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 私が気づいた彼らの共通点というのは、今のところ二つだけです。

 一つ目は、彼らにとって作業する場所や時間を決められることが苦痛であること。
 二つ目は、自分の得意分野のことでも、強制されるのは苦手であること。

 これらは私たちが子供のころから学園や家で、ほとんど強制的にさせられることです。
 家庭教師が来る時間には必ず勉強をしなくてはいけないことや、学校での時間割もそうですし、テストで点をとるための暗記もそうなのです。

 それに対応できず、成績が悪い子たちを『劣っている』と決めつけてしまう教育システムでは、特殊な能力を持つ子を見つけ出すのは難しいでしょう。
 逆に言うと、それらを拒否する子はギフテッドの可能性が高いのかもしれません。

 しかし、ぜんぜんサンプルが足りていませんから、あくまでも予測でしかないのです。
 というのも、特殊能力を持つ人というのが絶対的に少ないのです。
 当たり前ですよね。
 神様は平等に祝福を授けてくださいますが、その大きさには違いがありますから。

 そんな毎日は矢のように過ぎて、私たちはあとひと月で卒業を迎えます。
 ララは予定通り家事手伝いという名の、花嫁修業に入ります。
 本人は花嫁修業はするけれど、まだ結婚はしたくないそうですが。

 私は奇跡的なことに、サリバン博士の助手という職を得ることができました。
 エヴァン様はとんでもないほど凄いと喜んでくださいました。

「私との結婚時期についてはゆっくり考えればいいからね。じっくり腰を据えて夢を追いかければいいよ。でも私を捨てたりしないでね」

「捨てるなんて!でも私のお仕事を認めて下さって嬉しいです」

「うん。私は君のすべてを認めているよ」

 エヴァン様との婚約が現実味を帯びてきましたが、すぐに結婚という事ではないと聞いて安心した自分もいます。

「今度ね、ロゼに会わせたい人がいるんだ。というか、私としてはどっちでも良いんだけど、どうしてもってしつこくてね。まあ折れてやることにした。ロゼの領地の件でもいろいろ助けてもらったし」

「どなたですか?」

「王太子殿下だ」

 私は気を失いそうになってしまいました。

「サリバン博士も同席する予定だから」

「博士もですか?ということは?」

「まあ会って自分で確認するべきだろうね。いろいろお願いをされるかもだけど、嫌なら断って大丈夫だから。それより卒業パーティーで着るドレスを買いに行こうよ。もちろんララの分もね。ララのは父上が出すけれど、ロゼのは私から贈らせてほしいい」

 私が真っ赤になってドキドキしている間に、話はどんどん進んでしまいました。
 
ララと一緒に三人で乗り込んだ馬車は、王都で一番予約が取れないブティックに到着しました。

「いらっしゃいませ」

 首からメジャーを下げたスタッフが出迎えてくれます。
 オタオタしている間に、体のサイズを図られてサンプルドレスのコーナーに連れて行かれました。

 ララは買い物に慣れているのでしょう、好みのデザインをスタッフに伝えています。

「ロゼはどんなデザインが好みかな?」

 私に付き添ってくださったエヴァン様が聞きました。

「よくわからないです。エヴァン様が決めてください」

「よし!任せて!」

 先ほどまでソファーで寛いでいたエヴァン様が、張り切って立ち上がります。
 今度は私がソファーで眺めるという状態です。

 話はどんどん進んでいき、結局二つのドレスが目の前に並びました。

「ララと色が被らない様にしたいね」

 そう言ったエヴァン様はスタッフにララの様子を見てくるように言いました。
 戻ってきたスタッフによると、ララは薄いピンク色のベルドレスを選んだようです。
 きっと可憐な印象のララにぴったりなフェミニンドレスでしょうね。

「ロゼは薄い色じゃない方が似合うよ。これはどう?」

 エヴァン様が指さしたのは紫色から濃紺にグラデーションしているマーメイドタイプです。

「大人っぽくないですか?」

「そう?もう成人なんだし良いんじゃない?デコルテは詰めてもらおう。あまり開いているのはダメだよ?私は嫉妬深いんだ」

 そう言ってどんどん決めていくエヴァン様を呆気に取られて見ているだけでした。

「さあ、次はアクセサリーだ。濃い色のサファイアがいいかな。それともアメジストがいいかな。どう?」

「アメジストの色が素敵です」

「うん、私もそれが似合うと思うよ。ではアメジストでピアスとネックレスを作ろう。私もロゼのピアスと同じデザインでカフスを作ろうかな。こちらの石は君の色にしたいからサファイアだな」

 いったい総額はいくらになるのでしょう。
 いったん考えるのを放棄しました。

 ご満悦のエヴァン様はララの宝石を選んでいます。
 こちらはララの希望通り真っ赤なルビーに決まりました。
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