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14 暗転
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サーフェスは教授の返事も待たずにスッと手を上げた。
ふっと意識が遠のいたと思った瞬間、あたりが暗転した。
「サーフェス…」
「ああ、ここに居るよ。大丈夫だ、もうすぐ着くからもう少し我慢して」
サーフェスの声を聞きながら、僕はこみ上げてくる吐き気と戦っていた。
遠くで山上教授の声が聞こえたような気がするが、何も見えない。
「もう大丈夫。通り抜けたよ。教授も大丈夫ですか?」
サーフェスの声で目を開けると、のどかな田園風景が飛び込んできた。
「ここは…」
「うん、君の実家だね」
意味が分からない…。
「ああ、ほら。お祖父様だ。お~さすがにオーラが違う」
サーフェスの声に顔を上げると、確かに僕のお祖父様が駆け寄ってくる姿が見えた。
「トオルか?」
「お祖父様?」
「ああ…なんと言うか…まあ中に入りなさい。教授も君もどうぞこちらに」
お祖父様はいきなり庭先に現れた僕たち三人に戸惑いながらも、家の中に招き入れた。
庭に面した客間に座った僕たちにお茶を勧めながらお祖父様が口を開く。
「どういうことです?それに…あなたはいったい何者だ?」
そう言われたサーフェスは小さく肩を竦めて見せた。
何も言わない彼を一瞥した後、山上教授が口を開いた。
「突然お邪魔しまして申し訳ございません。いやぁ、まさか八幡翁の所とは…長生きはしてみるものですな~ははは!時空を飛んだのですぞ!凄い経験だ」
山上教授は引き攣ったように笑っているが、顔色は悪かった。
サーフェスはきちんと正座をしてお祖父様に向き合った。
「突然の訪問で申し訳ありません。お察しの通り僕はオオクニです。あなたの初鍛刀の儀式の折にはお目に掛ったが、覚えてはおられますまい」
数秒ほどサーフェスの顔をじっと見ていたお祖父様は、居住まいを正しお辞儀をしながら話し始めた。
「お久しゅうございます。オオクニヌシ様におかれましてはご健勝のご様子。心より安堵いたしました。何やら深いご事情がお有りのご様子。挨拶はこのくらいにして本題に入りましょうか」
お祖父様が自分を認識しているとわかったサーフェスは、ニヤッと笑って口調を変えた。
「うん、察しがよくて助かるよ。実はヤマトタケルの奴がもうすぐここに来るんだ。私とトオルで迎え撃つが、例のアレを奪われては苦戦を強いられるだろう?そこで翁と教授で結界を張ってアレを守ってほしいのだ」
「ああ…アレでございますか」
「うん、アレだ」
僕にはさっぱりわからない会話が続いた。
「アレってアレですか?ここにある?」
山上教授が参戦した。
結局何も分かっていないのは僕だけのようだ。
お祖父様が僕の顔を一瞬だけ見て言葉をつづけた。
「我が一族で守ってきたのですよ」
「私も見ることはできますか?」
「面白いものでもございませんよ?」
「だってアレでしょう?ヤマトタケルが欲しがるということは…ねえ?」
僕は痺れを切らした。
「アレって何?ねえお祖父様」
「わしからは言えないんだよ。口にするのも憚られる」
「憚られるって…何なんだよ!もう!サーフェス?」
サーフェスは面白そうに僕を見ていた。
「アレっていうのはね、神刀オオクニヌシの欠片だ」
「オオクニヌシって君が言ってたクサナギの兄弟刀かい?」
僕はやっとまともな質問をしたようだ。
ふっと意識が遠のいたと思った瞬間、あたりが暗転した。
「サーフェス…」
「ああ、ここに居るよ。大丈夫だ、もうすぐ着くからもう少し我慢して」
サーフェスの声を聞きながら、僕はこみ上げてくる吐き気と戦っていた。
遠くで山上教授の声が聞こえたような気がするが、何も見えない。
「もう大丈夫。通り抜けたよ。教授も大丈夫ですか?」
サーフェスの声で目を開けると、のどかな田園風景が飛び込んできた。
「ここは…」
「うん、君の実家だね」
意味が分からない…。
「ああ、ほら。お祖父様だ。お~さすがにオーラが違う」
サーフェスの声に顔を上げると、確かに僕のお祖父様が駆け寄ってくる姿が見えた。
「トオルか?」
「お祖父様?」
「ああ…なんと言うか…まあ中に入りなさい。教授も君もどうぞこちらに」
お祖父様はいきなり庭先に現れた僕たち三人に戸惑いながらも、家の中に招き入れた。
庭に面した客間に座った僕たちにお茶を勧めながらお祖父様が口を開く。
「どういうことです?それに…あなたはいったい何者だ?」
そう言われたサーフェスは小さく肩を竦めて見せた。
何も言わない彼を一瞥した後、山上教授が口を開いた。
「突然お邪魔しまして申し訳ございません。いやぁ、まさか八幡翁の所とは…長生きはしてみるものですな~ははは!時空を飛んだのですぞ!凄い経験だ」
山上教授は引き攣ったように笑っているが、顔色は悪かった。
サーフェスはきちんと正座をしてお祖父様に向き合った。
「突然の訪問で申し訳ありません。お察しの通り僕はオオクニです。あなたの初鍛刀の儀式の折にはお目に掛ったが、覚えてはおられますまい」
数秒ほどサーフェスの顔をじっと見ていたお祖父様は、居住まいを正しお辞儀をしながら話し始めた。
「お久しゅうございます。オオクニヌシ様におかれましてはご健勝のご様子。心より安堵いたしました。何やら深いご事情がお有りのご様子。挨拶はこのくらいにして本題に入りましょうか」
お祖父様が自分を認識しているとわかったサーフェスは、ニヤッと笑って口調を変えた。
「うん、察しがよくて助かるよ。実はヤマトタケルの奴がもうすぐここに来るんだ。私とトオルで迎え撃つが、例のアレを奪われては苦戦を強いられるだろう?そこで翁と教授で結界を張ってアレを守ってほしいのだ」
「ああ…アレでございますか」
「うん、アレだ」
僕にはさっぱりわからない会話が続いた。
「アレってアレですか?ここにある?」
山上教授が参戦した。
結局何も分かっていないのは僕だけのようだ。
お祖父様が僕の顔を一瞬だけ見て言葉をつづけた。
「我が一族で守ってきたのですよ」
「私も見ることはできますか?」
「面白いものでもございませんよ?」
「だってアレでしょう?ヤマトタケルが欲しがるということは…ねえ?」
僕は痺れを切らした。
「アレって何?ねえお祖父様」
「わしからは言えないんだよ。口にするのも憚られる」
「憚られるって…何なんだよ!もう!サーフェス?」
サーフェスは面白そうに僕を見ていた。
「アレっていうのはね、神刀オオクニヌシの欠片だ」
「オオクニヌシって君が言ってたクサナギの兄弟刀かい?」
僕はやっとまともな質問をしたようだ。
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