26 / 68
25-2
しおりを挟む
私が気づいた彼らの共通点というのは、今のところ二つだけです。
一つ目は、彼らにとって作業する場所や時間を決められることが苦痛であること。
二つ目は、自分の得意分野のことでも、強制されるのは苦手であること。
これらは私たちが子供のころから学園や家で、ほとんど強制的にさせられることです。
家庭教師が来る時間には必ず勉強をしなくてはいけないことや、学校での時間割もそうですし、テストで点をとるための暗記もそうなのです。
それに対応できず、成績が悪い子たちを『劣っている』と決めつけてしまう教育システムでは、特殊な能力を持つ子を見つけ出すのは難しいでしょう。
逆に言うと、それらを拒否する子はギフテッドの可能性が高いのかもしれません。
しかし、ぜんぜんサンプルが足りていませんから、あくまでも予測でしかないのです。
というのも、特殊能力を持つ人というのが絶対的に少ないのです。
当たり前ですよね。
神様は平等に祝福を授けてくださいますが、その大きさには違いがありますから。
そんな毎日は矢のように過ぎて、私たちはあとひと月で卒業を迎えます。
ララは予定通り家事手伝いという名の、花嫁修業に入ります。
本人は花嫁修業はするけれど、まだ結婚はしたくないそうですが。
私は奇跡的なことに、サリバン博士の助手という職を得ることができました。
エヴァン様はとんでもないほど凄いと喜んでくださいました。
「私との結婚時期についてはゆっくり考えればいいからね。じっくり腰を据えて夢を追いかければいいよ。でも私を捨てたりしないでね」
「捨てるなんて!でも私のお仕事を認めて下さって嬉しいです」
「うん。私は君のすべてを認めているよ」
エヴァン様との婚約が現実味を帯びてきましたが、すぐに結婚という事ではないと聞いて安心した自分もいます。
「今度ね、ロゼに会わせたい人がいるんだ。というか、私としてはどっちでも良いんだけど、どうしてもってしつこくてね。まあ折れてやることにした。ロゼの領地の件でもいろいろ助けてもらったし」
「どなたですか?」
「王太子殿下だ」
私は気を失いそうになってしまいました。
「サリバン博士も同席する予定だから」
「博士もですか?ということは?」
「まあ会って自分で確認するべきだろうね。いろいろお願いをされるかもだけど、嫌なら断って大丈夫だから。それより卒業パーティーで着るドレスを買いに行こうよ。もちろんララの分もね。ララのは父上が出すけれど、ロゼのは私から贈らせてほしいい」
私が真っ赤になってドキドキしている間に、話はどんどん進んでしまいました。
ララと一緒に三人で乗り込んだ馬車は、王都で一番予約が取れないブティックに到着しました。
「いらっしゃいませ」
首からメジャーを下げたスタッフが出迎えてくれます。
オタオタしている間に、体のサイズを図られてサンプルドレスのコーナーに連れて行かれました。
ララは買い物に慣れているのでしょう、好みのデザインをスタッフに伝えています。
「ロゼはどんなデザインが好みかな?」
私に付き添ってくださったエヴァン様が聞きました。
「よくわからないです。エヴァン様が決めてください」
「よし!任せて!」
先ほどまでソファーで寛いでいたエヴァン様が、張り切って立ち上がります。
今度は私がソファーで眺めるという状態です。
話はどんどん進んでいき、結局二つのドレスが目の前に並びました。
「ララと色が被らない様にしたいね」
そう言ったエヴァン様はスタッフにララの様子を見てくるように言いました。
戻ってきたスタッフによると、ララは薄いピンク色のベルドレスを選んだようです。
きっと可憐な印象のララにぴったりなフェミニンドレスでしょうね。
「ロゼは薄い色じゃない方が似合うよ。これはどう?」
エヴァン様が指さしたのは紫色から濃紺にグラデーションしているマーメイドタイプです。
「大人っぽくないですか?」
「そう?もう成人なんだし良いんじゃない?デコルテは詰めてもらおう。あまり開いているのはダメだよ?私は嫉妬深いんだ」
そう言ってどんどん決めていくエヴァン様を呆気に取られて見ているだけでした。
「さあ、次はアクセサリーだ。濃い色のサファイアがいいかな。それともアメジストがいいかな。どう?」
「アメジストの色が素敵です」
「うん、私もそれが似合うと思うよ。ではアメジストでピアスとネックレスを作ろう。私もロゼのピアスと同じデザインでカフスを作ろうかな。こちらの石は君の色にしたいからサファイアだな」
いったい総額はいくらになるのでしょう。
いったん考えるのを放棄しました。
ご満悦のエヴァン様はララの宝石を選んでいます。
こちらはララの希望通り真っ赤なルビーに決まりました。
一つ目は、彼らにとって作業する場所や時間を決められることが苦痛であること。
二つ目は、自分の得意分野のことでも、強制されるのは苦手であること。
これらは私たちが子供のころから学園や家で、ほとんど強制的にさせられることです。
家庭教師が来る時間には必ず勉強をしなくてはいけないことや、学校での時間割もそうですし、テストで点をとるための暗記もそうなのです。
それに対応できず、成績が悪い子たちを『劣っている』と決めつけてしまう教育システムでは、特殊な能力を持つ子を見つけ出すのは難しいでしょう。
逆に言うと、それらを拒否する子はギフテッドの可能性が高いのかもしれません。
しかし、ぜんぜんサンプルが足りていませんから、あくまでも予測でしかないのです。
というのも、特殊能力を持つ人というのが絶対的に少ないのです。
当たり前ですよね。
神様は平等に祝福を授けてくださいますが、その大きさには違いがありますから。
そんな毎日は矢のように過ぎて、私たちはあとひと月で卒業を迎えます。
ララは予定通り家事手伝いという名の、花嫁修業に入ります。
本人は花嫁修業はするけれど、まだ結婚はしたくないそうですが。
私は奇跡的なことに、サリバン博士の助手という職を得ることができました。
エヴァン様はとんでもないほど凄いと喜んでくださいました。
「私との結婚時期についてはゆっくり考えればいいからね。じっくり腰を据えて夢を追いかければいいよ。でも私を捨てたりしないでね」
「捨てるなんて!でも私のお仕事を認めて下さって嬉しいです」
「うん。私は君のすべてを認めているよ」
エヴァン様との婚約が現実味を帯びてきましたが、すぐに結婚という事ではないと聞いて安心した自分もいます。
「今度ね、ロゼに会わせたい人がいるんだ。というか、私としてはどっちでも良いんだけど、どうしてもってしつこくてね。まあ折れてやることにした。ロゼの領地の件でもいろいろ助けてもらったし」
「どなたですか?」
「王太子殿下だ」
私は気を失いそうになってしまいました。
「サリバン博士も同席する予定だから」
「博士もですか?ということは?」
「まあ会って自分で確認するべきだろうね。いろいろお願いをされるかもだけど、嫌なら断って大丈夫だから。それより卒業パーティーで着るドレスを買いに行こうよ。もちろんララの分もね。ララのは父上が出すけれど、ロゼのは私から贈らせてほしいい」
私が真っ赤になってドキドキしている間に、話はどんどん進んでしまいました。
ララと一緒に三人で乗り込んだ馬車は、王都で一番予約が取れないブティックに到着しました。
「いらっしゃいませ」
首からメジャーを下げたスタッフが出迎えてくれます。
オタオタしている間に、体のサイズを図られてサンプルドレスのコーナーに連れて行かれました。
ララは買い物に慣れているのでしょう、好みのデザインをスタッフに伝えています。
「ロゼはどんなデザインが好みかな?」
私に付き添ってくださったエヴァン様が聞きました。
「よくわからないです。エヴァン様が決めてください」
「よし!任せて!」
先ほどまでソファーで寛いでいたエヴァン様が、張り切って立ち上がります。
今度は私がソファーで眺めるという状態です。
話はどんどん進んでいき、結局二つのドレスが目の前に並びました。
「ララと色が被らない様にしたいね」
そう言ったエヴァン様はスタッフにララの様子を見てくるように言いました。
戻ってきたスタッフによると、ララは薄いピンク色のベルドレスを選んだようです。
きっと可憐な印象のララにぴったりなフェミニンドレスでしょうね。
「ロゼは薄い色じゃない方が似合うよ。これはどう?」
エヴァン様が指さしたのは紫色から濃紺にグラデーションしているマーメイドタイプです。
「大人っぽくないですか?」
「そう?もう成人なんだし良いんじゃない?デコルテは詰めてもらおう。あまり開いているのはダメだよ?私は嫉妬深いんだ」
そう言ってどんどん決めていくエヴァン様を呆気に取られて見ているだけでした。
「さあ、次はアクセサリーだ。濃い色のサファイアがいいかな。それともアメジストがいいかな。どう?」
「アメジストの色が素敵です」
「うん、私もそれが似合うと思うよ。ではアメジストでピアスとネックレスを作ろう。私もロゼのピアスと同じデザインでカフスを作ろうかな。こちらの石は君の色にしたいからサファイアだな」
いったい総額はいくらになるのでしょう。
いったん考えるのを放棄しました。
ご満悦のエヴァン様はララの宝石を選んでいます。
こちらはララの希望通り真っ赤なルビーに決まりました。
26
お気に入りに追加
533
あなたにおすすめの小説
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~
瑠美るみ子
恋愛
サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。
だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。
今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。
好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。
王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。
一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め……
*小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました
イヤな上司をなんとかする方法【③エピソード追加】
みねバイヤーン
恋愛
「サッシャ、すまない。僕は君の妹に恋をしてしまった。婚約を解消してもらえないだろうか」
婚約者ルークを見送ったサッシャは喜びを爆発させる。
「やったわ。円満に婚約を解消したわ。これでやっと働ける。結婚なんかまっぴらよ」
希望を胸に王宮で働き始めたサッシャ。ところが上司はちっとも仕事をさせてくれず、愛玩動物のようにサッシャを扱う。そんなときサッシャは、王宮の影の支配者とウワサされるヘレナ女史に呼び出された。「社会的に存在を抹消しますか?」ヘレナはとんでもないことを問いかける。ヘレナはサッシャに条件を出した。三か月で結果を出せと。哀れなサッシャは仕事で結果を出せるのか? 健気で前向きなサッシャのお仕事、成長物語。(サッシャの物語は完結済みです)
【エピソード追加②③】別キャラのエピソードを追加しました。完結済み。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
【完結】廃嫡された元王太子との婚姻を命じられました
灰銀猫
恋愛
リファール辺境伯の孫娘アンジェリクに、第一王子との婚姻の王命が下った。
第一王子は文武両道・公明正大・容姿端麗と三拍子そろった逸材だったが、五年前に子爵令嬢の魅了の術に掛って婚約者に婚約破棄を突きつけ世間を騒がせた人物だった。廃嫡され、魅了の後遺症で療養中だった第一王子との結婚に驚く一方で、アンジェリク自体も第一王子を受け入れがたい理由があって……
現実主義のピンク髪ヒロインと立ち直ろうとする廃太子の物語。
R15は保険です。
誤字脱字報告ありがとうございます!
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる