93 / 132
ディグラード編
消えた戦場
しおりを挟む
ドワーフ達の兵器情報とそれらを開発整備する為の施設を根こそぎ破壊した俺は、転移装置を使ってエルフの町へと向かった。
目的はエルフが所有する【源泉】の情報の抹消と魔法技術の弱体化の為である。
ドワーフが弱体化した以上、エルフにも弱体化してもらわないとバランスが取れないからだ。
両種族は魔族襲来の原因としてしっかり責任を取ってもらわないとな。
◆
転移を行った俺は、周囲を確認する。
ここはエルフの森の中に有る巨大樹、その幹の側面と枝の上に作られた町である。
いまここでは、エルフとドワーフの熾烈な争いが繰り広げられて……繰り広げられて…いない?
何故かエルフの町はがらんとしており、人っ子一人居なかった。
町を襲撃に来たドワーフも、町を防衛するエルフすらも居なかったのだ。
「どういう事だ?」
ドワーフの地下都市にエルフの大軍勢が攻めてきているのは知っている。
しかしソレを考慮してもここまで人の気配がないのはおかしい。
もしかしたらエルフ達は町の防衛を無視して総出でドワーフの地下都市を襲ったのだろうか?
いやいや、幾らなんでもそれは。
普通に考えれば残ったエルフ達は町を捨てどこかほかの場所に避難したという所だろう。
だがそれでも先行してここに来たドワーフ達の姿が見えないのはおかしい。
エルフが全員逃げ出したとしてもドワーフ達が制圧した都市を放って全員エルフ達を追うとは考え難かった。普通最低限の人数は残すものだろう。
町を見れば第一陣が放ったであろう大量の魔力結晶によって町はボロボロになっていた。
人間の胴体よりも太い枝は折れ、木々の表面は爆発の余波で炭化している。
だが誰かが魔法で消火したのか、そこかしこがびしょ濡れになっていた。
つまり奇襲は行われ、エルフ側からの消火作業も行われたという事だ。
しかし周囲には人っ子一人居ない。
ふむ、ここに居ても情報を得られそうもないし、まずは貴族達が生活している上層に行って見よう。
◆
かつてドラゴンの襲撃を免れた古参エルフ達のすむ区画。
そこもまたドワーフ達の襲撃を受けたであろう生々しい燃え跡がと爆発跡が残っていた。
やはり戦闘はあったのだ。
だが、だったら何故死体が無い? 戦闘をしたのなら、生存者が居なくても死体はある筈だ。
俺は得体の知れない状況に危機感を募らせていた。
手がかりを探すべく、貴族区を探索する。
そこで俺は意外にもあっさりと状況を確認する手がかりを見つける事が出来た。
俺の視線の先にはドワーフの鎧、イカヅチが倒れていたのだ。
わき腹に穴が空いている、恐らくエルフの攻撃を受けて殺されたのだろう。
いやもしかしたらまだ虫の息で生きている可能性もある。接触してみよう。
「おい、大丈夫か!?」
声をかけながら近づくか返事は無い。やはり死んでいるのか?
俺はイカヅチの装甲板を開き、その中に隠された外部操作パネルを操作する。
イカヅチは内部から鎧を脱ぐ以外に、装着者が意識を失った時の為の外部操作パネルが有る。
ソレを副団長権限で解放し、鎧のロックを外すと、胸部装甲版が展開して内部の装着者が露出する。
生きていてくれよ。
「…………なに?」
だがそこには誰も居なかった。
そこには装着者たるドワーフがいる筈だというのに、もぬけの殻だったのだ。
「どういう事だ?」
これは明らかにおかしい。
何故中にドワーフがいない? 鎧の不調で外に出た? わざわざ蓋を閉めなおして? ソレだったら仲間の転移装置で鎧ごと帰ればいいだろうに。
「鎧を捨てざるを得ない何かが起こったのか?」
結局、鎧を見ただけでは判断がつかなかった為、俺は更なる情報を求めて移動を再開するのだった。
しかし俺はここで気付くべきだった。
鎧を貫いた穴にも、鎧の内部にも、装着者の血液が付着していなかった事に。
目的はエルフが所有する【源泉】の情報の抹消と魔法技術の弱体化の為である。
ドワーフが弱体化した以上、エルフにも弱体化してもらわないとバランスが取れないからだ。
両種族は魔族襲来の原因としてしっかり責任を取ってもらわないとな。
◆
転移を行った俺は、周囲を確認する。
ここはエルフの森の中に有る巨大樹、その幹の側面と枝の上に作られた町である。
いまここでは、エルフとドワーフの熾烈な争いが繰り広げられて……繰り広げられて…いない?
何故かエルフの町はがらんとしており、人っ子一人居なかった。
町を襲撃に来たドワーフも、町を防衛するエルフすらも居なかったのだ。
「どういう事だ?」
ドワーフの地下都市にエルフの大軍勢が攻めてきているのは知っている。
しかしソレを考慮してもここまで人の気配がないのはおかしい。
もしかしたらエルフ達は町の防衛を無視して総出でドワーフの地下都市を襲ったのだろうか?
いやいや、幾らなんでもそれは。
普通に考えれば残ったエルフ達は町を捨てどこかほかの場所に避難したという所だろう。
だがそれでも先行してここに来たドワーフ達の姿が見えないのはおかしい。
エルフが全員逃げ出したとしてもドワーフ達が制圧した都市を放って全員エルフ達を追うとは考え難かった。普通最低限の人数は残すものだろう。
町を見れば第一陣が放ったであろう大量の魔力結晶によって町はボロボロになっていた。
人間の胴体よりも太い枝は折れ、木々の表面は爆発の余波で炭化している。
だが誰かが魔法で消火したのか、そこかしこがびしょ濡れになっていた。
つまり奇襲は行われ、エルフ側からの消火作業も行われたという事だ。
しかし周囲には人っ子一人居ない。
ふむ、ここに居ても情報を得られそうもないし、まずは貴族達が生活している上層に行って見よう。
◆
かつてドラゴンの襲撃を免れた古参エルフ達のすむ区画。
そこもまたドワーフ達の襲撃を受けたであろう生々しい燃え跡がと爆発跡が残っていた。
やはり戦闘はあったのだ。
だが、だったら何故死体が無い? 戦闘をしたのなら、生存者が居なくても死体はある筈だ。
俺は得体の知れない状況に危機感を募らせていた。
手がかりを探すべく、貴族区を探索する。
そこで俺は意外にもあっさりと状況を確認する手がかりを見つける事が出来た。
俺の視線の先にはドワーフの鎧、イカヅチが倒れていたのだ。
わき腹に穴が空いている、恐らくエルフの攻撃を受けて殺されたのだろう。
いやもしかしたらまだ虫の息で生きている可能性もある。接触してみよう。
「おい、大丈夫か!?」
声をかけながら近づくか返事は無い。やはり死んでいるのか?
俺はイカヅチの装甲板を開き、その中に隠された外部操作パネルを操作する。
イカヅチは内部から鎧を脱ぐ以外に、装着者が意識を失った時の為の外部操作パネルが有る。
ソレを副団長権限で解放し、鎧のロックを外すと、胸部装甲版が展開して内部の装着者が露出する。
生きていてくれよ。
「…………なに?」
だがそこには誰も居なかった。
そこには装着者たるドワーフがいる筈だというのに、もぬけの殻だったのだ。
「どういう事だ?」
これは明らかにおかしい。
何故中にドワーフがいない? 鎧の不調で外に出た? わざわざ蓋を閉めなおして? ソレだったら仲間の転移装置で鎧ごと帰ればいいだろうに。
「鎧を捨てざるを得ない何かが起こったのか?」
結局、鎧を見ただけでは判断がつかなかった為、俺は更なる情報を求めて移動を再開するのだった。
しかし俺はここで気付くべきだった。
鎧を貫いた穴にも、鎧の内部にも、装着者の血液が付着していなかった事に。
0
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる