辱されている事が分かったのだろうか? 悪霊は俺から手を離しメリネアの方に向き直る。
『あぁぁぁ……ぁぁぁぁぁ……ぁぁぁぁ』
なんだ? 様子がおかしいぞ。
まるで怯えているようだ。
「気分が悪いわ。ココは私とその夫の巣よ。お前の様な汚い魂が土足で踏み入れて良い場所では無いわ」
メリネアの目が怪しく光る。
『…………ぁ』
プチッ
悪霊は宝石龍の姿に戻ったメリネアによって踏み潰されてしまった。
彼女の足が引き戻された後には、悪霊の痕跡など全くない。そんな存在など始めから居なかったといわんばかりの光景である。
「貴方様」
メリネアが俺に近づいてくる。
と、とりあえずお礼を言っておくか。危ないところを助けてもらった訳だしな。
「あ、ありがと……」
「変な時間に起きたからお腹が空いてしまったわ。何か作って頂戴」
「はい」
そうして俺は、悪霊に襲われ疲れきった身体に鞭打って、愛する妻の夜食を作るのであった。
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